雪山、困ったり悩んだり(5)「寒さ」というリスクを考える

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2006年10月の3連休、山仲間と総勢3名、室堂から剱岳を目指した。

天候は朝から雨。とはいえ今日は剱沢のテン場まで。歩行時間は4時間、そのうち辛い登りは2時間だけ、今日は早めに着いて入山祝いだ。調子にのって室堂で、地酒やらますのすしやら大量に買い込んだ。

冷たい雨が降り続けるなか、テント泊装備の大きなザックを背負って歩き続ける。思ったよりペースが上がらない、というより、つらい。息が上がり、何度も立ち止まってしまう。雨具の中のシャツが汗でだいぶ濡れている。

剱御前の小屋の先から、降るものが雨ではなく雪になってきた。気温が一気に下がる。早く歩きたいけどバテてしまって足が全然進まないし、体も温まらず、ひたすら寒い。仲間からだいぶ遅れてテン場に着いた。テントを張るのを手伝わなくてはならないのに、ぼーっとしてしまって体が動かない。仲間たちがテントを張り「中に入ってていいよ」と言ってくれて、靴のままテントに入る。みんなのザックを中に入れなきゃ。なのに全く体が動かないし頭も働かない。カメのようにのろのろと自分のザックからマットを出しているうちに皆がテントに入ってきて、火を炊き、やっとひと心地ついた。

忍び寄る低体温症

「あれは低体温症の初期症状だったよね」仲間から後で言われて気づいたのでした。

雨でずぶぬれになったり、強風で体温を奪われたりすると、低体温症になります。同じ条件で誰もがなるわけではなく、空腹で体の中に熱を作るエネルギーがないことや、疲労で体が熱を作り出せないことなども関係してきます。はじめは震えや判断力の低下、動きが鈍くなるぐらいですが、症状が進むと行動ができなくなり、最悪の場合は死に至ります。

低体温症が恐ろしいのは、自分で気づかないうちに症状が起こり、どんどん進んでいってしまうこと。剱岳のときも、自分では「ばてている」としか思っていなかったのです。

冬の重要課題は「保温」

冬の山では、体を保温することが重要です。ジャケットや保温着、帽子や手袋などで体の熱を逃がさないこと。体の中で熱を作り出すために、行動食をこまめにとることでエネルギーの補給も意識しましょう。天気がよくないときや疲れていると、行動食をザックから取り出して食べるのが面倒になってしまいますが、そういうときこそ、補給が必要です。カロリーが高く食べやすいものを選ぶとよいでしょう。温かい飲み物をとることも効果的です。

「濡らさない」ことの重要性

冬は夏以上に「濡らさない」ことを意識します。気温が低いので、一度濡れてしまったシャツはなかなか乾きません。濡れた衣服は冷えて体温を奪い、体調不良の原因となります。気をつけたいのは汗。びっしょりと汗をかいてアンダーウェアを濡らしてしまわないよう、レイヤリングなどで体温調節を行いましょう。私は濡れに備えて替えのシャツや下着を持っていくようにしています。

【低体温症への備え3か条】

  • 空腹を感じる前に、カロリーの高い行動食をとる
  • 衣服を濡らさない(汗・雪・雨)
  • 保温
教えてくれた山センパイ

西野淑子さん(登山ガイド・フリーライター)

初心者向け登山ガイドブックや山岳雑誌などで取材・執筆を行うフリーライターで、登山ガイドの資格を持つ。関東近郊を中心に低山歩きからアルパインクライミングまで楽しむオールラウンダー。雪山登山歴は10年、好きな雪山は赤岳(笑)