• このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 参考になった

本川の岳人未踏千m級峰・栃ケトロ山

栃ケトロ山・戸中山(いの町)( 中国・四国)

パーティ: 1人 (マローズ さん )

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 参考になった

行程・コース

天候

晴れ

登山口へのアクセス

マイカー
その他: いの町長沢の国道194号・立橋トンネル南口から右手に分かれる旧道に入り、その道路がトンネル北口に合流する手前の路肩に駐車。地面の貯水槽か何かの蓋に注意。

この登山記録の行程

駐車場所10:33・・・南北に走る整備された歩道10:49・・・大森川線14番鉄塔で休止11:02~11:10・・・稜線の15番鉄塔で休止12:01~12:08・・・ NHKケーブル道合流地点12:16・・・NHK共同アンテナ12:26・・・旧村界尾根分岐12:37・・・栃ケトロ山で休止12:43~13:22・・・1095.3m峰13:52・・・1110mの無名峠14:20・・・戸中山で休止14:46~15:03・・・1110m峠15:20・・・林道・長沢・川口線16:04・・・国道194号17:01・・・駐車場所17:08

コース

総距離
約10.7km
累積標高差
上り約864m
下り約865m

高低図

GPX ダウンロード KML ダウンロード

登山記録

行動記録・感想・メモ

[無名峰から戸中山への縦走回遊]
いの町の旧本川村は、西日本最高所の山岳道路「UFOライン」(UFOの目撃例が多いことから旧本川村が命名・毎年12~3月は通行止め)が走り、道沿いには石鎚山系の高山が連なる。そのメジャー山群の周辺には地形図に山名未表記の無名高山がいくつか存在するが、役場のある旧本川村の中心部、長沢周辺にも複数の無名の千メートル級峰がある。その一つが長沢集落の南東に位置する栃ケトロ山(1102m)である。

この山は登山界では全く知られていないが、長沢地区の住民にとっては、思い入れのある山である。昭和33年春、NHK高知放送局が開設されたが、旧本川村等、県下の周囲を山に囲まれた地域では、視聴できなかった。そこで長沢地区では2年後、テレビ共同視聴組合を設立し、NHKや村議会等に共同視聴施設建設費用の助成を陳情した。一部の議員から反対意見があり、協議が紛糾したこともあったが、それらの助成金の他、組合員全ての世帯も工費を支払い、労役奉仕し、栃ケトロ山山頂西方に共同アンテナを建設、総延長4,200mのケーブルを設置し、昭和35年末完成した。これを契機に村内の他の地域でも受信施設が建設され、昭和48年、本川テレビ共同視聴組合が設立され、村内の殆どの家庭で鮮明な映像を見ることができるようになったのである。

そのケーブル巡視路が、地形図の長沢の立橋地区から上がる破線だと思われるが、地図を見る限りでは、破線は尾根を一直線に上がっており、急登続きではないかと思ったため、その南方に並行する四国電力の鉄塔大森川線の巡視路を登ることにした。
山の北面と東の稜線周辺は国有林だが、稜線に出るまでの道沿いは、あまり植林は多くなかったように記憶している。
その東方の戸中山(1261m)は、分県登山ガイドの旧版の方に掲載されていたため、県内では有名峰の部類に入るが、稜線は所々、スズタケが藪化しており、山頂からの展望も栃ケトロ山同様、芳しくないため、本来であればヤマケイの本で紹介されるような山ではない。旧版で紹介されていた、山の西方にあったNTT反射板も既に撤去されており、そこからの展望も今は昔となってしまった。
とは言え、戸中山山頂周辺は明るく、木の間越しに雪を被った石鎚山系を遠望でき、稜線にはブナの大木やその他の自然林もあるため、栃ケトロ山からの縦走は決して悪いものではない。

[コース]
駐車場所の南から吊橋である立橋通路橋を渡り、対岸の突き当たりを右に折れ、四国電力分水第一発電所に向かう道路を少し進むと、東上の鉄塔の建つ削平地へ上がる歩道が現れたので、これを登る。
鉄塔標柱に従い、その鉄塔南方に一旦進んだ後、東の植林帯方向へと直角に左折する。が、植林帯に入ると、標柱は立っているものの、すぐ歩道から踏み跡に変わり、ほどなくそれも消えた。幅広の尾根は、「登る」というよりは「這い上がる」と言った方がいいほどの急勾配。通常の鉄塔巡視路ではあり得ないコースである。が、十数分登ると南北に走る整備された歩道に出た。これが普通の鉄塔巡視路の姿である。この整備された歩道の下方の山林所有者が、巡視路として利用されることを拒んだのだろうか。

巡視路は尾根の南下方を並行して上っており、やがて道との落差がある谷沿いの山肌を通るようになる。
谷沿いは開けており、後ろを振り返ると、礫ケ滝大森山(1141.5m・拙著収録)から長沢山(1428.6m・拙著収録)、黒滝山と、長沢集落を取り囲む山々を見渡すことができる。コース上にある、稜線の15番鉄塔も見えている。
陽当たりがいいせいもあるが、去年の師走に登った仁淀川町や久万高原町の千メートル級峰よりも暖かい。この日、初めて中綿入りのエントラント(防水透湿性素地だがゴアテックスより性能が劣り安価)素地の上着を着用したが、汗ばむほど。

巡視路は山襞に沿ってくねくねと上って行くが、谷状部では金属製の橋が連続して架けられている。
稜線が近づくと進路が反転し、北東に上がるようになり、15番鉄塔東のコルへ飛び出る。この周辺も展望がいいので、休止場所に最適。
ここから僅かの距離、巡視路と国有林境界道が重なるが、巡視路が尾根から下りに差し掛かる地点で、巡視路と分かれて、未整備の境界道を行く。スズタケをかき分けながらの登行になるが、短時間でNHKケーブル巡視路に合流する。ここからは国有林境界道を整備したケーブル道を登ることになる。ケーブルは撤去され、道々の支柱も切断されたりしているが、これは地デジ化のためか。が、境界道兼巡視路は藪化することなく存続している。地デジ共同アンテナの巡視に利用されているからだろう。
共同アンテナは確か、標高1050m地点にあったと思う。そこから先、一旦痩せ尾根になる。道は植林沿いの笹道である。

栃ケトロ山の山頂のすぐ手前には、いの町の地籍図根三角点が設置されていた。国が言う「国土調査」を地方自治体では「地籍調査」と呼ぶケースがあるため、こういう名称になったのだろう。が、意外にも三角点は岩標だった。コンクリート柱を埋設するのではなく、地面の岩の上に小さな盤状標識を貼り付けているだけである。
そのすぐ上が、「本61」(本川営林署第61番図根点)図根点が埋設された栃ケトロ山山頂である。樹林の中のため、展望はないが、削平されたように真っ平な円形の広場となっており、戸中山よりも山頂の風情がある。

ここから戸中山までの稜線は、多少、起伏はあるものの、大きな上り下りはあまりない。ずっと笹道が続くが、道々にナイロンテープが付けられているため、近年、国土調査された模様である。前述の図根三角点設置時かも知れない。
時間の関係で急いで縦走したため、標高1040mの峠跡の記憶も殆どないが、昭和39年発行の森林基本図(森林管理局発行のものではなく旧本川村発行の方)には、峠を挟んで西と東にそれぞれ鉄塔マークが記載されている。並行した二本の送電線がかつて走っていたのである。この送電線が廃止後、峠道も廃れたのだろう。
峠跡東上の鉄塔跡を過ぎると、国有林境界ではなくなるので、スズタケが藪化する箇所も増えてくる。

途中にある1095.3m峰の三角点名は戸中峰と言うが、レジェンド、MH2氏がその名称を記載して設置した登頂記念板が残っている。三角点のすぐ側に登頂記念板を設置した場合、三角点再測量時に撤去されるが、周囲の木枝に設置した際は、撤去を免れることがある。
しかし「戸中峰」は山名としては誤りである。国土地理院では、適当な名称が見当たらない場合、付近の三角点が設置されていない山の山名を点名として使用することがある。この山の場合も、東方の戸中山の山名を拝借している。全く同じ「戸中山」にすると、本来の戸中山と混同されるため、「山」を「峰」に変えたのだろう。このようなケースは他にも多々あり、例えば高知市の一等三角点峰・烏帽子山の点名は東方に実際に「山」として存在する「鷲尾山」になっている。また、仁淀川町に点名「国王山」という1171.7mの無名峰があるが、これも実際に西方にある国王山(安徳帝の行在所跡の一つ)の山名をそのまま流用している。
1095.3m峰辺りの林野名は「大タヒラ」というが、それが山名としても通用するか否かは定かでない。

「本62」図根点手前で一旦、国有林境界となるが、図根点を過ぎるとまた境界ではなくなる。
標高1110mの峠には、鳥獣保護区か何かの赤い立て看板が設置されていたと思う。こちらの峠道は北側のみ、辛うじて残っている。帰路は時間的にも、この峠道を下って林道・長沢川口線に出るしかない。
やがて、木の間越しに石鎚山系や南方の山並みを望める箇所が所々現れる。
確か、尾根が北東から東向きに変わって少々行った辺りで、踏み跡が不明瞭な箇所があったと思う。尾根直下の急傾斜の斜面を再度尾根上へと上がる地点である。一応、スズタケに隠れたナイロンテープや赤テープはある。
山頂周辺は平坦で、すぐには山頂部を比定しにくいが、少なくとも坂出市の山岳会が登頂記念板を設置している箇所ではないことは確かである。そこは広場風になっているが、その西と東がそこよりも高度は高い。しかし山頂の趣があるのはそこの広場である。広場は明るく、陽当たりも良い。

復路は前述の1110m峠から下るが、踏み跡はあるかどうか分からない位薄い。一応、森林管理署がつけたマーキングテープが先導してくれる。周囲は植林帯である。
が、だだっ広くなった箇所の北端で、いきなりテープが途絶える。西と東、どちら側にも踏み跡はない。
やや思案したが、破線は北西に下りているので、適当に藪漕ぎしてその方向に下ることにした。少し下るとガレた涸れ沢が下方に見えたので、その沢を下ることにした。沢が藪化している箇所では沢沿いの斜面を適当に下り、沢の東側が尾根の形になると、尾根上を下った。
破線は833m独標点から沢の北側を下っているが、その少々手前で西の谷に下り、谷の西側斜面を下り、1040m峠の破線起点の東側に出た。後は林道・長沢川口線を国道194号まで下り、南下して駐車場所に戻るのみである。NHKケーブル巡視路の登山口は国道擁壁の北側にあった。

続きを読む

フォトギャラリー:21枚

すべての写真を見る

装備・携行品

シャツ アンダーウェア ダウン・化繊綿ウェア ロングパンツ 靴下 レインウェア
登山靴 バックパック 水筒・テルモス ヘッドランプ 帽子 グローブ
地図 コンパス ノート・筆記用具 腕時計 カメラ ナイフ

みんなのコメント

ログインして登山記録にコメントや質問を残しましょう

登山計画を立てる