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主要山域

大雪山

大雪山

写真:奥田實  上川町志比内からの大雪山。右から旭岳、熊ヶ岳、中岳、安足間岳、愛別岳

 大雪山国立公園は、十勝(とかち)連峰や北大雪(きただいせつ)、東大雪(ひがしだいせつ)をも含み、神奈川県に匹敵する約23万haもの面積を持ち、「北海道の屋根」というにふさわしい存在である。
「大雪山」の名称は特定の山を指すものではなく、道内最高峰の旭岳をはじめとする多数のピーク全体の総称である。どこまでを大雪山の範囲に含めるかは必ずしも明確でないが、広義には、旭岳からトムラウシ山まで、狭義には旭岳から黒岳周辺までをいう。これらの山々は東大雪に対して「表大雪(おもてだいせつ)」と呼ばれることが多い。もとのアイヌ名はヌタプカムウシュペで、「川の湾曲部の上にいるもの」という意味。ほかにもヌタクカムウシュペ「頬の山」という説もあるが、これだと意味がよく分からない。
 大雪山探検の歴史は古く、文化4年(1807)には間宮林蔵が、また安政4年(1857)には松田市太郎などが踏査したと伝えられているが、個々の山の初登頂者が誰であるかは判然としていない。
 大雪山全体は古い火山から成り立っていて、大小の火口があちこちにあるが、今も白く煙を上げているのは旭岳(あさひだけ)だけである。登山道が最も整備されているのはその旭岳と黒岳(くろだけ)で、前者は旭岳温泉から、後者は層雲峡から、かなりの高さまでロープウェイで達することができる。黒岳頂上付近にある黒岳石室は、道内の山としては例外的に夏季には管理人がおり、1泊して両ロープウェイ間を縦走するルートは誰でも気軽に歩ける人気のルートである。
 愛山渓から北鎮岳に至る登山道は、登りが長く楽ではないが、花も展望も変化に富んでいる。また南東側の赤岳銀泉台や高原温泉から登ってくるのもいい。
 しかし、登山道こそ一般的であっても、道を踏み外せば、歩行もままならないうっそうとした原始林が広がり、ヒグマがうろつき回る野性の地域になる。一般的な山だからといってうっかり心を許せないのが大雪山だ。だがそれだけに「生きた化石」ナキウサギや、日本ではここだけにしかいない天然記念物ウスバキチョウなどの貴重な動物が生息する。また、多種多様の高山植物が咲き乱れる自然の宝庫でもある。
 内陸部にあってしかも標高が高いから、夏でも気温は低い。7月でも氷が張る朝もあり、9月になると、もうミゾレが降る。冬の厳しさはいうまでもない。旭岳は、冬にはアスピリンスノーが楽しめる最高のスキー場だが、冬の登頂には、それなりの経験と準備が必要だ。
 大雪山は、旭川市街からも上川からも眺められるが、その姿は神々しく雄大そのもの。やはり、北海道を代表するのにふさわしい山である。

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大雪山の主要な山

大雪山

2,291m

北鎮岳

2,244m

白雲岳

2,230m

愛別岳

2,113m

赤岳

2,078m

黒岳

1,984m

忠別岳

1,963m