1から学ぶ登山の服装③/ミッドレイヤーの選び方。メインはフリースかアクティブインサレーション
ミッドレイヤーとは、ベースレイヤーの上に着る行動着。汗を吸い上げて、身体を温めながら、オーバーヒートも防ぐという役割があります。絶妙な性能が求められるミッドレイヤーには、一体どんな服があるのでしょう。主要なウェアの特徴と、選び方のワンポイントを紹介します。
- ミッドレイヤーの役割とは?
- ミッドレイヤーの種類
- フリース|ミッドレイヤーの定番ウェア
- アクティブインサレーション|最近流行りの動的保温着
- 山シャツ|古くから愛用者が多い便利な一着
- ミッドレイヤーを選ぶワンポイントアドバイス
- 寒がりな人はフード付きがおすすめ
- 足し算の考えで複数のミッドウェアを組み合わせよう
ミッドレイヤーの役割とは?
ミッドレイヤーは、登山のレイヤリングのなかで、行動中にベースレイヤ―の上に着る服のこと。ベースレイヤーが吸い上げた汗をさらに肌面から遠ざける「吸水性」があり、体温を保持する「保温性」を備えます。
ただ、ミッドレイヤーは行動中に着る服なので、オーバーヒートを防ぐ適度な「通気性」も欠かせません。保温性と通気性という相反する性能を絶妙なバランスで備える服がミッドレイヤーになります。
ミッドレイヤーの種類
ミッドレイヤーは、「フリース」と「アクティブインサレーション」が現在の主流で、古くからある「山シャツ」もミッドレイヤーに含まれます。それぞれの特徴を見ていきましょう。
フリース|ミッドレイヤーの定番ウェア
メリット:実は種類が豊富で、通気性重視、保温性重視、ストレッチ性重視など、さまざまな性能に秀でたウェアを選べる
デメリット:生地の種類に左右されるが、なかには重くてかさばるものもある
フリースは、もともとヒツジの起毛を表す言葉ですが、現在は化学繊維で作られる起毛素材、もしくは起毛素材で作られるウェアを意味する使い方が一般的です。また、正確には両面が起毛する素材が本来のフリースになるのですが、片面だけ起毛している素材も、いまではフリースと呼ばれています。
フリースの性能は、実際の生地から概ね判断することができます。たとえば、裏面に細かい格子状の溝が刻まれているフリースは「グリッドフリース」と呼ばれていて、ひとつひとつの溝が熱を逃がすベンチレーションのような役割を果たすため、比較的通気性が高くなります。
一方、全面が起毛で覆われているフリースは保温性に優れ、よく伸びる生地はストレッチ性が高いといえます。
フリースはミッドレイヤーの定番なので、何を買ったらいいのか迷ったら、まずはフリースのウェアを検討してみるといいでしょう。
アクティブインサレーション|最近流行りの動的保温着
メリット:通気性を備えるため、行動中に着てもオーバーヒートしづらく、適度な保温性で体温を保持しながら行動できる
デメリット:一般的な保温着ほど保温性が高くないので、単体で着ると寒さを感じることも
アクティブインサレーションは、フリースに代わるミッドレイヤーとして近年人気がある、中綿入りのウェアです。インサレーション(insulation)とは、絶縁や断熱を意味する英語で、インサレーションウェアといえば、一般的には中綿入の保温着を指します。そこにアクティブ(active)が加わり、「動的保温着」とも訳されるアクティブインサレーションは、一般的な中綿入りの保温着にはない、通気性を備える点が特徴です。
保温性や通気性の強弱はモデルによって異なるので一概に比較できませんが、どちらかというと一般的なフリースよりも通気性に優れるものが多く、汗をかきやすい方や、激しく運動するアクティビティなどで使うと、通気性の高さゆえの快適性を実感できるでしょう。
山シャツ|古くから愛用者が多い便利な一着
メリット:通気性が高くて蒸れにくい。着ることで防風性や保温性も感じられる。重ね着しやすい。コンパクトに持ち運べるものが多く、普段遣いもしやすい
デメリット:保温性はフリースやアクティブインサレーションに劣る
登山用の襟付きのシャツが「山シャツ」と呼ばれ、かつてはウールとコットンの混紡素材で作られたチェック柄が定番でした。最近は商品数が減りましたが、フリースやアクティブインサレーションを着るほどではないけどちょっと寒さを感じる、といった微妙な気温のときに持っていると、とても役立つウェアです。
ミッドレイヤーを選ぶワンポイントアドバイス
最後に、ミッドレイヤーのディティールや、購入するときに覚えておくと役立つ考え方を紹介します。
寒がりな人はフード付きがおすすめ
寒いときフードをかぶると暖かさを感じます。フリースやアクティブインサレーションにはフード付きモデルがラインナップされているので、とくに寒さが苦手な人は、フードが付いているウェアを選ぶといいでしょう。
ただ、フードはアウターレイヤーを着ると首回りがかさばってしまう欠点も。それでも保温性を重視してフード付きを選ぶか、手間が増えますがニット帽などで対応するか、正直悩ましいところです。
ちなみに、ミッドレイヤーには袖口にサムホール(もしくはサムループ)と呼ばれる親指を通す穴や紐状のループが備わっているものもあります。サムホールが付いているウェアは手首まで保温することができ、フードのような欠点がないので、寒がりな人は積極的にサムホール付きのウェアを選ぶといいでしょう。
足し算の考えで複数のミッドウェアを組み合わせよう
ミッドレイヤーは、ひとつのウェアしか着てはいけないという決まりはなく、逆に重ね着することで保温性を細かく調整できます。たとえば、山シャツの上にベストを着て、さらに寒さを感じる場合はジャケットを羽織る、といった具合です。
ミッドレイヤー選びに迷ったら、ひとつのウェアに完璧を求めるのではなく、タイプの違う服を用意して、足し算の考え方でベストな組み合わせを見つけてみるといいでしょう。組み合わせが増えることで柔軟性が高まり、さまざまな状況に細かく対応できるようになります。
写真=福田 諭
プロフィール
吉澤 英晃
1986年生まれ。群馬県出身。大学の探検サークルで登山と出会い、卒業後、山道具を扱う企業の営業マンを約7年勤めた後、ライターとして独立。道具にまつわる記事を中心に登山系メディアで活動する。
はじめての登山装備。基礎知識と選び方
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