進化した「キャプリーン・ミッドウェイト」登場
文=村石太郎 写真=永易量行(商品) デザイン=アペックスデザイン 協力=パタゴニア日本支社
2019年の秋冬シーズン、新しくパタゴニアのベースレイヤー・ラインナップとして
登場したのが「キャプリーン・ミッドウェイト」シリーズである。
中空糸とダイアモンド・グリッド構造の裏面を取り入れた
新しいキャプリーン・ミッドウェイト素材の特徴と機能性について、
3人のパタゴニア・アンバサダーの話とともに紹介していこう。
 

理想的なミッドウェイト・ベースレイヤー

クライミング・アンバサダー/横山勝丘
撮影エリア/パタゴニア 写真/佐藤正純
ベースレイヤー/キャプリーン・ミッドウェイト・ジップネック
ミッドレイヤー&アウターシェル/マイクロ・パフ・フーディー

 

 新しいキャプリーン・ミッドウェイトは、肌に触れる部分が出っ張ったダイアモンド・グリッド構造の裏地を取り入れることで、汗をかいたときのベトツキ感を抑えながら、不快な汗冷えを軽減する。中空糸を採用することで、さらに軽量で保温性に優れ、汗を吸いあげて拡散させて蒸発させる機能も向上した。

 「乾きのよさと、温かさ。実際のクライミング中のストレスがない」と話すのは、アルパインクライミング・アンバサダーの横山勝丘だ。通常のクライミングでは薄着でいることがほとんどだと話す彼は、うえに羽織るのは「メンズ・ナノエア・ハイブリッドベスト」だけでいることが多いと教えてくれた。

 「通常、かいた汗が乾くとき、体が冷える感覚がありますよね。でも、このキャプリーン・ミッドウェイトでは、そうしたいわゆる汗冷えを感じないなと思っているんです。瑞牆山でのマルチピッチクライミングだとすると、これからの時期で天気がよければうえにメンズ・ナノエア・ハイブリッドベストを羽織るだけで十分です。それでも寒いときは、さらに『フーディニ・ジャケット』を着る。もうそれだけです。もっと高い山で、寒くなるときはシェルを『ガルヴァナイズド・ジャケット』に変えるとか、ミッドレイヤーを保温性が高いものにしたりしますが、行動するときは暑くなるのでそういうふうに羽織ります」

ロッククライミング・アンバサダー/倉上慶大
撮影エリア/秩父北東部・二子山 写真/萩原 悟
ベースレイヤー/キャプリーン・ミッドウェイト・クルー
アウターシェル/フーディニ・ジャケット

 いっぽう、ロッククライミング・アンバサダーの倉上慶大は、キャプリーン・ミッドウェイトの「軽さ」が自分にとってなによりも大切な機能だと話す。

 「秋冬用の長袖で、単体で着ることができるベースレイヤーとして軽いところがいいですね。クライミングのとき、ホールドをずっと触っていると手がどんどん冷えてくるんです。そのときに、血流を止めないように手首までがしっかりと覆われていることも気に入っている点です。袖まわり、それに首のまわりのフィット感がしっかり作られているというか、熱が逃げないように絞られている、隙間が開きすぎないところがいいなと思っているんです。これは自分で計測した実測値ですが、夏の時期に着ている長袖の『メンズ・キャプリーン・クール・デイリー』が150g程度で、このキャプリーン・ミッドウェイトは170g程度だったんです。わずかな重さの違いで、ずいぶんと保温性も高められていると感じています。1〜2月頃の寒い時期にも、これを単体か、少し肌寒いときに『フーディニ・ジャケット』か、『エアシェッド・プルオーバー』を着るだけでいいんです」

 倉上は、冷えやすい首の付け根の後ろ側の生地が2重になっていることも素晴らしいと付け加えた。

体の動きを妨げないダイアモンド・グリッド構造

  • 重さに対して高い保温力を備えたキャプリーン・ミッドウェイトは、中空構造のリサイクル・ポリエステル100%素材を採用する。ダイヤモンド・グリッド構造の裏地は、高い吸汗発散性と速乾性を発揮するとともに、メカニカルストレッチの自然な伸縮性を備える。
  • 男性用と女性用モデルとも、首筋の保温性を高め、ジッパー操作での換気を促すことが可能な「キャプリーン・ミッドウェイト・ジップネック」と、シンプルな「キャプリーン・ミッドウェイト・クルー」が揃う。いずれも、首の後ろ側の付け根には、血流を妨げないように生地が2重に補強されている。
  • 簡素なデザインのサムループは、伸縮性素材を採用することで袖口がまくれ上がるのを防止している。袖の長さを不必要に伸ばすことなく、手首まわりの確かなフィット感を求めた結果といえる。
  • 「キャプリーン・ミッドウェイト・ボトム」のウェストバンドは、起毛裏地を使った柔らかな肌触り。ウェイメンズ・モデル(写真手前)は、メンズ・モデルよりも幅広く作られていて、快適さが高められている。

 

 素材にストレッチ性を与えるには、伸縮性に優れるスパンデックス繊維などを混紡するのが一般的だ。しかし、この新しいキャプリーン・ミッドウェイトはリサイクル・ポリエステル100%ながら、独自のダイアモンド・グリッド構造によって豊かな伸縮性を実現している。汗などの水分を吸わないスパンデックス繊維を含まないため、軽く、吸汗速乾性もより効率的になった。今季からは、新しくスイス・マテリアルAG社が開発した耐久性抗菌防臭加工技術「HeiQ(ハイキュー)」も採用した。

 横山と倉上の両氏とも、体の動きを妨げないダイアモンド・グリッド構造によるメカニカル・ストレッチを高く評価する。「岩登りでも着ることがあるけれど、まったくストレスを感じない」という横山に対して、倉上は「一般的なベースレイヤーと違って、ひっぱられる感じがしない」と体の動きやすさを強調した。

 いっぽう「着ていて一切のストレスがない。とても満足しています」と話すのはスキー・アンバサダーの古瀬和哉である。同時に、「ある程度のストレッチ性があるミッドレイヤーなどとあわせると、より動きやすくなる」と提言する。厳冬季には「キャプリーン・サーマルウェイト」など、より保温性の高いモデルを着るという古瀬にとって、キャプリーン・ミッドウェイトの出番は3月中旬あたりからのスプリングスキー・シーズンに始まる。

スキー・アンバサダー/古瀬和哉
撮影エリア/白馬 写真/伊藤 剛
ベースレイヤー/キャプリーン・ミッドウェイト・ジップネック
ミッドレイヤー/ナノエア・ジャケット
アウターシェル/フーディニ・ジャケット

 「春は、気温的にはキャプリーン・ミッドウェイト一枚で歩けるぐらいなんだけれど、稜線に立って風が強いときは『フーディニ・エア・ジャケット』を着ることが多いですね。この時期のミッドレイヤーとしては、薄めのクロストレック・ジャケットを保温着としてバックパックに入れています。それにキャプリーン・ミッドウェイトの裏地がダイアモンド・グリッド構造になったことで、汗をかいても肌にベタつかないのもいいですね。山を登っている最中、かいた汗でひんやりと冷たく感じることもほとんどなくなったと思います。これは、裏地側が肌に触れるところと、汗を拡散するところに段差ができているからなんでしょうね」

軽量で温かく、汎用性にもっとも優れた一枚

  • 秋の縦走登山から、アルパイン・クライミングやバックカントリー・スキーまで、もっとも汎用性に優れた「キャプリーン・ミッドウェイト」(左)。より保温性が高く、寒冷地での活動に適した「キャプリーン・サーマルウェイト」(中)、天然素材メリノウールを使いながら最高位の温かさを備える「キャプリーン・エア」も揃う。
  • 寒冷地での活動に適した「キャプリーン・サーマルウェイト」(中)が起毛裏地を採用するのに対して、ダイヤモンドグリッド構造を採用する「キャプリーン・ミッドウェイト」(左)は肌に触れる面積が少なく、ロフトと保温性が抑えられていることがわかる。メリノウールを使った「キャプリーン・エア」(右)は、縫い目のない3Dニット構造を取り入れて、最高位の保温性を発揮する。

 

 キャプリーン・ベースレイヤーは、吸汗速乾性や抗菌防臭効果を向上しながら、環境への配慮からリサイクルポリエステルを採用するなど、さまざまな進化を遂げてパタゴニアのベースレイヤー・ラインアップとして多くの登山者たちに親しまれてきた。この2019年の秋冬シーズン・ラインナップは、寒冷地での活動に適した「キャプリーン・サーマルウェイト」、天然素材メリノウールを使いながら最高位の温かさを備える「キャプリーン・エア」のほか、今回紹介するキャプリーン・ミッドウェイトが加わえられている。

 新しいキャプリーン・ミッドウェイトは、温暖な季節と山域に最適な「キャプリーン・クール」シリーズ、寒冷地向けのキャプリーン・サーマルウェイトのちょうど中間に位置する保温性を備えた、汎用性にもっとも優れた素材だ。控え目なロフトは適度な保温性を備えながらも、発汗量が高く、ストップアンドゴーを繰り返すようなアルパイン・クライミングやバックカントリー・スキーなどにも対応するよう配慮している。優れた吸汗速乾性はもちろんのこと、軽くて動きやすく、肌触りも良好なキャプリーン・ミッドウェイトは、少し肌寒さを感じる、これからの時期の北アルプス縦走などにも最適な一枚だ。

 

Capilene Midweight Line Up

中空糸のリサイクルポリエステル素材を100%採用しながら、ダイアモンド・グリッド構造を取り入れたメカニカルストレッチの自然な伸縮性を備える。吸汗発散性と速乾性に優れ、保温性を抑えることでパタゴニアのベースレイヤーのなかでもっとも汎用性の高い製品に仕上がっている。新しくハイキュー・フレッシュ耐久性抗菌防臭加工も取り入れた。

左)
メンズ・キャプリーン・ミッドウェイト・クルー
7,300円(税別) XS-XXL/スリムフィット 176g

中左)
メンズ・キャプリーン・ミッドウェイト・ジップネック
8,500円(税別) XS-XXL/スリムフィット 204g

中右)
ウィメンズ・キャプリーン・ミッドウェイト・ボトム
7,200円(税別) XXS-XL/スリムフィット 156g

右)
メンズ・キャプリーン・ミッドウェイト・ボトム
7,200円(税別) XS-XXL/スリムフィット 164g

■ 問い合わせ先 パタゴニア日本支社

0800-8887-447(フリーコール・通話料無料)
10:00~17:00 (日曜・年末年始は休業)