役行者生誕から1390年。田中陽希さんが歩いて感じた修験道発祥の地・葛城修験
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修験道の発祥地とされ日本遺産にも登録されている葛城修験(かつらぎしゅげん)。1400年近くの歴史がある修験の道を、プロアドベンチャーレーサーの田中陽希さんと歩いた。きびしい修行をイメージする修験だが、陽希さんは「登山も修験の一部」と言う。葛城修験を歩いて学び、感じたものとは。陽希さんが葛城の峰々を歩いた2日間と、参加したウォークイベントの様子をお伝えしよう。
文=大堀啓太(ハタケスタジオ)、写真=金田剛仁(ハタケスタジオ)・栗城翔太、協力=葛城修験日本遺産活用推進協議会
ウォークイベントで岩湧山へ。第十五経塚と第十七経塚を巡る
3日目は葛城修験日本遺産活用推進協議会が主催するウォークイベントに参加して、一般の方と岩湧山へと続く葛城修験の道を歩いた。行程は約8km、所要時間4時間。参加者は総勢15名だ。
先達していただく山伏は聖護院の槇山恵壬(まきやまけいしん)さん。とても気さくな方で、「楽しみながら修験体験をして、山の中で素直な心や助け合いの心を育んでほしい」と、道中でも修験の歴史や教えを日常会話のように分かりやすい言葉で話してくれた。
「修験って難しいイメージでしたが、丁寧に説明してくれたので理解しやすく、修験道の世界をのぞき見られました」
「山伏さんの話がとても分かりやすくて共感できる部分も多く、すごく伝わってきました」
槇山さんの話は参加者からも絶賛の声が多かった。
さて、一行は南海電鉄の紀見峠(きみとうげ)駅を出発して、集落を通り、まずめざすのは紀見峠。
急な登り坂が続くにもかかわらず、参加者は元気で表情も明るい。小休止のときの槇山さんからの話で場の雰囲気が和らぎ、初対面同士の緊張もほぐれてきたようだ。



木漏れ日が注ぐ登山道を進み、休憩をはさみながらたどり着いたのが第十七経塚だ。槇山さんのほら貝が響き渡り、全員で勤行すると、空気がピリッと張り詰めて独特の雰囲気が漂う。
「いつもの登山で歩いていたら、きっと経塚を通り過ぎていたと思います。これも山伏さんと歩くからこそですね。この場の意味も知ることができて、いままで見てきた山の景色が広がった気がします」
岩湧山の山頂付近は、ススキがちょうど見頃を迎えていた。地元ではキトラと呼ばれる一帯で、茅葺民家の屋根葺き替えなどに利用するカヤ場として管理されてきたという。
そよそよと吹く風にゆれるススキの姿は可憐で、風情がある。どの登山者もスマホを片手に撮影に夢中だ。
岩湧山山頂を後にして急坂の道を駆け抜けるように下り、道路に出て案内板に従うと、尾根の先にある第十五経塚に辿り着く。ひっそりとたたずむ経塚を取り巻く空間は、まるで時が止まっているかのように静かだ。狭い尾根に全員が立ち、本日2回目の勤行をした。
第十五経塚を少し下ったところにある岩湧寺が、ウォークイベントのゴール。参加者の目は一様にきらきらとしている。
「事前に葛城修験のことを調べてきましたが、そうやって登ると山の視野が広がったようでした。登っている山にまつわることが分かっていると、厚みが生まれてよりおもしろいですね」
「経塚巡り、いいですね。ほかの経塚も巡ってみようと思います」
それぞれの中で、それぞれの修験道が始まったようだ。
修験道は体感しないとわからない。そのためにもまずは、修験に意識を向けることが大切で、山に登る前に知識に触れてみよう。葛城修験に関する情報は、葛城修験日本遺産活用推進協議会のウェブサイトや公式インスタグラムで発信されているので、ぜひチェックしてほしい。陽希さんも言っていたように、「大事なのは飛び込むこと」だ。