• このエントリーをはてなブックマークに追加

主要山域

日高山脈北部

日高山脈北部

写真:梅沢俊  平取町長知内からの日高山脈北部。奥の右から幌尻岳、戸蔦別岳、北戸蔦別岳、1967m峰。中景やや左は二

 大雪山が「北海道の屋根」なら、日高山脈は「北海道の背骨」というのがふさわしいだろう。狩勝峠から襟裳岬まで、北海道の半分を真っ二つにして、細く鋭く続くこの大山脈には、道内の他の山々とはひと味違う何かがある。
 その魅力の第1は、日高山脈の成り立ちによるものだろうか。道内の山の多くが火山なのに対し、日高はヒマラヤや北アルプスと同じく、およそ1300万年前の造山運動によって生まれた褶曲山脈であり、その山肌には太古の氷河の痕跡であるカールが多数確認されている。カールは、大雪山などでもそれらしいものが認められているが、確証を得るまでには至っていない。
 また、魅力の第2はその困難性にある。谷は深く険しく、稜線は細く、アプローチは長い。今でこそ、奥まで林道が入り、主要な山には登山道もでき、山小屋さえいくつか作られ、困難さは大いに減ったが、まだ大半の山頂に達するためには、昔ながらの沢登りによらねばならない。また、道といっても沢筋をそのまま利用したものが多いから、大雨が降ると通れなくなることもある。まして沢登りでは、天候に対しては充分な配慮を望みたい。
 ところで、どこからを北部日高とするかは問題となるところだが、一応ここでは、カムイエクウチカウシ山以北とする。
 山脈はずっと北の狩勝峠から始まるが、北端の山々や、芽室岳、チロロ岳などは、あまり日高的でない穏やかな山容で、道のある山が多い。本当に「日高に来た!」との実感を味わうのは、ピパイロ岳から以南の山々で、ピパイロから幌尻岳へは標高も高く、道も整備され歩きやすい。それにこの辺りの沢はそう難しくはない。有名な「七ツ沼カール」など、泊まりに適したカールが多い。つまり、日高山脈の中で最も登りやすいのが北部の山々なのである。
 なお、この山脈全体にいえることだが、夏、稜線上には水場がないので、泊まれる場所、水の得られる場所などはあらかじめ調べておかねばならない。
 また快適な泊まり場となるカールは、ヒグマの出没も多いから注意が必要。昭和45年(1970)、カムイエクウチカウシ山八ノ沢カール周辺で、3人の学生がヒグマの犠牲になったのは、今なお記憶に新しい。
 山の名は、ほとんどがアイヌ語によっているが、意味の不明瞭なものも少なくない。狩猟をよくしたアイヌは、山中くまなく足跡を印していたはずだが、記録に残っているものはない。日高山脈が登山史上に出てくるのは、山が深く険しいだけに、大雪山よりもずっと遅れて大正年間になってからだ。

続きを読む

日高山脈北部の主要な山

幌尻岳

2,052m

カムイエクウチカウシ山

1,979m

戸蔦別岳

1,959m

ピパイロ岳

1,916m

エサオマントッタベツ岳

1,902m

札内岳

1,895m

チロロ岳

1,880m

十勝幌尻岳

1,846m

芽室岳

1,754m

剣山

1,205m