より軽く、よりしなやかに進化した次世代ゴアテックスプロダクト。モンベルの新アイテム「テンペストジャケット」で、その実力をさぐる

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40年以上にわたって、厳しい山岳環境から登山家たちを守ってきたゴアテックス。新素材を採用したモンベルの「テンペストジャケット」をフィールドでテストしてみた。

文=阿部 静、写真=加戸昭太郎、モデル=Kentaro Sawano、協力=日本ゴア合同会社

環境を守りつつ、高機能キープ&快適さアップ

レインウェアの代名詞ともいうべきゴアテックスプロダクト。防水性、透湿性、防風性、そして耐久性に優れているため、登山時の突然の悪天においても雨の浸入を防ぎ、風をしのぐ。ウェア内部の蒸れを逃がしてくれるため、着用したまま活動を続けることを可能にする。それらの性能を担っているのがゴアテックスメンブレンだ。

メンブレンとは、生地の表地と裏地の間に貼り合わされた薄いフィルムのこと。ゴアテックスには、その主素材としてePTFE(Expanded Poly Tetra Fluoro Ethylene=延伸ポリテトラフルオロエチレン)という多用途フッ素ポリマーが使われてきた。しかし、有機フッ素化合物は自然界で分解されにくく、土壌や海に残留し自然環境や人体に影響を及ぼす可能性があることがわかったため、環境配慮型のプロダクト「PFAS(ピーファス)フリー」へ移行する動きが近年目立ってきている。

ゴアテックスもこれを受け、まったく新しいメンブレンの開発に踏みきった。こうしてePTFEメンブレンの発明以来、半世紀にもわたって採用されてきたメンブレンに新たな革命が起こり、有機フッ素化合物不使用で環境に配慮した、次世代ゴアテックスプロダクトがついに誕生した。

誕生以来の大進化。次世代ゴアテックスプロダクトは革新的なePEメンブレンを搭載

ゴアテックスメンブレンの主素材として使われてきたePTFEに代わって今回新たに誕生したのが「ePE」(Expanded Poly Ethylene=延伸ポリエチレン)だ。環境配慮型でありながら、従来のePTFEと同じ厳しい基準をクリア。つまり、耐久防水性や透湿性、防風性、そして耐久性も損なわれることなく、従来と変わらない機能や信頼性が確保されているという。

さらにはePEのメリットとして、より薄くて軽く、しなやかになったことが挙げられる。40年以上にわたり培ってきた専門知識・技術とPEの材料特性により、軽く、薄い上に、丈夫なメンブレンを可能にしたのだ。さらに生産時の二酸化炭素排出量の削減も実現できている。

ただし、ひとつ留意すべきことは撥水剤の変更に伴い、従来より撥油性が下がり、皮脂汚れによる影響を受けやすくなったということ。性能を損なわずに長期的に使っていくには、毎度の洗濯が今まで以上に大切といえるだろう。

ゴアテックス
次世代ゴアテックスプロダクトは従来通りの連続多孔質構造をもたせつつ、素材をePE(延伸ポリエチレン)へ変更。従来よりも薄く、軽く、しなやかになった
ゴアテックス
表地には有機フッ素化合物を含まない耐久撥水加工を施している。メンブレンが薄くなったことによって、製品としても軽く、またコンパクトになり収納性も向上している
ゴアテックス
ゴアテックス
表地にはPFASフリーの環境に配慮した撥水加工を施し、水分を弾いて表生地にしみこむのを防ぐ(左)。裏地とメンブレンを透過した水蒸気は素早く表地の外側へと排出される(右)

次世代ゴアテックスプロダクトの性能を100%引き出すモンベルのブランニューモデル「テンペストジャケット」

ゴアテックス

モンベルのレインジャケットのなかでも、厳しい山岳環境に耐えうるテンペストジャケット。2025年の春、ePEメンブレンを搭載した次世代ゴアテックスプロダクトとして登場した。この新作ジャケットの着用感をテストすべく、フィールドへと向かった。

ゴアテックス

テンペストジャケットを着用したまま、木漏れ日が射し込む樹林帯を歩く。序盤はアップダウンが比較的少ないトレイルが続き、気温も5℃程度で高くないため、汗ばむことなく衣服内も快適。着用したまま歩き続ける。

ゴアテックス

着心地はふわりと軽い。今までのゴアテックスジャケットにはなかった、しなやかささえ感じられた。これぞePEメンブレンの功績といえるだろう。それでいて、モンベルのレインジャケットのなかでもハイエンドモデルにあたるため、長期縦走時などハードな使用においても安心して使い続けられる耐久性を備えているというのが驚きだ。

ゴアテックス

しなやかさの秘密は裏地にもある。きわめて薄く、軽量なGORE® C-KNIT® バッカーテクノロジーを採用しているため、カサカサ、ゴワゴワとした素材感が取り除かれ、柔らかな着心地を実現している。夏場は半袖シャツなどを着用した状態でレインウェアを着ることもよくあるが、素肌の上から着てもべたつきにくいところも魅力だ。

ゴアテックス

軽さとしなやかさは動きやすさにもつながる。腕を上げたり、体を大きく動かしたりする必要のある岩稜帯でも、肩回りの動きが阻害されることはなく、生地のつっぱりも感じられなかった。ストレスなく着続けられるという点はあらゆる登山活動において重要なポイントだが、この点においても申し分ない。

ゴアテックス

腕上げのしやすさや肩回りの動かしやすさはカッティングによっても引き出されている。着物の裁断からインスパイアされたモンベル独自のカットパターン「K-monoカット」を採用しているために、より快適な動作を可能としている。

また、このカットパターンは身ごろから腕部分までを一枚生地にすることで縫製箇所を減らす工夫がなされている。これにより、縫い目からの水の浸入箇所を減らすことができ、縫い代とシームテープ処理をする箇所も少なく済むので、防水性の向上と軽量化が実現できているのだ。

ゴアテックス

しかし、数日間にわたる縦走登山においては突然の雨はつきものだ。雨のなか稜線を歩き続けるということも充分にありうる。そんなとき、なによりも重要なのが体を濡らさないレインウェアだ。ここでゴアテックスメンブレンの性能が最大限発揮される。長時間、強く降り続く雨のなかでも内側に浸みてくることがないのがゴアテックスプロダクトの一番の強みだ。今回のテストでは強く雨が降り続くことはなかったが、ePEメンブレンも従来と同様の厳しい検査によって、その防水性が保証されている。

ゴアテックス

体を濡らさないためにはメンブレンだけでなく、表地の撥水性も重要になる。メンブレンによって防水性能は発揮されるが、表生地に水分が浸みてくると湿った感触になり、体が冷たく感じやすくなるほか、水の膜にさえぎられて、透湿性も損なわれる。

環境配慮型プロダクトであるテンペストジャケットは、DWR(耐久撥水)加工の撥水剤もPFASフリーのものを採用しているが、生地表面でしっかりと水を弾き、生地に浸みてこないことが見てとれた。ただし、永久に効果が持続するわけではないので、撥水性能が落ちたと感じたらメンテナンスを行なう必要があることは覚えておきたい。

ゴアテックス

レインウェアにおいてはフード形状も見逃せないポイント。テンペストジャケットは簡単な調節方法で高いフィット感を得られる、独自設計のフードを採用している。顔周りと後頭部のドローコードで調節すれば顔の動きにぴったりと追随する仕様。ツバ部分は硬く成形されているため、たるむことなく視界も良好だ。

ゴアテックス

最後に、透湿性を実感すべく足早に急登を登り、心拍数を上昇させてみた。この日の気温がさほど高くなかったこともあるが、今回のテストでは汗ばんでもウェア内部の蒸れを感じることは一度もなかった。春先や初夏の高山、風が吹き続ける夏の稜線であれば、長時間の行動でも無理なく着用していられるだろう。

ゴアテックス

また、軽量化された生地のおかげで、全体の重量を抑えたまま脇下にピットジップを配置している。これを大きく開放すれば、物理的にウェア内を換気して蒸れを逃がすことも可能だ。この機能があるかないかで使用範囲が大きく変わるといってもいいだろう。そしてバックパックのショルダーハーネスにファスナーが干渉しないように設計されている点も秀逸。使いやすく、よく考えられた仕様であることが実感できた。

モンベル
テンペストジャケット Men’s

モンベル テンペストジャケット Men’s
価格 35,200円(税込)
素材 ゴアテックスファブリクス3レイヤー(表生地20デニール・ナイロン・リップストップ)
平均重量 247g
カラー ブルー、カーキ、ネイビー、オレンジ、レッド
サイズ S、M、L、XL
収納サイズ 8×8×15cm
詳細を見る

モンベル
テンペストジャケット Women's

モンベル テンペストジャケット Women's
価格 34,200円(税込)
素材 ゴアテックスファブリクス3レイヤー(表生地20デニール・ナイロン・リップストップ)
平均重量 223g
カラー ライトブルー、ライトグリーン、ネイビー、ピンク、ターコイズ
サイズ XS、M、L、XL
収納サイズ 7×7×14cm
詳細を見る

ゴアテックスウェアは「洗ってメンテナンス」。撥水ケアで快適さをいつまでも

従来のePTFEメンブレンを採用していたときもそうだったように、ePEメンブレンに変わった新しいゴアテックスウェアも、日々の手入れは毎回の洗濯が基本であることは変わらない。洗濯によって生地が傷んだり防水効果が落ちてしまったりすると考える人もいるかもしれないが、「汚れを落とさないこと」がなによりも性能の低下につながるのだ。使った後は毎度中性洗剤やアウトドアウェア用の洗剤で洗濯することで、本来の性能を保ち続けられる。

ゴアテックス
ゴアテックスウェアを使用後は毎回、中性洗剤で洗濯すること。粉末洗剤や漂白剤、柔軟剤、染み抜きの使用は避けたほうがいい。しっかりとすすぎを行ない、洗剤が生地に残らないように洗う

ただし、度重なる使用で撥水効果は徐々に低下する。撥水効果を保つには毎度の洗濯後、熱処理もセットで行なうことがポイントだ。洗濯後、よく乾かした後に温風で20分ほど乾燥機にかける。または、自然乾燥後に当て布をして低温でアイロンをかけてもよい。この熱処理により、撥水効果を復活させることができる。

ゴアテックス
乾燥機を温風に設定して乾燥と熱処理を行なう。自然乾燥後に低温でアイロンをかけてもよい

それでも劣化を感じるようになってしまった場合はアウトドアウェア用の撥水剤を用いて再加工を施すといい。撥水剤使用後はいつもの撥水回復処理と同様に乾燥機やアイロンで熱処理を行なうことで再加工が定着する。

ゴアテックス
ポンプスプレー式の撥水剤が手軽で使いやすい

PFASフリーのプロダクトを使用する私たち自身も環境配慮に対しての自覚を持ち、その製品を長く愛用していくことで環境配慮型プロダクトである意義が達成されるのではないだろうか。長期的に使うことを可能にする耐久性を備えている以上、それを最大限発揮すべく日々のケアを正しく行なっていくことが私たちユーザーにとっての使命であることも覚えておきたい。

関連リンク

ゴアテックス公式サイト「GORE‑TEX アウターウェアのお手入れ」
https://www.gore-tex.com/jp/support/care/outerwear

現在、モンベルでは対象のゴアテックス製品のレインウェア購入者に、お試し1回分の洗剤と撥水剤をプレゼントするキャンペーンを実施中(なくなり次第終了)。

詳細はこちら

問合せ先

ゴアテックス
https://www.gore-tex.com/jp