どんなときも、この一着で。ブラックダイヤモンドの名品「アルパインスタートフーディー」が信頼される理由とは
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文＝吉澤英晃、写真＝中村英史
発売開始から10年以上選ばれ続けているロングセラーのウェアがある。袖を通した瞬間にわかる肌触りのよさに始まり、抜群のストレッチ性と耐久性、ブランドの真髄であるクライミングシーンでの使い勝手は、もはや言うに及ばない。隠れた名品ともいえる「アルパインスタートフーディー」が秘める魅力を、今一度再評価する。
「一着持っていて間違いないウェア」
――山岳スキーヤー・藤川 健
アルパインスタートフーディーは、十数年前の発売当初から着続けている、かなり使用頻度の高いウェアです。登山、トレラン、バックカントリーと、アクティビティもシーズンも問わず、さらに家の中や旅先でもさっと羽織れる、なんにでも使えるオールラウンドな使い心地が気に入っています。
薄いソフトシェルなので、ウインドシェルと違って汗抜けがいいんです。透湿性が高く結露しにくいので、冬のハイクアップ時に着るアウターとしても調子がよく、滑るときは上からハードシェルを重ねる使い方をしています。耐久性も高く、長年使ってもバックパックと擦れる部分に穴あきなどは見られません。
登山経験が浅く、どんなウェアが自分に合うか分からないときは“とりあえず使える無難なもの”ではなく“さまざまなシーンで使える活用の幅が広いもの”を選ぶと間違いがないです。汎用性の高いアルパインスタートフーディーは、まさに一着持っていて間違いないウェアだと思います。
絶妙な厚みの「ショーラー」ならではの使いやすさ
ブラックダイヤモンドが誇る名品「アルパインスタートフーディー」は、メーカーの公式サイトでは“超軽量ソフトシェル”と紹介されている。ただ、ここではあえて“透湿性の高い軽量ウィンドシェル”と表現しよう。そのほうが、このウェアが秘める実用性の高さをイメージしやすくなるからだ。
寒さを感じる朝晩や、山の稜線で冷たい風に吹かれるとき、さっと羽織れる軽量なウィンドシェルは、いまや登山の定番アイテム。その需要の高さからこの手の商品は各ブランドからリリースされており、私たちユーザーは数あるなかから個性豊かな製品を選択できる。
では、各社がしのぎを削る軽量ウィンドシェルにはない、アルパインスタートフーディーならではの強みはどこにあるのか。最初に言及すべきは、病みつきになるほどの着心地のよさだ。
まず、肌触りについては表面も肌面もサラサラしていて、直接肌に触れてもまとわりつく不快感が一切ない。生地感はとても柔らかく、高級素材で知られるシルクを羽織っているような感覚すらある。
そして、気持ちいいほど伸縮性があり、長時間着ていても蒸れが生じにくい点も着心地のよさに関係している。
これは使われている生地に秘密がある。スイスのショーラー社製と聞けば、ピンとくるユーザーは少なくないだろう。ショーラー社の生地はかねてから、高機能・高品質としてアウトドア業界で認知されてきた。高評価の裏にはさまざまな性能が関わっており、特にアウトドアシーンでは伸縮性と透湿性、そして耐久性の高さが注目され、ボトムスなどに頻繁に使われてきた歴史がある。
アルパインスタートフーディーは、そんな高品質な生地を贅沢に使った一品で、肌触りがいい、動きやすい、蒸れにくい、それでいてタフという、三拍子ならぬ四拍子がそろった高性能な軽量シェルなのである。
登攀に集中したいクライマーのための設計
アルパインスタートフーディーの強みにさらに迫ると、クライミングシーンに対応するデザインや機能が挙げられる。これらの特徴は、世界のクライミングシーンを牽引し続けているブラックダイヤモンドが手掛けるウェアならではといえるだろう。
伸縮性と耐久性という、一般的には相反する性能を高次元で併せもつショーラー社製の生地を採用しているのも、クライミングというハードなアクティビティでの使用を考えてこそ。
実際、ハーネスを付けた状態で腕を高く上げても、脇下や肩周りがつっぱる感覚はゼロに等しく、その動きやすさはクライミングに特化したウェアと錯覚するほどである。
もちろんフードはヘルメット対応設計。首周りがつっぱることはなく、ヘルメットの上から無理なくフードをかぶせることができる。ヘルメット対応フードのありがたみは、壁の中などで強風にさらされる状況などを想像すると、多くの人に共感してもらえるはずだ。
フードの大きさは後頭部にあるドローコードで調整でき、かなり立体的にヘルメットや頭の形にフィットさせられる。強風下でフードのバタつきを抑えられるとともに、フードが顔の動きに追従するので、視野がさえぎられる心配がない。
ハーネス着用を想定し、左右のハンドポケットはあえて省略。これは評価が分かれるところかもしれないが、ハンドポケットがないぶん、腰回りはスッキリする。クライミングシーンでの着用を考えると、かなり合理的な判断と言えるだろう。代わりに、ウェアの収納性は左胸のチェストポケットに集約されており、日焼け止めやちょっとした行動食などはここに入れておくことができる。
チェストポケットは収納袋も兼ねており、ウェア本体をコンパクトに丸められるパッカブル仕様。カラビナに引っ掛けられるループ付きで、写真のようにハーネスにぶら下げて携帯してもいい。
生地のタフネスぶりに感心
アルパインスタートフーディーは、耐久性の高さも際立っている。多少の擦れではダメージを受けず、クライミングシーンはもとより、通常の登山でもガシガシ使えるのがうれしいところ。
外部からのプロテクション性能では、PFCフリーの耐久撥水加工が施されているので、多少の雨なら着たまま行動可能。細かい水滴がまとわりつく濃い霧の中を行動するときも、アルパインスタートフーディーを一枚羽織ることで内側のウェアを濡らさずに済む。
また、優れた耐油性と防汚性も備えているため、額の汗などを拭ったり地面の上にバサッと置いたりしても汚れが付きづらく、これもアルパインスタートフーディーならではの特徴だ。
数ある軽量ウィンドシェルと比べると、アルパインスタートフーディーは高価な部類に入る。ただし、備わる性能は予想以上。なかでも着心地のよさは目を見張るものがあり、優れた耐久性も頼もしい。ヘルメット対応フードなどクライミングシーンにかかわる特徴は人を選ぶと思われがちだが、例えば北アルプスの岩稜帯を歩くときなど、一般的な登山でもヘルメットの着用や登攀的な動きは必要不可欠。登山者であれば、アルパインスタートフーディーの強みを誰もが実感できるに違いない。
アルパインスタートフーディーは、ぜひ一度袖を通してもらいたいウェアだ。百聞は一見にしかずというように、このウェアの真価は実物に触れてこそ理解できる。
ブラックダイヤモンド
メンズ アルパインスタートフーディー
| 価格 | 27,610円（税込） |
|---|---|
| 素材 | ショーラーストレッチソフトシェル |
| 重量 | 205g（Mサイズ、実測値） |
| サイズ | XS〜XL |
| カラー | オクタン（写真）、ブラック、クリークブルー、タンドラ |
ブラックダイヤモンド
ウィメンズ アルパインスタートフーディー
| 価格 | 27,610円（税込） |
|---|---|
| 素材 | ショーラーストレッチソフトシェル |
| 重量 | 180g（Mサイズ、実測値） |
| サイズ | XS〜L |
| カラー | ビレイブルー（写真）、クリーンブルー、ブラック |