行程・コース
天候
快晴
登山口へのアクセス
マイカー
この登山記録の行程
小屋(455m/4:55)登山口(665m/6:35)P1102(8:05)飯盛山(11:05)栂峰(12:50)デポ(1425m/13:20)林道(665m/14:35)登山口(15:40)
高低図
登山記録
行動記録・感想・メモ
峠付近で栂峰を遠望して小屋集落へ上がり、除雪終了地点に車を停める(17:00)。小屋川の奥に雪尾根が連なり、烏帽子山と思しきピークが沢の源頭に聳えている。雲1つ無い夕空を満足げに眺めながら腰を伸ばして一息入れ、「腹が減ってきた。夕食を食べよう」と思ってガスボンベとコンロを忘れてきたのに気付き、青くなる。
行動食のパンと水で夕食を済ませ、「明日も今日みたいに天気が良さそうだから、熱い飲物が無くても雪山での行動に問題は無いだろう」と言い聞かせて早々とシュラフに潜り込む。
4時起床。星は見えず、「予報と違うなあ」と訝りながら雪の上を歩いて見ると締りが悪く、「グジャッ」と靴が沈む。「スキーで歩こう」と決め、まだ少しは暖かいテルモスの中の昨日の残りのコーヒーとパンの朝食を済ませて出発する。
小屋川左岸の林道を行く。積雪は1m弱で、途中2ヶ所で枝沢の流れが顔を出しているが、少し迂回するだけで板を脱ぐ事無く林道終点まで上がる。滝直下のスノーブリッジで右岸へ渡り、夏道尾根の右の杉林の中をジグザグに登る。雪は腐ってエッジが利かずスリップし易いが、その分、スキーアイゼンが働いてくれる。途中から薄いガスの中に入り視界数百mとなるが、上空が明るいので「下山も何とかなるだろう」と楽観的な気持ちで登行を続ける。
杉林から左の尾根上へ抜け出て赤布を取付ける(970m)。疎林を行くと直ぐにp990で、ガスの向こうに純白の尾根が見える。P1,102まで頑張って登って3本目を立てる。
ガスが薄れて支尾根上のP1,306とP1,370が眩しく輝き、栂峰北尾根が全貌を露わにして登行欲を刺激する。小さいアップダウンのある細尾根を進んでP1,402への登りに取り掛かると、ブナが疎らに生えたスキーに魅力的な広い尾根が続く。「滑降が楽しめそうだ」と期待が膨らむが、1ヶ月のブランクで筋肉の持続力が無く、息切れも激しくて頻繁に立ち休を取るのでなかなか高度を稼げない。そのうちに太腿が悲鳴を上げて痙攣を起こす。立止まってじっと堪えて痛みが無くなるのを待ち、様子を窺いながらそっと登っていると1時間に200mを稼ぐのがやっとだ。
p1,420へ上がると飯森山が姿を現し、距離が2㎞以上もあることが嘘のように近く見える。足が2度3度と痙攣し、「2峰を登るのは無理かも知れない。先に飯森山を踏もう」と方針を変える。栂峰分岐のp1,480への登りはかなり急だし、飯森山への尾根はスキーに不向きなのは明瞭なので、スキーをデポして歩くことにする。
p1,480の東斜面を回り込んで鞍部へ出、縦走路の尾根を目指してP1,497の東斜面をトラバースして下る。雪はやや締まってくるが、アイゼンが無くても大丈夫だ(アイゼンをアイスバイルに替えて持参)。最低鞍部1,441mへ下ってザックをデポし、大福餅1個のみを持って前進する。
急斜面を登って数mの雪壁の下に立ち、プラブーツを蹴り込んでステップを固め、バイルのシャフトを目いっぱい突き刺して迫上がる。腐った雪ながら確りと体を支えてくれ、「これなら、ザックをデポしなくても登れた」と惜しむ。
傾斜の落ちた尾根をふらふらしながら歩いて行くと足が痙攣し、胃がむかついて吐きそうになる。僅か600mの距離に何度も立止まって息を継ぎ、「まるで8,000mのピークを目指しているようだ」と自嘲しながら飯森山頂に立つ。
雪の上にひっくり返ってじっとしていると人心地が戻って来る。大福餅を食べ、雪を口に入れて渇きを癒し、眺望を楽しむ。大日岳の右手に大きく聳えているピークは「飯豊本山!」だと気付く。今日まで、飯豊本山を「尾根上の単なるピークに過ぎない」と見做していたのだが、北東面から眺める飯豊山は大きな山容で最高峰の大日岳よりも存在感があり、ここに飯豊神社が鎮座しているのが頷ける。2峰を抱く鋭峰磐梯山が目を惹き、左手の針葉樹に覆われた穏やかな吾妻連峰と好一対を成す。直ぐ目の前には雪庇を抱いた雪稜の先に鉢伏山が純白に輝いている。
熊の足跡を3ヶ所で目撃したので気掛かりだったのだが、デポしたザックを熊に持ち去られる心配は杞憂に終わる。P1,497の鞍部へ戻り、「眼前の栂峰を断念するのは忍びない。登山口までは、何とか下りれるだろう」と考え、飯森沢右俣沢源頭の斜面を横断して栂峰西尾根の1,445m鞍部へ出る。
全くの空身になって栂峰へ向かうと、尾根南斜面の雪は酷く腐って体力を消耗する。小鞍部を越えて1,445m鞍部から山頂を目指し、ブナ林にシラビソが散発的に混じる斜面を一直線に登り、待望の栂峰山頂を踏む。吾妻連山と磐梯山に再会し、好アングルの飯森山を眺めて「せめて、カメラは持ってくるべきだった」と残念に思う。烏帽子山へは雪庇を擁した北尾根が続いており、「なる程、スキーで歩くのは不向きだ」と納得する。
鞍部のザックを回収し、P1,480へ登るアルバイトを嫌って北斜面をトラバースしてスキーデポへ戻る。体を休めながら靴紐を締め直して滑降態勢を整えるが、「疲れが酷いのでスピードに体が付いて行けないだろう。小さい登りも数か所在ることだし」と、シールを着けたままで下山に移る。
無立木に近い斜面を思ったより無難に滑って楽しみ、言う事無しの快晴に恵まれて要所に取付けたテープの厄介にもならずにp990まで下降し、トレールを追って杉林の中へ滑り込む。最後の急な100mは板を脱いで歩いて下り、スノーブリッジから林道へ上がってほっと安堵する。
「飯森山さえ登れないかも知れない」と悲観的になった体力だが、何とか2峰を踏破することが出来た。シールを外しながら「明日、猫魔ヶ岳に登ると体を壊してしまう。今日で切り上げて帰ろう」と考え、疲労感に打ちのめされそうになりながら左右のスキーを機械的に滑らせて登山口へと歩く。
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