ひと言でいえば「ひと通りの機能が揃ったオールマイティなザック」。山岳ガイド澤田実さんに聞く、グレゴリーのバックパック「パラゴン」の実力

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山岳ガイドとして、主にアルパインの領域で活躍する澤田実さん。以前は登山専門店「カモシカスポーツ」に勤務した経験もあり、登山用具にも詳しい澤田さんに、グレゴリーのバックパック「パラゴン」についてお話を伺いました。

協力=グレゴリー(サムソナイトジャパン)
 

 

―― まず最初に、澤田さんご自身について教えてください。

愛知県出身ですが、もっと自然の中で過ごしたくて、大学を北海道で過ごそうと、北海道大学に入り、探検部に入りました。このときの経験が、自分の自然との接し方、山登りの仕方に大きく影響しています。北海道のフィールドは広大で、当時はまだ情報も少なかったです。自分で記録を探して、記録のないところを調べて自分のラインを引く、というような楽しみがたくさんありました。山だけじゃなく、川下り、洞窟、ダイビングなど、自然の中での遊びにジャンルを問わずチャレンジしました。

山岳ガイドの澤田実さん。登山用具だけでなく、登山に関する考え方もお話を伺った

記録のないこと、誰もやったことがないことにどんどんチャレンジしました。そのなかで自分にとっては山登りが楽しくなってきました。大学院に入る予定だったのですが、もっと登りたい、チャレンジしたいと思って、大学院には行かず、八ヶ岳の山小屋や白馬のスキー場で働き、ホテル立山で皿洗いなんかもしながら、山を登ってました。その後、もっと山に登るためには仲間が必要だと思って、何のアテもなかったけど、東京に出てきました。『岩と雪』に出てたアルバイト情報で、ビルの窓拭きのアルバイトを探しました。『岩と雪』に募集を出すビルの窓拭きなら、そこには絶対に山好きがいるはず、と(笑)。

ガイドになってから愛用しているピッケルはすでに傷だらけ

で、やっぱり山好きが集まってて、山の仲間ができ、山岳会に入りました。24歳くらいでしょうか。ヒマラヤ願望の人が大勢いて、仲間とダウラギリ、ナンガパルバットなどのヒマラヤをはじめ、デナリ、ヨセミテなんかに行きました。そのあと、高田馬場のカモシカスポーツさんで働くことになったのが35歳。10年ほど勤めて、その間に、山岳ガイドの資格を取得しました。5年前に専業のガイドとして独立しました。

 

―― 普段はどんなガイドをしているのですか?

日本山岳ガイド協会のガイド資格としては、「山岳ガイドステージⅡ」になりますので、日本国内なら季節を問わず、バリエーションルートの案内もできます。穂高、剱などのアルプスのバリエーションとか、冬の八ヶ岳の岩稜などが得意ジャンルです。もちろんお客さんの希望に沿ったところを案内したり、自分で考えた新しいルートを提案したりしています。

 

国内ならば、季節・山域を問わずガイドできる。バリエーションルートのガイドも得意としている

 

―― そんな澤田さんですが、澤田さんご自身の用具観について。どういうものを好んで選ぶとかはありますか?

カモシカスポーツで10年以上働いた経験が大きいです。自分の登山スタイルでは使わない、トレッキングポールやサポートタイツのようなアイテムをお客さんが買いに来ます。自分では使ったことがなかったから、毎日接客しながら用具の使い方や知識を身につけました。なので、用具観としては、用途や目的によって使い分ける、というのが、今の自分の信条でしょうか。

山岳ガイドらしく、登山や登山用具に対する考え方はシンプルでとても合理的だ

ザックでは言えば、山岳ガイドとして、縦に登る山、バリエーションルートとか、クライミングのガイドをするときは、シンプルさと丈夫さを求めます。ストラップが多くてぶらぶらしているとヤブに引っかかるし、外にポケットなんかはないほうがいいです。自分自身は、山を走ってトレーニングすることもあるので、そういうときは、軽くて、ハイドレーションがあったほうがよいとか。垂直方向よりも、登山道を長く歩く山の場合には、背負心地やポケットの使い勝手などで選びます。

 

―― 今回は、グレゴリーのバックパック「パラゴン」について伺いたいのですが、使っていて気に入っている ポイントやおすすめのポイントを教えてください。

「パラゴン」は、ひとことで言うと、「ひと通りの機能が揃ったオールインワン、オールマイティなザック」です。登山をこれから始めよう、あるいは、趣味として本格的に登山をするためにザックを選ぼう、というときに、最初に選ぶ一つとしては「間違いのないザック」だと思います。なんと言ってもフィット感がよく背負いやすいです。山行によって、58と38の2つのサイズを使いわけています。

グレゴリーには登攀用・冬山用に「アルピニスト」というザックがあって、私は、用途によってはそれも使っているのですが、「アルピニスト」なんかに比べると、「パラゴン」の背負いやすさは「断然いい」です。なので、歩く時間の長い山、背負い心地を優先する場合には、「パラゴン」を使います。

背負いやすい理由はというと、ショルダーベルトとヒップベルトにかかる負荷がちょうどよく、重心が取りやすいというところにあります。グレゴリーには、同じようなコンセプトで「ズール」というザックがありますが、背負った感じでは「ズール」よりも重心が取りやすいと感じます。

パラゴン2サイズのうち、58のモデルでは、腰パッド部分のラバーがとても良いという

山岳ガイドなので、容量の大きい58のモデルを使うケースが多いですが、58には容量と荷重が増えることを想定して、腰のパッド部分に、結構しっかりしたラバーが貼ってあります。このラバーが腰から滑り落ちないように働いて、腰に心地よく止まる。ここが一番気に入っています。肉抜きされている背面やショルダーパッドもよいですが、ショルダーベルト、ヒップベルトの配置や、厚さも考えられていて、背面には細いフレームも入っていて、ザック自体の「剛性」が、ちょうどよいバランスだと思います。

様々な山行で、いろんな重さと、いろんなタイプのザックを背負って初めて分かるのですが、ザック自体の「剛性」というは、背負い心地に大きく影響すると感じます。「パラゴン」は比較的軽量な素材とパーツで構成されているのですが、良いバランスの剛性が備わっていると思います。それから、ガイドとしては、雨蓋の開口部が広くて、救急用品など、何かあって、急いで雨蓋の中のものを探すときに探しやすくて、気に入っています。

雨蓋ポケットの開口部が大きいのがとても使いやすい

あくまで、ガイドとしての使い方、が前提なのですが、こういう使い方もあります。

山行の後半で、荷物が減ってしまったときでも、雨蓋をしまい込んで、ストラップを締めて薄くすることができます。容量の大きなザックで、薄くできない場合には、荷物が下に溜まって背負うことしかできず、重心が後ろに持っていかれます。

パラゴンはストラップを、このように使うことができるので、バランスよく背負うことができます。そしてその背負い心地は、グレゴリーのままなのです。

雨蓋を本体にしまい、ストラップを締めると、このように薄くなり、容量の調整ができるという

 

―― 一般の登山者に向けてのおすすめなポイントはありますか?

一般の登山者、これから山を始める、日帰り登山から始まって、1泊、2泊の山小屋泊の山登りを何度か体験してステップアップをしていくには、「パラゴン38」のモデルが選択肢になるでしょう。

さきほど言ったように、「パラゴン」(女性用は「メイブン」)は、「ひと通りの機能が揃ったオールインワン、オールマイティなザック」です。

メッシュのフロントポケットは濡れた雨具をとりあえず放り込んでおくのに便利ですし、サイドのポケットは水筒やペットボトルを入れるのに適しています。稜線から樹林帯に入って、サングラスをちょっとだけ外したいときに、サングラスを掛けておくホルダーも使えます。

 

サングラス用のホルダー、背面長の調整機能など、パックパックに付いてて欲しい機能はすべて備わっている

背面長が調整可能で、自分でフィット感を調整できます。背面は適度に通気がよいし、雨蓋の容量も開口部の広さも使いやすいです。レインカバーも付いてきます。グレゴリーというと重厚な、ザック自重が重い、という印象があるかもしれませんが、グレゴリーの背負いやすい設計を活かしつつ、比較的軽量に設計されています。

パラゴン38も、雨蓋をしまいこめば、容量の少ないデイハイキングでも使えるという

「パラゴン」で山登りの楽しさ、奥深さを知って、その先に、テント泊をしたい、岩を登りたい、雪山に挑戦したいとステップアップする頃には、グレゴリーには、その用途のザックがありますし、自分の体験から、ほかの容量やほかのタイプのザックを選ぶ目ができているでしょう。その意味で、これから本格的に登山をやってみよう、登山用のザックを検討しようという人には、選んで間違いのない「パラゴン」をおすすめしたいと思います。

取材日:2018年6月27日
撮影:水谷和政

 

今回紹介したアイテム

グレゴリー パラゴン38
GREGORY PARAGON38

価格:24,000円(税別)
サイズ:SM/MD、MD/LG
カラー:3色
重量:1360g(SM/MD)

⇒詳しくはこちら!

 

 

グレゴリー パラゴン58
GREGORY PARAGON58

価格32,000円(税別)
サイズ:SM/MD、MD/LG
カラー:2色
重量:1620g(SM/MD)

⇒詳しくはこちら!

 
※パラゴンにはほかに、48、68がある。
※同コンセプトの女性用には「メイブン(MAVEN)」があり、35、45、55、65がある。

山岳ガイド澤田実さんの登山に対する考え方、用具に関する工夫などをまとめた著書『体験的登山技術論』が、小社の「ヤマケイ新書」シリーズで発売中。

『体験的登山技術論 脱初心者のための実践アドバイス』

沢登り、雪山登山、山岳スキー、ヒマラヤ登山など、マルチに幅広い登山活動を続けてきた山のオールラウンダー澤田 実さんが、長い登山歴の中で編み出した「一般の登山技術書には載っていない登山術」をご紹介

著者:澤田 実
販売価格:本体780円+税
体裁:新書判・256ページ
2016年12月発売

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プロフィール

澤田実(さわだみのる)

1968 年、愛知県生まれ。日本山岳ガイド協会公認山岳ガイド(ステージⅡ)。 北海道大学で探検部に所属。卒業後、山小屋やスキー場、窓拭きのアルバイトをしながら、岩登り、沢登り、冬壁、山スキー、ヒマラヤ登山まで、オールラウンドな登山を実践。1997 年、ナンガパルバット、1998 年、チョモランマなどに登頂。2004年、スペイン山岳スキー競技選手権に参加。厳冬期単独黒部横断、称名滝完登、黒部スキーワンデイ横断(11 時間18 分)などの記録を持つ。2004 年から2014 年までカモシカスポーツに勤務。 http://www.geocities.jp/guide_sawadahp/index.html