超軽量ヘッドランプ登場! ブラックダイヤモンド「フレアー」を子持山の夕闇で試す!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

今月のPICK UP

ブラックダイヤモンド/フレアー

ブラックダイヤモンド/フレアー

価格:2,970円(税込み)
重量:27g
カラー:2色

メーカーサイトへ >>

 

登山の必携装備として、いつも確実に取り上げられるのが「ヘッドランプ」だ。緊急時には薄暗いなかで周囲の安全を確認し、ときにはある程度の歩行もできるように、日帰りでもひとつは必ず持つ必要がある。さらに故障やバッテリー切れに備えれば、予備になるライトも併せて持ち歩くべきだ。そんなことは登山上級者には常識かもしれない。

だが、大ぶりなヘッドランプを常に複数持ち歩くのは面倒である。予備のヘッドランプは小さめでもいいだろう。もちろん、その分だけ機能は制限されるが、重量も軽く、エマージェンシー用やサブ用として使いやすくなる。

さて、そんな視点から開発したと思われるライトが、ブラックダイヤモンドの「フレアー」だ。

その特徴は、ずばり「超軽量/コンパクト」であること。本体の大きさは直径2.7㎝×厚み2.3㎝(実測)ほどで、ここにコードと角度を変えるためのクリップのようなパーツがつく。重量はバッテリーやコード含めて27gしかない。同社の定番品である「ストーム400」が120g、軽量タイプのスタンダードモデル「スポット200」が81g(ともにバッテリーを含む)であることからも、フレアーの超軽量さがよくわかる。

 

発光モードが5種類も。フィールドに出る前に、細部をチェック

見た目や構造もシンプルだ。本体にはボタンのようなスウィッチはなく、本体そのものともいえるようなダイヤルをまわして、光量やモードを調整する。

アルミ製のダイヤルの表面には細かな凹凸がつけられていて滑りにくく、あまり力を入れなくても回すことができる。

ダイヤルには白い線が引かれてあり、ダイヤルのそばに付けられた各モードの表示に合わせて光を変えていく。

角度がついているために少々わかりにくいが、上の写真では、いちばん左に「OFF」、その逆側に「SOS」と書かれている。その間に、赤と白で4つのマークが記載されているのも確認できるはずだ。つまり、フレアーは「OFF」、つまり消灯以外に5つのモードを持つ。

以下が、その5つのモード(と消灯)を表す写真だ。左上が「消灯」、左中は「点灯(赤)」、左下が「ストロボ(赤)」で、右上が「点灯(白/弱)」、右中が「点灯(白/強)」、右下が「SOS」となる。このなかで「ストロボ(赤)」と「SOS」は、実際には規則的にライトが点いたり消えたりしているのだが、写真はすべて点灯した瞬間に撮影したものだ。

ダイヤルを回すことで赤と白、2つ並んだLEDの角度が少しずつ変わり、モードが変化していくことが理解できるだろう。

ちなみに「SOS」モードは、「・・・ --- ・・・」という光の点滅をモールス信号として遭難信号を発信する。なにかのときには役立つかもしれない。

フレアーはこの小ささでも、しっかり角度調整ができる。下の写真では3段階で撮影してあるが、実際には無段階で調整でき、自分の使いやすい角度に合わせられる。

本体に連結する伸縮性のコードにはコードロックがつけられており、頭部へのフィット感の調整も可能だ。27gと軽量なこともあり、細いコードでも頭部からずれにくく、つねに良好な角度に本体が維持されるのがいい。

頭部(額)に触れる部分はバンド状のテープで、柔らかな素材だ。

肌に触れても不快感がなく、汗も吸い取ってくれる。

細かいことだが、同社のブランドマークの部分は、光を反射するリフレクターである。

このテープはクリップ状のパーツに引っかけてあるだけで、簡単に取り外すことができる。

クリップ状のパーツは挟み込む力が強く、テント内などで頭上の生地を挟んで吊るせば、ちょっとしたランタン代わりにも使えそうだ。

本体裏側のカバーを外すと、バッテリーが現れる。

必要なバッテリーは、CR2032リチウム電池が2つ(販売時から付属)。このバッテリーで、最大光量40ルーメン(白/強)で5時間、最低光量で18時間、使用することができる。CR2032は比較的高価なコイン電池だが、サブとして短時間使うことや緊急時への備えとして考えれば、それほど負担にはならないだろう。

フレアーは高い防水性(IP67)も持っている。本体は防水/防塵ユニットで完全密閉され、最深1mの水中で30分間動作することが保証されている。

だから、雨の中で使ったり、水中へ落としたりしても支障なく、安心して使えるのだ。

 

群馬県の子持山へ。小さすぎて、紛失が怖いくらい

そんなフレアーをバックパックへ入れ、僕は子持山へ向かった。関越道で東京から新潟へ向かうと榛名山の次に現れる、なかなか堂々とした山である。

山は春を感じさせる光に満ちていたが、まだ芽吹きには早い。

6号橋の登山口から大タルミへ向かうと、左手に獅子岩がそびえているのが見える。

盛んにクライミングも行なわれているらしく、険峻な雰囲気だ。

大タルミから1時間弱歩くと、「十二山神」が祭られている子持山の山頂である。

今の時期は木々に葉が生えていないため、周囲の視界が良好だ。東側には広大な赤城山の裾野が広がっていた。

僕は当初、バックパックのポケットにフレアーを入れていた。しかし、これだけ小さいと、紛失が怖い。そこで、フレアーのコードはポケット内部のフックに引っかけておいた。

フレアーはオクタン(赤)とグラファイト(グレー)の2色展開だが、紛失防止にはオクタンを選んだほうがよさそうである。

長いコードがついたフレアーは、首から掛けるのにも適している。

軽量なので歩行中でも過度にブラつくことがなく、薄暗くなる前から首にかけておくのもよい。ポケットに入れておくよりも便利だ。

山頂ではたっぷりと休み、時間が経つのを待った。今回の山行の目的はフレアーのテスト。ある程度は暗くならないと、ライトとしての実力がわからない。

その後、僕は柳木ヶ峰の分岐まで戻り、そこから獅子岩へ向かう尾根へ入った。

往路で見たときよりも獅子岩はさらに急峻で、その上までルートがつけられているとは、にわかには信じがたい。

……といいながら、数十分後には獅子岩の上へ到着!。

滑落したら命がないような岩場で、登りごたえは十分すぎるくらいにある。はっきり言って、高所恐怖症の方にはお勧めしかねる場所だ。

だが、利根川流域に広がる街並みを眺めるには最高の展望台であった。

 

いよいよ日没! 夕闇でフレアーはどこまで使えるのか!?

獅子岩直下は滑りやすい岩場が続き、このときは落ち葉も積もっていて、じつに歩きにくかった。そんな場所は肉眼で歩けるうちに通過できたが、そこから先、屏風岩へ向かう下り道ではかなり暗くなってきた。やっとテストができるような状況だ。

僕はフレアーを最大照度40ルーメンの状態で、頭部へ装着。

遭難などの「非常事態に陥った」という想定で歩行を続けていく。

日没の時間を過ぎて30分も経つと、谷間の登山道からは完全に光がなくなった。

至近距離から撮影すれば、これくらいの明るさには見えるのだが……。

少し離れると、自分がどこにいるのかほとんどわからなくなる。

頭部に装着した状態で前方を照らすと、地面の岩や木の根の状態が把握できるのは、せいぜい2~3m。それ以上離れた場所は、おぼろげに見えるだけである。

ゆっくりなら、歩けるといえば歩ける。しかし、日中よりもかなりスピードを落としても、転びそうで怖い。40ルーメンという光量はやはり行動向きではなく、ゆっくりと「今いる場所から、少しでも安全な場所」まで移動するくらいにはよいが、数時間かけて「今いる場所から下山を完了する」まで使うほどの機能性はない。もとよりメーカーも“エマージェンシー”や“サブ”用途をメインに考え、行動のしやすさには重きを置いていないはずである。だからこそ、「SOS」モードもあり、同時に持ち運びに便利な「軽量コンパクト」さを追及しているのである。

ともあれ、頭に付けた状態では足元が見えにくく、僕はフレアーを手で持つことにした。

こうすると地面までの距離が近くなって地面の様子がわかりやすく、だいぶ歩きやすくなった。安全度を高めるためには有効な方法である。

下山口に近付くと屏風岩がある。だが僕は危うく見逃して通過するところだった。ライトを手で持っていたために光が下ばかりに向き、看板が見えなかったのである。

上の写真は手持ちしたフレアーで「屏風岩」の看板を照らしたカット。こういう表示を見逃すと、道迷いを起こす原因になる。フレアーのような光量のライトで夜間行動するのは、最低限にすべきである。

登山届を出すためのポストまで到達し、これにてテストを完了。

僕は念のために高照度タイプのヘッドランプも別に持ってきていた。だが足元が見えにくくて少々怖かったとはいえ、今回は最後までフレアーだけで歩きとおすことができた。

駐車場までの舗装路では、フレアーを後頭部に付け、赤い点滅モードの様子を見た。

山中では、このような点滅モードで、しかも後頭部に付けて使用する機会はほとんどないだろう。だが日常生活で、夜に自転車に乗るようなときは便利そうだ。また、いつなんどき「3.11」のような大地震が起きるかもしれない。フレアーはバッテリーを取り付けたまま10年間も保管でき、普段からエマージェンシー用に持ち歩くのもお勧めだ。

 

エマージェンシーライトの先駆者と比較! どちらがよいか、ぜひ試してみて

突然だが、最後にフレアーと、「エマージェンシー」向けライトの大定番、ペツル「イーライト」を簡単に比較してみたい。なぜならフレアーは、これまで「超軽量/コンパクト」、「エマージェンシー向け」分野のライトとして一人勝ちのように名声を集めていたイーライトのライバルになりうる存在だと思われるからだ。

こちらがペツル「イーライト」。僕の私物である。

数種ある光のモードはフレアーと似ているが、イーライトは「点滅(白)」モードも備えている。一方ではフレアーがもつ「SOS」モードはない。いや、考えてみれば、光が点滅する間隔が違うだけで、じつはイーライトの「点滅(白)」とフレアーの「SOS」はほぼ同様な意味を持つモードであるともいえる。

重量はフレアーの27gに対して、イーライトは26g。もっとも僕がフレアーを自宅で計測した際は26gで、カタログ表記の27gよりも軽かった。つまり、重量も同じ。また、バッテリーはどちらもCR2032が2つ、防水機能も同レベルである。ただし、フレアーは40ルーメンだが、イーライトは30ルーメン。本体の大きさは、体積としてはほとんど変わらないが、頭部に装着するためのコードおよびベルトは、フレアーのほうがコンパクトにまとまる。そして価格もフレアーのほうがいくらかお安い。

確実にイーライトがフレアーと違うのは、以下のようなケースに入っていること。

色も目立ち、携行するときに便利だ。

また、コードの長さを調整するコードロックにも一工夫ある。

小さいながら、ホイッスルになっているのだ。いかにもエマージェンシー向けのライトである。

ケースやホイッスルが付いているイーライトと、光量やコンパクトさ、そして価格でもわずかに優る今回のフレアー。さて、どちらがより秀でているのか……。

いやはや、評価が難しい。あとはデザインまで含めた“好み”かもしれない。ぜひ手に取って試してほしい。

 

今回登った山
子持山
群馬県
標高1,296m

関連する登山記録はこちら
関連する山道具はこちら

 

プロフィール

高橋 庄太郎

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『テント泊登山の基本テクニック』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学』(peacs)ほか著書多数。
Facebook  Instagram

高橋庄太郎の山MONO語り

山岳・アウトドアライター、高橋庄太郎さんが、最新山道具を使ってレポートする連載。さまざまな角度からアウトドアグッズを確認し、その使用感と特徴を余すことなくレポート!

編集部おすすめ記事