春山特有の日中の寒暖差について理解して、安全に行動できる技術を身につけてから入山を 島崎三歩の「山岳通信」 第297号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2023年4月13日に配信された第297号では、春山特有の標高の高い山域での日中の寒暖差について言及。凍結したルートでアイゼンやピッケルを使って安全に行動できる技術を身につけて入山することを推奨している。

 

4月13日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第297号では、期間中に起きた8件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 3月29日、北アルプスの白馬岳で、3人パーティで入山した53歳の男性と女性が、白馬岳主稜を登山中に滑落して負傷する山岳遭難が発生。富山県警ヘリが出動して救助したものの男性の死亡が確認された。

白馬岳での遭難現場の様子/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)4月3日付

  • 3月30日、八ヶ岳連峰の天狗岳で、30人パーティで入山した16歳の女性が、滞在中の山小屋で発病して体調不良となる山岳遭難が発生。茅野警察署山岳遭難救助隊員及び諏訪広域消防特別救助隊員が出動して女性を救助した。

  • 4月7日、御嶽山で、単独で王滝登山口から入山した42歳の男性が、入山後に行方不明となっている。

  • 4月8日、中央アルプスの千畳敷で、単独で入山した51歳の男性が、八丁坂付近でバランスを崩して滑落・負傷する山岳遭難が発生。駒ヶ根警察署山岳遭難救助隊員及び中央アルプス地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 4月8日、中央アルプスの千畳敷で、2人パーティで入山した62歳の男性が、八丁坂から下山中にバランスを崩して滑落・負傷する山岳遭難が発生。駒ヶ根警察署山岳遭難救助隊員及び中央アルプス地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 4月8日、中央アルプスの千畳敷で、2人パーティで入山した64歳の男性が、八丁坂付近を登山中にバランスを崩して滑落・負傷する山岳遭難が発生。駒ヶ根警察署山岳遭難救助隊員及び中央アルプス地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 4月8日、中央アルプスの千畳敷で、5人パーティで入山した61歳の男性が、極楽平付近を登山中にバランスを崩して滑落・負傷する山岳遭難が発生。駒ヶ根警察署山岳遭難救助隊員及び中央アルプス地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 4月9日、北アルプスの常念岳で、単独で入山した46歳の男性が、前常念岳から三股ゲートに向けて下山中に道に迷い行動不能となる山岳遭難が発生。安曇野警察署山岳遭難救助隊員及び北アルプス南部地区山岳遭難対策協会救助隊員が出動して、男性を発見、同行下山して救助した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

3月5週は、死亡遭難を含む2件の遭難が発生し、うち1件はバリエーションルートで発生しています。

県内の山域では、残雪期に入り、バリエーションルートに挑戦する登山者が徐々に増えています。バリエーションルートは通常の登山道ではないため、高度な登山技術やルートファインディング力が求められます。行動中は、融雪に伴う雪崩や落石、凍結斜面での転倒・滑落等のあらゆるリスクを想定することがとても大切です。
入山する際は、事前にルートを調べるとともに、経験者と一緒に行動するようにしましょう。体調不良や持病等がある場合には、無理な行動をすることなく、登山を中止する判断も必要です。

4月1週は、行方不明遭難を含む6件の遭難が発生し、うち4件は、中央アルプス千畳敷周辺で発生しています。

中央アルプス千畳敷では、遭難発生前日に雨が降ったことによりルート上がアイスバーンになっていたため、滑落による山岳遭難が多発しました。

春山は、標高の高い山域でも日中の寒暖差が大きくなり、雨やみぞれなどの影響も受けて積雪の状態が非常に不安定になる傾向にあります。特に、朝は凍結したアイスバーン、昼は雪解けによる踏み抜き等、積雪状況が刻々と変化し、それに対応できる技術が必要となってきます。凍結したルートでアイゼンやピッケルを使って安全に行動できる技術や、自身や仲間の力量を見極め、引き返す選択肢又は登山を中止する判断をしましょう。

今後、大型連休に向けて長野県内での登山を計画している方も大勢いると思います。多くの登山者が集中するルートで転倒し滑落すると、自身が負傷するだけでなく、仲間や他の登山者を巻き込んでしまう場合があります。自分自身や仲間の安全対策として、事前にアイゼン歩行やピッケルの使い方の訓練やトレーニングが必要です。経験者に指導を受けたり、安全な場所でトレーニングをするなど、使い方を習得してからの安全登山を心掛けましょう。

 

春山登山に特化した注意喚起を発信

長野県警察山岳遭難救助隊公式Twitterで4月2週から3週まで下記7項目の注意喚起を発信します。

⇒長野県警察山岳遭難救助隊公式Twitter

  • ①気象遭難防止(4月11日)
  • ②地形や地図の確認(4月12日)
  • ③雪崩に対する注意(4月13日)、雪崩の脅威(4月14日)
  • ④アイゼン・ピッケル等装備品の携行(4月18日)
  • ⑤アイゼン装着時の注意点(4月19日)
  • ⑥シリセードの危険性(4月20日)
  • ⑦紫外線対策(4月21日)

 

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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