「奥会津アウトドアキャンペーン2022」イベントレポート

"山の編集長"萩原浩司と登る越後山脈の秘峰・浅草岳登山レポート

奥会津の名峰・浅草岳へ

奥会津の名峰・浅草岳の紅葉

2022年10月8日と9日に、浅草岳登山ツアーを実施しました。

奥会津エリアには地元の人々に愛される3つの山があります。標高828mの蒲生岳(がもうだけ)、標高1624mの会津朝日岳(あいづあさひだけ)、そして標高1585mの浅草岳(あさくさだけ)です。

浅草岳は、福島県只見町と新潟県魚沼市にまたがり、「日本三百名山」の一つに数えられるほか、ヒメサユリが美しい「花の百名山」として知られています。また、花の時期だけでなく、美しいブナの森が広がる浅草岳は紅葉が美しい山でもあります。

福島県側からの登山道は、登山口までのアプローチと登山行程自体が長大なこともあって簡単に登れるコースではありませんが、それだけに静かな登山を楽しめるのが特徴です。

本企画は、浅草岳の只見尾根コースを、"山の編集長"こと山と溪谷社の萩原浩司と登るツアー。待ち合わせをした東北新幹線の新白河駅から只見町まではツアーバスで3時間ほど。さすがは秘境と呼ばれる奥会津だけあって、アプローチは長いですが、だからこそ期待が高まります。1日目は只見町の中心部に移動しつつ、只見の原生的な自然環境やその魅力を発信する「ただみ ブナと川のミュージアム」を見学。民宿に到着し、夕食後は萩原による登山のお悩み相談や、参加者同士での山の情報交換で盛り上がりました。英気を養い、2日目はいよいよ浅草岳に挑みます。

美しいブナの森を歩く

只見線のトンネル
少し危険な架橋
ブナの巨樹の道を歩く

只見尾根コースの特徴は、広大なブナの森を散策しながら浅草岳の山頂をめざせること。10月1日に全線運転再開したばかりのJR只見線の線路のすぐ脇を通って登山口へ。登山口からしばらくは沢沿いの樹林帯を進みます。ときには沢にかかったスリリングな架橋を渡ることも。標高を上げていくと、立派なブナの巨樹が出迎えてくれました。

険しい登り道と美しい風景

剣ヶ峰のナイフリッジ付近
終盤は急登が続く
鬼ヶ面の岩壁

中盤からは、斜面に対しつづら折りに付けられた登山道で標高を上げていきます。登山口から山頂まで1000m以上の標高差があるため、その道のりはかなりハード。樹林帯から尾根に乗り、後ろを振り返れば田子倉湖が美しく、疲れを癒やしてくれますが、お目当ての山頂はまだまだ先。今年は紅葉が例年より遅れていることもあって、標高1300mを越えた只見尾根上部でようやく紅葉が目立ちはじめ、左手には鬼ヶ面山(おにがつらやま)の迫力ある岩壁が広がりました。

絶景の浅草岳山頂

浅草岳山頂にて
前岳に続く主稜線
田子倉湖と只見湖

登山口から長く険しい只見尾根を登り続けること約5時間。ついに浅草岳山頂に到着! この日は生憎の曇り空でしたが眺望には恵まれ、前岳へと続く紅葉した稜線や、足元には田子倉湖と只見湖の絶景が待っていました。「今度はあっちまで歩いてみたい」「ここまでがんばってよかった」というみなさんの感想を聞きながら、山頂で楽しみにしていたお弁当を食べ、記念写真。秘境・奥会津の山の魅力を堪能しました。

油断できない下り道

山頂での集合写真
滑りやすい急斜面を下る
田子倉湖に向けて下る

山頂を楽しんだら早々に下山を始めます。只見尾根は、下りでも油断ができません。前日までの雨もあって滑りやすい濡れた岩やぬかるみなどの難所が続く長丁場。「三点支持」でのトラバースや下降が必要な道が続きます。しかしながら、登りで見た景色とはまた異なる山麓の美しい風景に、疲れているはずなのにとても楽しそうなみなさん。ゴール地点である田子倉湖の登山口に着いたのは17時すぎ。登り5時間、下り4時間、合計9時間超の登山となりました。参加いただいたみなさん、本当にお疲れ様でした。

浅草岳・只見尾根
中・上級者向き

[総行動時間] 10時間10分(休憩時間含む)
[総距離] 13.9km
[累積標高] 上り1866m/下り1866m

▽関連登山記録
 

豊かな大自然を満喫する沼沢湖アウトドア体験

2022年9月23日と24日に、沼沢湖アウトドア体験が開催されました。

イベントの舞台となった沼沢湖は、約5400年前の沼沢火山の噴火の際の火口に水が溜まってできたカルデラ湖。大蛇伝説のある神秘的な湖は、ブナやミズナラの森に囲まれており、四季折々の美しい景色を見せてくれます。湖にはヒメマスが生息し、地元の特産品となっています。

「奥会津アウトドアキャンペーン2022」の「沼沢湖アウトドア体験」では、「沼沢湖SUP体験」「沼沢湖星空SUP体験」「ブッシュクラフト体験」「アウトドア手作りワークショップ」の4つのプログラムを用意。「沼沢湖星空SUP体験」は残念ながら天候不順で開催できませんでしたが、ほかの3つのプログラムは、豊かな奥会津の大自然の中で無事に行なわれました。

◇沼沢湖SUP体験

人気の高いSUP(スタンド アップ パドルボート)の体験ができる「沼沢湖SUP体験」は、「Dom’Up Camp Village 沼沢湖」でSUP体験プログラムのインストラクターを務める菅野幸吉さんを講師に迎えて行なわれました。沼沢湖は、周囲が山で囲まれたカルデラ湖なので風の影響を受けにくく、湖面に波が立ちにくいので、初SUP体験にちょうどいい環境が整っています。

まずは大人数で乗れるメガSUPでSUPを体験。メガSUPは転覆することがないので初めてでも安心。メガSUPに慣れたら、3人乗り、そして最後は1人乗りにステップアップ。沼沢湖の湖面からでしか見られない、周囲の樹々の緑の美しさも満喫することができました。

参加した人たちは「湖の上に浮かんでいる感覚が気持ちよく、だんだん景色を楽しむ余裕が出てきて楽しめた」など、満足した様子でした。

当日はあいにくの天候でしたが、たくさんの参加者が集まりました
沼沢湖SUP体験。はじめはメガSUPでSUPを体験します
SUPに慣れてきたら、立った状態での漕ぎ方を練習します
最後は、1人乗りのSUPで沼沢湖を満喫!
SUPを終えて、はいポーズ!

◇ブッシュクラフト体験

ブッシュクラフトとは、サバイバル術で楽しむ新しいキャンプスタイルのこと。今回の「ブッシュクラフト体験」では、JBS(ジャパン ブッシュクラフト スクール)認定ブッシュクラフトインストラクターの佐々木秀将さんを講師に迎えて開催。基本的なロープワークを学んだ後に、そのロープワークを使ってシェルターを張り、メタルマッチを使用した火種作りを体験しました。

「サバイバル術では体温を保持することが大事。そのなかで、風や雨を遮るシェルターを張ることが今日のメイン。体温維持には火を起こすことも大事なので、流行りのメタルマッチを使いました。この体験を通して、自然が身近に感じられるようになればいいなと思います」(佐々木秀将)

参加者は、「基本的なロープの結び方から、限られたアイテムでシェルターを作る方法を簡潔に学ぶことができて、とても有意義だった」と話していました。あえて不便な環境下に自分を置くことで、より自然を感じられるブッシュクラフトは、参加者にとって貴重な体験となったに違いありません。

ブッシュクラフトの基本を熱く語る佐々木さん
ブッシュクラフト体験の一コマ。シェルターを張るためのロープワークを学びます
かぎられた道具でシェルターを立てる方法を実演中
簡易シェルターが完成。雨風を避けるのに使います
教わったロープワークを早速シェルター作りに活用します

◇アウトドア手作りワークショップ

「アウトドア手作りワークショップ」は、自宅をセルフビルドで建てた坂口克さんが講師を務め、地元金山町の木材を使ったフォールディングチェア(折り畳み椅子)を制作しました。長い角材をノコギリで切るところから始まり、電動工具(ジグソー、サンディングソー)も使用。慣れない作業で最初はとまどっている人もいましたが、最後には職人並の手つきでみごとに使いこなしている人も。多少時間はかかりましたが全員完成させることができました。

「慣れない電動工具も使って恐る恐る作業し、参加者全員に達成感を感じてもらえてよかったです。今回のワークショップで木工作の基本的な技術が学べたと思います。まず基本の工具を揃えて何回か作ってみるとどんどん面白くなってくるので、これを機会に続けていただけたらうれしいです」(坂口克)

参加者は「騒音が気になってなかなかできなかったが、沼沢湖という大自然のなかではそういうことを気にせずに楽しめた」と、椅子作りを楽しんだ様子。完成品はもちろん持ち帰ることができ、使ったノコギリ、メジャーもお土産に。参加者は大満足のワークショップとなりました。

株式会社高儀の協力により揃えられた工具の数々
講師の阪口克さんが木材の組み立て方を実演
図面を見ながら木材を加工していきます
電動工具を用いた本格的な木工作です
完成した折り畳み椅子を持って、はいポーズ!

お問合せ先

山と溪谷社 奥会津アウトドアキャンペーン2022 事務局
MAIL : ad_info@yamakei.co.jp

山と溪谷社
奥会津アウトドアキャンペーン2022 事務局
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主催=福島県生活環境部自然保護課
企画・運営=山と溪谷社

主催=福島県生活環境部自然保護課
企画・運営=山と溪谷社

イラスト=山口正児
 写真=仁井田研一、福島県自然保護課