パタゴニアの定番パンツを徹底比較!
街でも着られる、アルトヴィア・トレイル・パンツを試す!

昨シーズンからパタゴニアのラインナップに加わった4型の定番パンツ。
それぞれの違いを確かめつつ、今回はもっとも汎用性の高い
「アルトヴィア・トレイル・パンツ」をフィールドで試してみた。
落ち着いた見た目とは対照的に、自然と使いたいと思わせてくれる、
テストで気づいた個性的な魅力について紹介する。

吉澤英晃(よしざわ・ひであき)
1986年生まれ、群馬県出身。登山用品全般を取り扱う企業の営業マンを勤めたのち、フリーの山岳ライターとして独立。前職の経験を生かし、道具系の記事を中心に執筆活動を行なう。
検 証

「ハイク・パンツ」と言えど、それぞれに個性あり

2021年、パタゴニアのラインナップに新しいパンツが加わった。「アルトヴィア」シリーズの3モデルと、「ポイント・ピーク・トレイル・パンツ」を含む、計4型だ。パタゴニアの公式ホームページによると、いずれもカテゴリーは「ハイク・パンツ」に属していることから、ハイキング、もしくはトレッキングに適したパンツだと思うだろう。

しかし、いずれも“スリム・シルエット”を採用するなど共通する部分があるものの、それぞれが個性豊かで、汎用性がありつつ、ハイキング以外にクライミングといったハードアクティビティまで視野に入れて、ユーザーの好みを意識して作られている。まずは4本の違いから紹介しよう。

アルトヴィア・トレイル・パンツ
‟街から山へ、山から街へ”。アルトヴィア・トレイル・パンツには、そんな言葉がよく似合う。控えめな膝回りの立体裁断や目立たないロゴマークなど、落ち着いたデザインが日常で使いやすく、リサイクル・ポリエステル/ポリウレタンを使った生地は、動きに追従するストレッチ性があり、乾きも早いため、ハイキングといったアクティビティにも充分使える。しなやかな生地感も特長で、穿き心地は病みつきになるほど軽快だ
アルトヴィア・ライト・アルパイン・パンツ
最たる特長は、ヒップポケットをなくし、ウエストにドローコードを備えるだけなど、軽さを求めた潔いデザイン。ほかの3本と同様にシルエットはスリム・フィットだが、裾をテーパードさせることで、さらに細身に仕上がっている
アルトヴィア・アルパイン・パンツ
足元の視認性に優れるスリム・フィットのデザインに、4方向に伸びる素材を使い、山岳地帯でのテクニカルなムーブを可能にする。裾の内側とヒップパネルの生地を二重にすることで、ハードユースに耐えられる強度も備える
ポイント・ピーク・トレイル・パンツ
ほかの3本と異なり、やや厚みのある生地を使うことで、肌寒い時期にも対応。ヒップパネルなどに耐摩耗性をもつ生地を使い、強度も高い。ウエストと裾はテープで任意に幅を調整でき、フィット感と足元の視認性を高められる

「アルトヴィア・ライト・アルパイン・パンツ」と、「アルトヴィア・アルパイン・パンツ」のレビューは、昨年、山岳ガイドの佐藤勇介氏と、佐藤清子氏がフィールドでテストしたインプレッション記事を参考にしてもらいたい。

今回は「アルトヴィア・トレイル・パンツ」をフィールドでテストした感想をお届けする。

Impression
アルトヴィア・トレイル・パンツを穿いて丹沢の山を歩いてみた
ストレッチする生地はとても歩きやすく、自然と脚が前に出る
生地のたるみを抑えたスリム・フィットで、スッキリする見た目が印象的

「軽やかな履き心地があり、スリムなのに歩きやすい」

数ある山道具のなかで、パンツは違いが分かりにくいアイテムだ。耐久性が高い、ストレッチ性がある、立体裁断で動きやすいなど、いくつか定番の特長はあるが、気になるパンツの機能を何本か見比べてみると、結局のところ、どれも似通った説明になっていることはないだろうか。つまり、その商品だけがもつ、キラリと光る個性を見つけづらいのだ。

そこで、今回の記事を書くにあたり、「アルトヴィア・トレイル・パンツ」らしい唯一無二の個性は何か、その点をいちばんに意識してテストしてみた。

自宅に届いた「アルトヴィア・トレイル・パンツ」を手に取ったとき、まず気になったのが、生地のしなやかさだ。素材が薄いという理由もあるが、独特の生地感はふわりと柔らかく、肌触りはサラッとしている。

実際に足を入れてみると、ソフトな穿き心地があり、まったくと言っていいほど重さを感じない。通気性の高さも肌で感じ、まるで薄い空気をまとっているような感覚さえある。

後日、軽快な足取りでフィールドに出かけてみると、今度は歩きやすさに心が動いた。アウトドアパンツで歩きにくいものを探すほうが難しいが、「アルトヴィア・トレイル・パンツ」のシルエットは、スリム・フィット。つまり、細身なのに歩きやすいのだ。この点が、「アルトヴィア・トレイル・パンツ」の個性といえる。

通常、歩きやすさを意識するパンツは、ゆったりしたデザインを採用することが多い。設計パターンにゆとりを持たせたほうが、足を上げたときに生地が突っ張るといったストレスを抑えられるからだ。

しかし、「アルトヴィア・トレイル・パンツ」のシルエットは、見るからに細く、スラッとしている。それでも、行動中にストレスを感じづらいのは、前述した生地のしなやかさと、優れたストレッチ性による賜物だろう。

登山道で大きな段差を越えるときも、脚にストレスは感じなかった。さらに、スリムなデザインは見た目の良さだけでなく、実用面では足捌きに優れ、風の影響で煽られにくいというメリットもある。

「アルトヴィア・トレイル・パンツ」を穿いていると、歩くことが楽しくなり、もっと遠くまで歩きたくなる。不思議とそんな気持ちになってくる。

カジュアルなデザインは、まるで私服で山に来たような身軽さがある
落ち着いた単色のカラーリングは、気持ちの面でもゆったり穿ける
街中を歩いても違和感はない。むしろ山にいるより自然に見える

「山でも街でも活躍できるシックなデザイン」

「アルトヴィア・トレイル・パンツ」は、街中で穿いても違和感のない、落ち着いた見た目も特長だ。ただ、これに関しては個性というほどではないだろう。

近頃は、普段遣いを意識したデザインがアウトドアウェアのトレンドになっている。一年の大半を私服で過ごす筆者も、どうせなら街でも使えるウェアが欲しいと考えているひとりで、日常とアウトドアで兼用できるパンツを何本か持っている。

しかし、思い返してみると、そういったパンツを山で使う機会は意外と少ないことに気づいた。生地が薄くて強度が気になったり、逆に生地が厚めで気温が高い時期に穿くと暑さを感じてしまったり、そもそもちょっと動きにくかったり、いままでちょうどいいパンツに出会えていなかったのだ。

その点、「アルトヴィア・トレイル・パンツ」は、なかなか理想に近いパンツだと感じている。

アウトドアパンツに求められる機能の高さは前述した通り。とても歩きやすく、優れた汗処理能力に加えて通気性も高いので、汗をかいてもベタつかない。それでいて、生地の切り返しや差し色がなく、膝の立体裁断が目立たない落ち着いたシルエットも好印象。ロゴマークも、通常はトップスの裾に隠れるベルトループの真下に縫い付けられているので、説明がなければパタゴニアのパンツだと分からないほどだ。

唯一、生地については強度が高いとはいえないので、岩場や藪のなかでの使用は避けたほうがいい。「アルトヴィア・トレイル・パンツ」には、険しくない整備されたトレイルを気持ちよく歩くシーンがよく似合う。

「アルトヴィア・トレイル・パンツ」はハイキングやトレッキングでの活躍はもちろん、カジュアルな見た目から、休日の買い物や旅行など、外出する際にも気兼ねなく着用できる。さらに、穿いているだけでも涼しさを感じるほど通気性が高いので、とくに夏に向かって気温が高くなるこれからの時期、ますます活躍の場が増えると期待している。

きれいに折りたたむと手のひらサイズまで小さくまとめることができた

「軽量でコンパクトだから下山後の着替えにも」

「アルトヴィア・トレイル・パンツ」は、ふわりとした生地感で穿き心地が柔らかく、足が細く見えるスリム・フィットなのに、ハイキングやトレッキングが楽しくなるほど歩きやすい。カジュアルなデザインでありながら、しっかりとアウトドアアクティビティに必要な機能を備えている。

「アルトヴィア・トレイル・パンツ」の個性をまとめると、この2点に集約されるのではないだろうか。

フィールドテストの後にそんなことを考えていたら、もうひとつ、「アルトヴィア・トレイル・パンツ」にぴったりな使い道を思いついた。初めて「アルトヴィア・トレイル・パンツ」に触れたときに感じた、印象に残るほどの生地の薄さと軽さを思い出したのだ。

これなら、着替えとしても重宝するはず。下山後にほかのパンツに穿き替えてから「アルトヴィア・トレイル・パンツ」を畳んでみると、予想した通り、とても小さくまとめられた。

着替えは、できるだけ軽量でかさ張らないほうがいい。「アルトヴィア・トレイル・パンツ」がまさにそれで、持ち運びが苦にならず、さらに見た目がシンプルなので、下山後に麓の街を観光するといった計画にもぴったりだ。

テストを終えたあとも私生活で「アルトヴィア・トレイル・パンツ」を着用していて、その度に穿き心地がいいと感じている。とくに独特の清涼感が気に入っていて、より涼しさを感じやすい夏の訪れが待ち遠しいほどだ。

山道具を選ぶときはつい機能に注目しがちだが、使いたい気持ちが自然と込み上げてくるかどうかも重要なポイントで、そういったアイテムは意識しなくても使用頻度が増えるし、できるだけ長く使いたいと思うはずだ。これも、“優れた道具”に必要な条件のひとつではないだろうか。

高機能で汎用性が高い「アルトヴィア・トレイル・パンツ」は、多くの人にとって、足を入れる機会が多くなる”優れたパンツ”になるポテンシャルを秘めていると感じている。

特 徴
Point 1
しなやかなストレッチ性
しなやかな生地はストレッチ性が高く、膝を深く曲げても突っ張る感じがないので、大きな段差も歩きやすい。通気性にも優れていて、風に触れるような涼しさも魅力といえる
Point 2
収納に役立つカーゴポケット
右脚の大腿部にファスナー付きのポケットを配備。ちょうど手のひらサイズの大きさがあり、紙地図やグローブ、リップクリームやチケットといった小物の整理に役立つ
Point 3
ハイカットに対応する裾ファスナー
裾の外側にマチがあり、登山靴に合わせて裾の幅を広げられる。さらに、靴紐の締め具合を調整するときなど、ファスナーを開放すると裾が捲くり上げやすいといった利点もある
Point 4
優しくフィットするウエストバンド
ウエスト部分の両サイドにストレッチするゴムバンドを採用。呼吸や動きに合わせてバンドが伸縮するので、キツく感じない快適なフィット感があり、幅広いウエストサイズにも対応する
 Women's Impression
「アルトヴィア・アルパイン・パンツは、足を上げてもまったくストレスがない」

1年間、アルトヴィア・アルパイン・パンツをクライミングやハイキングなどで着用しました。

いちばんの特長は着心地のよさ。膝をあげたときに太ももに突っ張りがまったくなく、足捌きでストレスを感じません。伸縮性が非常に高く、履いている感じがしない、と言っても過言ではないかも。寝巻きに履けるぐらいストレスフリーです。生地が薄く、夏でも蒸れは感じませんが、クライミングパンツらしく耐久性も確保されていいます。膝周りや足首の内側など、擦れやすい箇所は生地を変えて補強されているので、岩登りでも安心です。内股気味な女性は足運びの時に逆足の裾を擦ってしまうことがありますが、このパンツは足裾が補強されているので、裾が傷ついたり汚れたりしないのもいいですね。右足太ももと骨盤部分にポケットがありますが、どちらもハーネスに干渉しないので、クライミング時に携帯電話やテーピングなどを入れられます。

クライミング時はもちろんのこと、岩場までのアプローチやハイキングなど、広い用途で使えるので非常に重宝しています。



佐藤清子(さとう・きよこ)
埼玉県生まれ。好きな山域は奥秩父。女性も入りやすい清潔なクライミングジム「カメロパルダリス」の店長を務める。明るい人柄で、細かな心配りと適格なアドバイスに定評がある。

 
Lineup
-------------------- Menʼs Models --------------------
パタゴニア メンズ・アルトヴィア・トレイル・パンツ
メンズ・アルトヴィア・トレイル・パンツ
  • 価格:17,050円(税込)
  • カラー:ブラック、ニューネイビー
  • サイズ:28~40
  • 重量:約315g
  • *ショート丈もあり
パタゴニア メンズ・アルトヴィア・ライト・アルパイン・パンツ
メンズ・アルトヴィア・ライト・アルパイン・パンツ
  • 価格:17,050円(税込)
  • カラー:インクブラック
  • サイズ:28~40
  • 重量:約261g
パタゴニア メンズ・アルトヴィア・アルパイン・パンツ
メンズ・アルトヴィア・アルパイン・パンツ
  • 価格:19,800円(税込)
  • カラー:ブラック
  • サイズ:28~40
  • 重量:約340g
  • *ショート丈もあり
パタゴニア メンズ・ポイント・ピーク・パンツ
メンズ・ポイント・ピーク・パンツ
  • 価格:18,150円(税込)
  • カラー:ニューネイビー、ブラック
  • サイズ:28~40
  • 重量:約442g
  • *ショート丈もあり
------------------ Women's Models ------------------
パタゴニア ウィメンズ・アルトヴィア・アルパイン・パンツ
ウィメンズ・アルトヴィア・アルパイン・パンツ
  • 価格:19,800円(税込)
  • カラー:ブラック、ライトプラムグレー
  • サイズ:0~10
  • 重量:約323g
パタゴニア ウィメンズ・ポイント・ピーク・パンツ
ウィメンズ・ポイント・ピーク・パンツ
  • 価格:18,150円(税込)
  • カラー:スモールダーブルー、ブラック
  • サイズ:0~10
  • 重量=約408g

 パタゴニアのマウンテンパンツをもっと知りたい方はこちら!

■ 問い合わせ先 パタゴニア日本支社

0800-8887-447(フリーコール・通話料無料)
10:00~16:00 (土日祝日・年末年始は休業)