シートゥサミットの定番マットがコンパクト性&耐久性をアップデート!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

シートゥサミットのスリーピングマット、イーサーライトシリーズがリニューアルした。ライターの高橋庄太郎さんにフィールドで「イーサーライトXRマット」を使用して詳細なレビューをしてもらった。

文=高橋庄太郎、写真=矢島慎一

高品質なマットを生み出してきたシートゥサミット

テント泊のお供となるスリーピングマットは、大きく分けて3種類。ひとつは広げるだけで使えるフォーム材のもので、クローズドセルなどとも呼ばれる。もうひとつは、マット内部にスポンジのようなクッション性の素材が入り、その反発力によってバルブを緩めるだけで大半の空気が入っていくセルフインフレータブル式(自動膨張式)などといわれるもの。そして、最後のひとつが、バルブから空気を注入して膨らませるエアマット。どれもメリット、デメリットをもっているが、現在最もポピュラーなのは、軽量なのに使用時は厚みと弾力性があって寝心地がよく、収納時はコンパクトになるエアマットだ。

数多いアウトドアギアメーカーのなかで、スリーピングマットを作っている会社は意外なほど少ない。すぐに破損やパンクを起こすような製品ならば別だが、山中でも信頼して使えるほどのクオリティを実現するには、高度な技術が要求されるからであろう。

その数少ない会社が、シートゥサミットだ。年々進化を遂げている同社のマットだが、今シーズンはますます注目の新製品が生み出された。すなわち、「イーサーライトXRマット」(写真グレー)と「イーサーライトXRプロマット」(写真ブラック)である。両者は兄弟モデルで、ざっくり言えば前者は無雪期向きで、後者や積雪期向きと考えればよい。

シートゥサミット イーサーライトXRマット

どちらも新製品ではあるが、母体ともいえる旧モデルがある。下の画像は、左から

①イーサーライトXRマット
②イーサーライトXRプロマット
③イーサーライトXTマット
④イーサーライトXTエクストリームマット

①は③のリニューアルモデル、②は④のリニューアルモデルである。

シートゥサミット イーサーライトXRマット

膨らませれば長さ、幅、厚みもほぼ同じになるものだというのに、収納時は格段にコンパクトになっていることがわかるだろう。なお、イーサーライトXRマットの収納サイズは直径11×20.5cm、イーサーライトXRプロマットの収納サイズは直径12×21cmである。

これらの外観は色違いにしか見えないが、イーサーライトXRマットの重量は470gで、イーサーライトXRプロマットは560g。

シートゥサミット イーサーライトXRマット

どちらも使用時のサイズが長さ183×幅55×厚み10cmのレギュラーサイズだが、これらの重量の差はマット内に収められた“サーマルコアインサレーション”による反射フィルムの層の数の差である。イーサーライトXRマットは単層、イーサーライトXRプロマットは複層で、その差はそのまま断熱性を表す“R値”の差になっている。

シートゥサミット イーサーライトXRマット

ちなみに、先ほど大きさの比較に使ったイーサーライトXTインサレーティッドマットはR値3.1でイーサーライトXRマットは4.1、イーサーライトXTエクストリーム マットはR値6.2でイーサーライトXRマットが7.4だから、それぞれR値が0.9、1.2ずつ向上していることになる。あれだけコンパクトになったというのに、R値はアップしているのだから驚いてしまう。

その秘密は、旧モデル2種の断熱性はかさばる中綿とフィルムを組み合わせたものだったのに対し、新モデル2種は素材を変えて機能性をアップさせた反射フィルムのみに変わっていること。空気を入れるバルブの中をのぞき込むと、シルバーの熱を反射するフィルムが確認できる。

シートゥサミット イーサーライトXRマット

また、これら新旧で生地自体は同じ(縦糸30D、横糸40Dのナイロン素材)だが、その裏側(マットの内側)に塗布するTPUコーティングがリニューアル後はわずかに厚くなっている。その効果でより耐久性を高め、空気の抜けや剥離も防いでいるのだ。実はもうひとつ、耐久性を向上させるための工夫があるのだが、それについては後述したい。

イーサーライトXRマットをチェック。空気入れにも進化あり

さて、これからは暖かい季節がやってくるので、ここからはイーサーライトXRマットをピックアップして説明していこう。もっとも、断熱性と重量、カラー以外は、イーサーライトXRプロマットも変わらないのではあるが。

先ほど述べたように内部は薄い反射フィルムのみということもあり、空気が入っていない状態だと厚みは1mmあるかどうかといったところ。

シートゥサミット イーサーライトXRマット

まるで布切れのようである。ただし、膨らませれば厚みは10cm。相当な体積に変身する。

それだけに息で膨らませるのには相当に体力を使う。

シートゥサミット イーサーライトXRマット

そこで、イーサーライトXRマットは収納袋が空気を入れるポンプとして使えるように工夫されている。

シートゥサミット イーサーライトXRマット

ポンプをつなぐバルブは逆止弁付きの2段階になっており、ひとつだけ外すと空気の流れが一方向で、一度入った空気はもう抜けない。しかし、ふたつ丸ごと外せば、一気に空気が抜ける仕組みになっている。そしてここにポンプを取り付ける。

あとは、以下のように空気を入れていくだけだ。

シートゥサミット イーサーライトXRマット

どんどん膨らんでいき、ものすごく速く、簡単である。

シートゥサミット イーサーライトXRマット

僕は10年以上も前の同社のマットをいくつか持っている。それに比べると格段に空気が入れやすくなり、同レベルの断熱性のものよりも段違いで軽くなっていることも実感できる。シートゥサミットのマットの進化は驚くべきものだ。

ユニークな工夫は、枕を固定するためのディテールだ。イーサーライトXRマットには小さな4つのシールが付属し、その表面はまるで面ファスナーの片面のように極小のフックが並び、裏面が毛羽だっている同社の枕をしっかりと固定する。

シートゥサミット イーサーライトXRマット

寝転んでみると、これが実に使いやすいのだ。マット本体の機能性とはまた別の話だが、こんな工夫はうれしいものである。

厚み10cmの寝心地は?

もちろん枕以上に感心するのは、マット自体の寝心地のよさだ。

シートゥサミット イーサーライトXRマット

さすがは厚み10cm! 地面の凹凸がまったく感じられない。僕はテント泊の際、空いた時間に本を読むのを楽しみにしている。しかし、僕がこれまでに使ってきた厚み6cm程度のマットでは、片肘をついたスタイルで本を読むと肘先にかかった体重に対処しきれず、肘が地面についてしまう。すると、痛くなるだけではなく、マットに過度な負担がかかってしまい、パンクしないかと少しひやひやしたりもしてきたのだ。

シートゥサミット イーサーライトXRマット

その点、イーサーライトXRマットの厚みがあれば、まったく問題ない。フワフワしていて、まさに極上のクッション性を感じさせてくれ、これなら山中での読書もはかどりそうだ。ぜいたくというのは、こういうときに使う言葉なのだろう。

ところで、イーサーライトXRマットの表面にはリニューアル前と異なる部分がひとつある。

シートゥサミット イーサーライトXRマット

マット表面の生地と内部のフィルム、さらには裏面の生地を溶着している部分(上の写真ではX字型にくぼんだ部分の中央)が以前は“丸”だったのが、イーサーライトXRマットからは“楕円”に変更されているのだ。つまり溶着部分の面積が広くなり、それによって内部でループ状に接着された生地とフィルムが剥離しにくくなっている。

・・・と、ここまでチェックしてから、ひと休憩。

シートゥサミット イーサーライトXRマット

試しに寝転んでみただけでも、イーサーライトXRマットの心地よさは充分に伝わってきたが、やはり夜になって就寝してみないことには、本当によいのかどうかは断言できない。暗くなるのをのんびり待つことにする。

使用するテントの縦幅は要チェック

その後、夕方が近くなってきてから、いったんテント内を片付け、あらためてイーサーライトXRマットをテント内に敷いてみる。

シートゥサミット イーサーライトXRマット

今回のテストで使ったテントは、マットと同じくシートゥサミットの「テロスTR3プラス」だ。縦幅は230cmで、183cmのイーサーライトXRマットを敷いても頭部と足元に余裕がある。

次は寝袋をマットの上に広げた状態だ。内部に人が入っていない寝袋は平たくつぶれてしまうため、頭部と足元はテントの壁に近付いている。だが触れるほどではない。

シートゥサミット イーサーライトXRマット

ただ、これは縦幅230cmのテントだからだ。山岳用テントには縦幅210cm程度のものも多く、そのようなテントに身長が高い人が寝転ぶと、頭部か足元がテントに触れてしまう可能性がある。現在のドーム型テントは上に行くほど狭まっていく形状のため、寝転んだときの体の位置の縦幅は、テントの底の縦幅よりも少し短くなる。イーサーライトXRマットのように厚みが10cmもあるマットはなおさら差が大きい。よって、身長が高い人がイーサーライトXRマットを使うときには、縦幅が充分にあるテントを選んだほうが快適になることは頭に入れておいていただきたい。

僕は身長が178cmなので、縦幅210cmくらいのテントでも薄手の寝袋ならば問題はなさそうではある。だが、寒冷期用の分厚い寝袋だったら頭部や足元が結露で濡れていたかもしれない。

シートゥサミット イーサーライトXRマット

ともあれ、今回は充分なスペースだ。

シートゥサミット イーサーライトXRマット

頭の位置をテントの壁に合わせてみれば、足元にはこんなに余裕がある。

シートゥサミット イーサーライトXRマット

寝袋は膨らんでいるので、マットに体が乗り切っていないように見えるかもしれないが、実際はまったく問題はなく、自宅のベッドで寝ているのと同じような感覚だった。

一晩寝てみると・・・

とうとう夜が訪れ、本格的に眠る時間がやってきた。

シートゥサミット イーサーライトXRマット

2月のこの日の気温は、就寝前で3℃ほど。この時期としては比較的温暖な環境にある山だが、それでもかなり寒い。僕はイーサーライトXRマットではなく、イーサーライトXRプロマットのほうがよかったかと、少し心配していた。

だが、それはまったくの杞憂だった! 夜には雪が降り始め、朝は霜柱も高く伸びていたが、地面からの冷気を感じることはなく、すっかり熟睡。

シートゥサミット イーサーライトXRマット

R値4.1のイーサーライトXRマットでも厳冬期でなければ充分なのであった。

また、一般的には横向きに寝転ぶと体がマットに触れる面積が狭くなり、その結果、体が沈み込む。このとき、充分な反発力がないマットだと肩やお尻が地面に接してしまい、ダイレクトに冷えを感じてしまう。

シートゥサミット イーサーライトXRマット

だが、イーサーライトXRマットは、その点も問題なし。フカフカしていて地面に接することは一切なく、なんとも気持ちがいい。実際のところ、熟睡してしまえばマットの寝心地を実感できるはずもないのだが、反対にいえば熟睡してマットの存在を忘れるほどの寝心地だったともいえるだろう。

マットというものは自宅で寝る場合の敷布団に当たり、寝袋は掛布団に当たる。だから、マットの断熱性がいくら高くても寝袋の保温性が低ければ寒くて眠れなくなる。どんなときでも充分に暖かい寝袋を組み合わせて使わなければ、イーサーライトXRマットのようにすばらしいマットを使っても意味はない。山に行くときにはマットの性能とともに寝袋の保温性も忘れないようにしたいものだ。

撤収&収納もラクラク

朝になり、撤収を開始する。イーサーライトXRマットはバルブを開けると瞬間的に空気が抜け、収納する時間も短くてすむのがありがたい。

シートゥサミット イーサーライトXRマット

ところで意外と知られていないが、エアマットが傷むのは膨らまして寝転んでいるときだけではない。

シートゥサミット イーサーライトXRマット

このように小さく丸めて収納しているときに小石や砂を巻き込んで、それがもとで生地に小穴が開くことも多いのだ。

シートゥサミット イーサーライトXRマット

イーサーライトXRマットにはリペアキットも付属しているが、あらかじめ撤収時も注意したほうがよいことは言うまでもない。

幅広い時期で使える実力派マット

シートゥサミットの自信作「イーサーライトXRマット」はたしかに実力充分のマットだった。驚いたのは断熱性では上位に当たる「イーサーライトXRプロマット」もあるというのに、イーサーライトXRマットでも問題なく寒い山でも熟睡できたことである。

マットの「断熱性」と「保温性」は似ているが、少し違う。マットの保温性が高ければ夏は暑くてたまらないだろう。しかしマットにおける断熱性とは、地面と体の間の温度差をそのまま区切ってキープするということだ。極端な話、地面のほうが体よりも温度が高い状態であれば、マットを敷くことで涼しく眠れるということもある。つまり、イーサーライトXRマットは今回のように寒い時期の山から、これからの温暖な時期の山まで幅広く使えるということだ。このふんわりと寝心地のよいマット、ぜひ実際に寝転んで試してみてほしい。

シートゥサミット
イーサーライトXRマット

シートゥサミット/イーサーライトXRマット
価格
(税込)
スモール=30,910円
レギュラー=31,680円
ラージ=34,540円
重量 スモール=445g
レギュラー=470g
ラージ=605g
外寸
(全長×幅)
スモール=168×55cm
レギュラー=183×55cm
ラージ=198×64cm
収納サイズ
(直径×長さ)
スモール=11×20.5cm
レギュラー=11×20.5cm
ラージ=11.5×24cm
厚さ 10cm
R値 4.1
詳細を見る

問合せ先

ロストアロー
https://www.lostarrow.co.jp/store/

プロフィール

高橋 庄太郎(たかはし・しょうたろう)

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『テント泊登山の基本テクニック』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学』(ADDIX)ほか著書多数。
Facebook  Instagram