主要山域
南アルプス北部
南アルプスは本邦中央部、諏訪湖南岸の守屋山に始まり、天竜川、富士川に挟まれた南北140km、東西40kmの広大な地域にまたがっている。山域は大きく3つに分かれる。第1は鋸岳、甲斐駒ヶ岳、鳳凰三山、櫛形山を経て、富士見山に至る。第2は、仙丈ヶ岳、三峰岳、塩見岳、赤石岳、聖岳を経て、光岳方面に向かう。第3は、前記2つの山脈に挟まれた白峰三山を南下して、白峰南嶺を経て、山伏に延びている。
日本の峠では最高所に位置する三伏峠以北を称して、南アルプス北半とか北部といいならわされている。これを巡る河川は、三峰川、小黒川(天竜川の支流)、釜無川、野呂川(富士川の支流)、また大井川の支流の東俣が間ノ岳に向けて食い込んでいる。
地質は、主として四万十層群で、中生代、海底に堆積した泥や砂が隆起したものである。例外として、甲斐駒ヶ岳や鳳凰三山は花崗岩で、前者との接触点である仙水峠、白鳳峠付近は、フォルンフェルスとなっている。
気候は内陸性で、北アルプスに比べて冬季の降雪量は少なく、比較的好天に恵まれることが多い。一方、夏季にはほとんど雪は消え、雨量は多く、午後になると山域全体がガスに覆われやすい。また、秋にかけては台風の影響を受けやすい山域である。
積雪の少ないこともあり、湿性植物群には恵まれないが、カール地形部にお花畑が発達している。仙丈ヶ岳のカール跡、北岳の草すべり、同南東面、農鳥岳東面、熊ノ平一帯、北荒川岳、塩見岳東面、三伏峠付近がそれである。個有種として、キタダケソウ、センジョウチドリ、ホウオウシャジン、サンプクリンドウなどがある。
登山ルートは、主稜線上には、指導標も完備しており、天気さえよければ快適な山行をすることができる。ただし、農鳥岳以南の白峰南嶺は、入山者も少なく、山小屋も皆無なので、経験者向の山域である。
岩登りの対象となる岩場は少なく、甲斐駒ヶ岳の東・南面、北側の尾白川上流部のそれぞれの岩壁群、北岳バットレスの各ルートにクライマーが集中している。また、鋸岳の登頂、縦走は、岩場のもろさなどから、一般登山者は敬遠した方が無難である。
最近は交通の便がよくなり、入山者が多くなった。そして、北岳、仙丈ヶ岳、甲斐駒ヶ岳、鳳凰三山、早川尾根などは人気の山となっている。しかし、北アルプスに比べると山小屋の数も少なく、収容力も小さく、設備の面でも若干不備である。これを承知で登山計画を立てたいものである。また、山域のほとんどが国立公園内なので、幕営地が指定されているので注意。