晩秋の甲武信岳で日の出を眺め、川浦温泉山県館で信玄の隠し湯に浸かる

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ひとり気ままに山と温泉を楽しむ温泉登山。登山前後に泊まりたい至福の温泉宿を紹介します。第34回は甲武信岳と川浦温泉へ。

写真・文=月山もも

山梨県・埼玉県・長野県の3県の境にある甲武信岳は、6月のシャクナゲが美しいことでよく知られていますが、私は紅葉が終わった11月中旬ごろに登るのが好きです。

山頂直下の山小屋「甲武信小屋」が11月下旬まで宿泊営業を行っているため、1泊2日で無理なく晩秋の甲武信岳を歩くことができます。

 

甲武信小屋に泊まり朝焼けに染まる富士を望む

中央線の山梨市駅からバスに乗り、終点西沢渓谷で下車します。

西沢渓谷では11月上旬まで紅葉が楽しめるので、例年11月20日ごろまでは塩山駅始発の西沢渓谷行きのバスも運行しています。

紅葉シーズンの終わりと共にバスの本数が減ってしまうので、山行計画を立てる際は注意が必要ですが、静かな山歩きを楽しむには絶好のシーズンです。

西沢渓谷を30分ほど歩いて徳ちゃん新道に入ります。序盤はすっかり葉の落ちた白樺の林をゆるやかに登りますが、傾斜は徐々に急になり、周辺の木々が針葉樹に変わるあたりから地面に雪が見られるようになりました。

甲武信岳小屋に着く直前には急な下り坂があるので、念のためチェーンスパイクを装着します。小屋に着くころには厚い雲が空を覆っており、山頂には翌朝向かうことにして早めに休みました。

翌日は日が昇る前に山頂に向かい、山頂で日の出と朝焼けに染まる富士山を眺めることができました。小屋に戻り、朝食をいただいて来た道を下山します。

 

紅葉の木々を窓から眺められる快適な部屋

西沢渓谷からバスで山梨市駅に向かう途中の「川浦温泉」バス停で下車し、目の前にある宿「川浦温泉 山県館」にチェックイン。

案内いただいた8畳の和室にはチェックイン時から布団が敷かれていますが、1人なのでそれでも広々。急坂続きの徳ちゃん新道の下りで疲れていたので、夕食前から布団でごろごろできるのはありがたいです。敷き布団が厚手で寝心地がいいのもうれしい!

窓を開けると宿の周辺にはまだ紅葉が残っており、風呂上がりに部屋でビールを飲みながら景色を楽しみました。

 

シャワーも源泉!泉質も景観もすばらしい

浴室は、時間帯で男女が入れ替わる大浴場が2箇所と渓流沿いの露天風呂、それから今回は利用しませんでしたが有料の貸切風呂があります。

大浴場のうちの一つ、庭園に面した「薬師之湯」の内湯は、赤御影石を使った落ち着いた雰囲気。浴槽はかなり広く、ジャグジーも楽しめます。

湯温の異なる2本の源泉を持ち、毎分1200L以上の湧出量を誇る川浦館では、浴槽はすべて源泉かけ流しで、シャワーのお湯にも源泉が使われています。アルカリ性単純泉の肌にやさしい源泉で、登山中に冷たい風や日差しに晒された肌に潤いを与えてくれます。

薬師之湯の露天風呂からは、庭園の木々の紅葉を眺めることができました。

 

もう1つの大浴場「せせらぎの湯」にも、広々とした内湯と露天風呂があります。

内湯の浴槽では寝湯が楽しめるようになっており、やや熱めのすばらしい源泉を心ゆくまで楽しみました。

渓流沿いの露天風呂「信玄公岩風呂」は、笛吹川のほとりにあり、渓流の眺めと音を楽しめる広々とした露天風呂です。

「混浴時間」「男性時間」「女性時間」に分かれており、16時から18時30分までが女性時間です。女性時間帯にゆっくり、浸からせてもらいました。

 

ワイナリーが造った山梨県産どぶろくを楽しむ

食事は朝夕共に食事処でいただきます。

食前酒の甲州ワインはフレッシュなぶどうの香りが魅惑的。メニューにも甲州ワインがいろいろとラインナップされています。この後もワインを注文したい気持ちが高まりましたが、さらに気になるメニューを見つけてしまいました。

ワイナリーを営むスズラン酒造が、通常の酒米ではなく山梨県産のこしひかりを100%使用して作ったという濁酒(どぶろく)です。ほんのり甘く、味わいは濃厚ですが舌触りはサラッとしていて、お刺身や焼き魚にも合います。

お刺身は鮪のトロと鯛、平貝。山女魚の塩焼きの付け合わせには赤蒟蒻煮がついていました。

揚げ物は「白子とウニのカダイフ揚げ」。小麦粉で作られた極細麺「カダイフ」を衣にしてあり、パリパリ食感が楽しめます。また、白子とウニという濃厚な食材もどぶろくによく合いました。

甲州牛ロースのしゃぶしゃぶは、ポン酢とごまだれでいただきます。

最後にご飯とお吸い物、デザートの「フランボワーズのムース」をいただいて、ごちそうさまでした!

 

翌日の朝食はお粥とたくさんの小鉢のおかず、出来たてのお豆腐などいただき、お腹いっぱい。

チェックアウトの10時まで部屋でのんびり過ごし、10時に塩山駅まで送っていただきます。奥秩父登山の後に泊まると幸せになれることまちがいなしの宿でした。

 

*紹介した食事、サービスの情報は2021年11月取材時の内容です。
 

川浦温泉 山県館

料金:1泊2食付き/1室1名利用23,000円~ ※プラン、時期によって変動
住所:山梨県山梨市三富川浦1140
電話:0553-39-2111
HP:https://yamagatakan.com/

プロフィール

月山もも

山と温泉を愛する女一人旅ブロガー。山麓の温泉宿を一人で巡るうちに「歩いてしか行けない温泉宿」に憧れを抱き、2011年から登山を始める。ゆるハイクから雪山登山まで、テントも一人で担ぐ単独登山女子。 ブログ「山と温泉のきろく」https://www.yamaonsen.com/に、温泉と登山のすばらしさについて綴っている。山と温泉に魅せられる人を増やすことが、人生のよろこび。著書に『ひとり酒、ひとり温泉、ひとり山』(KADOKAWA)。

ひとり温泉登山

山と温泉を愛する月山ももさんによる月1連載。登山前後に入りたい極上の温泉宿をご紹介します。

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