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無道二千m峰21/126/768無道

黒檜山( 南アルプス)

パーティ: 1人 (1357 さん )

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行程・コース

天候

曇り

登山口へのアクセス

マイカー

この登山記録の行程

大曲(5:20)川原(1,490m/7:00)黒檜沢出合(7:20)F1下(1,620m/10:20)稜線(2,440m)黒檜山(14:00)熊沢出合(16:45)林道(1,490m/17:30)大曲(17:55)

コース

総距離
約23.2km
累積標高差
上り約1,461m
下り約1,462m

高低図

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登山記録

行動記録・感想・メモ

その① 1998.6.21
 市野瀬部落の先で濁流となった三峰川を右岸に渡り、昨日の雨量の多さを知る。暫く走ると、生コン車が道を塞いだ倒木の撤去作業を待っている。落石や倒木、道幅一杯広がった土砂を乗り越えて着いた大曲の駐車場には、流石に1台の車も見当らない。
 清々しい中にも幾許かの暑さを感じながらTシャツ1枚になって林道を歩いて行くと、治山作業の車が林道を塞いだ土砂で立往生している。1時間程歩いて塩見岳の旧登山道分岐で一本立て、水の流れる砂利道を尚も進んで、取水口の直ぐ上流の熊沢が出合う川原に降りる。
 テントを張って沢登り支度になるが、三峰川は奔流となって轟々と流れ、弛む処が無い。渡れそうな地点の見当を付けて水深を計ると1mもある事が判り、強烈な水勢に渡渉を断念する。川原の木陰にシュラフカバーを広げて昼寝をし、夕方、枯木を集めて焚火の用意をする。
水流の端の部分では、水位が下がるに連れて本流から切り離された水溜りが出来ている。時々、本流の波が堆積した土砂を越えて水を補ってなかなか濁りが取れないが、その濁水の底から川虫が一斉に浅い所へ浮上して本流へ脱出しようと試みる。
滅多に見られる光景ではないのだろうが、千載一遇のタイミングで労せずしてこれを捕まえ釣餌とする。濁流も幾分か澄んできて、「この位なら餌が見えるかも知れない」と竿を出すと、予想通り、大岩の下方の澱みに岩魚が避難しており、8寸弱の良型2匹を得る。背骨が湾曲している (初めて見る) 1匹は、健気に生きて大きくなった努力に敬意を表してリリースする。大岩の下のトロでは何回か当たりがあるが、喰い付かない。

 翌朝、熊沢遡行を目指す。水位は昨夕より50cm下がって、川底が見える位にまで澄んでいる。水流は強く、水深50cm程の所を慎重に斜めに渡渉する。熊沢の水は既に綺麗に澄んでいるが、昨日の増水の跡を見て「例え昨日本流を渡渉出来たとしても、沢の遡行は無理だったろう」と、改めて水の力の凄さに思いを致す。
 豊富な釜を見て、「1時間ばかりを釣りに割こう」と熱中する。魚影は濃く、雨後の所為もあって活発に喰う。7寸前後の3年物が主流で、5寸の2年物はリリースする。碧色の釜で最近では最大級の9寸物を釣り上げて喜色満面となる。
 沢の傾斜が増して転石で塞き止められた滝が幾つか続き、どんどん高度を上げる。正面の枝沢から30m程の滝が垂直に落下しているのを見て、「先は如何なっているのだろう」と心配しつつ右折して薄暗いゴルジュに入る。ナメ状の沢床を進むと2m程の滝が現われ、全身ずぶ濡れになって磨かれた岩にホールドを探すが、圧倒的な水の圧力に押し戻されてギブアップする。暗いゴルジュの先には出口の滝(3mと6m程)が白く豊かに水を落として輝いている。両岸は切り立った岩場でとても登れそうには見えず、遡行を諦めざるを得ない。「水量の落ちた紅葉の頃アタックすれば通過出来て面白いかも知れない」と、悔しさを交えて観察する。
 出合まで戻りテントを撤収して一休みしていると、「自転車で入った」と言う釣人が遡行して来る。取水堰にはMTBと小型バイクが置いてある。道路には2か所の山崩れが発生して通行困難となっているが、帰り着いた大曲には釣人の車が十数台に増えている。

その② 1998.7.12
 前線が北上したり南下したりして、梅雨は終わった様でいてなかなかすっきりとは晴れない。増水で行動を制約された2週間前の事が頭にあり、雨の予報を受けて土曜日は自費出版のための原稿を整理し、雑用を片付けて過ごす。二児山頂に残した名刺を見て手紙をくれた名古屋のK氏に遅い返事を書き、次週の3連休に行く野呂川源流・仙丈ヶ岳の計画書を柏山岳会の川崎さんに送る。
 日曜日の天気予報には小傘マークが付いているが、降雨予測図の雨域からは外れているのに勇気を得て20時に自宅を出る。至る所で事故渋滞に引っ掛かり、林道で鹿の挨拶を受けて大曲着は深夜1時頃となる。予想に反して車は1台しか見当らない。

 黒桧岳登頂を期して早朝に出発する。ゴルジュに阻まれて退却した悔しさに加え、下山時に二人乗りのミニバイクに追い越された事とMTB利用の釣人を目撃した事から自転車の有効性を思い起し、ワンタッチで車輪を着脱出来る21段変速のMTBを購入して満を持しての初乗りだ。塩見岳登山口、熊沢出合ともに歩きの半分程の時間で達して威力を思い知るが、「21段変速ギアなんて過剰装備だ」と思っていたのに反し、林道には最大ギア比でもしんどい所があり、2度程降りて押す。
 三峰川沿いの林道には既にミニバイクが停めて在り、自転車を岩陰に隠して出発する。林道から川原に降り、渓流靴に履き替えて進むとペアーの釣人に追い着く。「当りは無い」と言う。間も無く黒桧沢出合に着き、水量が少なく立木が迫っているのを気にしながら竿を出して釣り上がると、魚影は濃く9寸物を含む数匹を物にする。
 最初の滝が現われた10時過ぎから遡行に専念しF1:1+4m(1,620m)、F2、F3:3+7m、F4:8m、F5:10m(1,755m)、F7と見映えのする滝を次々と登って高度を稼ぐ。二俣(2,180m、12:30)の水は何れも同一の岩壁の下から湧出しており、ここで靴を履き替える。
 草付きからルンゼに入って詰めると岩壁で行き詰まり、左の岩場に逃げてどうにか樹林帯に取り付く。傾斜は非常に急で、草付で「進退窮まったか!」と冷汗を掻き、バイルとハーケンを持参しなかったのを反省する。垂直の草付を必死の覚悟で登り、「果たして頂上まで登る事が出来るだろうか? 下降するにしても大変だ」と緊張する所が連続し、「どこまでこんな状態が続くのだろう」と気を揉みながら、岩と樹の混じった尾根の弱点を探して遮二無二登る。
 やがて緩い北尾根に出て緊張感から解放され、登頂を確信して安堵する。逸る心と心臓の鼓動を押さえて柔らかい夏草を踏んで進むと、ガスに包まれて静寂が支配する山頂に着く。
 2回目の挑戦で山頂を踏んだ喜びは大きいが、下山路も油断がならず喜び一色と言う訳には行かない。「変な斜面に迷い込んだら命取りになる」と肝に銘じ、山頂から真西へ伸びている尾根を忠実に辿って下降を試みる。
 2,120m地点で西南西に方向を変え、五月蝿くなった小木を掻き分けて尾根の下降を続ける。2,150mの小ピークから西へ転じ、1,870mから南西の細尾根を辿る。急斜面でスリップするが、腕が木に引っ掛かって事無きを得る(強かに打った右腕は、これが切っ掛けで五十肩になり、1年余も不自由する羽目に陥る)。最後は尾根が消失し、急な斜面を木に掴まりながら熊沢へ下りる。
 出合は直ぐ下流で、前回敗退した時の渡渉点を右岸へ渡り、自転車の所へ戻る。MTBの威力は下りではいっそう絶大で、歩いて2時間掛かった道を30分で大曲に帰着する。

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登った山

黒檜山

黒檜山

2,541m

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