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無道二千m峰1/126/768

鶏冠山( 関東)

パーティ: 1人 (1357 さん )

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行程・コース

天候

曇り

登山口へのアクセス

バス
その他: 夜行列車で塩山下車、バス終点から歩く

この登山記録の行程

バス停(5:30)二俣()東ノ滑沢出合(6:30~7:00)鶏冠山(12:10)鶏冠沢出合(14:00)バス停(14:40)

コース

総距離
約10.2km
累積標高差
上り約1,078m
下り約1,075m

高低図

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登山記録

行動記録・感想・メモ

 先週、徳永君と奥秩父に行った時、「来週、何処か行こう」と誘うと都合が悪いみたいだったので、心残りだった東ナメに1人で来てしまった。カラビナ、ハーケン、6mmザイル(10m)とヘルメットを持参して、例の如く夜行で塩山から笛吹川入り。乾徳山は相変わらず人気がある。バス終点の茶店でおでんを食べて出発する。梅雨から抜け切らないはっきりしない天気だが、薄日が射している。
 バス停から少し行って人を追い越すと、声を掛けられて吃驚する。徳永君が女の子と2人で歩いているではないか! 普通の格好をしているので全く気が付かなかったが、「西沢渓谷に行く」と言う。わりと可愛い感じの娘だ。東沢との分岐まで一緒に行って写真を撮り、味噌汁の素を一袋貰う。

 鶏冠沢出合を過ぎ、前回雨で引き返した地点から沢に降りて小滝を登ると直ぐに東沢ホラノ貝に着く。両側から巨岩が迫って淵は深く青く澄んでおり、怖い感じがする。左側の岩を少し登って見るが、岩は湿っておりとても通れない。登山道から下りたばかりだが、30m程急登して左岸に付けられた登山道に戻る。
 道は新しい丸太製の(吊)橋を通り、少し広くなった川原へ降りると東鷹見岩からの道が右岸に下りて来ている。途中で追い越して行った2人組も東沢へ入った様で、川原には足跡が新しい。次第に両岸が迫り、右岸は殆ど垂直になって所々に滝を懸けている。左岸が台地状に高くなった所に無人の東沢小屋が現われる。暗い感じで汚くて床も半分しか無く、独りで泊るには勇気が要りそうだ。大明神様を祀ってあるのでいっそう尻込みしたくなる。
 流れは右に90度近く曲がり、左岸は風化の進んだ割れ目の多い急な崖となる。左へ曲がると川原は流木で歩き難くなり、「東ナメは何処だろう」と注意して進む。地形からすると近い筈だ。
 右手に大きなスラブが緩やかに傾いて現われ、上部はかなり急になっている。随分の長さで100m以上はありそうだ。水がスラブの中央を滑り台の上を流れる様に滑り落ちている。これが、きっと東ナメだろう。出合で紅茶を沸かし、味噌汁を作って食事をする。スラブの下部には所々にリスがあり、ハーケンを打って見るとほんの少ししか入らない。それでもカラビナを付けてザイルを通し、準備運動を兼ねて暫く遊ぶ。
 ナメ滝の下部はフリクションで十分登れるが、上部は傾斜が急なので登れない。と言って、全くの一枚岩だから手掛かりは何処にも無い。右手(左岸)にはずっと端まで木さえ生えておらずスラブが遥か上部にまで達しているので、左手の草付と傾斜の変わり目の弱点を登るしか手は無い。
 岩の小さな襞に生えた草を頼りにして登る嫌な所だ。見下ろすとスラブが摺鉢状に伸びており、ここでスリップすると一番下まで止まらないだろう。骨折はしなくても大火傷は間違いの無い処で、ザラザラの岩で肘やお尻を擦り剥く事を思うとゾッとする。
 中間に残置ハーケン2個を見付ける。自信の無い所では新たにハーケンを打ちカラビナを掛けて一端を体に固定した10mのザイルを通し、他端のカラビナを体に連結して自己確保(?)して登る。これだとハーケンの上下5mずつ動ける事になるが、次のハーケンを打った後、前のハーケンを回収するのに時間が掛かって仕方がない。
 左手の木立の中を通り最大傾斜となっている落口直下まで行くと背伸びした高さにボルトが打ってあるが、これに乗っても落口のホールドに届きそうには思えず、どうにも抜けれない。左の方に生えている木に向かって危っかしいトラバースを行ない、これを頼りにしてやっと落口の上に立つ。
 上には小滝が掛かっており、小さい釜にはオタマジャクシが泳いでいる。ぎりぎりのフリクションで小滝を越えると上部にスラブは無く、10~15mの滝が続いている。直登し、スラブ状のものは左右から越えてどんどん高度を上げるが、行けども行けども同じ様な滝が次から次へと現われ、ガスのために視界が殆ど利かないので気分的に焦ってしまう。
 滝には真新しい踏跡が付いたものがあり、先刻の2人連れもこの沢を登った様だ。二俣に出合うと右俣は岩が多くて険しく本流の様相を呈しているが、水量は左が多い。左俣に入って進む(正解、右俣に入ると尾根直下の急な崖に苦労しただろう)とガスの切れ目から1,800mのピークが見え、大体の位置を掴み心が落ち着く。
 標高1,800m付近で沢は消え、苔生した林の中を行く。それにしてもこの林の中の石楠花は見事だ。西沢渓谷に石楠花目的で来て感激し、この前徳永君と雁坂峠から雁峠へ縦走した時にはそれ以上の石楠花を見たが、この鶏冠山の物は更に大きな群落で、林の下に奥深くほんのりと咲いていて感動する。下生えにはイワカガミが散らばっている。登るに従って花が満開になってくるのも嬉しい。
 今まで歩いた事も無い様な急斜面を喘ぎ喘ぎ登ると、全く突然に稜線に出る。反対側からガスが風に乗って吹き上げて来るものの、何の音もしない。あまりの静けさに「ヤッホーッ」と叫んで見るが、返事は無い。
 一休みして食事を摂り、木々の間に通じている獣道同然の道を辿り、木が少なく僅かに頂上と感じられる鶏冠山頂に立つ。静けさをしみじみと味わい、枯木の枝に飴玉の包み紙を挟んで登頂の印とする。北の方へは甲武信岳へ通じるらしい心細い道が下りているが、考えて見ると鶏冠山と甲武信岳とは標高差がたった350mしか無いのだ。
 下山路も、石楠花の曲がり枝の間を通り藪を掻き分けて通じており、キスリングを担いで歩くのは無理だ。暫く行くと岩場が現われ、登るのか下るのか大いに迷う。峰頭に立つとガスが晴れて、東沢の反対側の2,086mピークから多くの長いナメが落ちているのが目に入り、興味を惹く。登ったら面白そうだが、下りは如何なるのだろう? 西沢の方へ下りるのだろうか。西のナメと思しき沢も見え、腕を上げてこの辺に登りに来たら、静かで楽しい岩登りが出来るだろう。
 やっと本物の下りになり、尾根に付いた藪道も大分踏まれてくる。沢音を聞きながら下ると、鶏冠沢出合から少し鶏冠沢に入った所に着く。橋を渡り、笛吹川左岸に出て大休止する。裸になり、網シャツと半袖を洗い、食事を摂る。
 途中の小雨を心地好く思いながら歩き、ナレイ沢バス停に着くと再度徳永ペアーに出会う。2人は塩山駅へ向かい、自分は新宿行きのバスに乗る(15時発、18時30分新宿着。大人1,300円)。<1971.6.20の記録>

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