山に詳しい医師が体の悩みを解決する方法をアドバイス『登山のダメージ&体のトラブル解決法』

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登山中に身体のトラブルはさまざまある。特に多いのが膝痛だが、熱中症や高山病、虫刺されや凍傷、さらに最近では急な心臓疾患など多岐にわたる。本書では、現時点でトラブルを抱えている人だけではなく、長く登山を続けていこうと考えている人たちにも、参考になるアドバイスが盛り込まれている。

 

7月15日に、山と溪谷社から発売された『登山のダメージ&体のトラブル解決法』。これは登山に詳しい6人の医師から教えていただいた、膝、腰、足首の下半身三大部位をはじめ、熱中症や高山病、マダニ刺されや成人病など、登山者に多い体のダメージやトラブルの解決を目指すためのアドバイスを、Q&A形式でまとめた一冊です。

元々は筆者が、このヤマケイオンラインで連載していた『医師に聴く、登山の怪我・病気の治療・予防の今』をベースとし、全面的に書き変えて作り上げました。

本来はとても健康に良いはずの登山ですが、ときには無理な動作などをして、体を痛めてしまうこともあるでしょう。またハードに登り込んだり、長期間に渡って登山を続けるうちに、次第に痛みや不調が生じることもあるはずです。

筆者も例外ではなく、30代のなかば頃から足首、膝、皮膚などの体のトラブルが頻発。今も悩みは尽きません。そして筆者の職業は、登山ガイドです。お客様から、登山が原因と思われる体の不調について相談されることは、多々あります。

そこでヤマケイオンライン連載から始まったこの企画では、回答者の医師の皆さんに、日々感じている多くの疑問を投げかけて、基礎的な部分から丁寧に教えていただきました。

 

明らかになった勘違いや事実誤認。的確な対処法を理解

ところで医師とのやりとりをしていく中で明らかになったのは、筆者の医療に関する知識には、勘違いや誤りが多かった、ということです。痛みの強さで何となく症状を判断したり、人からのまた聞きで一部の薬の効果に過大な信頼を持っていたりするものが、少なくなかったのです。

しかしそれは、多くの登山者も同じなのではないでしょうか?

例えば膝が強く痛むときは、いつまでも影響を及ぼす、深刻で致命的なダメージが生じていると考える人は多いでしょう。ところが多くの膝痛は、痛いだけであまり心配する必要はないというのが、回答者のお一人、整形外科医の小林哲士先生のお答えです。

鋭い痛みが走ったとしても、そのほとんどは一時的なもの。少し休ませたうえで股関節のストレッチをして柔軟性を高め、トレーニングをして筋力を強化するだけで、次第に解消していくというのは、ちょっと予想外ではないかと思うのです(もちろん深刻な症状の可能性はあるので、医師の診断は必須です)。


そのように多くの人が勘違いをしやすいと思われる事例については、特に念入りに教えていただいて、より的確な対処法を記すことを心がけました。

また、このような医学的な本は難しいことが書いてあるのでは? と思われるかもしれませんが、そんなことはなく、かなり解りやすいと思います。これは医療に詳しくない人にも理解できるようにすることを目指し、専門用語はできるだけ避けるように心がけたため。

そのように解りやすい言葉に置き換えることで、誤りがあってはいけないので、回答者の医師の皆さんには何度も繰り返してZoomやメールでの内容チェックをお願いし、正確を期しました。

取材・執筆にあたり、実際に「登山者検診(CPX試験)」の体験をする筆者。正確を期すためにわかりやすい言葉で表現している


現状は元気で問題がない人でも、将来は何かしらの体のトラブルが生じる可能性はあります。そのようなトラブルを予防するためのアドバイスも、できるだけ盛り込むようにしました。

実際に体の不具合に悩んでいる人はもちろん、これから長く登山を続けていこうと考えている若手の人も、ぜひ手にとって読んでみていただければと思います。必ず役に立つ、医師からのアドバイスが見つかると思います。

登山のダメージ&体のトラブル解決法

山で体にダメージを受けたとしても、どうすれば山に登り続けられるか。また登り続ける体をどうやって維持していくか。登山中の苦痛を軽くして、事故を予防するために必読の一冊! 日々多くの登山者に接している6人の医師に、登山者に向けたケガや病気についての対処法を、詳しく解説していただきました。

: 木元 康晴
監修: 小林哲士、柴田俊一、千島康稔、杉田礼典、小阪 健一郎、市川智英
価格: 2,090円

 

プロフィール

木元康晴

1966年、秋田県出身。東京都山岳連盟・海外委員長。日本山岳ガイド協会認定登山ガイド(ステージⅢ)。『山と溪谷』『岳人』などで数多くの記事を執筆。
ヤマケイ登山学校『山のリスクマネジメント』では監修を担当。著書に『IT時代の山岳遭難』、『山のABC 山の安全管理術』、『関東百名山』(共著)など。編書に『山岳ドクターがアドバイス 登山のダメージ&体のトラブル解決法』がある。

 ⇒ホームページ

登る前にも後にも読みたい「山の本」

山に関する新刊の書評を中心に、山好きに聞いたとっておきもご紹介。

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