行程・コース
天候
曇り
登山口へのアクセス
マイカー
その他:
「野坂いこいの森」の駐車場。20台程度は停められる。
あまり綺麗ではないが、トイレもある。
この登山記録の行程
野坂憩いの森・駐車場(08:10)・・・行者岩(08:55)・・・一ノ岳・・二ノ岳・・・三ノ岳・・・野坂山・山頂(09:30)・・・<藪漕ぎ>・・・一ノ岳・・・テレビ塔・・・野坂憩いの森・駐車場(12:20)
高低図
登山記録
行動記録・感想・メモ
(このコースは藪漕ぎがあります。安全なルートではないためGPS軌跡を利用される場合はご注意ください)
先週末の白山に加え休暇中にもう一山登ろうと、伊吹山をぼんやりイメージしていたが、野坂山のどうどうたる山容を見た瞬間、「いや、野坂だな」と自然に答えが出た。
トレーニングとして登る時には1時間を目安に駆け上がるが、今日は3つのミッションを設定。1つ目は、フォームのチェックを重視して早すぎず遅すぎずで、山頂まで一定の速度でリズミカルに登ること。2つ目は、今までにないルートで降ってみる。変わり松や失われたルートなど登山道らしき場所は大概歩いているので、具体的には藪漕ぎで野坂の斜面を探りながら降りてみる。3つ目、このタイトルにも設定した通り、夏の終わりにナツエビネを探す。最後の3つ目は、「シーズン的にもう遅いか?」なんて考えながら山へと向かう。。。
8:10、野坂憩いの森を出発。ミッション1つ目の通り、「タッ、タッ、タッ」と短い間隔でリズミカルに歩いていく。ただし、歩幅を狭めて速度は上がらないよう注意する。神経はどちらかというと姿勢と視点の置き方にポイントをおく。爽やかな風が、滲む汗をそっとぬぐってくれて心地よい。空気の温度と湿度から、もう夏が終わりかけているのがよくわかる。
登山道補修をしている業者のおじさん達に出会った。塩ビのパイプを脇に抱え、えっちらえっちらと登っていた。「何か重量物があれば持ちましょうか?」と声をかける。「すぐそこだからいいよ。」とのこと。野坂山には詳しくない様で、「ここって、もう半分くらいは登ったのかなあ」というので、「いやいや、まだ3分の1も行ってないですよ」と笑う。
順調に高度を上げていく。敦賀市内と海が見えるが、今日は少し霞んでいる感じ。
行者岩の看板を見て、立ち寄ることにする。いつもは時間測定をしているのですっ飛ばしてしまうが、大きな岩の上に立つと森の上から頭を出すことができ、遠くまで一望できる。絶景なり。たまには立ち寄ってみるものだ。
リズムをとっているとついペースを上げたくなってしまうが、今日はフォームのチェックが最優先。代わりに足を気持ち高めに持ち上げて負荷をかけてみる。
二ノ岳を過ぎるとブナ林が出現する。地元ビイキではないが、上信越や東北の山も緑が深くどこも素晴らしいが、ことブナ林の美しさに関しては、北陸、とりわけ福井が最高だと思う。季節が変わるたびに、それぞれの美しさを見せるブナ林は本当に美しい。
野坂権現様にご挨拶をしてから山頂へ。9:30到着。トータル1時間20分。計画通りの時間で一定のリズムで登ってきた。1つ目のミッション・クリアー。
午後から雨の予報になっていたが、登り初めに比べ風が冷たく湿気を含んできている。ひょっとすると予報より早めに雨が降るのかも知れない。晴れている時にはよく見える琵琶湖も今日はガスの中に隠れていた。
さて、次はミッション2つ目。まずは登ってきた反対側の山方面へと降っていく。100mも降らないうちに、無造作に藪の中に入っていく。ただし、野坂山と侮ることなかれ。以前にも書いたことがあるが、過去、いろんな登山をやってきた中で最も過酷だった想い出が実はここ野坂山。真夏に山頂まで真っすぐに登ろうと藪漕ぎで直登した時。特に山頂付近は身体を入れる隙間もないほど藪が密集していて、加えて棘のツタが張り巡らされていて、もがけばもがくほど絡みつき、登ることも降ることもできず、炎天下でスタックし、ただ水と体力と時間を激しく浪費してしまった。身体中、血だらけになりながら、あんなに心が折れそうな登山はそうそうなかった。
果たして、登りに比べて降りはどうか。以前と同じように高密度の藪と棘が待ち構えていたが、登りの時には斜面下から背丈よりも高い藪に向かう構図になるが、上からの場合は、踏みつけるように進むことができる。もちろん、簡単ではないがこれからなんとか降りていけそうだ。
藪の密度の濃いエリアはそれほど広くはない。暫く降ると、身体を入れる隙間も出てきた。このまま一気に降っても良かったが、3つ目のミッションもあったので、高度を保ちながら斜面をトラバースして一ノ岳までを目指す。更にはそこから冬道を使って下山するコースをとることにした。
とはいえ、小さな尾根がいくつも連なっているため、かなりの斜度をトラバースしていく必要があり、決して楽な作業ではなかった。滑りそうな身体を支えるため、前方の藪の根本付近をギュッとつかみ、身体を押し上げる。その繰り返しで進む。ある時、藪を握った手1mほど先に動くものを見つけた。「げっ、マムシ」。短い胴体に特徴的な色と模様。写真を撮ろうと思ったが、安全に身体を支える足場がなかったので、そのまま刺激しないようそっと避けながら回り込む。通常のルートであれば、1時間以内に下山できたであろうに。全く何が面白くてこんな危険交じりなことをやっているのか。マムシのおかげでテンションもダダ下がりだ。
ふと足元に白っぽいものが見えた。「まさか」。まぎれもなくナツエビネが一株咲いていた。白く見えたのは目の錯覚で、薄紫の綺麗な花が咲いていた。正直、季節がらもう遅いかと思っていたが、遅咲きだったのか真新しい花が2つ咲いていた。
神様のプレゼントだ。ミッション3つ目を先に達成!!
その後も、いくつか群生ポイントを見つけることができた。ただし、どれも萎みかけで、一番綺麗だったのはやはり最初の1株だった。
小さい尾根を何個トラバースしたのか、終いには面倒で数えるのも止めてしまったが、ついに雑木の隙間から見慣れたものを捉えた。一ノ岳の看板だ。地図も見ずに感覚だけで高度を調節しながら進んできたが、あまりのドンピシャに自分が一番びっくり。
ここまでくれば、もう下山したも同然。この時期、あまり登山者が入らない冬道とはいえ、しっかり身体がしっかり覚えている。
藪漕ぎで時間をかけ過ぎてしまったので、一気に降る。降りきると、登山時には10台近く停まっていた車も、残っていたのは自分の車だけだった。
ほどなくして雨もパラパラ。ぎりぎりセーフ。
ミッション、オール、コンプリートだ。なにより夏の終わりにナツエビネに会えた奇跡が嬉しかった。
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