超軽量&極薄ながら、圧倒的な防水透湿性。ミレー/ティフォン ファントムトレック ジャケット 体感チェック
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文=高橋庄太郎 写真=後藤武久 協力=ミレー・マウンテン・グループ・ジャパン [PR] 2025.7.11
ミレーのレインウェア「ティフォン」シリーズの最新作が発表されたのは、今年の2月末とまだ寒い時期だった。だが、レインウェアが真の実力を発揮していくのは、午後になれば夕立が降り、台風も発生しやすくなるこれからの蒸し暑い夏だ。
数タイプが同時に発表されたティフォン シリーズのなかでも、前回に取り上げた「ティフォン ストレッチジャケット」は伸縮性の高さによる着心地が大きな売りで、ハイレベルの防水透湿性とともに耐久性が高い生地は、多様なシチュエーションで活躍するものだった。
それに対し、今回ピックアップする「ティフォン ファントム トレック ジャケット」はティフォン ストレッチ ジャケット以上の透湿性(60,000g/㎡/24h)と耐水圧(50,000mm)を持ちながら、163g(Mサイズ)という超軽量性を誇る、ハイスペックなレインジャケットだ。
ただし、これほどの超軽量性や防水透湿性を実現するためには、少々傷みやすくても薄手の生地を使ったり、ディテールを簡易的な構造にしたりと、ウェア作りの発想を思いきって変えなければならないことも事実である。どちらを選ぶべきか、はたまた両者をどう使い分けるのか、このレポートが参考になると幸いだ。
驚異的な軽さと薄さの秘密とは?
ジャケットの細部をチェック
さて、あらためてティフォン ファントム トレック ジャケットを見てみよう。
やはり、驚かされるのはMサイズで163gという重量だ。同サイズのティフォン ストレッチ ジャケットが300gなのだから、半分強でしかない。レインジャケットとしては世界最軽量級なのである。
その超軽量性の最大の理由は、たった7デニールという極薄の生地。これで本当に防水性があるのかと不思議に思うほど透けるように薄いのに、防水メンブレンを表地と裏地で挟み込んだ3レイヤー構造の素材になっている。
縫い目に張られている防水のためのシームテープも極薄だ。しかもテープの幅も最低限に抑えている。こんな目立たないところにも超軽量性を追求する姿勢が表れているのであった。
フロントとポケットのファスナーは、水が浸透しにくい止水タイプだ。
しかもポケットのファスナーの上部はフラップで覆われ、引き手をここに押し込めば、ますます水が入らない。細かな部分もよく考えられている。
一方で、袖は伸縮性素材でわずかに絞っているだけの簡素なデザインだ。
一般的なレインジャケットのように面ファスナーでしっかりと隙間を閉じられるような仕様ではないので、雨をシャットアウトできるとは言いがたい。しかし、耐候性の高さと軽量性はどうしてもトレードオフの関係にならざるを得ない。ティフォン ファントム トレック ジャケットは内部に水分が侵入するリスクが少々高くなろうとも、あくまでも超軽量性を追求したウェアなのだ。
これだけ超薄手の生地を使い、あえてシンプルな構造にしたジャケットゆえに、収納時はコンパクトだ。いわゆるパッカブル仕様になっており、腰元のポケットをひっくり返せば、収納袋の代わりに小さな形状にまとめられる。
もっとも、これはポケットを裏返したときの大きさでしかなく、実際はもっと圧縮して握りこぶしほどのサイズに小さくできる。雨でジャケットが濡れているときなどは、このようにポケット内に収納してしまえば、水分がバックパック内に広がらないというメリットも生まれる。
とはいえ、僕自身はわざわざこのように収納するのが面倒なので、ただバックパックの取り出しやすい場所に押し込んでいる。このほうが素早く収納でき、僕のようなガサツな男には向いている。
実にしなやかなティフォン ファントム トレック ジャケットは、狭い隙間にもさらっと簡単に収められるのがいい。
生地がしなやかということは、無用な摩擦感も少ないことを意味する。だから、バックパック内から取り出すときもスムーズで、そのまますぐに着用できる。
ティフォン ファントム トレック ジャケットは生地の内側も滑らかなため、速やかに腕入れできるのも長所である。
ある程度のストレッチ性もあり、たとえ引っ掛かったとしても突っ張る感じはしない。
それにしても、さすが重量163g! 着用しても、ほとんど重さを感じない。これでレインジャケットとは! まるでウインドシェルのような着心地だ。
前回にテストしたティフォン ストレッチ ジャケットもウインドシェルとして活用できる軽やかなレインジャケットだったが、ティフォン ファントム トレック ジャケットはそれ以上! 雨が降っていないときは積極的にウインドシェル代わりに使いたい。
抜群の透湿性+Wファスナー仕様で、
蒸し暑い状況でも快適
細部まで確認したあと、僕は山を歩き始めた。今にも雨が降りそうな天気ではあるが、まだ崩れ切ってはいない。つまり、ティフォン ファントム トレック ジャケットをレインウェアではなく、ウインドシェルとして使っている状態である。
あくまでもこれはレインウェアであり、本当のウインドシェルのように高い通気性を持っているわけではない。しかし、風を通さない素材なのに暑苦しさを感じにくいのはすごい。なにしろティフォン ファントム トレック ジャケットの透湿性は、驚異の60,000g/㎡/24h。そのために、ジャケットの内側に蒸れをほとんど感じないのだ。
もちろん気温が高い時期に長々と歩き続ければ、いくらかは蒸れてくる。
その時はフロントのファスナーを適度にオープン。このジャケットのフロントファスナーはWタイプなので、腰元も開くことができ、通気性の微調整がしやすいのがメリットである。
腰元のファスナーが開くので、休憩中にかがんだときも腰元で生地がもたつくことはない。これは僕が好きなポイントだ。
また、“非常に暑いのに強い風が吹いている”なんてときは、胸のところだけわずかに閉めるような着方をすれば、風でウェアが大きくバタつくことも防いでくれる。
優れた耐水性&透湿性で、
雨のなかでもストレスなく着続けられる
少しすると、とうとう小雨が降り始めた。レインウェアのテストとしては好都合である。
僕は胸元のファスナーを首まで上げ、フードをかぶった。
体の上に降り落ちた雨粒がウェアの上でポツポツと音を立てるが、撥水性が良好な生地は玉のように水分を弾き、ほとんど濡れた感じがしない。
しかし、バックパックの背面パッドは少しずつ雨水を吸い込んでいき、背中の生地とこすれ合っていた。機能性が低いレインジャケットならば、じんわりと水分が浸透してきてもおかしくはない状況だ。だが、これほど薄い生地でもさすがは耐水圧50,000mm! 背中に水分がしみ込んでくることはなかった。
目線を変えてジャケットの裾を見てみると、ドローコードが取り付けられているのがわかる。
これを引けばジャケットは腰をぐるりと締めこんで、隙間なくフィットする。
これで雨とともに強い風が吹いてきても、裾からウェア内部が濡れていくことはない。
ただし、フードは簡易的な造りだ。
フードの後ろ側や顔まわりは伸縮してフィット感を高める構造にはなっているものの、ドローコードで強く引き締めることができるわけではない。
ツバの部分も小さくて柔らかい。強風・強雨のときは顔の周りからいくらか雨が吹き込んでくることは避けられないだろう。
しかし、このフードもまた、超軽量性とのトレードオフで考え出されたものだ。ティフォン ファントム トレック ジャケットの超軽量性は、フードのようなパーツをあえて簡易的に作ることによって生まれていることは頭に入れておいてほしい。
この日の雨は降ったり止んだり。なかなか天気は安定しなかった。
こんなときに一般的なレインジャケットを着ていると、だんだんウェアの重みが気になってきたり、体を動かすときに負担を感じたりして、脱いでしまいたくなることもある。その点、ウィンドジャケットのような軽さとしなやかさ、そして高度な透湿性を持つティフォン ファントム トレック ジャケットは、着続けていてもストレスがない。だから、どんなときでも着続けていられるのだった。
昼を過ぎると、やっと雨雲は遠ざかっていった。
僕はティフォン ファントム トレック ジャケットをウインドシェルとしてはおったまま、下山を開始する。
僕は最後に思いっきり汗をかいてみようと考えた。そこで、トレイルランニングのように小走りで登山道を駆け下りていく。
これまでに降った雨のために、山中の湿度は朝よりもだいぶ高まった感じだ。次第に汗が流れ始め、ジャケットの内側に着ていたTシャツは湿り始めていった……。
下山を完了し、ジャケットの内側をチェックしてみる。
思ったとおりTシャツはかなり湿っていたが、ジャケットの裏面はほとんど濡れていない。少しばかり水分を感じたのは、バックパックと体で挟まれていた背中の面くらいだ。やはり透湿性60,000g/㎡/24hは伊達ではない! たくさんの汗をかくようなシチュエーションや気温がとても高い時期、そんなときこそティフォン ファントム トレック ジャケットは大いに活躍しそうであった。
レインジャケットとして開発されたウェアながら、雨が降っていないときでもウインドシェルとして活用できるティフォン ファントム トレック ジャケット。超軽量なうえにパッカブル仕様でコンパクトに収納できるのも大きな魅力である。バックパックに1枚押し込んでおけば、どんなときでも快適な登山が保証されそうだ。

高橋庄太郎
(たかはし・しょうたろう)
山岳/アウトドアライター。一年の半分はアウトドアのフィールドで過ごし、夏は北海道、冬は沖縄、季節を問わずに日本アルプスと、低山から高山までさまざまな山に登り続けている。著書に『テント泊登山の基本テクニック』(山と溪谷社)などがあり、10年以上も続いている「山と溪谷オンライン」の連載「高橋庄太郎の山MONO語り」では、山道具の徹底的なフィールドテストを毎回行なっている。
問合せ先
ミレー・マウンテン・グループ・ジャパン
https://www.millet.jp/
TEL:050-3198-9161
