熊野古道中辺路を歩いて湯の峰温泉へ。湯の峯荘で歴史ある湯と美熊野牛を堪能

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ひとり気ままに山と温泉を楽しむ温泉登山。登山前後に泊まりたい至福の温泉宿を紹介します。第22回は参詣道の歴史を感じる旅。

写真・文=月山もも

 

熊野大社へ通じる長大な参詣道である熊野古道。中でも和歌山県田辺市から熊野本宮大社に至る「中辺路(なかへち)」は、最もよく歩かれており「熊野古道」と言えばこの道を思い浮かべる人が多いようです。今回はこの中辺路を歩くことにしました。

 

発心門王子から熊野本宮大社に至り、湯の峰へ

紀伊田辺駅からバスでアクセス可能な「発心門王子」から歩き始め、まずは熊野本宮大社を目指します。

道は階段か石畳になっており、傾斜もきつくないのでのんびりと歩けます。時折、視界が開けるポイントでは、始まりかけた紅葉が目を楽しませてくれました。

途中の茶屋で紫蘇ジュースをいただいて一休みし、熊野本宮大社に向かって歩を進めていくと「ちょっと寄り道」という迂回ルートの案内板があったので立ち寄っていくことに。

「見晴台地」なる展望スポットからは、紅葉に染まる木々と、遠くには日本一の大きさを誇る大斎原(おおゆのはら)の大鳥居がはっきりと見えました。

そこから本宮大社までは30分ほど。大勢の人で賑わう本宮大社で参拝した後は、本日の宿泊地である湯の峰温泉まで歩きます。本宮大社から湯の峰温泉まで参詣道がつながっているのです。

4世紀に開湯され、熊野詣の湯垢離(湯で身を清めること)に使われたという湯の峰温泉の「つぼ湯」は、2004年に世界遺産にも登録されています。1組ずつ貸切での利用となるため数時間待つことも珍しくないそうですが、ラッキーなことにこの日の先客は1組だけ!「日によって7回色が変化する」というお湯にありがたく浸からせてもらいました。

 

素朴な雰囲気の眺めのいい和室でひと休み

本日の宿「湯の峯荘」は、温泉街から少し離れた高台の上にあります。

お部屋は8畳の和室で、トイレや洗面所、湯沸かしポットに冷蔵庫など必要なものはしっかり揃っており、快適でありつつどことなく素朴な雰囲気のお部屋でした。日当たりがとても良く、窓からは田園風景を眺められます。

 

広い大浴場と家族風呂はすべて源泉かけ流し

ひと休みした後はもちろんお風呂に。

それぞれに露天風呂の付いた大浴場が2つと、貸切利用できる家族風呂が2つあります。

 

大浴場は夜10時に男女が交換となりますが、深夜早朝も入浴可能です。

夕食前に女湯となっていた大浴場は、広々とした露天風呂に大量の源泉がかけ流されていました。

秋のひんやりとした空気の中で、夕暮れに染まる周囲の山を眺めながら熱めの湯に浸かり、気持ちよくて日が暮れるまで長湯してしまいました。

 

2つある家族風呂は「入浴中」の札をかけて内側から鍵をかけて入る仕組みで、空いているときにいつでも利用可能です。

外が明るい時間帯に入ると、窓から光が差し込んで幻想的な雰囲気でした。

 

夜10時に入れ替わったもう1つの浴室には、翌日の朝に入りました。

雨が降っていたので広々とした内湯に浸かることにします。湯口にはコップも置いてあり、飲泉も可能です。口に含むと、ほんのりとゆで卵のような香りがあり、飲みやすい源泉でした。

 

部屋食でゆっくり、希少和牛の美熊野牛を堪能

夕食はお部屋に運んでいただきます(※食事処の場合もあり)。料理は最初にある程度並べていただき、焼き魚やご飯など温かいものを都度持ってきていただく方式でした。

お酒は、まずは生ビールをお願いしました。

先付けの手作り豆腐は塩でいただきます。お刺身はお魚の4種盛りの他に馬刺しもあって豪華です。

鍋料理は熊野市のブランド牛「美熊野牛(みくまのぎゅう)」の温泉しゃぶしゃぶ。

ほどよくサシの入ったリブロースを、温泉水でしゃぶしゃぶしてたっぷりの薬味と一緒にいただきます。量もたっぷりあり、とろけるような上質なお肉でした。

焼き物の「あまごの塩焼き」は、炭火で温められた状態で提供していただきました。

冷めてしまいやすい川魚の塩焼きを温かいままいただける工夫がうれしかったです。ここで、和歌山の地酒「つれもていこら」の熱燗を1合注文しました。

この後は「美熊野牛ミスジのミニステーキ」「鱈とチーズのブイヤベースパイ」と洋風の料理が続きます。意外と辛口の日本酒にもよくあって、お酒も料理も残さずいただきました。

翌朝の朝食は食事処で。自慢の温泉水を使った優しい味わいの温泉粥と湯豆腐で、体の内側からも癒やされました。

1度は行ってみたいと思っていた湯の峰温泉が、何度でも行きたい場所になった旅でした。

 

*紹介した食事、サービスは2020年11月取材時の内容です。
 

湯の峯荘

料金:1泊2食付き/1室1名利用17,750円~、2名14,450円~ ※プランによって変動。記事では「堪能プラン」を利用

住所:和歌山県田辺市本宮町下湯川437
電話:0735-42-1111
HP:http://www.yunominesou.com/

 

プロフィール

月山もも

山と温泉を愛する女一人旅ブロガー。山麓の温泉宿を一人で巡るうちに「歩いてしか行けない温泉宿」に憧れを抱き、2011年から登山を始める。ゆるハイクから雪山登山まで、テントも一人で担ぐ単独登山女子。 ブログ「山と温泉のきろく」https://www.yamaonsen.com/に、温泉と登山のすばらしさについて綴っている。山と温泉に魅せられる人を増やすことが、人生のよろこび。著書に『ひとり酒、ひとり温泉、ひとり山』(KADOKAWA)。

ひとり温泉登山

山と温泉を愛する月山ももさんによる月1連載。登山前後に入りたい極上の温泉宿をご紹介します。

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