大町市の山を歩く
大町市の山と登山
長野県の北西部、松本平の北に位置する大町市は、西側に北アルプスの3000m級の山々が連なる高原の街。市街地の標高は約700mに達し、市域には日本有数の名峰がそびえます。そのなかには、五竜岳(ごりゅうだけ、2814m)、鹿島槍ヶ岳(かしまやりがたけ、2889m)、鷲羽岳(わしばだけ、2924m)、槍ヶ岳(やりがたけ、3180m)といった4峰の日本百名山が含まれています。
そんな山岳観光都市である大町市は、市内から登山口までの距離が近く、日帰りで登山やトレッキングを満喫できるのが大きな特長で、特に北アルプス北部の登山口は車で1時間圏内の場所が多く、地元の人々はその日の天気を見て気軽に山に登っています。また、立山黒部アルペンルートの長野県側の起点である扇沢(おうぎざわ)からは、黒部源流や剱・立山連峰へのアクセスも容易です。一年を通じて山に登れるのも魅力で、夏はコマクサやチングルマなどの高山植物を愛で、秋は鮮やかな紅葉を堪能し、冬から春にかけてはバックカントリースキーや雪山登山をエンジョイできます。
登山後の楽しみといえば温泉ですが、大町市は温泉地としてもそのポテンシャルを高く評価されています。扇沢から車で15分の大町温泉郷は神経痛や疲労回復に効果があると評判。ほかにも、湧出量が豊富な源泉かけ流しで知られる葛(くず)温泉や、自分で湯船を作って入るワイルドな体験ができる湯俣(ゆまた)温泉など、個性豊かな温泉が点在しています。目的や気分に合わせて、さまざまな温泉を巡ってみるのも楽しいですね。
また、登山だけでなく、あらゆるアウトドアアクティビティが充実している点も見逃せません。市内には「仁科三湖(にしなさんこ)」と呼ばれる木崎(きざき)湖・青木(あおき)湖・中綱(なかつな)湖の3つの湖があり、SUPやカヌー、ボートなどの水上アクティビティが楽しめます。パラグライダーやキャンプ、サイクリングを満喫する人も多いそう。さらに、市内にある2つのスキー場を含む白馬バレーでは良質なパウダースノーが降り積もり、世界中からウィンタースポーツ愛好家が訪れます。
大町市は、雄大な自然と豊富なアウトドアアクティビティ、そして多彩な温泉がそろった魅力的な地域です。信濃大町の市民になったら、四季折々の楽しみが詰まったこの町で、あなただけの特別な時間を見つけてみてはいかがでしょうか。
大町市から登る山、
おすすめコース4選
大町市街から見える北アルプスの山々はそのほとんどが大町市の山と言っても差し支えないでしょう。そして、親不知から槍ヶ岳に至る長大な山脈を針ノ木峠を境として2つに分ける後立山連峰と裏銀座の登山コースは、いずれも大町市が登山基地となるのです。ここでは、大町市から歩く北アルプスの代表的な登山コースを3つ、そして大町市民に四季を通して親しまれる展望の里山をひとつ、合わせて4コースを紹介しましょう。信濃大町に暮らすと、その日の天気を見て北アルプスに入山するという贅沢を体験できます。


コース① 後立山連峰最南部の2つの名峰
針ノ木岳(2821m)と蓮華岳(2799m)

コース① 後立山連峰最南部の2つの名峰
針ノ木岳(2821m)と蓮華岳(2799m)

夏山の醍醐味、雪渓と高山植物を堪能できるおすすめコース
日本三大雪渓のひとつ、針ノ木雪渓(はりのきせっけい)を歩き、コマクサが咲き乱れるお花畑を楽しめる贅沢な登山ルート。夏の北アルプスのなかでは、比較的登山者が少なく、のんびりとした山歩きを満喫できる。
コマクサは、乾燥した砂礫地といった他の植物が生育できない過酷な環境で美しい花を咲かせることから「高山植物の女王」と呼ばれている。蓮華岳(れんげだけ)から南に下った「蓮華の大下り」の途中には、国内有数ともいわれる大群落が広がっており、山頂から少し足を延ばして訪れる価値がある。例年、見頃は7月中旬から8月中旬にかけて。
登山ルートは、扇沢(おうぎざわ)から針ノ木峠をめざして登ってゆく。峠の西にそびえる針ノ木岳がピラミッド型の男性的な山容を持つのに対し、東に位置する蓮華岳は優美で女性的な山容なのが特徴。個性の違うふたつの山が峠を挟んでそびえ立つ姿を眺めるのも、このルートの楽しみのひとつ。また、峠手前の針ノ木雪渓では、大町市を拠点に国内初の山岳ガイド組織を発足させた百瀬慎太郎(ももせしんたろう)の功績を称え、毎年6月上旬に「針ノ木岳慎太郎祭」が開催される。
「信州山のグレーディング」によると、針ノ木岳と蓮華岳の体力度は10段階の4、技術度は5段階のBとされており、登山中級者向きの山といえる。ただし、雪渓歩きには、音のない落石や踏み抜きといった一般の登山道歩きとは違ったリスクがあるので十分注意したい。
紹介コースは、扇沢を起点に針ノ木小屋に1泊して戻るものだが、日程と体力に余裕があるなら蓮華岳から針ノ木岳を経由して赤沢岳(あかさわだけ)、鳴沢岳(なるさわだけ)を巡りながら種池山荘(たねいけさんそう)に宿泊し、翌日に扇沢に戻る「針ノ木サーキット」を歩くのもおすすめだ。
参考リンク:

登山データ
- 日数
- 1泊2日
- コースタイム
- 約11時間30分(ヤマタイム標準)
- 行程
- 1日目 扇沢→雪渓→針ノ木岳→針ノ木小屋泊
2日目 針ノ木小屋→蓮華岳→扇沢
総歩行距離:約15.984km
累積標高差:上り1,924m/下り1,923m
アクセス
電車・バス
JR大糸線信濃大町駅(バス約40分、1,650円)扇沢
マイカー
長野道安曇野ICから北アルプスパノラマロード、大町アルペンラインなどで約43km、1時間で扇沢
アドバイス
最近は温暖化の影響で、針ノ木雪渓の積雪量が少ないことが多い。登る前には針ノ木小屋や大沢小屋に連絡を入れて、雪渓の最新状況を確認しよう。蓮華岳から北葛岳(きたくずだけ)や七倉岳(ななくらだけ)方面は、ヤセ尾根が連続する上級者コースになっている。

コース② 北アルプスの入門コースとしても最適
爺ヶ岳(2670m)

コース② 北アルプスの入門コースとしても最適
爺ヶ岳(2670m)
花の稜線を歩き山グルメに舌鼓を打つ欲張りコース
大町市街からもよく見え、後立山連峰(うしろたてやまれんぽう)の南部に位置する爺ヶ岳(じいがたけ)。山名の由来は、春になると山肌に現われる「種蒔き爺さん」の雪形(人物や動物などの形に見える雪や岩肌の模様)が見られることによる。信州山のグレーディングでは、体力度が10段階の4、技術度がBとなっており、北アルプスの入門コースとして知られている。
爺ヶ岳の大きな特徴は、山頂が3つあること。北峰・中央峰・南峰があり、三角点が設置された南峰からは鹿島槍ヶ岳(かしまやりがたけ)や剱岳(つるぎだけ)の姿が美しい。最高峰の中央峰は、縦走路から少し外れるが、ぜひとも立ち寄りたい。一方、北峰は高山植物保護のために立ち入り禁止となっているので注意しよう。
爺ヶ岳は「花の百名山」に数えられるほど高山植物が豊富な山。森林限界を越えた稜線付近では、チングルマやウラシマツツジなどが咲き乱れ、その美しさに心を奪われる。運がよければ、花々のなかにライチョウがひっそりと隠れている姿を見ることができるかもしれない。
扇沢(おうぎざわ)から種池山荘(たねいけさんそう)までの柏原新道(かしわばらしんどう)は、種池山荘の2代目オーナーだった柏原正泰(かしわばら・まさやす)さんが約50年前に独力で開拓した登山道。ところどころ急登もあるが、整備が行き届いており、北アルプスのなかでも最も歩きやすい登山道のひとつと言われている。とくに新緑と紅葉の季節は、色づく樹林帯のなかを歩くだけでも楽しい。
登山口からは約4時間で種池山荘に到着するが、ここでぜひ味わってほしいのが、焼き立てピザ。生地からソースまですべて手作りにこだわった逸品で、登山者からも大好評。ただし、販売時間と枚数に限りがあるので注意しよう。
健脚向けには、爺ヶ岳から縦走路をさらに北へ進み、後立山連峰の盟主である鹿島槍ヶ岳をめざすのもおすすめだ。剱・立山連峰を眺めながら歩く稜線は、夏山縦走の楽しさを味わえる絶好のルートとなっている。

登山データ
- 日数
- 1泊2日
- コースタイム
- 約8時間5分(ヤマタイム標準)
- 行程:
- 1日目 扇沢→柏原新道→種池山荘宿泊
2日目 種池山荘→爺ヶ岳南峰→扇沢 - 総歩行距離
- 約13.3km
- 累積標高差
- 上り約1,696m/下り約1,696m
アクセス
電車・バス
JR大糸線信濃大町駅(バス約40分、1650円)扇沢
マイカー
長野道安曇野ICから北アルプスパノラマロード、大町アルペンラインなどで約43km、1時間で扇沢
アドバイス
柏原新道は、6月中旬から下旬に通行が可能となる。夏道の雪が消えて初心者でも安心して通行できるのは7月に入ってからだ。シーズン終わりは、早い年では10月末に積雪で通行できなくなる。種池山荘は完全予約制、例年5月中旬頃に電話とネットで予約が始まる。

コース③ 雲上の静かなる稜線歩き
裏銀座縦走(高瀬ダム〜烏帽子岳〜三俣蓮華岳〜槍ヶ岳〜槍沢~上高地)

コース③ 雲上の静かなる稜線歩き
裏銀座縦走(高瀬ダム〜烏帽子岳〜三俣蓮華岳〜槍ヶ岳〜槍沢~上高地)

天空にそびえる槍の穂先をめざして、充実のロング縦走コース
大町市の七倉(ななくら)から槍ヶ岳(たりがたけ)を経て上高地に至る、登山者憧れのロングコース。東鎌尾根(ひがしかまおね)から槍ヶ岳をめざす表銀座コースに対し、烏帽子岳(えぼしだけ)から双六岳(すごろくだけ)を経由して槍ヶ岳に向かう本コースは、メジャーでない山をつなぐ縦走路であることから裏銀座コースと呼ばれている。表銀座とくらべて行程が長く、歩く人は多くないが、静寂に包まれた稜線歩きや北アルプスならではのダイナミックな景観を満喫できる。
序盤には日本三大急登のひとつであるブナ立尾根(ぶなたておね)を登り、中盤では北アルプス最奥ともいわれる水晶岳(すいしょうだけ)や鷲羽岳(わしばだけ)に登頂。そしてクライマックスには、槍の穂先へと挑むというドラマチックな展開が待っている。ただし、本コースは信州山のグレーディングで最も体力が必要とされる上級者コース。登山経験と体力が必要で、十分なトレーニングを積んでから挑戦してほしい。
さて、初日のブナ立尾根は、日本三大急登と聞くと身構えてしまうが、傾斜こそ急だが、ルート上には12からカウントダウンされていく案内板があり、これを目安にするとペースをつかみやすい。
烏帽子岳からは森林限界を越えた長い稜線歩きが始まる。晴れた日は眺望が素晴らしく気持ちのよいルートだが、悪天候になると強風が吹き低体温症の危険があるので注意したい。本ルートの一番の見所は、刻々と変わってゆく槍ヶ岳の姿だ。鷲羽岳山頂からの鷲羽池越しの槍ヶ岳、双六岳山頂に広がるの“天空の滑走路”と呼ばれる台地越しの槍ヶ岳、そして槍の肩から仰ぎ見る穂先など、息を呑むほど美しい景色が目白押しだ。
このルートを歩き通すためには最低でも3泊、できれば4泊の計画を立てると余裕を持って楽しめる。ただし、悪天候や疲労で途中リタイアする可能性も考慮し、エスケープルートを事前に確認しておこう。真砂岳(まさごだけ)から湯俣(ゆまた)に下る竹村新道(たけむらしんどう)や双六岳から新穂高温泉(しんほたかおんせん)へ下る小池新道(こいけしんどう)なら、1日で下山が可能だ。
参考リンク:
登山データ
- 日数
- 3泊4日
- コースタイム
-
約34時間(ヤマタイム標準)
1日目:(七倉)高瀬ダム→烏帽子小屋泊(烏帽子岳往復)
2日目:烏帽子小屋→野口五郎岳→水晶小屋→水晶岳→鷲羽岳→三俣山荘泊
3日目:三俣山荘→三俣蓮華岳→双六小屋→槍ヶ岳山荘泊(槍ヶ岳往復)
4日目:槍ヶ岳山荘→槍沢ロッヂ→横尾→上高地 - 総歩行距離
- 約51.1km
- 累積標高差
- 上り約5,069m/下り約4,837m
アクセス
電車・バス
行き:JR大糸線信濃大町駅(裏銀座登山バス35分、1,500円)七倉
帰り:上高地(バス約1時間5分、2,550円)新島々駅(電車約30分、710円)JR中央本線松本駅
アドバイス
ロングコースなので自分の体力に合わせて宿泊小屋を選ぼう。小規模な水晶小屋に泊まるなら早めの予約を。水晶岳の登りは、ザレているのでスリップに注意。とくに東沢乗越(ひがしざわのっこし)からは傾斜が増すので気をつけたい。

コース④ 北アルプスの大展望台
鷹狩山(1164m)

コース④ 北アルプスの大展望台
鷹狩山(1164m)

手軽に登って、大パノラマが楽しめる穴場の名低山
大町市の西側に位置する鷹狩山(たかがりやま)は、大町市民から愛される標高1164mの里山。「展望台」と呼ばれるだけあって、大町市街と、北アルプスの大パノラマを気軽に満喫できる。山頂からは大町市の主要な北アルプスの名峰や、南に常念岳(じょうねんだけ)や蝶ヶ岳(ちょうがたけ)、北に白馬岳(しろうまだけ)、晴れた日には槍ヶ岳(やりがたけ)の穂先まで見渡せるという。そんな絶景を目の当たりにできるにもかかわらず、地元以外ではあまり知られていないので静かなハイキングが楽しめる。大町市を代表する名低山といえよう。
鷹狩山は年間を通じてハイキングを楽しめる山。春は桜と新緑、秋は紅葉と雲海、冬は雪化粧をした北アルプスの雄大な景色が美しい。とくに、10月下旬から11月上旬にかけては、雲海が発生しやすく幻想的な風景を堪能できる。また、鷹狩山はデートスポットとしても人気があり、長野県内の八千穂高原(やちほこうげん)の白樺林などと並び「恋人の聖地」に選定されている。
登山口は大町山岳博物館。博物館の展示を見て、山頂を往復しよう。この博物館は、日本でも珍しい山岳をテーマにしたミュージアムで、常設展では北アルプスを中心とした自然や登山の歴史を展示。なかでも、井上靖(いのうえやすし)の小説『氷壁』のモデルとなったナイロンザイルの実物や、『風雪のビヴァーク』で知られる松濤明(まつなみあきら)が遭難時に遺した手帳など、登山史を語る上での重要な展示物が多い。ほかにもライチョウやニホンカモシカが飼育されている附属園に立ち寄るのも楽しい。
博物館から山頂までは、約1時間20分ほどの道のり。途中で 「鷹狩山トレッキングコース」と「山頂駆け登りコース」に分かれており。「駆け登りコース」は、多少急な傾斜があるが、展望がよい尾根なので登りに使うのがおすすめ。登山道はしっかりと整備されて、道標も完備されているので迷う心配もない。
さらに歩きたい場合は、鷹狩山から乗越峠(のっこしとうげ)を経て、霊松寺山(れいしょうじやま)をめざすのもおすすめ。その場合は、大町山岳博物館に戻るまで約4時間のコースタイムとなる。霊松山山頂からも北アルプスの展望は見事で、下山途中に立ち寄れる霊松寺は、600年前に創建された山奥の名刹。山門には、諏訪大社の宮大工・立川和四郎(たてかわわしろう)の精巧な彫刻が施され、県宝に指定されている。

登山データ
- 日数
- 日帰り
- コースタイム
- 約2時間30分
大町山岳博物館~鷹狩山往復 - 総歩行距離
- 約4.6km
- 累積標高差
- 上り 約401m 下り 約401m
アクセス
電車・バス
JR大糸線信濃大町駅(徒歩約25分)大町山岳博物館
マイカー
長野道安曇野ICから北アルプスパノラマロード(県道306号)などで約30km、40分で大町山岳博物館駐車場
アドバイス
年間を通して登れるが、冬はチェーンスパイクやトレッキングポールなどの装備が必要。山頂まで車道が通じていて車でも行けるが、冬期は通行止めになるので注意。
アクセスガイド:「後立山・裏銀座」への登山口
アクセスガイド:「後立山・裏銀座」への登山口
| 登山口 | 駅から 登山口までの 所要時間 |
|
|---|---|---|
| 針ノ木岳 | 扇沢 | JR信濃大町駅〜扇沢/約50分(バス)、約25分(タクシー) |
| 蓮華岳 | ||
| 爺ヶ岳 | ||
| 鹿島槍ヶ岳* | ||
| 五竜岳* | テレキャビン遠見駅 | JR神城駅から徒歩約20分 |
| 野口五郎岳 | 七倉・高瀬ダム | JR信濃大町駅〜七倉登山口/約45分(裏銀座登山バス)、七倉登山口〜高瀬ダム約20分(タクシー) |
| 烏帽子岳 | ||
| 鷲羽岳* |
は日本百名山
裏銀座登山バスでアクセスが便利に!
裏銀座登山バスでアクセスが便利に!
烏帽子岳から槍ヶ岳を結ぶ「裏銀座」は、北アルプスの魅力を凝縮したコースだ。しかし、「表銀座」に比べて登山者が少ない状況が続いていた。その理由のひとつは、登山口である七倉までのアクセスが不便なことによる。
そこで大町市では2023年、JR信濃大町駅から七倉登山口までを結ぶ「裏銀座登山バス」の運行を開始。このバスは1日4便運行されており、これまでタクシー利用で片道約8,000円の料金がかかっていたことを考えると、手頃な金額でアプローチできるのは嬉しい。
また、七倉登山口はマイカー利用者も多く、駐車場が満車になると路肩駐車が発生する問題がなった。しかし「裏銀座登山バス」の導入により、この混雑緩和にも期待が寄せられている。詳細は、「裏銀座登山バス」特設サイトを参照のこと。
なお、裏銀座の登山口である高瀬ダムへは、七倉登山口から特定タクシー(片道2,400円)を利用する必要がある。
裏銀座登山バスの概要
- 運行期間:7月中旬~10月中旬の特定日
- 運行本数:1日4便往復
- 予約:不要
- 運賃:大人片道1,500円、小学生片道1,000円
- 支払い方法:現金、クレジットカード決済、PayPay・d払いなど一部のQRコード決済
百瀬慎太郎と大町登山案内人組合
「山を想えば人恋し 人を想えば山恋し」。
JR信濃大町駅前にある歌碑に刻まれたこの言葉は、多くの登山者に親しまれています。作者は、大正時代に活躍した登山家・百瀬慎太郎(ももせ・しんたろう)。百瀬慎太郎は、大沢小屋や針ノ木小屋などを建設し、日本で初めて山案内人組合を設立した人でした。
慎太郎は、1892(明治25)年、かつて大町市にあった旅館「對山館(たいざんかん)」の二代目・金吾の長男として生まれました。この宿は、近代登山の黎明期に北アルプスをめざしたW・ウェストンや槇有恒(まき・ゆうこう)といった著名な登山家たちの拠点となった場所でした。彼自身も、中学2年の夏に友人に誘われて白馬岳を登頂し、以来、山の魅力に取り憑かれていくのでした。そして、16歳で日本山岳会に入会、21歳のときには蓮華岳から大黒岳の縦走(八峰キレットの鹿島槍ヶ岳方面からの初通過)など、登山史に残る偉業を成し遂げていきます。
1916(大正5)年、松本〜信濃大町間に鉄道が開通すると、大町市には登山者が押し寄せます。「山を安全に歩くためには案内人が不可欠だ」と考えた慎太郎は、翌年「大町登山案内者組合」を設立。彼は、単に道案内をするのでなく、案内人が山のマナーやエチケットを身につけ、親切な接客を心がけることを重視しました。こうした取り組みは、現在の山岳ガイドの先駆けとなったのです。そして、慎太郎が創設した組織は2017(平成29)年に百周年を迎え、現在も、ガイド業務のほか、登山道整備や遭難救助など多方面に渡って活躍しています。

多くの足跡を残した針ノ木雪渓と針ノ木岳

大町市は