行程・コース
天候
晴れ、あたたか。ときおり北風が吹きつけたが冷たくはなかった。
登山口へのアクセス
その他:
行き_秩父鉄道三峰口駅から歩き出す
帰り_小双里バス停(西武観光バス)16:39~17:05三峰口駅
この登山記録の行程
(丸ガッコ内は地理院地図の表記)
08:00~三峰口駅スタート
08:25~(標高490m付近)~08:30
09:29~秩父御岳山~09:34
10:02~稜線の崖に出る(P1026の西200m)~10:06
10:20~目印のあった地点(P1026の東100m)まで戻り、御嶽林道へ下降する
10:26~林道の尾根切り通し地点から尾根へ往復し、休憩~10:50
11:24~(P1082)~11:29
11:52~茂萩山頂(1188.3三角点)~12:08
13:15~岩の稜線の南面を大きく巻き、稜線に復帰する
13:36~(P1125)
13:51~(P1156)手前100mの下降地点~13:56
14:30~沢に向かって下りはじめる
15:03~水資源機構の専用車道に出る
15:06~トンネルが塞がれており行き止まり
15:12~堰堤のフェンスに沿って下りはじめる
16:00~小滝を降る
16:15~国道140号線
16:18~小双里バス停
高低図
登山記録
行動記録・感想・メモ
○ 概略
春のあいだに梵天尾根(秩父御岳山から両神山)を歩きたいと思っている。茂萩山(四期萩・四季萩、1188.3三角点)の岩稜帯の通過がポイントになるようで、とくに「ここを降る(西進)のは危険」とする記録が目につくから偵察山行に出かけた。大巻きして通過し稜線観察の目的は果たしたものの、下降路にハマってしまい難渋した。
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○ プランとプランの変更
秩父で前泊、三峰口駅07時10分発の中津川行きバスを中双里で降り、白井差峠から(秩父)御岳山まで歩く計画だった。降り標高>登り標高になるヤマクダリはやらないことにしているが、初見の難所をいきなり降るのは怖い。本番に備えて茂萩山の岩稜を登りでやり、様子を見るつもりだった。
ところが秩父のネットカフェで寝坊しw秩父駅06時24分の電車を逃してしまう。仕方なく「御岳山から茂萩山」の逆向きに歩くことにして、ただし茂萩山を越えることにこだわらず、御岳山まで戻り強石へ下降することも視野に入れて歩き出した。
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○ 秩父御岳山から茂萩山まで
三峰口駅から車道を歩く。マネキンに導かれて町分の集落に入り登山道にとりつく。道中、すれちがったり縁側でヒゲをあたっていた人たちから「どちらまで?」「御岳山かい?気をつけて」と声をかけてもらい、寝坊したつまらない気分を立て直すことができた。御岳山までは普通一般の登山道をゆき危険箇所はない。
御岳山からの下降は太いロープとクサリが張られている急斜面、鞍部に着き強石への下降路を左に分ける。やがて左右両側に林道を見下ろしながら尾根をまっすぐ進むと岩があらわれ(写真6)その先は崖、ここは降りられない。途中ケルン状に石積みされた場所(写真4)まで戻り、左(南面)に見える御嶽林道に下降した。傾斜も緩くこのルートは当たりだったと思う。林道を進み尾根の切り通し部分に出る(降りられなかった崖の下にあたる)。この林道は地理院地図には記載されていないが、すでに北面=両神小森方面に延伸されている。
切り通しに来てみれば尾根に上がる道筋がついていたので(写真9)、確認のために往復してみた。尾根上からはちょっとわかりづらい(写真8)のと、かなり崩れているので慎重な脚運びが必要だ。前述の、ケルンから林道へ降りるほうが安全だと思う。
休憩後、反対側の尾根に取り付く。古い階段が残っている。茂萩山までは右側が切れ落ちている場所が多く、気を緩めずに進んだ。
茂萩山は気持ちの良いピークだった。降る岩稜を眺めたりしながらのんびりした。
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○ 茂萩山の岩稜帯を巻く
事前にリサーチした情報では相当難しい・悪いと記述した記録も見かけた。となれば巻くのもラクではないだろう。後戻りも念頭に入れ、巻きながら慎重に通過を試みることにした。
岩も立ち木も案外しっかりしており、手がかり足がかりにしながら一段下ると傾斜も緩む。進めそうだと判断してそのまま通過した。傾斜がやや急だったり倒木を越えるのに手間どったりが何ヶ所かあった。それと、大巻きしすぎて時間をかけた。巻きの原則「なるべく小さく」にしたがって、早めに尾根に復帰したほうが時間を短縮できただろう。
通過後、尾根は落ち着く。事前にチェックしておいたP1156手前の下降地点まで問題なく歩いた。
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○ 下降地点の事前リサーチ
下降地点にあたるP1156の手前には、国土地理院地図によれば芋平沢と煤川を結ぶ点線が入っている。ところが、ここから芋平沢へ下降した記録が見つからない。ヤマレコの「みんなの足跡」モードは便利な機能で利用させてもらうことが多いが、やはりドットが表示されない。歩かれていない様子なのだ。点線が入っていて歩かれないってどういうことよ。どんな状態か見てやろうじゃないか。この天邪鬼と野次馬根性はほんとうに叩き直したいが、残り時間を考慮すればきっとこのままなんだろう。
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○ 水資源機構の管理車道まで
しばらくは踏み跡や道型がないか、目を凝らしながら行き来する。踏み跡はあり、テープ類も散見された。ただしそれらは頻繁に方角を替え、斜面をトラバースするようにつけられている。林業に関係するものだろうからアテにしてもどこに連れて行かれるかわかったものではない。40分ほど探索に費やしたのち道探しをあきらめ、沢筋を下り「地図上の点線の車道」を目指すことにした。石柱やテープ類が残されているので踏み跡くらいはあるだろう、と判断したのだ。
踏み跡はあるにはあった。だがたいへん荒れており、障害物競走みたいに潜ったり乗り越したりしながら車道に出た(写真38)。
車道に出たところで「きょうのハイキングも無事に終わり」と安堵したのは油断だった。進行方向を確認し国道に降りる方向に歩きはじめたが、前方のトンネルの様子がおかしい。普通の形状ではない。すき間なく覆った巨大な扉の、ドアにもカギがしっかりかかっていた(写真41)。
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○ 下降路の選択
塞がれたトンネルを前にザックを降ろして一服する。そういえば今日はここまでチョコを2袋しか食べてないな、調理パンみっつと紅茶を入れたテルモスが手つかずだ、いっそのこと遅い食事休憩にするか。自棄な気分になりかけたが、いやいやなんとかバスに乗って帰ろうじゃないの、とモチベーションを回復するのにずいぶん時間をかけた。
時刻は15時10分。終バスは中津川を16時に出発するから、どこに下りるかわからないがバス通過時刻は16時半くらいか。地図をあらためて確認する。東の尾根は等高線の密度と広葉樹林記号(=植林されていない)からして上がってもどうにもならない。車道を歩いて西の尾根を931.0三角点まで上がり、そこから芋平沢か小双里へ降る踏み跡は見つけられないだろうか。針葉樹林記号(=植林帯)だから望みはありそうだ。
だが結局、沢筋をまっすぐ下降することに決めた。写真を撮っていないがここまでいくつか堰堤があり、「水資源機構」の銘板を見かけた。これだけ山を荒らして放置し、トンネルを塞ぎ閉鎖的なエリアを作り出している「機構」とやらに腹が立っていたのだ。逃げてたまるか、意地でも突破してやろうじゃないか。
残り時間が1時間20分、直線距離にして1kmの難関へのチャレンジはこうしてはじまった。
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○ 国道140号まで
この2年のハイキングでこれほど荒れた道(道はないが)を歩いたことはない。基本がザレとガレの斜面で石は浮いている。股関節と上半身を柔らかくする体操をしていない昔のままだったら、容易に足を捻っていただろう。
まず、車道脇に作られた堰堤のフェンスに沿って急降下する。フェンスに指をかけながらカニ歩きした。倒木を潜ったり乗っ越したりが度々ある。フェンスが切れると枯れ沢になった。何箇所かで取水している様子であり、水流と枯れ沢を繰り返す。だんだん深さを増してゆく谷筋をルートを探しながら我慢の下降を続けていると、ゴルジェが現れたのには笑った。てことは次は「滝」なんだろうなあ。予測どおり小滝に当たる。1m50で高さはないが、手がかり足がかりもない。飛び降りるしかないが、対面の岩壁がオーバーハングしているので上半身を反らす必要がある。両手の置き場と飛び込む姿勢のイメージングを十分にしてからドボンといった。水深はヒザ上、暖かい日でよかった。
やがて左岸の高みに道の痕跡らしいものが時々見えるようになる。流されているので「部分」に過ぎないが、道があった証拠に出合えたのは心強い。右岸に渡渉ししばらくして対岸に取水ポンプ小屋?を見る。荒れ放題のままだが、ここからは安全圏(相対的表現)に入った。単管パイプと足場板で流されたところを修復した工事現場みたいなトレイルをゆくと、唐突に手すりのあるコンクリの階段があらわれ、16時15分、ハイキングをなんとか無事に終えることができた。
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● ハイキングを振り返って
さいきん観たイタリア映画※1の一幕に、
「幸せな家庭は似ているけれど、不幸な家庭はそれぞれだ」
というセリフがあった。ハイキングに置き換えると「充実した山行は様々だけれど、遭難のかたちは似ている」。この山行記録の、P1156からの下降はすでに「遭難しても全然おかしくない」領域に入っている。
あえてそれを承知で引き受け、無事に降りられたのは結果論だということを、蛇足だがつけ加えておく。意味がよくわからないというハイカーがもしいたら、羽根田治さんの「遭難」シリーズ※2を読むことを強くお勧めします。
※1 https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B08LNZC3JF/ref=atv_dp_share_cu_r
※2 https://www.amazon.co.jp/%E3%83%89%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88-%E5%8D%98%E7%8B%AC%E8%A1%8C%E9%81%AD%E9%9B%A3-%E3%83%89%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88%E9%81%AD%E9%9B%A3%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA-%E7%BE%BD%E6%A0%B9%E7%94%B0-%E6%B2%BB/dp/4635140199
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ハインリッヒの法則によれば、重大事故の背景には30の軽微な事故があり、さらに300のヒヤリ・ハッとが存在するそうだ。「遭難ノ記」もこれくらいにしておきたい。でないとあとは確率の話になってしまうから。
(了)
フォトギャラリー:54枚
1.
三峰口駅。寝坊したが好天。
2.
秩父御岳山頂、背後に両神山。
3.
踏み跡のある尾根を行く。
4.
コケの生えた大石に石がいくつか乗せてあるケルン状。なんらかのサインと思い通りすがりに撮っておいた。下方に御嶽林道(南面)。
5.
北面=進行方向右側の御嶽林道。距離は近いが、傾斜があり降りる気にはならなかった。
6.
尾根末端。この先は崖。
7.
写真4のケルンから林道に降ったところ。
8.
林道の尾根切り通しから尾根に上がる道を見つけ、尾根に登り返したところ。振り返って撮影。この踏み跡は尾根上からは見つけにくかった。
9.
時間的に前後するが、右手の手すりから上がったのが写真8。切り通しにて。
10.
切り通し対面の登り返し部分。
11.
尾根の風景。
12.
おなじく。
13.
おなじく。右前方に茂萩山。
14.
茂萩山頂の三角点。
15.
むかしアンテナが立っていたようで残置物があった。
16.
手製の山名標識は「四季萩」。
17.
平場に戻る。山名標識はこの前方に。
18.
稜線を観察中。右3分の1を直進してから下降した。
19.
稜線を真っ直ぐ撮るとこんな感じ。
20.
一段下降する途中、振り返って茂萩山。
21.
一段降りて落ち着く。振り返って。
22.
トラバースしてきた道中を振り返って。
23.
倒木を越えるのに苦労した。振り返って。
24.
最下段を巻いているところ。進行方向。
25.
もう林業のテープがあらわれはじめた。白のビニールテープは「枯木」に巻かれているので、触らずに歩く。
26.
最下段の巻きを振り返って。
27.
岩稜の末端、から茂萩山。振り返って。
28.
落ち着きを取り戻した稜線。
29.
道中。
30.
下降地点のP1156手前にて。この踏み跡を選び進んだ。
31.
あきらかに林業のエリア。
32.
薄い踏み跡が錯綜し、さらに打たれて落ちた枝でわかりにくい。
33.
引き返しここから沢筋を降ることにする。
34.
道中。
35.
おなじく。
36.
沢筋に降りたところ。石柱とピンクリボン。このあとも落ちたリボンやペットボトルを見かけたが、沢筋なので降雨時に流れてきたのかもしれない。
37.
足元はまったく落ちつかない。
38.
障害物競走中。前方に堰堤の影。
39.
車道を見つけてほっとしたところ。ここからがナントカの1丁目なのに。
40.
車道に出る。振り返って。
41.
塞がれたトンネル。ドアに鍵がかかっているのに呆然とした。
42.
堰堤わきのフェンスにつかまって下り始める。
43.
ここも障害物競走。
44.
まあ、荒れている。
45.
ゴルジェ(笑
46.
飛び降りた小滝を振り返って。右手をオーバーハングした岩に当て、左手は中央大岩の末端に残し、体を吊り下げるようにして落下した。
47.
古い石柱を見かけた。ここにも古の道があったのだろうに。
48.
部分的に残っている道型をたどりながら、「上から下」を撮影。手前に黒い下降用ロープ、むこうに導水パイプ。
49.
対岸に取水ポンプ?小屋。橋を渡ったが踏み跡はなくこちら側(右岸)に戻った。
50.
工事現場なみの扱いの山道。対岸の残置ガードレールからこちらへ、振り返って撮影。いちおうどれも利用するのに支障はなかった。
51.
ループ橋を眺めながら難路が終了した。
52.
国道140号から振り返って。
53.
遠目に「待合所があるぞ。着替えられるな」と喜んだがゴミ集積所だった。そう都合よく行くもんか。
54.
小双里コゾウリバス停時刻表。
装備・携行品
【その他】 CMPのハイキングシューズ。起毛タイツにモンベルのショートパンツ。モンベルのメリノウール+マウンテンハードウェアの速乾性長袖シャツの重ね着にモンベルのヤッケ。ペツルのヘルメット、ブラックダイヤモンドのフルフィンガーグローブ。ザックはロウアルパインの25リッターにモンベルのギアホルダーを外付け、ココヘリ発信機・ロールペーパー・ヘッドランプ・スマホ(カメラ+GPS)・バッテリー充電器と予備電池・キャメルバックのハイドレーション2L+テルモスに紅茶0.5L・菓子パン・菓子・非常食のカロリーメイト・替え手袋・綿入りアウター・下山後の着替え一式・サンダル。スタート時重量6.5kg。 |
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