雪山では悪天候時の登山は命取り、アクシデントに対応できる準備を 島崎三歩の「山岳通信」 第288号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2022年12月27日に配信された第288号では、冬山の厳しいコンディションについて改めて言及。自身の体力・経験に見合った山選びをすることの大切さを説明している。

 

12月27日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第288号では、期間中に起きた2件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 12月24日、八ヶ岳連峰の赤岳で、3人パーティで入山した73歳の男性が赤岳に向けて地蔵尾根を登山中に、疲労および装備不足等により行動不能となる山岳遭難が発生。諏訪地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 12月25日、北アルプスの有明山で、狩猟のため7人パーティで入山した55歳の男性が、狩猟中に足を滑らせて滑落・負傷する山岳遭難が発生。松本広域消防署員が出動して男性を救助した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

12月3週は、山岳遭難の発生はありませんでした。冬山には、夏山とは違った魅力がありますが、風雪やホワイトアウトによる道迷い、深雪でのラッセルによる体力の消耗、吹雪による低体温症や凍傷など、山岳遭難のリスクは増大します。冬山は、厳しい自然条件下で行動しなければならず、常に危険と隣り合わせとなり、一年で最も厳しいシーズンと言えます。些細な準備不足や判断ミスが、致命的な遭難となるため、冬山に登るには体力や知識だけではなく、装備品を使いこなす技術力・判断力・経験が必要不可欠です。さらに、積雪や凍結等により、夏山の倍以上の行動時間がかかることもあります。
冬山登山を計画する際には、自身のレベルに見合った山選び、冬山装備を携行し、技術を習得してから入山しましょう。また、悪天候時の登山は命取りとなります。入山前に確認し、『入山しない』『撤退する』選択肢を持ちましょう。冬山に入山する以上、遭難のリスクは誰しもあるものです。アクシデントに対応できるような非常用の装備を携行し、登山計画の段階から、積雪を考慮した余裕のある日程と冬山に対応できる装備品を携行しましょう。

12月4週は、2件の遭難が発生しました。八ヶ岳における遭難は、長時間の行動と装備不足により、行動不能となったものです。もし、付近に山小屋等がなく、その場でビバークをせざるを得なければ、風雪や気温低下によって低体温に陥るなど生死に関わるリスクを伴います。
こういったリスクを減らすために、事前準備を徹底、予備の装備を携行するなど、時間に余裕を持った行動を意識することが必要です。そして、行きたい山、過去に登頂したことのある山ではなく、自身の体力・経験に見合った山選びをしましょう。

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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