もしものときに備えておきたい、登山用ファーストエイドキットを解説

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登山中のトラブルの応急処置に必要な「ファーストエイドキット」について紹介。監修は国際山岳看護師の中村富士美さんです。

構成=山と溪谷ch.、監修=中村富士美

※この記事は、山と溪谷ch.の動画を編集したものです。

穂高

経験豊富な登山者

いろいろ挑戦していきたい登山初心者

穂高:今回は、ケガや体調不良などのトラブルが起きたときの応急処置に必要な「ファーストエイドキット」について紹介するわ。

梓:登山者必携の大切なアイテムですね。

穂高:ポイントはどんな場面で必要かを理解した上で、きちんと使えること。処置が難しくて使えなければ意味がないからね。では、早速紹介していくわ。

中身はこちらの17点。全部持っても、重さは300g以下でコンパクトよ。

ファーストエイドキット
  1. エマージェンシーシート
  2. 使い捨てカイロ
  3. 内服薬・軟膏
  4. 経口補水パウダー
  5. 救急絆創膏/湿潤療法用絆創膏
  6. ワセリン
  7. 滅菌ガーゼ
  8. プレカットのテーピングテープ
  9. 穴を開けたペットボトルのキャップ
  10. 安全ピン
  11. ビニール手袋
  12. ポリ袋
  13. サージカルテープ
  14. ハサミ
  15. 綿棒
  16. マスク
  17. 消毒薬・ジェル

梓:特別変わったものはないですね。穴開きペットボトルのキャプ、が気になりますが・・・

穂高:後で詳しく紹介するわ。それじゃあ、順番に解説するわね。

エマージェンシーシート

穂高:まず、エマージェンシーシート。体に巻き付けて体温の低下を防ぐものね。

梓:場合によっては救助を長時間待つこともありますからね・・・体に巻き付けて使うものなら、ツエルトがあれば、それだけでもいいですか?

穂高:う~ん、両方あった方がいいわね。体温低下を防ぐ、という目的では同じだけど、エマージェンシーシートは体温を逃がさない、ツエルトは風を防ぐもの。それぞれ機能が違うから、合わせて使えばより効果的ね。

梓:なるほど~。

使い捨てカイロ

穂高:使い捨てカイロも胸やお腹に熱源を当てることで、体を温めるわ。

内服薬・軟膏

穂高:内服薬は、鎮痛剤や胃腸薬、風邪薬など、飲み慣れているものね。薬は他人からもらうのも、あげるのもNG。

梓:薬は旅行の時にも持って行きますね。

穂高:軟膏は、炎症を鎮めるステロイド軟膏。虫刺されや植物によるかぶれへの対策ね。

経口補水パウダー

穂高:経口補水パウダーは、脱水時の水分補給に。塩分と糖質が配合されているから、脱水の回復にはベストなの。ペットボトル入りのものもあるけれど、持ち運びにはパウダーが便利よ。

梓:スポーツドリンクでもいいですか? それなら夏場はいつも持っていきますよ。

穂高:スポーツドリンクよりも塩分濃度が高いから、スポーツドリンクは通常時、経口補水液は脱水時で使い分けた方がいいわね。

救急絆創膏/湿潤療法用絆創膏

穂高:絆創膏は、小さな傷や靴擦れのケアに。湿潤療法用絆創膏も持ちたいわね。

梓:あ、この特殊な絆創膏・・・なんですか、これ?

穂高:傷口を乾燥させない「湿潤療法」という考えがあるの。傷口から出てくる体液には皮膚の回復を早める力があるのよ。その体液を乾燥させず保つ、ということね。それが簡単にできるのが、湿潤療法用絆創膏。

梓:へー、絆創膏も進化してるんですね。

ワセリン

穂高:ワセリンも、湿潤療法に必要なアイテムね。傷口に塗って乾燥から守るの。

梓:ワセリンならお肌の乾燥対策に持ち歩いていますよ。そんな使い方もあるんですね。

滅菌ガーゼ

穂高:滅菌ガーゼは、傷の保護に使うわ。なければ手ぬぐいやハンカチでもOK。サイズは使いやすければなんでもいいわ。

梓:大きな絆創膏みたいなテープつきのものでもいいですか?

穂高:ワンタッチタイプは便利だけど、傷口の大きさによっては使いづらいかもね。

プレカットのテーピングテープ

穂高:捻挫した足首の固定に使うテーピングテープは、知識がなくても使えるプレカットのものがおすすめ。

梓:確かに、使い方覚えられないです・・・これなら間違えないですね。

穴を開けたペットボトルのキャップ

穂高:穴を開けたペットボトルのキャップ。これは、傷を洗うときに便利なの。こんな感じね。

梓:おお、ピンポイントに勢いよく水が出せますね。

穂高:絆創膏を貼るときでも、傷口はきれいに洗ってから貼るのよ。ペットボトル入りのきれいな水は、下山までキープしておきたいわね。

安全ピン

穂高:安全ピンは捻挫や骨折をした腕を固定するときに使えるわ。Tシャツの裾で腕を包んで、胸元で安全ピンで固定するの。

梓:すごい技が!

ビニール手袋

穂高:ビニール手袋は、血液など手についた汚れによる感染から、ケガをした人とケアをする人を守るために必要よ。自分の処置をする時もね。

梓:家で調理用に使っているものでいいですか?

穂高:操作性がいいものならOKよ。大切なのは、血液や体液に直接触らない、ということだから。一度使ったら、必ず廃棄してね。使いまわしはNGだから予備もあると安心。

ポリ袋

穂高:ポリ袋は、傷に貼って乾燥を防いだり、処置で使ったビニール手袋などのゴミ袋にするわ。スーパーで小分けにするようなものでいいわね。

梓:ポリ袋を傷に貼る・・・?

穂高:傷口を乾燥させないようにするためよ。ワセリンと合わせて使うわ。傷口にワセリンを塗って、上からポリ袋を貼るの。

梓:ああ、湿潤療法、ですね。

サージカルテープ、ハサミ、綿棒

穂高:サージカルテープはガーゼを貼るときや、突き指の固定など、あればいろいろ使えるわね。ハサミはガーゼやポリ袋を切るときに使うから、小さい物があると便利。綿棒は傷についた砂を取り除いたりするときに使えるわ。

マスク、消毒液

穂高:最後に、最近は街のお出かけにも必需品になっているかもしれないけれど、マスクと消毒液も感染対策に必要ね。

梓:傷口の消毒ではなく、手の消毒のためですか?

穂高:そうね。山では水で手が洗えないから。傷口の消毒に関しては、最近は、傷口の除菌をすると傷を治す体の機能まで失ってしまうから水で傷を洗う、という考え方が主流ね。

梓:しみるのが苦手だったから、ちょっとうれしいかも。

穂高:以上、ファーストエイドキットについてでした。それでは、みなさんも安全に楽しく山を楽しみましょうね〜!

梓:また次回!

動画版も公開中!

【監修】
中村富士美
国際山岳看護師。青梅市立総合病院勤務。WMA医療アドバイザー、遭難者の捜索サポートを行なうLiSS代表。

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