なぜモンベルはゴアテックス ファブリクスを使うのか
文=佐藤慶典 写真=山田 薫  | 『山と溪谷』2019年9月号掲載記事
モンベルの看板商品と言えるレインウェア「ストームクルーザー」は、
初代から現在の第9世代までゴアテックス ファブリクスを採用してきた。
モンベルが同ブランドのファブリクスを使い続ける理由を、長年開発に関わってきた三枝弘士さんに伺った。

モンベル企画開発担当
三枝弘士 さえぐさ・こうじ


株式会社モンベル企画部課長。1992年の入社以来、企画畑一筋。ウェア全般の企画に従事し、なかでもストームクルーザーをはじめとしたレインウェアの開発に力を注ぐ。現在は商品全般の開発のマネジメントを行なう。

日本の山では高い防水性と透湿性が必要

「レインウェアという製品がこれほど進化した国はほかにない」と話すのは、モンベルでレインウェア開発に長年携わってきた三枝弘士さん。

 欧米では悪天対応のウェアというと、ハードシェルが一般的だ。レインウェアというカテゴリーが日本で生まれた背景には、日本ならではの山岳環境や気象が影響している。日本は欧米に比べると湿度が高く、高山でもアプローチでは蒸し暑い状態が続く。一方、森林限界を超えると気温が下がり、入り組んだ山容から発生する強烈な風雨にさらされることもある。ザックに入れているときは軽量・コンパクト、着用したら防水だけでなく透湿性と防風性を備えたアウターウェアが必要とされたのだ。

「初代ストームクルーザー開発当時、アウターウェアの生地は70デニール(D)が当たり前でした。ゴア本社のあるアメリカでは、それより薄い生地を使うことは考えられないとされていました。モンベルは、日本の環境に合わせ薄い生地で製品を作りたいと何度もゴア本社を訪ね、説明しました。現状に満足せず、よりいいものを作りたい。日本人の気質なのでしょうね」

 こうして1982年、世界で初めて30Dのゴアテックス ファブリクスを採用したレインウェアが誕生。以降、ストームクルーザーはゴアテックス ファブリクスを採用し続けている。

ゴアテックス製品には信頼と実績がある

「ゴア社とは、40年ほど前ストームクルーザーの企画開発からのお付き合いです。現在の第9世代まで、ゴアテックス ファブリクスを採用している理由は、長年の実績があるからです」

 ストームクルーザーはモンベルのレインウェアの主軸製品。同製品を基準に、さらに軽いもの、耐久性を向上させたものなど、レインウェアのラインナップが派生していくという。ストームクルーザーはどの時代も、トップブランドの看板製品としての高いクオリティが求められているのだ。

「使う生地の種類や貼り合わせなどで防水透湿性は変わってきますが、ほかのどのメーカーの生地よりもゴアテックス ファブリクスは優秀な値を示します。もちろん、他の生地も充分な防水透湿性はありますが、とても高いレベルで差があります」

 ゴア社が膨大なテストを行ない、完璧な素材を提供してくれること、製品に付く黒いタグや示すように、不具合があった際に製品保証するほど信頼性が高いことも、ゴアテックス ファブリクスを選ぶ理由だと三枝さんは言う。

すべてのゴアテックス製品には、厳しい品質基準で作られたことを示す「GURANTEED TO KEEP YOU DRY™」と記された黒いタグが付いている。

数値では表わせない着心地のよさを実現

 ストームクルーザーは、縫製を減らし防水性と動きやすさを追求した「K-monoカット」や、被ったときのフィット感を3カ所で調整できる「トライアクスルフード」など、細部までこだわった製品作りがなされている。また、生地のよさを引き出すの工夫も。

「ウェアが保水しないよう設計されています。例えばゴムは保水しやすいから、袖口や裾のゴムは必要最低限に。縫い目を減らしたり、水や汗が入らないように、ポケット内部にまでシームテープを施したりしています」

 防水透湿性はもちろんだが、その他の面においてもゴアテックス ファブリクスは優れているという。

「耐久性や防風性に秀でていますから、着ているときの安心感が違います。また、ゴア®C-ニット™バッカーテクノロジーを搭載することで、濡れた際の裏地の肌離れのよさや、行動時の静穏性など、着心地のよさや動きやすさも備えています。数値には表われない部分においてもゴアテックス ファブリクスは優れているんです」

 収納のしやすさ、ほかの衣類と同じように洗濯でき、洗濯で撥水性や透湿性が回復するメンテナンス性のよさなど、製品トータルでの完成度が高く仕上がるのもゴアテックス ファブリクスならではだという。雨だけでなく、防寒着やウィンドシェルとしても着られる「オールウェザーウェア」。そのフラッグシップがストームクルーザーなのだ。

「ストームクルーザーはモンベルの顔とも言える製品ですから、世界でもっとも優れた素材を使いたいと考えています。その意味において、ゴア社との関係は続いていくでしょう」

 次世代のストームクルーザーはどんな進化を遂げるのか、注目したい。

ポケットからウェア内に水が入らないようポケット内部にまでシームテープを貼り、防水性をアップするといったこだわりよう

モンベル
ストームクルーザー
ジャケット/パンツ


細部にまで徹底した防水処理を行ない、また、縫製箇所を減らすなどの大幅な軽量化と同時に、ゴア®C-ニット™バッカーテクノロジーを採用することで、これまでにない柔らかな着心地を実現している。


ジャケット(Men’s)
価格=20,800円+税
重量=254g
サイズ=S~XL
カラー=7色
 モンベルのウェブサイトで見る パンツ(Men’s)
価格=13,500円+税
重量=195g
サイズ=S~XL、 M-S~XL-L
カラー=4色
 モンベルのウェブサイトで見る

◆ そのほかのGORE-TEXプロダクト
トレントフライヤー ジャケット(Men’s)

価格=21,000円+税
重量=179g
サイズ=S~XL
カラー=5色
 モンベルのウェブサイトで見る
 
ピーク ドライシェル(Unisex)

価格=22,800円+税
重量=185g
サイズ=M、L
カラー=1色
 モンベルのウェブサイトで見る
 
|GORE-TEX プロダクトについて
 
文=柏 澄子 

 1970年代の日本上陸以来、GORE-TEX プロダクトは、防水性と透湿性を兼ね備え、防風性にも優れたものとして、登山時のレインウェアとして欠かせない存在である。
 GORE-TEX メンブレン(膜)は、誕生したときから今日まで高品質であり、そして組み合わせる生地やラミネート加工は、常に進化してきた。より厳しい山を追い求めるクライマーには、耐久性を保ちながらけっして裏切らない製品を作り出している。山を身軽に走り抜けていくトレイルランナーが求める軽量化にも応えてきた。シリアスなクライミングシーンや激しいトレイルランニングでも快適であるよう、柔らかくストレッチ性のある生地を打ち出したものもある。

 GORE-TEX ブランドは、いつの時代もトップアスリート、山岳ガイドといったプロフェッショナル達と、濃密なコミュニケーションや共同作業を行ない、メーカーをパートナーと考え、共に製品を作り、世に送り出してきた。
 ゴアテックス製品に使われるファブリクスには厳格なテストが行われる。生地同士をこすり合わせる耐摩耗テスト、生地に切れ込みを入れて行なう引き裂き強度テスト、生地を短冊状にして両側から強く引っ張るテストなどだ。
 縫製や製靴、グローブの工場は認定されたところに限り、ウェアを対象に実施されるレインテストは、マネキンに製造試作品を着用させ、人工的に雨を当て浸水がないか確認するなど、すべてのプロダクトが、ゴア社のテストに合格する必要がある。
 こういった過程を経て製品化されたGORE-TEX プロダクトは、適切に使用されている限り、その防水耐久性、防風性、透湿性を保証すると、約束されている。

■お問い合わせ GORE-TEX ブランドサービスチーム TEL 0120-015-841  ▷ GORE-TEX のウェブサイトへ