ultimate project 気鋭のクライマーと挑む、新たな取り組み 世界の名だたるクライマーの要望を具現化してきたカリマーからトップクライマーと共同開発した新レーベルが誕生。ultimate = 極限まで、もっと高みへと運んでくれるプロダクトに迫る。 辻 歌=文 山田 薫=製品写真 カリマー=写真提供 ultimate project 気鋭のクライマーと挑む、新たな取り組み 世界の名だたるクライマーの要望を具現化してきたカリマーからトップクライマーと共同開発した新レーベルが誕生。ultimate = 極限まで、もっと高みへと運んでくれるプロダクトに迫る。辻 歌=文 山田 薫=製品写真 カリマー=写真提供
モニターレポート
理想的でミニマルなザック
ムーブを邪魔しないジャケットとパンツ
今後の山行でも助けられそう
ニックネーム :
永山 虎之介さん (20代、男性)
登山歴 :
3年
登った山 :
八ヶ岳・広河原沢3ルンゼ、赤岳主稜、中山尾根、阿弥陀岳南稜(1泊2日、テント泊)、白馬~朝日岳、戸隠西岳(2泊3日)他
使用アイテム :
アルティメイト35/アルピニステジャケット/アルピニステパンツ
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ニックネーム :
永山 虎之介さん (20代、男性)
登山歴 :
3年
登った山 :
八ヶ岳・広河原沢3ルンゼ、赤岳主稜、中山尾根、阿弥陀岳南稜 (1泊2日、テント泊)、白馬~朝日岳、戸隠西岳(2泊3日)他
使用アイテム :
アルティメイト35/アルピニステジャケット/アルピニステパンツ
  • ■ 様々なシチュエーションが連続する八ヶ岳を「アルティメイト 35」で難なくこなす
  • ■ 行動中でも容易に開けられるベンチレーターが熱を逃がす「アルピニステジャケット」
  • ■ ほとんどパーフェクトなザックと他のアイテムが山行に役立つ

様々なシチュエーションが連続する八ヶ岳を「アルティメイト 35」で難なくこなす

 12月25日から30日に、白馬岳~親不知海岸を縦走する予定でしたが、悪天のため、朝日岳手前で撤退。1月4日~5日に八ヶ岳広河原沢3ルンゼ、赤岳主稜、中山尾根、阿弥陀岳南稜を縦走装備でクライミングしてきました。その後、八ヶ岳権現岳東陵、戸隠西岳、八ヶ岳南沢でもモニターしてみました。

 栂海新道の朝日岳付近は小雪の今年ですら腰の高さ程度のラッセルを強いられ、45㎏超え(ザックは大型のもの使用)の荷物を背負って深雪をラッセルしている時はさすがに発汗量が増えました。そんな時に胸ポケット横のベンチレーターは行動中に開閉でき、かつ効果的に熱を逃がしてくれるので助かりました。

 1月4日は朝5時半ごろに八ヶ岳の舟山十字路を出発しました。天気は快晴。広河原沢3ルンゼは初心者向けのアイスルートで、快適な滝がいくつか続きます。最後の細い貧弱な氷柱で絶え間ないスノーシャワーを浴びながら登ろうとしましたが、氷柱がすぐに割れてしまうので諦め、巻いてトップアウトしました。最後の氷柱に手間取ったので、阿弥陀岳山頂に着いたのが12時過ぎごろ。ここから赤岳主稜へ継続します。赤岳主稜に取り付くとガスがかかり始め、風もかなり強くなってきて、とても寒かったです。

 2日目は中山尾根を狙いました。岩壁に雪はあまり付いておらず、 ほとんどドライのコンディション。天気もほどほどで、とても快適なクライミングとなりました。阿弥陀岳南稜の下降も問題は何もなく、16時ごろには舟山十字路へ到着しました。今回の山行は歩き、クライミング、歩きと様々なシチュエーションが連続し、装備を着けたり外したりすることも多かったですが、「アルティメイト 35」は難なくそれをこなしてくれました。

 また、戸隠での山行では重い湿雪でしたが、外側から濡れたり、雪が凍り付いたりといったことはありませんでした。他のメンバーが使っていたザックは雪がかなりこびりついていたので、耐水性はかなりレベルが高いと思います。「アルティメイト 35」はテントにザックを入れるときも余計な雪をテント内に持ちこまずに済み、濡れを最低限に抑えることができました。ザックにこびりついた雪を必死にブラシで落とす他のメンバーを横目に、僕が悠然とテントへ入ったことは言うまでもありません。

行動中でも容易に開閉できるベンチレーターが熱を逃がす「アルピニステジャケット」

 商品を手に取るまで、「アルティメイト35」は35リットルのミニマムなザックだと思っていました。実際は、今まで使っていた45リットルのザックよりもタイトなサイズ感なのに、それよりもたくさんの装備が詰め込める、これさえあれば何も要らないといえる、非常に理想的で、ミニマルなザックです。生地がかなり固く、岩にこすりつけても安心感があります。また、生地が固いおかげでパッキング時にザックの形状維持に役立っていて、パッキングしやすいです。前のザックでは少し後ろに引っ張られている印象がありましたが、「アルティメイト35」は重心のバランスがよく、縦走装備を背負ったままクライミングをしたときにも邪魔になりませんでした。「アックスホルダー」は前のザックに比べてかなりセットしやすいです。準備にかかる時間が短くなりました。

 取り外し可能で十分なサイズの雨蓋が二本締めであり、ザック開口部に吹き流しがついているので、拡張性があります。戸隠の2泊3日の山行の場合だと、シュラフ・生活具・食料・医療品類・予備衣類・火器・テルモス・行動食・サングラス・ビレイジャケット・ハーネス・ヘルメット・アイゼン・ダブルロープ・ゾンデ棒・その他登攀具はすべてザックと雨蓋に収まり、外付けしたものはアックス・マット・ショベル・スノーバー1本。これだけ縦に伸びたザックが安定するのも雨蓋が二本締めであるからです。まだパッキングできる余地がありました。ハーネス・ヘルメット・アイゼンなどの必要な装備を取りだして登攀する時は、ザック開口部の吹き流しをたたむのですが、ザック全体のバランスが悪くなる心配も全くありません。

 気になる点は各ベルトの緩めにくさ。インナーグローブとウールの手袋にオーバーグローブで着ぶくれした手では、バックルの締め部を解除してベルトを伸ばす操作がやりにくいです。もう少しバックルの引っ掛かり部分を大きくしてベルトが伸ばしやすくなればと思います。また、ヒップベルトがしっかりしたつくりで、安定感はありますが、どうしてもハーネスを上から押さえつける形で干渉してしまいます。バックルのベルト締め部分は、両サイドに分散されるより、中央の連結部に集約されていた方が使いやすいと思いました。

 「アルピニステジャケット」は岩にこすりつけた時にも、藪を漕いだ時にも、破れるようなことはありませんでした。いつもならジャケットを脱いでしまうような天気、荷物、ラッセルの時にも、このウェアだと着続けていられました。北アルプスで暴風雪だった時も、八ヶ岳でビレイ中に強風であおられている時も防御力に不安は感じませんでした。腰回りが絞られているので、ハーネスをはいたときに余計な皺が少なくいい調子でした。アックスを振りにくくなる、ムーブを邪魔されるということも全くなかったです。ヘルメットをつけた状態でフードを被る際にはフロントのジッパーを少し開けなければいけませんが、このサイズ感が絶妙です。フードを被った後、ジッパーを閉めてしまえば強風であおられてフードが外れるといった心配がまったくありません。

 胸元と脇下の間にあるベンチレーターがザックを背負った行動中でも容易に開閉できるため、ラッセルでこもった熱を逃がして、相当に良いです。はじめてベンチレーターの重要性を教えてくれたこのジャケットに感謝しています。また、シェイプやフードの形状も、今までのものと比べて改めて意識してみると、細かいですがかなりストレスが減っている印象を受けました。

 「アルピニステパンツ」は見た目がかなり細く、ウェストも余計なたるみがないです。屈伸をしてもウェアが邪魔になることがないのがいいです。裾回りのケブラー素材で補強していますが、この部分は丈夫でいいディテールだと思います。素材の硬さが邪魔になることもありませんでした。トイレはしやすいですね。サイドフルオープン、前部分にベルトを集約することは必須事項だと思いました。また、フロントのダブルジッパーも意外と便利です。インナースパッツがないのですが、冬は必ずスパッツを着用するので、僕の使い方の上では余計なパーツが減ったと思い、いい評価です。

 ただ、膝部分の外側が皺になって飛び出ているので、藪漕ぎをした際に引っ掛かり破れてしまいました。風に対する防御力は十分ですが、以前使っていたパンツよりも寒気を感じました。耐久性と膝周りのシェイプ、生地の厚さには再考の余地があると思いました。

ほとんどパーフェクトなザックと他のアイテムが山行に役立つ

 「アルティメイト35」は冬期クライミングにおいて余分のないミニマルなデザインで、そのうえ持っていくものすべてを詰め込むことのできる、まさに理想的なもの。これさえあれば他のザックは必要ありません。ほとんどパーフェクト。気になる部分はあっても、減点するようなことがありません。「アルピニステジャケット」はベンチレーターが2つあるのとそれが開閉しやすいことがとてもいいです。「アルピニステパンツ」はウェストのフィット感、動きやすさ、トイレのしやすさにおいて僕に高い満足感を与えてくれました。

 以上が各商品の総評です。これらの商品は今回かなり役に立ちました。今後の山行でも僕を助けてくれることを期待しています。