教えて! 山岳ガイドさん
安全・快適に登るための
秋冬登山用具を
選ぶポイント
標高によって、早くも雪が降ることもあるのが、この時期の山の難しいところ。当然、夏山とは少々異なるウェア選びが必要となる。そこで、積雪前を前提に、用具選びのポイントをガイドの水野さんにうかがった。
文=池田 圭 イラスト=坪本幸樹 写真=小池美咲
2025.09.30

秋冬のレイヤリングはごまかしが利かない
長く山にいる私たちガイドにとっても、この時期のレイヤリングは非常に難しいものです。気温も一気に下がり、雨や汗でいったんウェアが濡れると体の芯まで冷えてしまう。夏よりもごまかしが利かないので秋は怖い。もしも濡らしてしまってもリカバリーできるウェアを選ぶことが大切です。
まずベースレイヤーは、あまり厚くなくて乾きやすいものがいい。濡れても冷えにくく、適度な伸縮性もあって動きやすいウール製がおすすめです。ベースとしてもミドラーとしても使える汎用性があるものを選べば、荷物が減らせるので登山のスピードを上げることができます。
ポイントは適度な保温力と抜けのよさ
山の気温が下がってくるイメージばかり頭にあると、つい保温性の高さでウェアを選びがちです。しかし、保温性を重視すべきなのは停滞用だけ。気温にかかわらず、人間は必ず汗をかくので、寒い時期でも“汗抜けがいい”ことが大切な要素です。特に標高が高い山では、適度な保温力と抜けのいいレイヤリングを意識することで余計な脱ぎ着が減り、結果的に安全な登山につながります。
あとは、重ね着したときの動きやすさもチェックポイント。試着時に両手を上げて手首が出ないか、脇や肩が突っ張らないかを確認しましょう。アウターとミドラーは携行する時間が長くなるので、軽さとコンパクト性を考慮して選びたいですね。
雪の有無が衣替えのひとつの目安となる
アウターシェルについては、歩き出しから雪があるかどうかがハードシェルを着る目安となります。雪が降るか雨が降るかわからない季節は、レインウェアがあれば充分です。
シューズも、雪がなければ夏山と同じ選び方で構いません。肝心なのは、岩稜なのか、土の道が多いのかなど、登る山やルートに応じた靴選びをすること。ソールはシャンクが硬過ぎないほうが、足裏の感覚がダイレクトなので歩きやすい。「乗れているな。滑らないよな」と、自身で感じられることが大切です。
登山用具は10年前と比べて日進月歩で進化しています。もし、しばらく替えていないなら、今、買い替えて損はないと思います。