自然散策と名湯、地元グルメを楽しむ! 花の楽園・夏の八幡平へ

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標高1600m前後の高原台地が広がる八幡平(はちまんたい)。名峰・岩手山(いわてさん)とともに「日本百名山」に名を連ね、「花の百名山」としても知られる山域だ。この夏、雪解けとともに咲き始める花の楽園へ。

文=久田一樹(山と溪谷社) 写真=高橋郁子 協力・資料写真提供=八幡平市観光協会

八幡沼周辺に広がる湿地
八幡沼周辺に広がる湿地。平らな地形で木道もあり、歩きやすい

雪解けから夏へ、
花の季節を迎える八幡平

岩手・秋田両県にまたがる八幡平は、一年の半分が雪に覆われる。その厳しい自然環境があるからこそ、豊かで強い生命力が育まれ、高山植物はエネルギーを静かに蓄える。

雪解けを迎える6月中旬から8月下旬にかけては、ニッコウキスゲやチングルマ、ワタスゲをはじめ、さまざまな花がタイミングを変え、バトンを渡すように咲いていく。

アオモリトドマツの森と、点在する沼や池塘、湿原をつなぐ登山道周辺には、色とりどりの花が咲き、八幡平の爽やかな夏を静かに彩る。

そんな高山植物の息吹を気軽に楽しめるのが八幡平の大きな魅力だ。盛岡方面からの路線バスやマイカーで八幡平頂上直下までアクセスでき、八幡沼やガマ沼〜黒谷地(くろやち)湿原を3時間ほどで散策することができる。なだらかな高原台地はアップダウンも少なく、体力に自信がない人でも無理なく楽しめるのがいいところ。

八幡平散策の後は、泥湯で知られる藤七(とうしち)温泉や、松川(まつかわ)温泉といった名湯につかり、地元グルメを味わいたい。花とあわせて、すばらしい山の旅になるはずだ。

八幡平で楽しめる夏の花

雪解け後の6月中旬から8月末までの時期、多くの花が楽しめる。花の幕開けはヒナザクラやミズバショウ、チングルマやシラネアオイ、7月~8月にかけてはニッコウキスゲやエゾオヤマリンドウと、花のリレーが続く。八幡平市観光協会HPの「花カレンダー」を参照して、訪れる時期の開花情報を調べておこう。

ミヤマキンポウゲ
ミヤマキンポウゲ
シラネアオイ
シラネアオイ
チングルマ
チングルマ
ハクサンチドリ
ハクサンチドリ
カラマツソウ
カラマツソウ
イワカガミ
イワカガミ
ニッコウキスゲ
ニッコウキスゲ
イワハゼ
イワハゼ
ワタスゲ
ワタスゲ

八幡平の地元グルメを味わう

寿司天セット

地元民や観光客から長く愛される和食店。リーズナブルな値段で、ボリューム満点のメニューがずらり。寿司天セット(写真)など、海鮮・天ぷら・蕎麦が楽しめるセットが人気。

たかはし食堂 寿司天セット

たかはし食堂

TEL 0195-74-2232

アンガス牛ステーキ

八幡平の麓で1969年から営業を続ける老舗バーレストラン。看板メニューのアンガス牛ステーキ(写真)は肉の旨みが味わえる逸品。唐揚げなどの定食やラーメン、丼もの、パスタなどメニューも豊富。

レストランLAMP アンガス牛ステーキ

レストランLAMP

TEL 0195-78-2066

源太カレー稲庭うどん

路線バスの発着場&一般車駐車場と隣接する、八幡平山頂レストハウスの人気メニュー。岩手産の牛すじ肉をじっくりやわらかく煮込んだスパイシーなカレーと稲庭うどんのコンビネーションが美味。

八幡平山頂レストハウス 源太カレー稲庭うどん

八幡平山頂レストハウス

TEL 0195-78-3500

八幡平の名湯を楽しむ

藤七温泉

東北一の高所、標高1400mにあり冬場は雪に閉ざされる秘湯。唯一の宿・彩雲荘では、温泉成分を潤沢に含む泥湯が堪能できる。

彩雲荘

藤七温泉・彩雲荘
日帰り入浴
料金
700円
日帰り入浴
営業時間
8時〜17時、
11月~4月下旬休館
TEL 090-1495-0950
公式サイトを見る

いこいの村岩手温泉ホテル

岩手山の麓に位置する宿泊施設内にあり、ゆったりくつろげる大浴場やサウナを完備。アルカリ単純泉は美人の湯として人気がある。

いこいの村岩手温泉ホテル
日帰り入浴
料金
600円
日帰り入浴
営業時間
7時~21時
※施設メンテナンス等で変更あり
TEL 0195-76-2161
公式サイトを見る

松川温泉

280年ほど前に開湯され、ブナやナラの原生林に囲まれた渓流沿いに松川荘と峡雲荘の2軒の宿がある。どちらも硫化水素泉のかけ流しで、森を眺めながら入る露天風呂が人気。乳白色の名湯が、体を芯まで温めてくれる。

峡雲荘

松川温泉・峡雲荘
日帰り入浴
料金
700円
日帰り入浴
営業時間
8時30分~19時、
不定休
TEL 0195-78-2256
公式サイトを見る

松川荘

松川温泉・松川荘
日帰り入浴
料金
700円
日帰り入浴
営業時間
8時~18時、土曜・祝前日~15時、不定休
TEL 0195-78-2255
公式サイトを見る

八幡平、岩手山の情報発信基地
「松尾八幡平ビジターセンター」

松尾八幡平ビジターセンター
松尾八幡平ビジターセンター

八幡平・岩手山エリアの登山情報や、自然の成り立ち、動植物、歴史や文化など、さまざまな情報が得られる場所。隣接する物産館では、八幡平エリアの特産品や野菜が購入でき、食堂では地元食材を使用したメニューが人気。

開館時間 9時〜17時
利用料 無料
休業時期 12月29日〜1月3日
公式サイトを見る

問合せ先

八幡平市観光協会
TEL:0195-78-3500
https://www.hachimantai.or.jp/

山と溪谷増刊7月号 夏山JOY 2025より転載)

この記事に登場する山

岩手県 / 奥羽山脈北部

八幡平 標高 1,613m

 山頂は八幡平市の南西端に位置する。山名は坂上田村麻呂や八幡太郎義家の命名説が有力。別にミズゴケの堆積した軟らかい湿原を「やわた」と呼び習わし、後世それに当て字をしたとの説もある。  オオシラビソの樹海の中にミツガシワの咲く池塘が点在する広大な湿原がこの山群の特徴である。湿原にはイワイチョウ、ニッコウキスゲ、コバイケイソウが咲き、ワタスゲの綿毛が揺れる。高層湿原に固有な黒味を帯びたカオジロトンボもいる。  この特異な風景を見渡せる展望台は山頂、源太森、茶臼岳である。盛土をしてある山頂にはバス停留所から舗装道をハイヒールでも30分で行ける。また、3つの展望台を結ぶコースは盛岡駅発八幡平頂上行のバスで松尾鉱山跡を通り茶臼口で下車し、登りだす。  茶臼岳山頂からはオオシラビソの樹海と西側に熊沼が見える。その先は畚岳(もつこだけ)、右手が八幡平頂上だ。畚岳の左手には大深岳、三ツ石山、姥倉山、岩手山と、裏岩手縦走路が一望できる。その先の源太森からは八幡沼が見渡せる。このコースは山頂まで2時間30分。  すぐ下の藤七温泉か、県境を越えて秋田の後生掛温泉に下れば温泉も楽しめる。  2011年10月31日、東日本大震災による地殻変動で、これまでの標高から1m低くなったことが国土地理院から発表され、現在は1613mの山となっている。