黄金色に染まる宝剣岳と濃ヶ池を訪れる

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中央アルプスの紅葉の名所として木曽駒ヶ岳と千畳敷カールは有名であることはいうまでもありません。紅葉シーズンの10月の休日は多くの登山者でにぎわいます。そこで人混みをさけて静かに紅葉を愛でる旅として宝剣岳から濃ヶ池をめざしました。

文・写真=奥谷 晶

菅の台は早朝からバス待ちの列ができていました。切符売り場で約1時間待ち、バス乗り場で2時間待ち、さらにロープウェイ乗車に約1時間待ちでした。覚悟の上とはいえ、さすがに疲れます。

気を取り直して、まず宝剣岳をめざします。登山者の少ない極楽平から回って鎖場に取り付きます。

極楽平から登る宝剣岳の鎖場
極楽平から登る宝剣岳の鎖場

何本かのきわどい鎖を登り切って山頂目前となりましたが、そこでなんと渋滞です。どうやら宝剣岳山頂の岩に乗って撮影する登山者の順番待ちの列でした。そこはスルーして宝剣山荘側に降り、濃ヶ池カールをめざすことにしました。

秋色深める宝剣岳から伊那前岳への稜線
秋色深める宝剣岳から伊那前岳への稜線

宝剣山荘の前にある標識に従って、駒飼ノ池方面へ下っていきます。乗越浄土付近は木曽駒ヶ岳をめざす人でごった返していましたが、駒飼ノ池方面に進む人はわずかです。さらにそこから濃ヶ池方面へ向かう人は見あたりません。

一気に静かになった道をどんどん下っていきます。濃ヶ池に近づくにつれ、振り返るとカール地形が次第にはっきり見えてきます。濃ヶ池は氷河時代につくられた氷河圏谷底湖の名残と言われているとおり、カールの底にあたり、濃ヶ池から流れる黒川谷は氷河によって削られたU字谷であることがわかります。両側の山肌は黄金色に色づく木々で覆われ、壮大な光景をつくり出していました。

黄金色に染まる濃ヶ池カールの紅葉
黄金色に染まる濃ヶ池の紅葉

濃ヶ池からさらに進むと木曽駒ヶ岳から西駒山荘へ至る稜線に出て、木曽駒ヶ岳山頂を経由して乗越浄土に戻ることもできますが、今回は時間がないのでピストンで戻ることにしました。

MAP&DATA

宝剣岳地図

コースタイム:千畳敷~極楽平~宝剣岳~駒飼ノ池~濃ヶ池~宝剣山荘~乗越浄土~千畳敷:約5時間25分

ヤマタイムで周辺の地図を見る

この記事に登場する山

長野県 / 木曽山脈

宝剣岳 標高 2,931m

 中央アルプスの中では南部の仙涯嶺(せんがいれい)とともに険しい岩場の山で、その名のとおりどこから見ても鋭くとがった三角錐を突き上げ、人を寄せつけないような雰囲気をもっている。特に千畳敷カールから見上げる姿は一段と鋭さを増す。  山名は山岳信仰からきているものと推測され、江戸時代後期の絵図には錫杖嶽と書かれており、その後剣ガ峰とも呼ばれていた時期がある。宝剣岳の名は近代に入ってからである。  登山コースは、ロープウェイが運行されている現在は千畳敷カールから登る人がほとんどで、カール内の駒ヶ岳神社で左右に分かれ、右回りに乗越浄土から天狗岩を眺めながら北稜を登るルートと、左回りに極楽平から南稜をちょっとした岩登り気分で登って頂上に立つルートがある。いずれも1時間弱。  また鋭い岩峰だけにロッククライミングのルートも多く、初級の中央ルンゼをはじめ、左稜、中央稜、左稜フランケなどがある。木曽側には天狗岩に駒峰ルート、芸大ルート、伊那ルートなどが拓かれている。  なお、千畳敷カールは春スキーのメッカとしても賑わっているが、かつては積雪期には立ち入り禁止だったことを忘れないでほしい。

プロフィール

奥谷晶

30代から40代にかけてアルパイン中心の社会人山岳会で本格的登山を学び、山と溪谷社などの山岳ガイドブックの装丁や地図製作にたずさわるとともに、しばらく遠ざかっていた本格的登山を60代から再開。青春時代に残した課題、剱岳源次郎尾根登攀・長治郎谷下降など広い分野で主にソロでの登山活動を続けている。2013年から2019年、週刊ヤマケイの表紙写真などを担当。2019年日本山岳写真協会公募展入選。現在、日本山岳写真協会会員。

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