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主要山域

九重連山

九重連山

写真:市川傳  熊本県阿蘇郡波野村からの九重連山。中央の三角形が久住山、右端の大きなピークは大船山

 阿蘇くじゅう国立公園のなかにあって、東側の丘陵地に、まるで峰を競り合うかのようにわだかまる山塊、それが「九重連山」である。
 そこには九州本島の最高峰があり、1700m級の峰々が11座、1000m級ともなると、実に35座がひしめいている。しかも、山群の南北には久住、飯田(はんだ)の2つの高原が広がり、全体として均整のとれたスケールの大きい風景を呈している。
 九重の正しい呼び名は「九重火山群」である。それらは新生代第四紀(200万年前~現代)の角閃石安山岩からなる山で、山陰系火山岩類と呼ばれる火山岩が集まってできたトロイデ状火山である。
 そこには火山に象徴される豊富な地熱エネルギーが蓄積されており、今日では八丁原(はっちょうばる)、大岳(おおたけ)の2つの発電に利用されている。と同時に豊富な温泉を各地に湧出させてもいる。
 九重連山は、まさに地熱の豊庫であり、人間はいつしか火山と共存しつつ、自然の恩恵を最大限に享受してきたのである。
 登山のあとのひと風呂ほど心地よいものはなく、山への思いを馳せるのは、また楽しいひとときである。
 山には数々の秘められた歴史があり、脈々として今に息づいている。
 九重連山は『豊後風土記』や『万葉集』には「救覃(くたみ)ノ峯(みね)」あるいは「朽網山(くたみやま)」として記され、山を神として仰ぐ風習や生活との関わりが記されてきた。ふもとに寺院を建立し、山頂にはその奥ノ院を祭って、古代の人々は祈りあがめたのである。それは、近代登山の歴史でもある。現存する久住山(くじゅうさん)猪鹿狼寺(いからじ)や法華院(ほっけいん)は登山の歴史とは、決して無関係ではないのである。
 飯田高原を南北に貫いて走るやまなみハイウェイからの眺めは、岳人たちの登高意欲を無性にかき立てる。東の崩平山(くえんひらやま)(1288m)に始まり、右へとパーンすれば黒岳(くろだけ)(1587m)、平治岳(ひじだけ)(1643m)、三俣山(みまたやま)(1745m)、星生山(ほつしようざん)(1762m)、黒岩山(くろいわさん)(1503m)、そして涌蓋山(わいたさん)(1500m)が円となって高まりを見せる。いずれも粒ぞろいの名峰で、長者原(ちょうじゃばる)や牧ノ戸峠登山口は、岳人や観光客で賑わっている。
 久住山は、どの山も取り付きやすく、コースも比較的楽で、積雪期や悪天候の場合を除けばハイキング気分で誰でも登山できる。ミヤマキリシマが山肌をピンクに染めるころは、山は一年中で最も賑わいを見せる。山頂に立てば、汗ばんだ体をさわやかな風が包み込む。草野、花野、雪野と、四季に移ろう九重。文人墨客のみならず多くの人を虜にしてしまう不思議な魅力を秘めた九重こそ、九州登山のメッカと呼ぶにふさわしい山である。

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九重連山の主要な山

中岳

1,791m

九重山

1,787m

大船山

1,786m

稲星山

1,774m

星生山

1,762m

三俣山

1,748m

白口岳

1,720m

平治岳

1,643m

黒岳

1,587m

由布岳

1,583m

黒岩山

1,503m

涌蓋山

1,500m

万年山

1,140m