初代から現在の第9世代までゴアテックス ファブリクスを採用してきた。
モンベルが同ブランドのファブリクスを使い続ける理由を、長年開発に関わってきた三枝弘士さんに伺った。
モンベル企画開発担当
三枝弘士 さえぐさ・こうじ
株式会社モンベル企画部課長。1992年の入社以来、企画畑一筋。ウェア全般の企画に従事し、なかでもストームクルーザーをはじめとしたレインウェアの開発に力を注ぐ。現在は商品全般の開発のマネジメントを行なう。
「レインウェアという製品がこれほど進化した国はほかにない」と話すのは、モンベルでレインウェア開発に長年携わってきた三枝弘士さん。
欧米では悪天対応のウェアというと、ハードシェルが一般的だ。レインウェアというカテゴリーが日本で生まれた背景には、日本ならではの山岳環境や気象が影響している。日本は欧米に比べると湿度が高く、高山でもアプローチでは蒸し暑い状態が続く。一方、森林限界を超えると気温が下がり、入り組んだ山容から発生する強烈な風雨にさらされることもある。ザックに入れているときは軽量・コンパクト、着用したら防水だけでなく透湿性と防風性を備えたアウターウェアが必要とされたのだ。
「初代ストームクルーザー開発当時、アウターウェアの生地は70デニール(D)が当たり前でした。ゴア本社のあるアメリカでは、それより薄い生地を使うことは考えられないとされていました。モンベルは、日本の環境に合わせ薄い生地で製品を作りたいと何度もゴア本社を訪ね、説明しました。現状に満足せず、よりいいものを作りたい。日本人の気質なのでしょうね」
こうして1982年、世界で初めて30Dのゴアテックス ファブリクスを採用したレインウェアが誕生。以降、ストームクルーザーはゴアテックス ファブリクスを採用し続けている。
「ゴア社とは、40年ほど前ストームクルーザーの企画開発からのお付き合いです。現在の第9世代まで、ゴアテックス ファブリクスを採用している理由は、長年の実績があるからです」
ストームクルーザーはモンベルのレインウェアの主軸製品。同製品を基準に、さらに軽いもの、耐久性を向上させたものなど、レインウェアのラインナップが派生していくという。ストームクルーザーはどの時代も、トップブランドの看板製品としての高いクオリティが求められているのだ。
「使う生地の種類や貼り合わせなどで防水透湿性は変わってきますが、ほかのどのメーカーの生地よりもゴアテックス ファブリクスは優秀な値を示します。もちろん、他の生地も充分な防水透湿性はありますが、とても高いレベルで差があります」
ゴア社が膨大なテストを行ない、完璧な素材を提供してくれること、製品に付く黒いタグや示すように、不具合があった際に製品保証するほど信頼性が高いことも、ゴアテックス ファブリクスを選ぶ理由だと三枝さんは言う。
すべてのゴアテックス製品には、厳しい品質基準で作られたことを示す「GURANTEED TO KEEP YOU DRY™」と記された黒いタグが付いている。
ストームクルーザーは、縫製を減らし防水性と動きやすさを追求した「K-monoカット」や、被ったときのフィット感を3カ所で調整できる「トライアクスルフード」など、細部までこだわった製品作りがなされている。また、生地のよさを引き出すの工夫も。
「ウェアが保水しないよう設計されています。例えばゴムは保水しやすいから、袖口や裾のゴムは必要最低限に。縫い目を減らしたり、水や汗が入らないように、ポケット内部にまでシームテープを施したりしています」
防水透湿性はもちろんだが、その他の面においてもゴアテックス ファブリクスは優れているという。
「耐久性や防風性に秀でていますから、着ているときの安心感が違います。また、ゴア®C-ニット™バッカーテクノロジーを搭載することで、濡れた際の裏地の肌離れのよさや、行動時の静穏性など、着心地のよさや動きやすさも備えています。数値には表われない部分においてもゴアテックス ファブリクスは優れているんです」
収納のしやすさ、ほかの衣類と同じように洗濯でき、洗濯で撥水性や透湿性が回復するメンテナンス性のよさなど、製品トータルでの完成度が高く仕上がるのもゴアテックス ファブリクスならではだという。雨だけでなく、防寒着やウィンドシェルとしても着られる「オールウェザーウェア」。そのフラッグシップがストームクルーザーなのだ。
「ストームクルーザーはモンベルの顔とも言える製品ですから、世界でもっとも優れた素材を使いたいと考えています。その意味において、ゴア社との関係は続いていくでしょう」
次世代のストームクルーザーはどんな進化を遂げるのか、注目したい。
ポケットからウェア内に水が入らないようポケット内部にまでシームテープを貼り、防水性をアップするといったこだわりよう