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山の保全の
今を
知る、考える

国立公園を知る・考える

全国に35カ所あり、国土の約6.5%を占める国立公園。環境省からはレンジャーが現地に派遣されるが、その人数は充分ではない。国立公園の保全方法は模索中という状態だ。国立公園内を守るために登山者にできることは、登山道を外れないことだ。

文=辻野 聡 2025.09.29

木道とその周辺の植生を復元する(写真提供=環境省)
木道とその周辺の植生を復元する(写真提供=環境省)

国立公園保全の特徴と取り組み

日本の国立公園は、類まれな自然の景勝地であることはもちろん、生物や植物の豊かな生態系や人が暮らす生活域も含まれているのが特徴。人が自然と触れ合うことによって育まれる歴史や文化にも触れることができ、日本独特の価値観を生み出している。これらの貴重な自然を後世に残すには、どう保全していくかが重要だ。

国立公園には環境省からレンジャー(国立公園管理官・自然保護官など)が現地に配置され、各種業務を行なっている。しかし、国立公園は国土の約6.5%もの広大な面積を有し、隅々まで管理するのは難しいと言わざるを得ない。たとえば、複数の自治体にまたがる登山道の場合は、どこが管理しているのか、登山道がどういう状態なのか、行政が把握できていない場合もある。まずは行政機関が、山を保全するために何が求められて最善の策は何かということを、地元の人たちと向き合って、意見交換をすることが大事だろう。

国立公園とそのほかの自然公園との違い

環境省『自然公園制度の概要』を再編集

国立公園

国の風景を代表するに足りる傑出した自然の風景地。海域の景観地も含む。自然公園法に基づき、環境大臣が指定する。原則、30,000ha以上、景観核心地域2,000ha以上などの基準がある。事行政的管理責任者は環境省。広大な土地なうえに、公園内の所有は国だけでなく、都道府県や個人のものが点在するため、より管理や現状の把握などが難しくなる。

国定公園

国立公園に準ずる優れた自然の風景地。環境大臣が関係都道府県の申し出により指定するもの。原則、10,000ha以上、景観核心地域1,000ha以上などの基準がある。事行政的管理責任者は都道府県。

都道府県立自然公園

都道府県知事が自然公園法の規定により指定し、都道府県条例を制定する必要がある。事行政的管理責任者は都道府県。特別保護地区の指定はできない。

環境保全型のトイレの設置に対する補助も行なう。2024年までに153カ所の整備を実施している(写真提供=環境省)
環境保全型のトイレの設置に対する補助も行なう。2024年までに153カ所の整備を実施している(写真提供=環境省)
Column

登山中でもできる山の保全への一歩

登山道から外れない

登山者にできる山の保全の第一歩は、登山道以外を歩かないということ。登山道以外に踏み跡がついてしまうと、その場所の希少性の高い植物が失われたり、多くの人が歩くことで侵食され地形が変わってしまう恐れがある。さらに登山道以外のところにトレッキングポールを突いてしまうと植生が損なわれてしまう可能性がある。

老朽化した木道を見つけたとき

自然や植生を保護するために設置された木道だが、時間の経過による老朽化は避けられない問題だ。もしそういった木道に出合った際は、本来の登山道から大きく外れず、植生を荒らさないように歩くことが原則。その場でどこが管理しているのか把握するのは難しいので、近くの山小屋などに連絡するといいだろう。

木道を適切に再整備し、登山道の脇に逃げないような状態を維持することが望ましい(写真提供=環境省)
木道を適切に再整備し、登山道の脇に逃げないような状態を維持することが望ましい(写真提供=環境省)