主要山域
鈴鹿山脈
写真:服部政信 朝明川沿いの千草付近からの鈴鹿山脈。左から武平峠、御在所岳、国見岳、水晶岳、羽鳥峰
鈴鹿山脈は、滋賀と三重の県境を南北に走っている。北は伊吹山麓の関ガ原、南は布引山地の加太の地溝によって区切られ、この間の総延長およそ60km、東西幅約10kmにわたる地塁を形成している。
地質は秩父古生層に属し、砂岩、頁岩(けつがん)、石灰岩などからなる。これを地域的にみると、北部は石灰岩、南部は花崗岩帯が主となり、御池岳のカルスト、宇賀渓の砂山、御在所岳の藤内壁など、各所に特徴のある地形、景観をつくり出している。南部の山稜に崩落地が多いのも地質との関係が深い。地形をみると、三重県側の東斜面は、伊勢平野に向かって急崖となり、反対の滋賀県側は緩やかな傾斜を描いて近江盆地につながる非対称型の傾動地塊である。山頂部に平坦地の多いのは、準平原が隆起した結果だといわれる。
主稜上に位置する主な山は、北から霊仙山、御池岳、藤原岳、竜ヶ岳、釈迦ヶ岳、御在所岳、鎌ヶ岳、仙ヶ岳。主稜から外れるものに雨乞岳、綿向山(滋賀県側)、入道ヶ岳、野登山(三重県側)がある。最高峰は1238mの御池岳で、雨乞岳がこれに次ぐ。
これらの山と山の間に峠がある。五僧峠、鞍掛峠、治田峠、八風峠、根ノ平峠、武平峠、安楽越などよく知られたものだけでも十指に余る。古くから近江と伊勢を結ぶ間道として利用され、豊かな伝説に彩られている。鈴鹿の山の歴史は、これらの峠抜きには語れない。鞍掛、石榑(いしくれ)、武平、安楽、の各峠は、現在、車による通行が可能である。
豊富な植物も鈴鹿山脈の特色といえる。本州中央部という位置と、日本海からの季節風、太平洋の黒潮の影響などによって、中部温帯固有種はもとより、日本海型のもの、高山性のものなど、1800種にもおよぶ植物がみられる。ここで発見された新種も多い。さまざまな草花、樹木に出会える喜びは、鈴鹿の山を歩くもう1つの楽しみであろう。
信仰、修法の山であった鈴鹿は今、登山のほか、観光、レクリエーションの山として年間200万もの人々に親しまれている。25年も続いている鈴鹿セブンマウンテン登山だけでも毎年2000人近い参加者がある。
山域は昭和43年、国定公園に指定された。これからも貴重な自然をひとりひとりが守っていきたいものである。
三重県側の交通の便はよく、近鉄と三岐鉄道の最寄駅に接続するバスを利用すれば、30分から1時間ほどで主な山の登山口に出られる。各山頂への所要時間は、最も長いと思われる竜ヶ岳の遠足尾根でも5時間弱。3~4時間もあればたいていの山には登ることができる。