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白馬乗鞍岳天狗原北東斜面の雪崩で2人の方が亡くなった。ご冥福をお祈りいたします。 タイトル写真の斜面の尾根を6人が滑り7人目が尾根を滑ったところで雪崩を誘発し、下で待機していた3人を含め4人の方が埋没しました。(日本雪崩ネットワークより)
★ 同種の雪崩は7人が亡くなった立山真砂岳でも起きています。
1、雪崩予防には積雪断面観測(ピットチェック)が必要です。
●筆者が弱層テスト(ピットチェック)でどういう所に弱層ができテストで落ちやすいか長年にわたり数百回テストの結果。
一定の結論を得ました。
★★弱層ができやすい場所は
① 過冷却された水(水蒸気)が供給される状況
② 日射の影響がある所
③ 風の影響がある所
下記のユーチューブは同じ場所で撮影 場所は支笏湖の外輪山で主稜線から南に延びる枝尾根の主稜線直下。 斜面の向きは南向き、恵庭岳を回り込む風当たりの強い尾根上。 不凍湖である支笏湖(日本で2番目の貯水量)から厳寒期も過冷却された水(水蒸気)の供給がある所。 周辺の山では柔らかい霜(ソフトライム)による霧氷がよく見られます。
https://youtu.be/uDjGuZWjXPs
https://youtu.be/nDbKknOt2PM
https://youtu.be/VrGZWRT0KO8
https://youtu.be/PKYcG2Pv8sc
★☆★弱層には、ばらつきがありますので1か所、一つのテスト方法で判断することは危険です。
2、雪崩予防には過去の気象データ(気温、日照、降水)の分析が必要です。
気象庁のHP → 各種データ・資料 → 過去の気象データ・ダウンロード
長野県白馬選択:白馬のアメダス地点標高は703m(カーソルを当てればわかります)
期間は約一か月前まで
① この雪崩の原因の一つは気温上昇(暖気流入)により雪面が融解し、その後の気温低下で硬い層ができたからです。(過去の気象データの項目、最高気温を調べます) 硬い層ができるとスキーヤーの滑走衝撃〈二階から飛び降りたぐらい)を広く伝搬し、もろい層(弱層)を剥離させ雪崩れます。
※「人間が1m自由落下したときの衝撃は1.5t」というHPを参照
移動速度が速いほど衝撃は大きくなります。
http://www.02320.net/free-fall_velocity-and-impact/
サラサラパウダー新雪だけでは衝撃は伝搬しない、布団の上に物を落としても衝撃は吸収してしまうからです。
この硬い層が表層雪崩の滑り面となる可能性があります。 しかし、硬い層があってもその後の積雪と接着してしまえば雪崩のリスクは下がります。
② 硬い層の上にもろい層(弱層)ができると雪崩のリスクは上がります。
もろい層(弱層)を作る雪はザラメ砂糖のような氷の粒状の結晶で、結合しにくい雪です。
種類はありますがザラメ砂糖のようなザラメ雪は、湿った雪の層から供給された過冷却水(水蒸気)によるソフトライムsoft rime=柔らかい霜や
融解凍結層の表面が風で飛ばされ堆積したものなどがあります。
地吹雪の稜線、氷の粒が顔に当たって痛いことは体験した人ならわかります。
湿った雪の層から過冷却水(水蒸気)が供給される場合が多く、気象現象としては暖気を伴った低気圧(南岸低気圧だけではありません)によるものです。(過去の気象データの項目、最高気温、日降水量などを調べます)
暖気による湿った雪を掘ると断面は青い、しばらくは凍りつかず、ラッセルは辛いものになります。
ザラメ砂糖のような氷の粒状の結晶の(弱層)もろくて柔らかい層はどうしてできる?
雪国の人は寒い朝に霧氷(ソフトライムsoft rime=柔らかい霜)が川のそばで見られるが、離れると無くなるのをご存じでしょう。
過冷却された水(水蒸気)が木の枝にくっ付く氷の粒、木に触れるとパラパラと落ちて、もろい性質のものです。
また、寒冷地の人は気温がプラスにならないのに雪が減っていくことをご存じでしょう。(凍結した雪から過冷却水蒸気に変わる)
ソフトライムsoft rime=柔らかい霜は、湿った雪の層から過冷却水(水蒸気)が供給された後の気温低下(放射冷却など)で作られます。(過去の気象データの項目、日照時間を調べます)
※本来、霧氷の細分は樹氷(ソフトライム)・祖氷(ハードライム)・雨氷であるが、樹氷はスノーモンスターと誤解されるので霧氷(ソフトライム)という。
③さて硬い層の上にもろい層(弱層)ができた。
その上にサラサラパウダー新雪が乗った場合、40度を超えるような急斜面では点発生表層雪崩のリスクは高まります。
しかしサラサラパウダー新雪は結合力が弱く横に広がる面発生表層雪崩にはもう一つ役者が必要なのです。
少し硬さのある締まった板状の層は結合力があり横に広がります。
雪山を滑ってる人なら新雪が降って何日か経つと板が沈まなくなることはご存じでしょう。(新雪は時間が経つと締まっていく)
また、暖気を伴った低気圧による湿った雪は、風➡ウインドクラスト、日射➡サンクラストなどの硬い層になり易く、できると過冷却水(水蒸気)を外部への放出がなくなりソフトライムsoft rime=柔らかい霜ができ易くなります。また硬い層はソリになります。
(パウダー新雪はほとんど空気、水蒸気はいくらでも空に逃げていきます)
ワッフ音はウインドクラストやサンクラストなどの下の層が霜系弱層となりスカスカになったため出る音です。
※他人のトレースを歩いていても雪の変化は感じとれません。時々ラッセルしてワッフ音がどうゆう所ででるか感じ取るべきだと思います。
1. 気温上昇などによる硬い層(滑り台)
2. ザラメ砂糖のような氷の粒状の結晶の(弱層)もろくて柔らかい層(ワックス)
3. 少し硬さのある締まった板状の層、新雪は時間が経つと締まっていく(ソリ)
★★3役者がそろったサンドイッチ構造(少し硬い板状層・柔らかい層・最も硬い層)が最も危険なバックカントリー雪崩を引き起こします。
3、今回の雪崩事故の積雪断面観測データは日本雪崩ネットワークさんの情報を参考にさせていただきました。
1月31日に日本雪崩ネットワーク出川さんが白馬乗鞍岳天狗原東斜面1月29日の雪崩の破断面付近の積層観測データ(SPIN) https://snow.nadare.jp/news/snow_jan/img/230129_tenguhara_fracture%20data.PNG
表面から130cm下のサンドイッチ構造が今回の雪崩の原因です。
青い棒グラフは左に行くほど硬いことを示します。(写真を見てください)
気温上昇「雪崩」「雪崩」とTVが騒いだ1月12日~14日の白馬のアメダス地点の最高気温は三日間8度を超えていて暖気が流入した。
13日未明から14日にかけて日本海を低気圧が通過し現地に雨が降ったと言われている。(白馬の降水量7mm)
この硬い層(融解凍結)が今回の雪崩の滑り台となった。(厚さ約20cmSPINより)
※写真にしてあります。
天気図(1月12日~14日)
過去の気象データ。最高気温(1月12日~14日)日降水量(1月13日~14日)
13日未明から14日にかけて日本海を低気圧が通過し現地に雨が降ったと言われている。 風向きが北に変わると湿った雪になり、これが弱層の原資となります。
16日から17日にかけて雪崩発生地点の天狗原では晴れていて日射があり、サンクラストによる硬い層が湿った雪の表面にできた。(日本雪崩ネットワーク、破断面の写真解説より)
晴れていたことについてはヤマップ日記「霧の中を、八方山へ すると、徐々に霧が晴れて完璧な青空」1月17日の写真を参考にさせていただきました。 https://yamap.com/activities/22024414
白馬のアメダス地点では日照時間が16日0,17日1.1
であったが盆地霧(雲海の下)で曇っていたからである。
17日の夜には放射冷却があったと考えるのが妥当であろう。
気温低下により硬い層に閉じ込められた湿った雪の層から過冷却水(水蒸気)が供給されソフトライムsoft rime=柔らかい霜へと変わっていった。
※写真にしてあります。
天気図(1月16日~17日)
過去の気象データ。日照時間(1月16日~17日)
4、白馬乗鞍岳 まとめ
①気温上昇暖気流入(アメダス地点白馬の最高気温は12日が8.4度、13日が8.6度、14日が8.4度)により雪の表面に硬い層ができた。
②13日から14日にかけて暖気を伴った低気圧により水分の多い湿った雪が硬い層の上に降った。
③16日から17日にかけ晴れて日射により湿った雪の表面に硬い層(サンクラスト)ができた。
④湿った新雪の層は上部にできた硬い層(サンクラスト)のため、湿った新雪の層の内部の過冷却水(水蒸気)が外部に出られず温存され、その後の気温の低下(17日夜の放射冷却など)に伴いソフトライム(soft rime=柔らかい霜)(霧氷)に変わっていく。
⑤上部に硬い層があるため、その後の雪の重みで圧着されることもなく。長期間存続するサンドイッチ構造の危険な霜系弱層になったと考えられます。
※日本雪崩ネットワークの【調査速報】230129・白馬乗鞍岳・天狗原東斜面・雪崩事故を参考にさせていただきました。有難う御座います。 https://snow.nadare.jp/news/2023/000071.html
5、過去にも起きているサンドイッチ構造雪崩。1か月以上持続する弱層。
2013年11月23日に立山真砂岳で7名がなくなった雪崩、弱層の厚さは4cmもサンドイッチ構造
https://www.yamareco.com/modules/yamanote/detail.php?nid=2968
これもサンドイッチ構造
https://www.youtube.com/watch?v=5kSYj1eD2F4
これもサンドイッチ構造、弱層は一か月以上持続した。
6、過去の気象データ・ダウンロードの活用方法(暖気流入の時期の把握)と積雪観測(弱層テスト)の仕方❣安全対策❣
①行く山の近くのアメダス地点の暖気流入の時期を確認し把握しておくことです。(サンドイッチ構造内の弱層は1か月以上持続します)
②その後の積雪量は項目の日降水量と日降雪量、積雪量で把握しておくこと、山はアメダス地点より多く降る事が多いのでその分考えておくことです。(「1m下に硬い層があるだろう」など掘る深さを考えることです)
③ピットを掘る時には、まず暖気流入でできた硬い層を確認すること、シアーテスト(シャベルを差し込む、最初の動画)が把握しやすいです。(過去に暖気が流入しており予定した深さまで掘っても硬い層が確認できない場合は誰かがピットを掘った跡かもしれません、別の場所でしましょう)掘った跡は埋めましょう。
④ピットを掘る位置はドロップポイントの下10〜20mの枝尾根上が最適。ずぼ足でアクセス、登山者が雪崩を誘発することはまずない、滑走の雪面加重は徒歩と比べ物にならないほど大きい。
怖くて10〜20m下で積雪観測(弱層テスト)できないと思う。斜面は滑らないことです。
⑤滑るルートを積雪観測(弱層テスト)しながら登っていくのがリスクは小さい。
スキーの裏にシールを張って斜面を鉛直に登れる限度の傾斜は30度。(30度以下はまず雪崩れない)
斜面が急になりジグザグに登る所で積雪観測(弱層テスト)して不安定なら、そこから滑りましょう。
オープンバーンにでたら日射や風の影響がある所で積雪観測(弱層テスト)しましよう。
登るのが怖いと思う。ルートを滑らないことだと思います。
7、沢型地形は危険で尾根は安全て本当か❓
北海道尻別岳南斜面で2019年2月3日発生した雪崩映像
南斜面の危険についてはこちらをご覧ください。
https://www.yamareco.com/modules/yamanote/detail.php?nid=2636
先行グループ2名が沢型地形を滑った後、先行者が滑り下から撮った映像
https://youtu.be/JWw23a4pdmE
撮影者(4人目)はスキーヤーズライトの尾根からドロップ雪崩を誘発した、
スキーヤーズレフトの沢型地形に逃げこむ。
https://youtu.be/8EqS558yhdQ
●23年1月29日に白馬乗鞍岳の今回の雪崩でも誘発したのは7人目で尾根を滑っている。
ボウルを伏せたような凸型の頂点の下は物が落ちやすい❣
尾根は凸型、しかも尾根は風当たりが強く雪の層が不安定になり易い(前記)
沢の凹型は底に向かって雪が持たれ合っているので落ちにくい。
尾根も傾斜がなく広いのであれば問題ないと思いますが凸型地形や尾根の縁辺は風当りが強く要注意です。
ドロップポイントは風当りの弱い凹型地形の方が安全かも❓
但し、沢型地形は自然発生雪崩の走路となるので、この事は頭に入れておいて欲しいです。
8、おわりに
読んでいただきありがとうございます。
TVの気象予報士さん憲法13条の個人の尊重、マイノリティーの価値観尊重してくださいね。
輸血拒否事件最高裁判決(輸血を拒否する患者の自由意思は医師の救命のためとの理由も否認。医師に民法710条の不法行為による損害賠償を命じる)
バックカントリーは危険な所に入る「個人の自由意思」は裁判所も認めていると言えます。
※最高裁判決は既存の法律を変える力があります。
TVの気象予報士さん日本の最高峰のルール憲法を守って、偏見・差別を招かない報道してくださいね。
バックカントリーは憲法が保障する意思の自由の決定に伴う自己責任で行えます。(救助は憲法13条、警察法2条の公務、救助される権利を有します)情報収集も自己責任です。
新しい着目は違和感を感じるものですが技術の進歩は新しい発見が必要です。
自己の利益に拘らずバックカントリー愛好家、全体の利益を考えてください。
事故のないことを願ってます。
宜しくお願い致します。
日本雪崩ネットワーク出川さん、今回の調査報告は素晴らしいです。
TVの気象予報士が気温上昇「雪崩」「雪崩」大雪「雪崩」「雪崩」とまるで鸚鵡のように
ミスリードな報道をしていますが、これを覆す素晴らしい報告です。
有難う御座いました。
記念すべきSPINをタイトル画像に張らせていただきます。
フォトギャラリー:9枚
日本雪崩ネットワークの情報により
発生は標高2110mから約300m流下。
地形図読み取りにより発生区の標高100mの落差で約40度の傾斜
1月12日の天気図
南高北低の気圧配置
暖気が流入、気温上昇。
1月13日の天気図
北海道の北にある低気圧に向かう南西風により暖気流入継続
1月14日の天気図
13日未明から14日にかけて日本海を低気圧が通過
湿った雪が降った。
過去の気象データ
アメダス地点白馬
最高気温(1月12日~14日)日降水量(1月13日~14日)
1月16日の天気図
気圧の尾根で天狗原は晴れていた。
白馬は盆地霧でくもり
1月17日の天気図
高気圧におおわれ天狗原は晴れていた。
白馬は盆地霧でくもり
過去の気象データ
アメダス地点白馬
日照時間(1月16日~17日)