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銀座の三輪神社に詣でる

( 関東)

パーティ: 2人 (すてぱん さん 、ほか1名)

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行程・コース

天候

登山口へのアクセス

この登山記録の行程

コース

総距離
約0.3km
累積標高差
上り約0m
下り約0m

高低図

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登山記録

行動記録・感想・メモ

山登りで稜線をつないで縦走したり、複数の山行で「赤線」をつないだりするのは楽しい。でも、なかなか実際の登山ができないので、転調や飛躍を挟みながら、年末の都心の点景でいささか強引に紡いで見た。地理的な稜線をつなぐのではなく、いわば心や想いの縦走である(笑)。

ヤマケイオンラインなどでみなさんの記録を拝見すると、たくさんの魅力的なコースや知らなかったことに出会える。そんな出会いの一つがガバオさんのレコで知った「オオカミの護符」(小倉美恵子著 新潮社刊)であった。物語の起点である川崎市土橋には、私も川崎市郊外に育ったことや学生時代のアルバイトで通ったことなどもあり、親近感や郷愁を覚えた。ここで描かれているお百姓さんの暮らしのかすかな気配は、少年時代に自宅近辺の雑木や竹やぶの間を縫うように伸びる里山の道を歩いた記憶や、不意に出会った藁葺き屋根や、土蔵、牛小屋、農耕馬を引いたおじいさんなど、都心から郊外に転居した自分のわずかな体験として思い出すことができた。もういまではすっかり、新興住宅地になって面影を探すことも苦労するけれど・・・

自分が登ってきた奥多摩の御嶽山や秩父の宝登山、雲取山など三峰の山々も、オオカミ信仰の盛んなところという知識はあったが、この本を知ったことで物語として繋がることになった。もう一度これらの山々に登る時には、尾根を歩くだけではなく、山麓の暮らしや古くからの信仰などに思いいたしながら登れれば、とても味わい深いものになりそうだ。

妙法ヶ岳、白岩山、雲取山からなる三峰の麓には三峯神社がある。ヤマトタケル伝説、オオカミ信仰などで彩られた神社だが、少し驚いたのはこの神社の鳥居が「三ツ鳥居」という珍しい形式であったことだ。私は古社寺仏閣を訪ねるのが好きで、奈良の山の辺の道を歩いた時には、ご神体として禁足地になっている三輪山にも登ったことがある(大神(おおみわ)神社の摂社である狭井(さい)神社に登拝を許可していただければ登ることができる)。山中にある巨岩を磐座(いわくら)とし、いにしえから神を祀っている。この大神神社の鳥居が、全国でも例が少ない「三ツ鳥居」なのだが、それと同じものが秩父の三峯神社にあることに驚いたのだ。ヤマトタケル伝説があるのだから、あるいは古代の神の信仰でつながっているのかもしれない。

で、話は家内が一時帰国しているために思う様登山ができず、年の瀬の都心でくすぶっている私に繋がる。家内といわゆる銀ブラで立ち寄った銀座コマツビル西館の屋上に立派な三ツ鳥居があったのだ。なんと奈良の三輪山の神を勧請したらしい。三ツ鳥居に玉垣で守られた聖域の中心には磐座がある。これには驚いた。ちょうど「オオカミの護符」を読んでいた最中だったから何かしら因縁を感じてしまった。

興味を持たれた方は、銀座四丁目交差点から中央通りをユニクロまで南東に進む。道標も良く整備されているが、大人気のコースだけあってすれ違いに大変苦労する。また、行き交う人に「こんにちは」などとあいさつしても、何かに間違われる可能性が大きいので、オススメしない。また、たとえ厳冬期でもアイゼン、ピッケルなどを所持するとこれまたあらぬトラブルを起こしそう。目出帽(バラクラバ)などもってのほかである。

五丁目の交差点を分けてなお直進すると右手にユニクロがみえるので入店し、7階まで一気に高度を上げる。この登山道はボタンを押せば垂直に、そうでなければ登山道自体が斜め上昇するよう整備されているので、体力も特別な技能もいらない。7階まで高度を稼いだら、西館に向かう分岐があり、屋外の渡り廊下の途中で、さらに左手に上がる階段を登れば到着である。神社の他に芝生もあり、一息いれるのに良いが、おそらく火気厳禁だと思われる。コース定数0.0001、主観的なグレードAだが、心を強く持たないと本来の目的を忘れ道迷い遭難(買い物ともいう)の危険性が高いので注意。特に高級店で滑落すると銀行口座残高が一気に低下し、正規の登山道に復帰するのが困難。見栄っ張りな男性登山者が女性と一緒に山行する場合は、この危険性がさらに高まるように思われる。

さて、銀ブラの最中に興味を惹かれたもう一つのものが、活版印刷。出戻り登山者が住んでいるあたりは、製本や印刷、出版関係の事務所や町工場などが多く点在している。かつて都庁が有楽町にあったことや、幕末に遡れば外国人居留地があり、杉田玄白の解体新書が翻訳されたり、佐久間象山が鉄砲の試射を行ったのがこの辺りだとか、キリスト教の宣教師や医師が住み、海外から流れ込んだ最新の知識が集積していたことも関係するのかもしれないなどと妄想したりもする。そんな中で通りがかりで見つけたのが「中村活字」だった。TVなどでも繰り返し紹介されていた店だというのは後から知ったが、中村さん自らグーテンベルクに遡る活版印刷の説明をしていただき、なんとも贅沢な散歩になった。中村さんにご紹介いただいた「活版印刷三日月堂」(ほしおさなえ著 ポプラ文庫)は、心温まる佳作であった。

今年はヤマケイオンラインでコメントを交しあっていた皆さんと、高尾山に集まって親しくお話ができたことも良い思い出だ。西東京猛虎会さん、すーさん、どうもありがとうございました。当日ご都合がつかなかった皆々様ともまた機会を改めてお目にかかる機会があればと思います。

私の拙い記録を読んだり、コメントを下さった方々、本年もありがとうございました。来年も、楽しく登山をし、またお目にかかりましょう。
どうぞ、良い年をお迎えください。

すてぱん拝

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フォトギャラリー:24枚

小倉美奈子著「オオカミの護符」新潮文庫

銀座界隈で買い物をしていたら、偶然見つけた銀座コマツビル屋上の三輪神社

立派な三ツ鳥居

磐座(いわくら)

私の知る限り、都内に三ツ鳥居があるのは墨田区の牛島神社だけ(2016年10月撮影)

また別の日に、通りを歩いていたら目に止まった「中村活字」。写真撮影の許可を求めたら、どうぞどうぞと中に招き入れて下さった。

膨大な活字の数々。

ここから一字ずつ活字を拾っていくわけだ。

グーテンベルク聖書の豆本

手キンと呼ばれる、手動の活版印刷機

ほしおさなえ著「活版印刷三日月堂」 ポプラ文庫

お店は閉まっていたけれど、秩父の地酒のお店。一度覗いてみたい・・・

歌舞伎座も人でいっぱい

宝珠稲荷神社にて

銀座四丁目交差点。大勢の人々で溢れている

鉄砲洲稲荷

以前もご紹介した、鉄砲洲稲荷の富士塚

大正時代の古民家を利用したレストラン。年明けに訪問する予定

出戻り登山者の勤務先のそばでは、門松の準備が進んでいた。一番大きなものは高島屋に納められるものだそうだ。

これまた朝の通勤で見かけた風景。忙しいときに手を休めて鏡餅やのし餅の説明をしていただき、ありがとうございました。

築地界隈でなぜか心惹かれた点景

一時間も並んだ宮川鶏肉店。寒空の中、並んだ甲斐あって買って来た鶏肉で、美味しい鳥鍋を楽しめました。

年の瀬の築地場外市場

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装備・携行品

みんなのコメント

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  • すてぱんさん、あけましておめでとうございます!

    大晦日は奥様と銀ブラされていたのですね。お疲れ様でした~♪

    それにしても銀座のビルを山に見立ててのレコ、面白いですね。(笑)確かに銀座で
    対向者に挨拶したら怪しまれそう。ましてピッケルなんて持っていたら・・・

    田舎者の私にとってはなかなか見ることのできない都会の師走の様子、とても興味深かった
    です。

    さて、すてぱんさん、本格的な山登り復帰はもうそろそろ?でしょうか。そろそろ蠟梅も
    咲き始めているみたいですよ。

  • すーさん、コメントありがとうございます。
    銀ブラをヤマレコ風に書いてみると、街と山は異質なんだなと改めて思います。
    次の山行は、確定しているものでは2月までないんです. orz
    蝋梅の宝登山なら家内でも登れるかと、何度かプレゼンを試みてますが、さてどうなりますことか

  • すてぱんさん、明けましておめでとうございます。

    オオカミの護符、やはり読まれたのですね。
    今まで歩いていた場所が、物語として繋がる~、という言い回しがとてもしっくりきます。

    残念なのは、そういった物語の殆どが、今や消滅しかかっているという切実な事実でしょうか、、、。
    後半の写真のような山の焼畑風景などは恐らく二度と見られない昔の姿ですが、せめてその地に根付いたオオカミ信仰はずーっと有り続けてほしい~、等と勝手に願ったりしてしまいます。

    ところでこの年末年始は奥様孝行に費やされたご様子。
    プレゼンの成功をお祈りしつつ、素敵なレコをお待ちしております!

  • ガバオ さん、あけましておめでとうございます。

    「オオカミの護符」、良い本をご紹介いただき、ありがとうございました。
    例えば屋久島を歩いても、谷戸を見ても、あるいは自然保護とか歴史保全運動を見ていても「何を守るのか」というのは難しい問題だなあと考えあぐねてしまいます。ある時点のある状態を我々は貴重で保護すべきだと考えるわけですが、それ以前のものはどうだったのか?これを壊して造られる新しいものには価値がないのか?何を以って「止まれ!お前は確かに美しい!」と叫ぶのか?途方にくれてしまいます。

    でも、私自身は谷戸にたまらない郷愁を覚えるんです。
    渡邉京二の「逝きし世の面影」(平凡社)という本も、すでに失われたものを掬い上げていて切なかったです。

    結局のところ登山も私にとっては自己表現なのですが、ガバオさんの登り方や関心の持たれ方にもそれが強く出ているように感じられ、いつもとても興味深く拝見しています。
    本年もよろしくお願いいたします。

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