行程・コース
天候
あられ、曇、翌日は晴れ
登山口へのアクセス
マイカー
その他:
小黒川キャンプ場からピストン
この登山記録の行程
1日目
11:06ー桂小場11:44ー野田場13:15ー横山道分岐13:40ー白川分岐14:04ー大樽小屋14:44
2日目
6:46ー胸突八丁(信大コース分岐)7:17ー津嶋神社8:22ー胸突の頭9:13ー10:17将棊頭山10:23ー10:50胸突の頭11:05ー津嶋神社11:17ー胸突八丁(信大コース分岐)11:44ー11:53大樽小屋12:23ー白川分岐12:39ー横山道分岐ー野田場13:03ー桂小場13:49ーゴール地点14:21
高低図
登山記録
行動記録・感想・メモ
今冬は千畳敷カールへのロープウエイが休止しているので、多くの方が木曽駒ケ岳へのクラシックルートである桂木場コースを登られている。さすがにこの季節、木曽駒ケ岳までは難しく、将棊頭山2730mに登られる方が多い。私もチャンスがあれば、と考えていたところ、うまく予定が空いて行けることになった。
桂木場登山口までは自動車では入れなくて、手前の小黒川キャンプ場のゲートから徒歩。ここの標高が1070mくらい。雪山を1700m往復して自宅まで1日で帰る力量はないので、途中の大樽小屋2070mで一泊することを計画した。これなら、1日目は1000m、2日目は将棊頭山まで700mの登高となる。これなら、将棊頭山登頂の確度が高まる。ただ、大樽小屋は収容人数5名くらいの小さな避難小屋。もし、一杯だったら駐車場まで下山を覚悟して登ることにする。また、この時期なので、極寒の避難小屋で一泊するのにシュラフやエアーマット、防寒具などが結構重くかさばる。さらに雪の状態によってはスノーシューやワカンの出番があるかもしれないので、自動車に積み込んでいく。
3連休の初日は所用があり、中日の23日に登山開始。ただ、前日まで雪雲がかかり、降雪の見込み。登る23日も昼頃まで雪雲があり、さらに強風と低温で、終日てんくらC。登頂するはずの24日も午前はてんくらC。それでも、SCWで見ると、24日は雲がなく、絶好の登山日和の見込み。頑張るしかない。
朝に自宅を出発、3時間半で小黒川キャンプ場到着。すでに、降りてきた方に状況を伺うと、新雪でノートレースだったため、撃沈して降りてこられたそうだ。20名くらい登っているとのことだった。自動車の台数も10台以上だったので、頷ける。この話を聞いてワカンを持参することにした。今日は3時間で大樽小屋まで。11時出発で、2時過ぎに到着予定。ゲート前で準備中の男女ペアの方は行けるところまで行ってテン泊だそうだ。この冬山でテン泊か、すごいなあ。自信があるから、行けるとこでテン泊できるんだろうなあ。アラレが降っているが、雪雲は昼頃から消える見込みなので、登っているうちに穏やかになることを期待してゲートを越える。桂小場まで舗装された道を登る。途中、小黒川を渡る橋の先は全面凍結。チェーンアイゼンを付ければ安心。結局、小屋まで着けたままだった。桂小場から右の山道に入る。ここで痛恨のミス。ストックのスノーバスケットが片方、落ちてしまった。どこで落としたかわからず、そのまま登ることにした。しかし、その後に遭遇するには深雪に対し、片方のストックが深く突き刺さるばかりで、かえって邪魔なくらいであった。
最初は雪がなく、快調に進むが、1500m付近からは雪が出てくる。樹林の合間から、将棊頭山と思われる山が見えるが雲に隠れている。しかし、空には青空が見えており、天候の回復が期待できる。野田場は、尾根に向かって登ったところから少し降りたところ。水場の水は十分に流れていた。このころには、重いザックが結構堪えていたが、コースタイムくらいのペースで登れていた。ここからトラバースとなるが、上空では激しい風の音がする。登山道は稜線に隠れているので今は大丈夫だが、稜線に出れば暴風に晒されるに違いない。
標高1900mの馬返し、伊那中学の落雷事故現場を過ぎ、ペースが落ちてくる。さらに右からの烈風は新雪を巻き上げて吹き付けてくる。これじゃあ、吹雪と一緒だ。途中からアウターを着ているので寒さは耐えられるが、防寒テムレスでは手がかじかんでくる。
幕営予定のソロの方1名が先行して登っているはずなのだが、トレースは風で吹き消されていてノートレース状態となった。基本的に間違うことはなさそうだが、烈風を浴び、深雪に足を取られながら、時折、残っている足跡に安堵しながら登る。温度計を見ると-11℃。こういった時のソロは厳しいなあ。腰も疲れてきた。
降りてくるソロの方が2名おられて、おひとりに小屋の状況を尋ねると、「小屋の中にテント2張りが張られているがもう一人くらいは入れるんじゃないか。」とのこと。この状況でかなり疲れてしまったので、土間でもよいので小屋に泊めてもらおう。稜線に向かって登り、樹林帯の右に小屋が見えてきた。開けてみると、確かにテント2張り。中央部が空いている。泊まらせてくださいとお願いして、スペース確保。これで一安心。馬返しから実に50分を要した。無雪期のコースタイムは30分。さすがに雪山は厳しかった。
とりあえず、荷物を降ろして息を整えてから、靴を脱いで、シュラフを広げる。小屋にはソロの方、3人組の方が居られた。とりあえず、白湯を飲んで、ダウンの上下を着込んでシュラフに潜り込んで体力の回復に努める。隣から軽快なイビキ。気持ちよさそう。もう一つの3人のテントは外張り付き。ベンチレータから湯気が上っている。そういえば小屋の温度は-6℃。中は暖かいのだろうなあ。何か温かいものでも食べているのかな。3人にしては小さいテント。まあ、女性が2名なので何とかなるのか。
外から暴風の音がする。これでも早めに小屋に入れてよかった。この風の中、テン泊の方々は大丈夫かなあ。難儀してないだろうか。小屋の東側には窓があり、暗い小屋ながら、少しは見える。今のうちに夕食を食べよう。前回の蓼科山では-13℃で、お湯を沸かせなかったので今回はEPIガスのエクスペディションを購入して持ってきた。着火一発で、すぐに沸いた。これはいい。日清のハヤシメシだが、お湯を入れすぎて、ハヤシカレースープみたいになったが、それなりにおいしかった。外の風は依然として強く、収まる気配はない。明日には少しマシになるはずなんだが。
カイロを貼り付け、再びシュラフに潜り込んで、明日のことを考える。今日は重荷の雪中行軍で、腰にきて相当疲れた。明日も今くらいの強風だったら、そのまま登らずに撤退かなあ。事前には、体調や雪の具合、天候次第なのだが、木曽駒ケ岳へのチャレンジも考えていたのだが、この状態ではありえない。山にきて「せっかく来たのだから・・・」は危険だ。ソロだし無理はしてはいけない。暴風なら潔く、帰るしかないかと考えた。隣のテントから、今度は焼肉だろうか、ニンニク系の美味しそうな臭気がベンチレータから下に降りてくる。これはたまらん!その余裕がうらやましい。ニオイだけ頂こう。
軽快なイビキが響くの中、まどろんで目が覚めると1時だった。気温は-5℃。小屋に5人いるためか、そんなに寒くない。夕べから頭痛がするのでバファリンを飲み、再び寝る。明日までに体も回復すると良いのだが。意識が薄らぎ、夢を見ると体が寒さでブルブル震えて夢から覚める。これを何度か繰り返した。外の暴風の音はいつしか止んでいた。これで今日は登れるなあ。荷物の多くを小屋にデポして、頂上に登ることに注力しよう。
5時ごろに、両側のテントで動き出した。結構寒いので、シュラフの中で丸まっていたが、バタバタして落ち着かないので、私も起きだす。お湯を沸かし、エアマットとシュラフを畳み、これらは小屋にデポする。朝食はカップヌードル味噌。けっこう、味付けが濃いが目覚めにはいいだろう。隣のソロの方が準備して外に出られた。外で話をすると「本当は木曽駒まで行きたいのだけれど腰が痛くて・・・。」、私も今朝は腰が痛くて、荷物の多くをデポして将棊頭山に登ることを話した。小屋の中で準備していると、ソロの方が戻ってこられた。いきなりの深雪で、荷物をデポしていくとのことだった。大きなザックをデポして再び出発された。
私は6:46に出発。もう、桂木場から登られてきている方がおられる。3時半に出てこられたそうだ。すごいなあ。ここから登りだすがすぐに胸突八丁となり、徐々に急な斜面になる。気温は相変わらず-5℃付近。雪はさらさらで、まとまらず、足元から崩れていく。先行している方の後を追っているのに、この状態だ。ところどころ、膝で雪を押しつぶし、足をのせて3回踏み。
スカイラインが見えだし、森林限界も近いと思われるが、ますます雪は深くなり、バスケットのないストックが埋もれ、役に立たないのでワカンと一緒にデポして稜線を目指す。左にトラバースすると間もなく稜線。これまでにソロ3名が下降されてきたが、風は相当強くてよろめくが稜線は広く危険ではないらしい。稜線の手前でゴーグルを掛け、ストックをピッケルに変える。外れたアイゼンを装着しなおした。その際に手が雪に触れたが、痛いほど冷たい。できるだけ、雪と水滴を取り除いてグローブを装着して、強風の稜線に立つ。木曽駒ケ岳の雄姿が目の前に現れた。左に中岳、宝剣岳そして袖を広げる伊那前岳、右には麦草岳を従える。手前に来る馬の背には雪煙が左に流れていく。その中央に堂々と座する木曽駒ケ岳は雄大であり、威厳がある。ロープウエイで登れば、楽勝などとの印象を持っていたが、ここから見る木曽駒ケ岳は全く違う様相であった。ここがクラシックルートであり、ここからの姿で見るのが正しいのだと思う。本当は素晴らしく登りごたえのある山なのだ。木曽駒ヶ岳に、大変失礼な印象を持ってしまって申し訳なかった。
ここからは右からの風に耐えて、固くしまった雪上を、ところどころ、踏み抜きの後を見ながら登る。氷結した雪面には、アイゼンがわずかに刺さる程度で、先行者のトレースも、アイゼンの跡は小さい。それでも、滑ることはなく、確実に食い込んで登っていける。おおむね2つのピークを越え、3つ目のピークの少し先に頂上がある。息遣いが荒くなり、とりあえず、50歩数えて登っては立ち止まる。だいぶ減らした荷物だが重く感じる。ザックのひもを締めなおして体に密着させて登る。上から5,6人のパーティーが降りてきた。7合目あたりにダンロップの大型テントがあったので、その方たちだろう。木曽駒ヶ岳への稜線には見る限り、誰もいない。ここより、さらに爆風のように見えるので馬の背の通過は相当困難だろう。
振り返れば、御嶽山、乗鞍岳。むこうも今日は強風だろうか。すこし靄がかかっているが、槍穂高の稜線も見える。左前方には南アの峰々。八ヶ岳は靄の中ではっきりとしない。風以外は絶好の天候だ。ただ、2週間前の八ヶ岳での風、昨年3月の御嶽山よりは優しい。ようやく、頂上に達した。ここの方が、風が少し収まった気がする。それでも端に立てば、強風の洗礼を受ける。景色の撮影を行って、充分に堪能したら下山に取り掛かる。
下りも、アイゼンが快適に効いて下りやすい。登る方たちに声をかけ、再び樹林帯に戻り、雪深い中を歩く。深雪や枝の攻撃を受けながら下る。これだけ雪と戯れたら今シーズンの雪山は終わりにしてもいいな。でも、そのうちに、また雪が恋しくなるに違いないのだけれど。
小屋についたら、デポしていたシュラフなど詰めなおし、チェーンアイゼンに変えて最後の下降に入る。無雪期の桂木場への標準タイムは90分だ。最初は深雪の中を、バランスのとれないストックを使いながら、時々よろめきながら降りる。今日の風は穏やかで、昨日の烈風は想像しがたい。さすがに雪山の天候の激変は怖いなあ。快調に下り、雪のなくなった南斜面、雪の残る北斜面を下りながら桂木場に着いた。ここから、ストックのバスケットが落ちてないか気にしながら、アスファルトの固い道路を歩く。最後のこの行程が辛い。気合が抜けて、ヘロヘロしながら降りていたら一面に凍結したところで思い切り滑った。幸いけがはなかったが、あちこち、土がついた。チェーンスパイクは外して手に持っていたが、これでは役に立たない。面倒でも、再度装着すべきであった。
下山後は、南アへ行った時から気になっていた日帰り温泉みはらしの湯へ。入館は500円。やや霞がかった南アルプスの雄姿を見ながら、頑張った体を休めた。いつか、将棊頭山から木曽駒ケ岳への素晴らしい稜線を歩いてみたい。
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