縦横無尽に歩くための指南書『増補改訂版 詳しい地図で迷わず歩く奥武蔵・秩父 500㎞』【書評】

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評者=東 秀訓(ナビゲーションインストラクター)

増補改訂版 詳しい地図で迷わず歩く奥武蔵・秩父 500㎞

著:佐々木 亨介
発行:山と溪谷社
価格:2200円(税込)

 

奥武蔵・秩父の山は山麓を鉄道が通り、大変アクセスしやすい身近な山域です。山麓には集落や畑・果樹園があり、駅から歩き始めるとゆったりとした幸せな時の流れを感じます。「山高きが故に貴からず」。自然と人の営みが豊かな地であるからこそ、訪れるだけで幸せを感じると思うのですが皆さんいかがでしょう。

本書はこのすばらしい山域を縦横無尽に味わう指南書とも言えるガイドブックで、著者は地図読みの入門書も著作にもつ佐々木亨さん。本書の特徴として住宅地や山中の分岐点など要所に詳しく拡大図が添えられています。この山域は人の生活圏から近く、この山域の特徴である山上集落に暮らしている人々も多いので、登山道だけでなく生活の道も多く交差しています。地図を頼りにだけでは、思わず人の庭先にお邪魔することや、山仕事の道に迷い込むこともあります。そんなことにならないよう、本書は丁寧に作られています。アクセスについても公共交通機関だけでなく、マイカーを利用した場合に駐車場所に困ることがないように、駅周辺のコインパークと鉄道・路線バスに乗り換える方法も紹介されています。

近年スマートフォンのGPSアプリを利用する登山者が増えていることに対応してKMZファイルの提供を順次進めているので、現在位置や進路の確認も容易になるでしょう。さらにこの山域に初めて訪れる方や初心者の方に向けて、巻頭には季節ごとの美しい花やおすすめどころだけでなく、特に気象上の注意点と持参すべき装備が簡潔にまとめられているので安全登山に大変役立ちます。

 

 

山と溪谷2022年7月号より転載)

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