行程・コース
天候
晴れ
登山口へのアクセス
マイカー
その他:
塔ノ沢口(とうのさわぐち)駐車場。10台程度。トイレっぽいのがあったが使えるかは不明。駐車場までの林道は少々荒れてはいるが、全て舗装道路のため安心して走行できる。駐車場1kmほど手前のところで分岐を右に折れなければならないが看板が分かりにくいので注意。GPS座標(36.594445 139.369127)。GooglMapに入力するとナビ可能。
この登山記録の行程
塔ノ沢口駐車場(05:52)・・・林道終点(06:00)・・・寝釈迦像(06:37)・・・賽の河原避難小屋(07:28)・・・賽の河原(07:33)・・・雨量観測所(08:00)・・・小丸山(08:24)・・・袈裟丸山避難小屋(08:35)・・・前袈裟丸山(09:10)・・・八反張・・・後袈裟丸山(09:47)・・・中袈裟丸山(10:12)・・・奥袈裟丸山(11:36)・・・中袈裟丸山(12:34)・・・後袈裟丸山(13:06)・・・八反張・・・前袈裟丸山(13:56)・・・袈裟丸山避難小屋・・・小丸山・・・賽の河原(15:15)・・・寝釈迦像(15:47)・・・塔ノ沢口駐車場(16:16)
高低図
登山記録
行動記録・感想・メモ
(はじめに)不注意にも禁止ルートを歩いてしまいました。この軌跡は参考にしないでください。
土曜日の休日出勤を終えて、一路、栃木県へ向かった。
仕事の連続で、日曜日ゆっくり過ごしたいという気持ちもあったが、来週と再来週の週末は、別な予定があり山から当分遠ざかることになるので、「どうしても山に登っておきたい」という衝動で車を走らせた。
目指すは日本三百名山の一つ「袈裟丸山」。
袈裟丸山という名前は、端折って説明すると、かの弘法大師が赤城山の神を仏門に降らせるために説得したところ、その条件にとある約束をしたが、あまりにも難しく達成できなかったため、悔しくて袈裟を丸めて埋めたという逸話から来ている(その他、山容が袈裟に似ているという説あり)。
ややこしいが、前袈裟丸山、中袈裟丸山、後袈裟丸山、奥袈裟丸山、法師岳の総称で「袈裟丸連峰」と呼ばれ、最高峰は奥袈裟丸山(標高1,961m)。一般的には一等三角点がある前袈裟丸山(標高1,878m)を袈裟丸山と呼んでいるとのこと。
袈裟丸山へは、これまでも何度も登る機会はあったが、なぜか気分が乗らず今日に至っていた。
なぜ気分が乗らなかったのか?
正直、理由は良く分からないが、ひょっとしたら予感めいたものがあったのかも知れない。
車中泊先として、道の駅「富弘美術館」を拠点にすることにした。正確には富弘美術館の隣にある「草木ドライブイン」という場所。「道の駅」という看板の下に「旅の駅」とか書かれていて、「どっちやねん!」と突っ込みを入れたくなる怪しさだったが、コンビニ(深夜は閉店)が併設されていたので、食料の調達ができたのは非常に有難かった。
食料と一緒に、草木湖名物というもじにつられて「よもぎまんじゅう」もおまけで購入。
おそらく正式な道の駅ではないと思うが、24時間使えるトイレもコンビニの建物右奥にあり、車中泊には充分の場所だった。しかし、エンジンを止めると10分もしないうちに酷暑のせいで車はサウナ状態になり、たまらず窓を開けると蚊がブンブンとイライラMAXだった。加えて、深夜になるとどこからともなく「ブォーブォー」といわゆる峠族のような連中が爆音を鳴り響かせてやってきたためほとんど安眠はできなかった。暑さとイライラ。きっとこんな時に人は殺意を抱くのだと思う。
4時30分、目覚ましよりも早く行動を開始。
車の外に出たら、爽やかな空気が身体を包んだ。むしろ、外の方が気持ちが良い。もっと早くから行動しておけばよかった。
顔を洗い、登山口のある「塔ノ沢口駐車場」まで移動。
草木ドライブインから約10kmなので20分程度で移動ができた。それを思うと峠族さえいなければとても良いロケーションだったと思う。
5時45分、登山を開始。
オープニングは、林道をテクテクと登っていく。沢からのヒンヤリとした空気が心地よかった。
天気予報によると、今日も酷暑とのこと。熱中症に注意しながら歩くことにしよう。
一応、要人としていつも以上に飲み水を持ってきたので備えは万全だ。
ほどなくして林道の終点へ到着した。小さな橋を渡り、ここから本格的に山へと踏み込んでいく。
「ザァー」という音に見上げると、巨大な岩の間から一条の滝が流れ落ちていた。
二つ三つ、砂防ダムを越えて上流へ向かって進むと、あちらこちらに巨大な岩が目立つようになってきた。自分の住んでいるアパートより大きな岩も珍しくはなく、おそらく濁流が運んできたというよりは地質的なものだろうか。
6時28分、「寝ころんだ釈迦涅槃像」に到着。通称「寝釈迦(ねしゃか)」。
塔ノ沢を登山口に選んだのも、この寝釈迦が見たかったからだった。
見上げるほどの巨岩。8畳ほどあるだろうか。その岩を削って作られた階段を登り上部へと進んでいくと、大きな一枚岩がその上にのっていた。彫り上げられて作られた見事な釈迦像が岩に浮かび上がっていた。
崩れ落ちないように石垣で土台が作られているところを見ると、その一枚岩は後から持ち上げたのかもしれない。こんな山の中でどうやったらそんな大規模な工事ができたのだろうか。不思議だった。
石像は、全長にして約3.7m、全幅1.3mあるらしい。
森の中にひっそりと横渡るお釈迦様は、なにかもの言いたげで、アンニュイな感じだった。
再び歩き出し、細かく渡渉を繰り返しながら沢を登っていく。
そのうち登山道は沢を離れ右手の斜面へと続いていく。
登っていくと、熊笹の森に周囲の様子が様変わりしていった。
7時18分、熊笹の森の中に「賽の河原避難小屋」が見えてきた。小さいながらも立派な避難小屋だった。
小屋から100mほど登ると稜線に出た。
視界が開けて、ゴロゴロと大きな岩が転がっていた。その岩の上には、小さなケルンのように幾つもの小さな石が積み上がっていた。看板を見なくても分かる。ここが「賽の河原」だ。弘法大師(空海)が鬼に虐められている子供の霊のために三日三晩ここで祈ったとか。確かに、この周辺だけ岩があり独特な空間を醸し出していた。
賽の河原から右に折れて、稜線を進んでいく。沢沿いの道も緩やかだったが、稜線歩きはまるで散歩をしているような快適な道だった。
8時15分、「小丸山」に到着。標高1,676m。
岩の上に登って眺めると、これから進む方角に大きな山が幾つにも連なっているのが見えた。ギザギザとまるで鋸の歯のような稜線。そこから右へと目線を移していくと、皇海山と思われるひと際大きな山が雲の間に見えた。
軽く水分補給をし、屏風のように立ちはだかる山に向かって子尾根を登っていく。なんとなく、少し前に登った白神山の稜線に出る手前のコースに似ているとふと思った。
9時丁度に「袈裟丸山(前袈裟丸山)」に到着。
丸っこい山頂で広場の中央に「袈裟丸山」と書かれた看板が設置されていた。
周囲は樹々に囲まれていたため、想像していたよりも眺望が無くて残念だった。
石の上に腰を掛けて、持ってきたビタミンゼリーを1つだけ食べて先へ進む。
ここから先が地獄だった。
明瞭だった登山道は僅か数メートルだけ。その先は見渡す限りの笹野。
一瞬ひるんだが、藪漕ぎを趣味にしている自分にとってみれば、イバラが無い分、行動の妨げにはならない。とはいえ、時折、背丈を越える藪があり、両手で笹や藪を分けながらミスルートをしないよう注意深く進まなくてはならず、思うようにスピードを上げることが出来なくてかなりのストレスだった。この動作を怠り無造作に突っ込んでしまうと、高低差に気が付かず転んでしまったり、マムシを踏みつけそうになる等のヒヤリハットも過去経験しているため細心の注意が必要だった。
なんとか降り切ると、コルの部分が開けていて地面が露出していた。
両脇が切り立ったナイフエッジのような場所。歩行上の安全のために鎖が設置されていたが、土台から崩れかかっていて鎖を支える鉄パイプが宙ぶらりんになっている箇所も見えた。
文章で表現すると超危険そうに感じるが、山の中ではこの程度はそう珍しくはない。実際、歩ける幅は十分あったため、足の置き場に注意して難なくクリアーした。
問題は登り返しとなる斜面。見上げても上が見えないほどに斜面びっしりに熊笹が広がっている。密度が濃くてルートが分からない箇所もあった。更に、下から斜面を登るため、全ての笹が目線の高さになり行く手を阻んで来る。これにはかなりの精神が削られることになった。
「うぉー」と叫びそうになった時、青空が見えた。
最後はなりふり構わず強引にルート構わず頂へとなだれ込んだ。
なだれ込んだ先には、「後袈裟丸山」と書かれた標識と看板が設置されていた。
看板には「八反張付近、風化が進んでいるため通行禁止」と書かれているのを見てびっくり。「通行禁止!?」
道理で道が荒れていたはずだ。
山のマナーとして、どんなに歩ける自信があっても「禁止」と書かれたエリアには、基本、立ち入らないようにしていたが、知らなかったこととはいえ、踏み込んでしまったことに申し訳なく思った。「禁止なら前袈裟丸山側にも看板を設置しておいて欲しかった」とも思ったが、そもそも地図読みの際に地形だけでなく、もっと詳細情報を下調べしておくべきだったと反省した。
不本意ながら、来てしまった以上は帰りも通らなければならないので、怪我や事故が無いよう気を引き締めなければならないと誓った。
それにしても「八反張」とは凄い名前をつけたものだ。あの斜面にピッタリすぎる名前だと妙なところに感心してしまった。
ケチがついてしまったので、後袈裟丸山で折り返そうかとも思ったが、まだ物足りなかったので、水分補給だけして予定通り先に進むことにした。
計算外だったのは、禁止ルート以外はそれなりにちゃんとした登山道があると考えていたが、後袈裟丸山を過ぎても全体的にかなり荒れていて、不鮮明な個所もあちこちにあって気が抜けなかった。また、小丸山から見た通り、鋸のギザギザ歯よろしく連続するアップダウンと藪攻撃にかなりの消耗戦を強いられた。
10時丁度、「中袈裟丸山」に到着。猫の額ほどの頂に古い標識が建っていた。
かなりヘロヘロ状態で、「今日のゴールはここにするか?!」と弱気になりかけたが、カロリーメイトを水で押し込みもうひと踏ん張りと立ち上がる。
しかし、ここからが長かった。
「このピークを登れば!」と思いつつも何度も裏切られたことか。
偽ピークだけではない。「頑張れ!」と奮い立とうとする度に藪が壁となりゆく手を阻む。久しぶりに心が折れそうだった。
そしてついに11時5分、「奥袈裟丸山」へ到着。
到着するなりザックから水を取り出し、浴びるようにがぶ飲みをした。
想定していた以上に体力を消費していたので、持ってきた焼きそばを食べようとするが、熱中症気味なのか口に入らない。仕方がないので、水で押し込むように食べた。
奥袈裟丸山の先には、袈裟丸山5つ目となる「法師岳」があるが、奥袈裟丸山から先は完全に閉ざされていたので、今日はここで折り返す。袈裟丸山の名前を持つ山は全部縦走したので良しとしよう。
それにしても大変なルートだった。よく考えてみれば、法師岳のさらに向こうには「鋸山」、そして「皇海山」へと繋がっている。あの険しかったルートを思い起こせば、同じ山塊としてここの険しさも頷ける。正直、「袈裟丸山は一回でいいかな」と思った。笑
折り返しは、完全にルートを把握しているので、トップスピードで戻る。想定していた以上に時間を要してしまったので、できる限り巻き返しを図った。
問題の禁止ルートも細心の注意を払って難なくクリアー。それでも、笹藪が開けて、前袈裟丸山の頂が見えた時にはホッとして力が抜けたのを覚えている。
前袈裟丸山から先は、一般の登山道。危険個所もないため、一気に駆け下りた。そこそこ長い下りだったが、迫ってくる虫を払いながら無我夢中だった。
下山後、駐車場脇の沢に飛び込み頭から水に浸かり全身クールダウン。
真夏の高島トレイルをテント走破した際にも同じようなことしたが、ヒンヤリとした水に浸かると「生きている!」とう実感が湧いて最高だ。

























