憧れの北アルプス山麓暮らしへの第一歩。「信濃大町移住見学会2023」が開かれた

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写真・文=山と溪谷オンライン

2023年度見学会は2回開催

後立山連峰をはじめ、北アルプス北部の雄大な山並みを望む山岳都市・長野県大町市には、毎年多くの移住者たちが定住先として移り住んでくる。とくに、登山やスキーなど、自然をフィールドにしたアクティビティを楽しむ人たちから、大町市は移住先としてたいへん人気がある。そこで大町市と山と溪谷社では、2020年から「山好きのための信濃大町移住見学会」と銘打った現地体験ツアーを企画し、2023年は10月と11月の週末に2回開催した。2日間の見学会では、大町市の登山文化に触れ、自然豊かな先輩移住者の住環境を確認し、先輩移住者たちとの懇親・懇談を通して移住へのステップをより具体的にイメージすることができた。また、ホスト役を務めた大町市役所職員との交流は、今後の移住への不安や疑問を解消するうえで大いに役立つ機会となった。

大町市の特徴を知り、暮らしをイメージする

2日間の日程となる見学会の参加者たちが最初に訪れたのは、大町山岳博物館。山岳環境や自然をテーマとする博物館で、3階の展望ラウンジから大町市の中心部を一望することができた。

「大町市内は、大きく4つのエリアに分けられます。信濃大町駅や総合病院、市役所など主要施設が集まる中心部の〈大町エリア〉。立山黒部アルペンルートの玄関口となる扇沢をはじめ、3つの湖や2つのスキー場など、アウトドアレジャーに最適な〈平(たいら)エリア〉。積雪が比較的少なく、のどかな田園風景が広がる〈常盤(ときわ)・社(やしろ)エリア〉。中心部に比べると積雪が多いものの、山々に囲まれ自然豊かな暮らしができる〈美麻(みあさ)・八坂(やさか)エリア〉です」

展望ラウンジで実際の風景と地図とを照らし合わせながら、大町市の特徴や地形、気候などを大町市職員で移住定住促進担当の楜澤さんが解説した。その解説を踏まえ、この町に暮らすことをイメージしながら地図を見ると、これまでとは地図の見え方も変わってくるようで、参加者からはさまざまな質問が飛び出した。

大町市周辺を示した地図。エリアによって変わる地形や気候の特徴など、市職員の解説を真剣に聞く参加者たち
北アルプスに生息する動物の解説をはじめ、山岳をテーマとするさまざまな展示が魅力の大町山岳博物館

「住む」のプロに教わる家探しのコツ

山岳博物館訪問の後は、市内の不動産会社の協力で、売り出し中の中古住宅を見学。参加者からは、どんな中古住宅が多いのか、移住者が中古住宅を購入する際に何を注意したらよいか、賃貸住宅の相場はどれくらいなのか、といった「住居」に関する疑問が多数寄せられた。実際にプロに話を聞きながら、家探しに関するレクチャーやアドバイスを得られるのも移住見学会のメリットだ。

市内にある不動産業者は、移住を検討する人の相談にも親切に乗ってくれる
中古住宅の一例。最近は築40~60年の住宅が売りに出ることが多いという。お手頃な物件が多いが、リノベーションは必須だ

「おいしい水」が大町の魅力

続いて訪れたのは、居谷里(いやり)水源。大町市には、北アルプスの恵みである清冽な水が湧き出る水源が多数あり、なかでも「4大水源」と呼ばれる主要な水源のひとつが居谷里水源。大町市の水道水の水源はすべて湧水が利用されており、水が「おいしい」ということも大町で暮らす魅力のひとつ。通常、水源地内は立入禁止となっているが、今回は特別に職員の方に水源地を案内してもらい、おいしい水の秘密を教えていただいた。

大町の水源地のなかでも湧水量が最も多い居谷里水源を見学

先輩移住者との交流

信濃大町移住見学会の「目玉」ともいえる先輩移住者たちとの交流。今年も多くの先輩移住者の協力で、移住を意識したきっかけや、決意の後押しになった出来事、移住してから困ったことや仕事のことなど、十人十色ながら参加者にとって参考になる体験談をたくさん聞くことができた。

大町市の地域おこし協力隊への応募がきっかけで、家族で移住してきた池田ファミリー、ワッフルとおやつのお店「おかしなてんとくん」を経営する遠近(とおちか)夫妻、自家栽培の無農薬野菜を使った料理が味わえるレストラン「健菜樂食(けんさいがくしょく) Zen」を経営する小田夫妻、古民家をリノベーションしたヨガスタジオ「チャカラム」を経営する矢野夫妻など、先輩移住者たちの暮らしは個性豊か。体験談を語る先輩移住者のいきいきとした表情も印象的だった。また、この見学会をサポートする先輩移住者のなかには、この移住見学会の参加がきっかけで移住を決断したという人たちも増えてきた。

農地付きの一軒家をリノベーションして「健菜樂食 Zen」を経営する定住促進アドバイザーの小田純司さんと美恵さん。隣接する広大な畑からは北アルプスも見える
建築業を本業とする矢野和直さん自身でリノベーションした自宅兼ヨガスタジオ。智子さんとヨガスペース「チャカラム」を経営している

大町市民が親しむ里山・鷹狩山へ

本イベントを締めくくるのが、大町市民にとっての里山である鷹狩山ハイキング。鷹狩山の標高は1164mだが、登山口の標高が769mのため標高差は400mほど。登山口の大町山岳博物館から1時間30分で山頂に到着する手軽なハイキングコースだ。10月下旬は紅葉の見ごろ。11月には紅葉は終盤となっていたが、どちらの回も雨に降られることなく、山頂に立つことができた。鷹狩山山頂は、大町市中心部を挟んで、後立山連峰の絶景を眺められる大町市の展望台なのだ。

絶景を手軽に楽しめるため、大町市民に愛されている鷹狩山
10月下旬は紅葉も見ごろ。山頂からは大町市民のシンボル・蓮華岳をはじめ、北アルプスの峰々が見渡せる

大町市のサポートで充実した2日間を過ごす

10月と11月の2回の開催となった2023年の見学会には合計21名が参加した。参加者たちからは、「話を聞いたすべての人が非常に印象的でした」「住民のみなさんの温かさに触れることができ、感激しました」「先輩移住者の体験談をいろいろ聞くことができてよかったです」といった感想が寄せられた。

この見学会では、ホスト役となる大町市担当スタッフとともに私たち山と溪谷社のスタッフも毎回同行しているが、あらためて再認識したのは、市スタッフのほか、定住促進アドバイザー、移住・定住協力店などの地域住民による“手厚いサポート”だ。大町市に定住している先輩移住者同士のネットワークとその絆は深く、定期的に情報交換や交流会を開催するなど、移住者同士が手に手を取って助け合う姿勢や、その移住者たちを快く迎え入れる大町市生まれ・育ちの人びとのハートの温かさは、市スタッフや地域住民のサポートがあってのことだとあらためて実感した。他県への移住は人生の一大決断であり、さまざまな不安がつきまとうものだが、その疑問や相談にきめこまやかに対応する大町市担当スタッフの、こころから新しい移住者たちを迎え入れる=移住者に寄り添う姿勢が、すでに移住を実現して「大町ライフ」を楽しむ人たちの笑顔からも感じられた。

大町市では、オンライン移住相談をはじめ、季節を変えて移住見学会を実施している。大町市への移住を少しでも検討している方で素朴な疑問や質問がある人は、大町市まちづくり交流課定住促進係まで気軽に相談を。また、大町市の移住定住関連の最新情報は「大町市移住情報総合サイト」を参考に。

見学ツアーの最後に、大町市常盤地区の清水公民館で開かれた移住者交流会に参加した。若い先輩移住者ファミリーたちとの温かい交流は最後まで続いた

大町市への移住関連の相談、問合せ先

大町市まちづくり交流課定住促進係 TEL:0261-21-1210

大町市移住情報総合サイト

https://iju-omachi.jp/


10月開催回の参加者のみなさん
11月開催回の参加者のみなさん

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