スカルパの軽量トレッキングシューズ「ラッシュトレックGTX」で旅する北八ヶ岳
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今シーズン、スカルパから発表になった軽量トレッキングシューズ「ラッシュトレックGTX」。登山靴の系譜を継ぎつつも、多様なフィールドでの歩きやすさをも考慮されたこのシューズをパートナーに、秋の北八ヶ岳を歩いてみた。
文=佐藤徹也、写真=高橋郁子、協力=ロストアロー
旅の相棒は老舗ブランドの最新シューズ
北八ヶ岳を歩くことになった。山自体は高校生のころから歩いていたが、北八ヶ岳、通称「北ヤツ」はなかなか縁遠い存在だった。血気盛んな若いころは八ヶ岳といえばもっぱら南。赤岳や阿弥陀岳といった岩々しい山々ばかり登り、北ヤツはどちらかといえば女子どもの行く場所でしょ、なんて思っていた。明らかな偏見である。
歳を重ねてそろそろ北ヤツも悪くないなと思い始めたのだが、今度は照れくささがそれを邪魔した。穏やかな山並みが連なり、針葉樹林の森に続く木道をたどっていけば、その先には美しい池がひっそりとたたずむ・・・。 そんないかにもロマンチックな山域を、イイ歳をしたおじさんがひとりで歩いてよいものだろうか。変なひとだと思われないだろうか。そんな逡巡からなかなか一歩を踏み出せなかったのである。
かくなるおじさんの純情を鑑みてくれたのかどうかはわからないが、編集部は今回、同行するフォトグラファーに女性の高橋郁子さんを差配してくれた。ありがたい。これでおじさんが北ヤツをうろうろしていても不審者扱いされずにすむだろう。考えすぎか。
そして今回のもうひとつのパートナーが、スカルパのラッシュトレックGTXというトレッキングシューズだ。スカルパといえばイタリアの歴史あるシューズメーカーだ。登山靴のみならずクライミングや山岳・テレマークスキー、トレイルランニングなど、さまざまなアクティビティ向けの製品を手がけていることでも知られる。今回発表されたラッシュトレックGTXは、まさに北ヤツのような中級山岳向けのモデルとのことで、その履き心地をしっかり体感してみることにした。
坪庭の遊歩道もスムーズに
起点は北八ヶ岳ロープウェイの山麓駅だ。ヨーロッパアルプスの山小屋を思わせる牧歌的な駅舎が立つのは標高1771m。そこから定員100人ほどのゴンドラに揺られること約7分で、標高2237mの坪庭駅に到着する。
ロープウェイを下りると、周囲には駅名にもある「坪庭」が広がっている。比較的アップダウンが緩やかな溶岩台地にハイマツやコメツガなどの低木が育ち、その狭間からさまざまな形をした岩々が顔をのぞかせている。
もともと坪庭というのは住宅などの小さなスペースに樹木や石を配した日本庭園の一様式だが、たしかにここは八ヶ岳という大きな山域のなかにそんな雰囲気を醸し出している。
坪庭を周回するように遊歩道が整備されており、ここを散策するだけならロープウェイでやってきた一般の観光客でも安心して楽しめるというわけだ。
やがて遊歩道から北横岳方面への登山道が分岐するところで、「この先は登山者エリアです」と書かれた看板が目に入る。軽装でやってきた人が間違って迷い込んでしまわないための注意喚起だろう。
このとき、それまでの木道を始めとする遊歩道を歩いていても、歩行にはあまり違和感がなかったことに気がついた。ラッシュトレックGTXは外観こそライトなハイキングブーツといった趣だが、その原点はあくまでも登山靴で、岩稜帯を歩くときでもしっかりと足を安定させてくれる剛性をもっている。となると逆に整備された平坦地では、それ相応にギクシャクとした歩行感がしそうなものだが、それがないのだ。
おそらくは剛性をもたせつつも、ある程度のフレキシビリティももたせ、またロッカー(つま先部の反り)がつけられているのがそんな路面での歩きやすさにも繋がっているのだろう。
岩稜で光る“登山靴”の信頼性
坪庭を抜けた先では急峻な登山道で標高を稼いでいく。足元には不規則な岩と砂利がミックスした道が続くが、そんなトレイルでもソールはしっかりと食いついてくれてスリップもしにくい。逆におろしたてのソールのエッジが立ちすぎていて、それが岩角に引っかかったりすることがあるが、これはすべからく新品のソールが抱える産みの苦しみ?だろう。
やがて北横岳ヒュッテが現われたところでひと休み。残念ながら小屋は営業していないようだ。平日山行は空いているのはいいのだが、山小屋までも閉まっていることがあるのがちょっと悩ましい。
ここでは七ツ池を眺めてから転進。東の三ッ岳をめざす。それまでは僕が先を歩いていたのだが、ここで並びを変更。フォトグラファーの高橋さんに前を歩いてもらう。そして、あらためて後ろから彼女を眺めると、彼女のリュックが明らかに僕のものよりも大きいのに気づく。撮影機材一式を携えているから当たり前なのだが、周囲からの視線を想像するとなんだか体裁が悪い。もはや「男のほうが大きな荷物を」なんていう時代ではないのかもしれないが、昭和生まれはまだまだそんなことを気にしてしまうのだ。「三脚くらい持ちましょうか」のひと声をかけられればよかったのだが、眼前に三ッ岳への荒々しい岩稜帯が立ちはだかるにいたっては、とてもそんなことは言いだせなかった。
そうなのだ。三ッ岳へは大小さまざまな岩が積み重なる道が続いているのだ。北ヤツにこんな道があるとは思わなかった。なめていたバチである。なかには鎖が張られているところもあったりして、ちょっとしたアルピニズム気分である。そしてこんな場所こそラッシュトレックGTXが活躍する場面でもあった。多少傾斜がきつめの岩盤でも吸いつくようにグリップしてくれるし、狭いスポットに足を突っこんでも足への負担は少ない。つま先だけをステップに引っかけて登っても、無理なく体重移動ができる。これはまさに登山靴の系譜だ。
実のところ最近は、無雪期で荷物も少ないときはトレランシューズの出番が多くなっていた。そして「トレランシューズでも大丈夫じゃないか」とも思っていた。しかしよくよく考えれば「トレランシューズ『でも』大丈夫」にすぎなかったわけで、そのぶん慎重な足さばきをしていたということだ。
ちょっと乱暴な表現になってしまうかもしれないが、このシューズなら多少無造作な足の置きかたをしても、その負担はシューズがしっかり担ってくれるという印象だ。
やがて三ッ岳の山頂へ。この日の天候は朝からときおり小雨交じりの不安定なものだったが、山頂ではなんとか天気はもってくれた。そこそこ展望が利くのをいいことに、北アルプスに南アルプスといった八ヶ岳ならではの風景を楽しみ、足元に位置する雨池のあまりの水量の少なさに驚いたりと、脳天気に山頂気分を満喫する。その間、高橋さんはせっせと撮影に余念がなく、なんだか恐縮の至りであった。
さらにそんな多忙の手をさえぎって、高橋さんにもラッシュトレックGTXの着用感を尋ねてみた。そう、このシューズはウィメンズラインも展開しており、彼女にはそちらを履いてもらっていたのだ。それによるとやはり重いリュックを背負っていても安定感があり(僕には語れぬセリフ!)、つるりとした岩の斜面でもフリクションが効き、シューレースの締めやすさは出色の出来とのことだった。たしかに今の時期はさほど気にならなかったが、手袋着用が当たり前の季節になると、これは大きなアドバンテージかもしれない。
そしてふたりで共通した意見は「ウィメンズのほうがカラーパターンがすてきだよね!」ということ。これはこのモデルに限らずシューズ全般に共通する印象なのだが、どうも女性向けのほうが美しい色使いが多いのではないか。女性のほうがそれだけ色選びにもシビアなのか、あるいは単に野郎が色にズボラなだけなのが理由かもしれないけれど。
さあ、ここまで来たらあとはぐるりと周回して、縞枯山の懐をたどってロープウェイの坪庭駅へ戻ることにしよう。途中、あわよくばコーヒーでもと期待していた縞枯山荘も、残念ながらこの日は営業しておらず。それでも紅葉が始まりつつあった縞枯山の風景は美しく、その足元を抜けていく木道歩きも快適だった。 駅に到着後。下りロープウェイの発車を併設された展望デッキで待つ。ここでこの日、何度もふられてしまった山でのコーヒーにようやく出会うことができ、その湯気越しには日本アルプスの遠景が夕刻のシルエットとなってうっすらとそびえていた。
優れた性能を支えるディテール
スマートなフォルムはいかにもスカルパといったところ。それでいて個人差が大きい多様な足幅にも高い適応性をもつそうだ。アッパー内部にはもちろんゴアテックスを使用しており、その防水性の高さは周知のとおり。内部をドライに保つことはマメの防止にも効果が高い。シューレースを締めるときのスムーズな滑り具合も心地よく、その一方で足首寄りのフックはしっかりシューレースを固定してくれるので、これが甲のフィッティングのよさにもつながっている。
足首の深さはハイカット寄りだが、動かしやすさはミドルカットに近い。柔軟性の高い肉厚パッドが足首を保護してくれており、これがさまざまな路面状況下でも快適な歩行を実感できた理由のひとつかもしれない。登山靴が原点だけあってベロも袋ベロ状に縫合されており、これはローカットのトレランシューズなどではありがちな、内部へ小砂利が入り込んでしまうことのイライラも軽減してくれるだろう。
かっちりした足回りの剛性に貢献しているのが、アッパーとソールの間に見えている黒いパーツ。TPU素材でできたこれは単なる意匠ではない。このまま土踏まずから踵にかけてぐるりと包み込むように内蔵されており、DSTシステムと呼ばれるスカルパ独自のテクノロジーだ。不安定な路面を歩いているときも、足に対してねじれるような負荷を感じなかったのはこのパーツのおかげか。
ソールは「プレサソール」と呼ばれるスカルパ独自の設計によるもの。ソールというとどうしてもビブラム、というイメージがあるが、近年、ミッドソールとアウトソールを一貫して設計するケースが増えており、その場合はアウトソールも自社で取り組んだほうが、バランスよく仕上がることが多いそうだ。ブロックパターンのひとつひとつが大きく深いのが特徴で、これが安定した歩行に貢献している。またボリューム感のあるカカトのソールは、ザレ場などで滑りやすい斜面でもここを食いつかせることで安心して下ることができる。
今回「ラッシュトレックGTX」で歩いてみた印象では、このシューズの特性は通常の登山靴とトレランシューズの中間的な位置づけにあるように感じた。たとえば無雪期の中級山岳、山小屋泊で、それほど荷物があるわけでもないのにごつい登山靴はちょっとオーバースペック。かといってトレランシューズでは不安といった、まさに今回の三ッ岳への岩稜歩きのような場所で頼りになる存在ではないだろうか。メーカーとしてはそれ以外にもロングトレイルの踏破といった長期の旅にも推奨とのことなので、次回、現在進行中のスペインの巡礼路を歩くときにも履いてみようか思案中だ。
スカルパ
ラッシュトレックGTX
サイズ | 39~48(24.5~32cm) |
---|---|
ライニング | GORE-TEX Extended Comfort Footwear |
ソール | スカルパ・プレサTRK-01 |
素材 | 耐水スエード1.8mm/ファブリック |
重量 | 555g(#42、1/2ペア) |
価格 | 35,200円(税込) |
スカルパ
ラッシュトレックGTX WMN
サイズ | 36~42(22~27cm) |
---|---|
ライニング | GORE-TEX Extended Comfort Footwear |
ソール | スカルパ・プレサTRK-01 |
素材 | 耐水スエード1.8mm/ファブリック |
重量 | 465g(#38、1/2ペア) |
価格 | 35,200円(税込) |