その最大の特徴は、GPSでありながら、双方向通信も可能であることだ。
登山をしていれば、誰しもに遭難のリスクがある。
そんなときに「inReach Mini 2」がいかに力になってくれるか紹介したい。
新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着き、山へ出かける人が増えるなか、山岳遭難の発生件数が増えている。警視庁が2021年6月に発表した統計によると、山岳遭難のうち、最も多いのが「道迷い」で、発生した遭難全体のうち4割以上を占めている。
山で道に迷わないためには、「登るルートのことを事前にしっかりと調べる」「技術書や講習会などで読図・ナビゲーションスキルを身に付ける」「GPS機器を使いこなす」などの予防策がなによりも重要だが、それでも迷うときは迷うもの。以前、筆者の知人で、読図・ナビゲーションの講習会の講師を務める人から、「この前、道に迷っちゃってさ……」という話を聞いたときには、「『弘法にも筆の誤り』とは、まさにこのことか」と思ったものだ。
「道を間違えた」と気付いたときに大事なことは、まずは心を落ち着かせ、ダメージ(被害)の拡大を抑える行動をとることだ。理想は、現在地を再確認して元のルートに復帰することだが、もしそれが難しければ、やみくもに動くことは控えて、早めに救助要請することも適切な対応だと言える。
とはいえ、現実には、道を間違えたことで焦ったり、動揺したりして、深みにはまってしまうケースが多々ある。昨今、携帯電話の電波状況がよくなり、山でも通話やメッセージの送受信ができるエリアが広がっているが、完全に網羅されているわけではない。登山道から大きく外れ、沢や谷に迷い込めば、つながりにくくなる。道を間違え、行程が予定よりも大幅に遅れたとき、「一刻も早く下りなければ……」「家族と連絡を取らなければ……」という気持ちが無理な行動につながり、状況を悪化させてしまう。
いざというとき、気持ちを落ち着かせて、最善の対応を取るためには、「連絡手段が確保されている」ということが重要なファクターとなる。その点において、ガーミンの「inReach Mini 2」は心強い〝お守り〟になる。
「inReach Mini 2」は、GPSデバイスとして行動した軌跡(トラック)を記録することはもちろん、イリジウム衛星を介した通信機能を備えているため、スマホの電波が届かない場所でも家族や友人に位置情報つきのメッセージを送れるし、相手からのメッセージを受信することもできる。つまり、どこにいても「つながること」ができるのだ。
「つながること」が道に迷ったとき、どれほど力になってくれるのか。遭難時の登山者の心理状態を読み取りながら、考えてみよう。
今年の夏、登山中に行方不明となり、その数日後にケガを負いながらも無事救助された登山者がいた。報道によれば、山頂からの下りで道に迷ったとき、精神的な動揺も重なり、斜面で足を踏み外して滑落してしまい、ケガを負ってしまったのだという。
また、別の登山者は、道に迷い、時間が遅くなってしまったことに焦りを感じて、日没後、霧の中で無理な行動を続けた結果、滑落。ケガはなかったものの、トレッキングポールとヘッドライトを失い、その後1週間にわたって山中をさまようことになってしまった。
両者に共通するのは、道に迷ったことで「動揺」や「焦り」があり、そのことが滑落というダメージの拡大につながってしまったことだ。
あくまでも仮定の話だが、道に迷ったとき、もし「inReach Mini 2」を持っていたとしたら、どうだっただろうか。メッセージ機能を使って家族や友人と連絡が取れていれば、焦りや動揺を軽くして、気持ちを落ち着かせて冷静な判断・行動ができていたかもしれないし、「無理をしない方がいい」「救助要請をした方がいい」といったアドバイスをもらえたかもしれない。メッセージには位置情報も付与して送信できる。現在地がわかれば、遭難者も家族・友人も心を落ち着けることができるはずだ。
誰とも連絡を取ることができないまま、山の中で何日も一人取り残されていれば、どうしても気持ちは落ち込み、場合によっては「もう助からないかもしれない」と諦めてしまうかもしれない。しかし、連絡を取り合って、「家族や友人が待っている」と思うことができれば、「なんとしても生きて帰ろう」という気持ちは強く、大きなものになるのではないだろうか。
「inReach Mini 2」にはほかにもMapShare機能があり、家族や友人はデバイスの位置情報を自宅のパソコンやスマホからリアルタイムで確認・共有することができる。もし一定時間動いている形跡がなければ、MapShareを見ている家族や友人が「なにかあったのではないか?」と気付き、なんらかの対応を取ってくれる可能性もある。
さらに、山中でケガをした、あるいは自分の現在地がわからず、行動不能な状況に陥ってしまったときには、デバイスのSOSボタンを押すことで、どこにいても救助要請を行なうことができる。
山の中で道に迷ったり、けがをしてしまったりしたとき、連絡手段がなにもなく、一人でいることほどつらいことはない。しかし、「inReach Mini 2」によって家族や友人とのつながりが保たれていれば、必ず「生きて帰る」ための大きな力となってくれるはずだ。