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スッカンブルーの秘境を巡る

スッカン沢( 関東)

パーティ: 1人 (Yamakaeru さん )

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行程・コース

天候

快晴

登山口へのアクセス

マイカー
その他: カーナビには「山の駅たかはら」をセット。無料駐車場。50台。駐車場のトイレは、冬季は閉鎖につき注意。山の駅(お店)の中もトイレはあるが、冬季(12月上旬~3月下旬)は10:00~15:00 金、土、日曜日・祝日のみ営業で、時間外はやはり閉まっている。

この登山記録の行程

山の駅たかはら(06:42)・・・<林道>・・・スッカン沢入口(07:38)・・・素蓮の滝(08:34)・・・仁三郎の滝(08:41)・・・雄飛の滝(09:05)・・・スッカン橋(09:28)・・・咆哮霹靂の滝(09:58)・・・雷霆の滝(10:28)・・・<前山八方ヶ原線遊歩道>・・・山の駅たかはら(11:16)

コース

総距離
約11.0km
累積標高差
上り約1,284m
下り約1,283m

高低図

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登山記録

行動記録・感想・メモ

情けないことに、くしゃみ一つで「ぎっくり腰」を再発して身動きが取れないこと2週間。あちこちから届く春の便りに、「このまま雪が解けて無くなってしまうのでは」と焦り、突貫工事でリハビリの旅(雪山)に出ることにした。
前回の東北の旅に続き、今回のテーマも「氷」。同じくピークを踏まない山旅。
土曜日。遅めのお昼を食べてから車に荷物を詰め込み、一路、栃木県へ。
オミクロン株の猛威を鑑みて、Door to Doorで買出し以外は車の運転に専念。そうやってドライブに夢中になっていると毎回失敗するが買出し。今回もポイントを見誤ってしまってしまい、気が付いた時には街灯りもない山の中だった。だいたい登山の場合、カーナビに「目的地まで20km」と表示されていても決して安心してはいけない。コンビニが溢れている街中とは違い、山の麓ら登山口まで20kmなんてざらにある。つまり、山へ向かう場合は、最低50km以上手前でお店を探すべきだ。
と偉そうなことを言いながら、今回も「コンビニよりスーパー」、「スーパーなら品ぞろえの良い大きめのところ」とえり好みをしているうちに、いつものパターンにはまり込んでしまった。
慌ててUターン。お店を探すこと約1時間。結果的に大幅な遠回りをしてしまった。しかも、ようやく見つけたスーパーで見るからに微妙な小さいお店。でも贅沢は言っていられないので、急いで食料とビールを買い込み登山口へと向かう。
登山口は、山の駅「たかはら」にある。
山の駅「たかはら」は高原山への登山起点にもなっている。車を走らせている時には、「本当に雪はあるのかな」と不安に思っていたが、高度を上げるにつれ道路脇には雪が増え、駐車場までやってくると辺りは一面雪景色に変わっていた。
駐車場の一番端の便利の良さそうな所に駐車。この季節こんなところで車中泊をするもの好きはいないようで、広い駐車場は暗闇でひっそりとしていた。
エンジンを停めた途端に、車内が冷蔵庫化する。
明日は、ピークを目指す訳ではないので、日の出とともにゆっくり歩き出せばよい。今日は、寝袋にくるまりながら本でも読みながらまったり過ごすことにしよう。
深夜、街灯りが消える頃、車の外に出てみると満天の星空が広がっていた。
空気が澄んでいるため、夏よりも多くの星を肉眼でも捉えることができた。冬の凝縮された空気のレンズで、満天の星が宝石のようにキラキラと揺れ動いて見えた。
写真を撮りたかったが、一分とて指先が痛くてポケットから手を出すことができない。白い息を吐きながら、暫く空を眺めてから再び温かいシュラフへと潜り込んだ。
想定していた以上の極寒で、明け方の4時に足の指先が痛くて目が覚めた。テントブーツを持ってくればよかったと激しく後悔。「ホッカイロ」を靴下に貼ろうかとも思ったが、シュラフから出ると熱が逃げてしまうので我慢して根性で眠る。家にいれば温かい布団で「ぐっすり」朝まで眠れるというのに、何が楽しくてこんな場所にいるのか。逆境が嬉しくて仕方がないなんてつくづく山屋は変態だと思う。
真っ暗闇の中、5時半に行動を開始。
ザックの荷物を点検して軽く朝食をとりながら徐々に明るくなるのを待つ。
6:30、ザックを背負い出発。
腰の具合はまあまあ。本来であれば、リハビリにはまだ早いので、転んで腰を打ては行動不能は必至。細心の注意を払って歩くことにする。
スッカン沢へは前山八方ヶ原線遊歩道を使うのが一般的なようだったが、周遊がしたかったので、林道を使って時計回りでスッカン沢を巡り、前山八方ヶ原線遊歩道で戻ってくるコースと下。
歩き出して暫くすると周囲の山がどんどん赤く染まってきた。立ち止まればたちどころに凍えるが、早朝の雪山はそんな寒ささえ吹き飛ばしてしまう美しさがある。
雲や白い稜線が赤く染まって、徐々に明るくなっていく。
林道を降っていくと「雄飛の滝線歩道」と書かれた看板が目に入った。ここがスッカン沢の入口となる。スッカン沢は、新潟の県境まで10kmを切った山間にある渓谷。
階段を降って沢沿いに進んでいく。
程なくして、対岸の壁に大きな氷柱が見えた。
滝のポイントには早いので、おそらく岩からしみ出した水がそのまま凍っているのだろう。沢に沿って屏風のように氷瀑のアートが続いていた。
近くまで行って氷柱を撮ろうとするが、崖があってなかなか降りるポイントが見つからない。雪を砕きながら岩を登ったり降ったりをしていた時に、ふと顔を上げると目の前に「ごそごそ」と動く灰色の物体にあった。
その距離、僅か5m。
最初、「犬か?」と思ったが、犬にしては大きい。よくよく見るとそれはカモシカだった。
驚いて声を上げそうになったが、脅かしてはいけないと思い「そーっ」とカメラを取り出して「パシャリ」。いくぶん小ぶりなカモシカは、立ち止まり愛らしい顔をこちらに向けている。全く逃げる気配がない。
「何もしないよ。同じ方向に行きたいだけだよ」と話しかけながら少しずつ近寄ってみる。
元来、人懐っこい性格なので、これまでも数mまで近寄ったことはあったが、こんなに近距離は初めてだった。真横に来てお全く動じていない。僅か50cm。もう手を延ばせは背中を撫でることも出来る。そっと手を伸ばしかけたが、野生動物に触れるのはどうかと思い直し(人間の臭いを付けないようにという意味で)、雪の中に座りながら暫く並んで会話を楽しんだ。
「雪の中で寒くないのか?」「お腹空いているのか?」。
カモシカは逃げることなく、話しかける言葉に耳を傾けているようだった。小さな雪が舞う中、カモシカと並んでひと時を過ごす。なんて不思議な時間だろうか。
カモシカと別れを告げて、再びラッセル開始。
なんとか降りるポイントを見つけて大きな岩の下へとやってきた。
岩の下には、立派な氷筍が育っていた。50cm程の高さで純度が高く、反対側が透けて見えるほど綺麗に輝いていた。
写真を撮っていると、ふと不思議なことに気が付いた。目の錯覚かと思ったが、そうではない。水滴が上の岩から氷筍の頭へと落ちる度に、氷筍の中で光が揺れ動く。「なんだろう?」と注意深く観察すると、なんと氷の中に小さな空洞がありその中に水が溜まっていた。落ちてきた水滴が氷筍を溶かして空洞を作り上げたのだろうか。まるで水を蓄えたグラスのよう。水滴が落ちる度に水面が揺れて、氷の中で光が乱反射することで神秘的な映像を作り出している。さっきのカモシカといい、こんな貴重な体験ができるなんて、なんて素敵な日だろうか。
スッカン沢の散策コースに戻り、あちこちにできた氷柱を愛でながら先を進む。
雲竜渓谷ほど大きなものは無いが、こちらも自然によって作り出された「氷の美術館」だった。
「素蓮の滝」と「仁三郎の滝」を巡る。
勢いよく流れ落ちる滝と氷柱の競演。氷柱の密度が高い。
続いて「雄飛の滝」。
沢に沿って立ち上がっている大きな壁に氷柱がずらりと並んでいるのが見えた。できる限り近づいて上から全体を見下ろそうと、斜面を降りながらビューポイントを探し移動する。無数の氷柱がまるでサメの歯のように見えた。なかなか良い写真が撮れたと、戻ろうとして振り返ったら、頭上にあった展望台に気が付いた。苦労しなくてもコースからでも覗くことができたんだ、思わず苦笑した。
雄飛の滝へは、その先の「スッカン橋」の手前から沢沿いに近づくことができる。
早速行ってみると、上から見下ろした以上のスケール感にまず驚嘆した。
パノラマ状の大スクリーンのような壁。その壁いっぱいに氷柱が広がっていた。その中央に、ひときわ大きな氷柱。一度溶けて落ちたのか、中央部分で太さが歪に変わっていた。
崖の上部からは、あちらこちらから雨のように水がポタポタとしたたり落ちていた。これが凍って、新しい氷柱をどんどん生み出しているに違いない。
左側の壁面には、凍り方が違うのか、氷柱状ではなく拳のように丸く膨れた氷の塊が無数に出来上がっていた。更に、その氷の塊から流れ落ちた水が、尾のように凍っていて、まるで海に浮かぶクラゲのよう。これがスッカン沢の名物氷瀑「氷のクラゲ」だ。確かによく似ている。クラゲで有名な新潟の「鶴岡市立加茂水族館」で見た、大きな水槽を思い出した。
雄飛の滝。実に素晴らしい氷の宮殿だ。
「咆哮霹靂の滝」へ向かう途中、倒木があって崩落しかけた場所があった。山ではよく見かける光景なので、気にせず倒木の下をくぐってしまったが、反対側には「立ち入り禁止」黄色テープがベタベタと貼ってあった。帰宅後、前山八方ヶ原線遊歩道方面から来た方の記録を読んでいたら、「雄飛の滝方面へは通行止めで行けなかった」と書かれていたが、きっとこのテープを見て諦めたのかもしれない。危険個所はここだけで迂回もでききたため、実際には通行止めにするほどではないと感じた。
「咆哮霹靂の滝」へ到着。
一枚岩のような滝。その岩の表面を覆うように薄く滝の表面が凍っていた。よく見るとその氷と岩の間をしたたるように水が流れていた。面白い凍りかただ。
「咆哮霹靂」とは、なかなかに難しい字を書くが、「ホウコウヘキレキ」と読む。霹靂は「青天の霹靂」とあるように、急に雷が激しく鳴る様を指す言葉。凍った滝を眺めながら、冬に轟く雷をイメージしてみた。
スッカン沢。スッカンという名も興味深かったが、噂にたがわぬ大秘境だった。
最後に、前山八方ヶ原線遊歩道を通って「雷霆の滝」に立ち寄り、雪の散策を楽しみながら、スタート地点へと戻った。

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みんなのコメント

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  • スッカンってスッカラカンをイメージさせますね。
    クラゲに桃太郎に異分野とのコラボレ-ション祭りですね。

  • カックラキンを連想しました。年代的に。

    でも、いろんなのあったから楽しかったです。

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