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空に広がる金草岳の雪原を独占

金草山( 東海・北陸・近畿)

パーティ: 3人 (Yamakaeru さん 、ほか2名)

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行程・コース

天候

晴れ

登山口へのアクセス

マイカー
その他: 今は廃村になった芋ヶ平集落の芋ヶ平(蓮如の里)を目指す。
蓮如の里の標識の近くのスペースに駐車。仮説トイレが一つあるが、事前に済ませておくことをお勧めする。

この登山記録の行程

蓮如の里(07:06)・・・尾根とりつき点・・・尾根と峰の合流点(08:01)・・・<藪こぎ&縦走>・・・一昨日の金草岳を目前にしての折り返し地点(09:47)・・・金草岳の壁斜面とりつき地点(11:11)・・・・山頂(12:00)(昼食~12:37)・・・金草岳の壁斜面とりつき地点(13:01)・・・<金草山の尾根降り>・・・折り返し(14:01)・・・金草岳の壁斜面とりつき地点(14:53)・・・一昨日の金草岳を目前にしての折り返し地点(15:56)・・・尾根と峰の合流点(17:25)・・・尾根とりつき点・・・蓮如の里(18:16)

コース

総距離
約10.9km
累積標高差
上り約1,363m
下り約1,366m

高低図

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登山記録

行動記録・感想・メモ

(もし、参考にされる場合:積雪や雪質の条件が今回良かったため、歩け通せましたが、条件が整わなければ結構厳しいポイントが幾つかありました。リスクがあることをお伝えしておきます。)

独占シリーズ。雪山だからこそ行動範囲が広がる冬に実施する個人的なチャレンジ。定義は、半径約10km(あくまで目安)、誰も踏み入らない山奥に、自分なりのルートを確立して挑戦し、山頂からの見渡す限りの大自然を独占するというもの。毎年実施していたが、昨年は実施の段階で記録的な豪雪となり、結果、諦めざるを得なかった。

そして今年。昨年とは真逆の雪がない暖冬。それが功を奏してか、一昨日の下見では、例年冬季には近づけないはずの場所まで車で乗り入れることができることが分かった。

出発場所は、福井県の隠れた名所「蓮如の里」。正直、地元の人間でも知らない人が多いと思うが、蓮如が比叡山からの迫害を逃れて、芋ヶ平集落(今は廃村)にたどり着き村人が親身になってお世話をしたという逸話が残っている。

蓮如の里から林道が岐阜後面まで延びており(現在、岐阜側は土砂崩れのため通行止め)、無雪期であれば県境の高倉峠からアプローチする手段もあるが、高倉峠までは結構な距離がある。

本来、独占シリーズは、それなりの危険を要するし、そもそものコンセプトとから、単独でチャレンジすることにしているが、今回、念入りな下見を初めて行い、ある程度のルートに目星がついたこともあり、今回に限り山仲間2名を同行してのチャレンジとなった。

蓮如の里の空き地に車を停めて、歩き出す。林道は除雪はここまで。昨日の放射冷却で締まった雪の上を歩いていく。

林道から一番近くの尾根にとりつく。もちろん、登山道なんてものはない。いわゆる藪漕ぎ。自由気ままに山に入っていく。待ち構えていいたのは、不通の登山では味わえない壁のような斜面。登り口付近は雪がないものの、逆に土が柔らかく自重で滑って靴が泥だらけになる。

そんな斜面を力でねじ伏せ、登りきる。斜面は途中から雪に変わり、峰付近では膝くらいの積雪があった。早朝にスタートした甲斐もあり、ワカンをつけなくても全く沈み込むことなく歩くことができた。今のうちに距離を稼ぐこととする。

コースは目的に向かってアップダウンを繰り返しながら全体的に登り傾向で進んでいく。下見の時には、ルートファインディングをしながらなので、尾根を探して巻いてみたり、藪を強引に突っ切ったりもしたが、下見の学習効果で可能な限り藪を避けながら効率的に進んでいく。

どうしても避けられない崖が一か所。幸い数m程度なので力づくで乗り越える。歩き始めに遠くに見えていた高いピークを越えると、ようやく目的地の金草岳が見えた。横から見ると台形のように大きく広がった山容をしている。また、高度を上げてきたこともあり、周囲の山々も遠くまで一望できるようになった。どこを見ても山、山、山。圧巻である。

ここからしばらくは有難いことに、比較的緩やかな水平移動となる。しかも雪原のような場所もありプチ縦走が楽しめる。これが銀杏峰から部子山ほどの縦走路があればきっと名所になっていたに違いないと思う。

一昨日、下見で折り返した場所に到着。ここまで来ると一段と金草岳が近く大きく見える。元々スタート時間が遅かったとは言え、正直、途中で折り返すのは屈辱的だった。今日こそは絶対に頂きに立ってやる。

しかし、目測では見えなかった死角にこそ、このルート上で最も厄介な場所が潜んでいて、ここからが苦労することになる。

事前に付けたトレースはここまでなので、いよいよワカンを装着する。今日は気温も上がるらしいので急ぐこととする。おおよその距離から山頂、12時到着を目標とする。

目の前に尖がった鋭いピークがあった。登ってみると、金草岳のとりつき箇所までに小さなピークがノコギリの歯のように並んでいるのが見えた。地図でシミュレーションした以上にアップダウンがあり、しかも、実際に歩いてみるとかなりのやせ尾根もあった。やせ尾根では、雪の状態を確認しながら、一人ひとり安全を確保しながら進んでいく。おそらく、今よりも少しでも雪があったり雪庇ができていたら、先には進めなかったと思う。危険には違いないが、その中でもちょうどよい積雪が安全な足場作りに役立ってくれた。

13時01分、ついに金草岳のとりつき箇所にたどり着く。目の前には、遠くからは分からなかったが、昨日行った荒島岳名物「もちが壁」の比ではなく反り立った壁があった。予定では右側にトラバースしたのち、尾根をよじ登ろうと考えていたが、実際に近づいてみると雪を踏み固めれば意外にしっかりした足場が作れるので、トラバースを止めてそのまま壁を攻略することにした。

ジグザグと九十九折のルートを作りながら、高度を上げていく。下を見ると背筋がスーッとする高度感がある。壁の上部は反り返していて敵の侵入を妨げるよう。右上のところに、一部、藪が薄く反り返しが優しいところがあったので、そこからよじ登る。いよいよ山頂ゾーンに突入。

壁を越えればすぐに山頂かと思っていたが、それはさすがにあり得ない。しかし、落胆はない。偽ピークの先に踏み跡の無い純白のバージンロードが青い空に向けて延びている。なんと美しいことか。また、今まで見えなかった岐阜側や滋賀側の山々まで見渡せる。これまでも山深い場所に来たものだと思っていたが、更に世界が広がる。

いつもは熊笹や藪で歩けない金草岳の山頂も今日は広い雪原。ワカンで踏む度に、キュキュと心地よく軽快な音が響く。

金草岳の山頂に到着。感覚で設定した割には目標通り12時丁度に到着。

愛しの冠山は目の前の山に隠れて見えないが、重量感ある能郷白山やさらに遠くには御岳山も見えた。

有難いことに、風は思ったほど強くなく、温かい日差しがサンサンとしていたので、そのまま山頂で昼食とする。360度の大パノラマに囲まれての食事とはなんと贅沢なことだろうか。

しみじみと歩いてきたルートを一望する。冬の冠山を攻略した時に比べれば、大した距離ではないが、難易度的には想定以上に厄介だったと思う。そう思うと、貴重な金草岳の冬の絶景。離れがたいが最後に景色を目に焼き付けて、山頂を離れる。反り返った壁の下まで戻ってきたところで、仲間と相談する。元のルートでピストンするか、このまま金草岳の尾根を使って一気に降るか。尾根を降った先は林道があるので、降ってしまえば安全に帰ることができる。

話し合った結果、尾根を降ることにする。「ただし、尾根を選択するということは、最悪は登り返しも覚悟しておかないとね!」と笑いながら付け足したが、最悪なことにそれが現実となる。

元々はピストンでしか計画していなかったが、万が一に備えて前日の夜にエスケープ・ルートを急場で作ったのが良くなかった。十分なチェックとリスクアセスメントができていなかったと深く反省する。降っている最中に2つの大きなミスに気が付く。

1つ目は、谷に迷い込まないよう忠実に尾根に沿って降っていったが、途中、何度か崖に進路を絶たれた。無料の地図でチェックしていたせいか、尾根には崖の情報はなかった。それでも等高線の狭さや経験から崖の可能性はある程度想定していたが、積雪があれば回避できるレベルと考えていた。しかし、想像以上に大きな崖もあり、回避に必要以上に時間を要してしまったのは痛かった。

2つ目は、同じく崖問題。だいぶ降ったところで、林道までのコースを再確認するために地図を再チェックした際、リーダーが林道の合流地点に崖マークがあることに気づく。地図をよくよく見ると、確かに林道に沿って崖マークが引かれている。普通の崖ではなく、林道工事の際に作られた壁に違いない。過去、同じミスをしたところがあるというのになんと学習効果のないことか。これはちゃんとチェックしなかった完全な自分のミスだ。

地図によると尾根から少し離れた場所に等高線が緩くなっていて一部崖マークが消えている箇所があった。そこまで行けばおそらく、林道に出ることも可能だろう。しかし、100%そうとは言い切れない。時間は14時01分。今から登り返して、どんなに急いでも1時間は「日没後の山歩き」は避けられないが、もし、下まで降ってダメだった場合は、リカバリー不能のダメージを受けてしまう。

不確定要素が多すぎて、下りを選択する訳にはいかない。山頂方面を見上げながら、「戻りましょう。」と一言。有難いのは、さすが歴戦の仲間。ここまでかなりの急斜面を降りてきたというのに、心折れることのないタフな精神。「はい」と決めたら、疲れ知らずの力強い歩きで斜面を折り返していく。

14時53分、登り切って、まさしくふり出しに戻る。ルートファインディングしながらとは言え1時間かけて降った急斜面を1時間切って登り返してきた。

気を取り直して来たトレースに沿って歩き出す。午後に入って雪質が変化して沈みこみやすくなっているので、やせ尾根の部分は特に注意深く、速やかに渡る。

15時56分、一昨日の折り返し地点に到着。頭でシミュレーションした以上に順調に戻ってきている。日没までは時間との戦いだが、ここから先は自分にとっては4回目のコースとなる。ルートファインディングしながら歩いただけあって、頭には詳細にコースと地形が頭に入っている。例え日没でも十分安全を確保しながら歩ける自信はある。

来るときに苦労した崖の部分を過ぎて、峰を緩やかに降っているところで、ついに日没を迎える。太陽が空を真っ赤に染めながら静かに山に沈み込んでいく。不謹慎かもしれないが、あまりの夕日の美しさと、これからやってくる夜の静寂に、冒険心がくすぐられてワクワクしている自分がいた。

太陽が沈みこんでも、暫くは明るさが残っていて歩くには不自由しなかった。雪のお蔭で明るく見えるのかも知れない。歩けるうちに距離を稼いでおく。

最初に登ってきた尾根と峰の合流点にたどり着いたところで完全に暗闇となった。一番注意しなければいけないのは、登りの時にも苦労した入口から中腹までの泥斜面。ヘッドライトを装着して、降っていく。ただでさえ、滑りやすい場所なので、牛歩のように一歩いっぽ慎重に。

下を見ると吸い込まれそうな漆黒の闇。緊張が続く。と、かすかに沢の音が聞こえてきた。ゴールが確実に近づいている。。。

ほどなくして、杉の間から林道が見えた。ついに下山。林道になだれ込む様に掛け降りて、みんなで拳を合わせる。「とうちゃーく!!」、「下山したー!」と声が上がる。

車に戻り、濡れた服を着替えている時に、ふと空を見上げた。ここは街灯もない山の中。冬の星座、オリオン座とともに空には満天の星空が広がっていた。


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みんなのコメント

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  • いつでもどこでも手に入る情報が、情報が手に入らないことで冒険の始まりなんですね。

  • 昔、砂漠で学んだけど、リスクをコントロールして冒険なんだよね。まだまだだけど。

  • 苦労して登った山頂の展望、暗闇の中を慎重に歩いて下山した感動、冒険心をそそられる貴重な体験ができました。またよろしくお願いします(^.^)

  • 本文にも書きましたけど、ルートを探しながら時間をかけて降りたとはいえ、降りに1時間かけたところを1時間切って登り返したのは流石です。

登った山

金草岳

金草岳

1,227m

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