行程・コース
天候
曇りのち雨
登山口へのアクセス
マイカー
その他:
酸ヶ湯公共駐車場八甲田山登山口。酸ヶ湯温泉のすぐ上にある。収容台数130台。舗装された綺麗な駐車場(無料)。トイレあり。マップコード(04 522 553*40)
この登山記録の行程
酸ヶ湯公共駐車場(05:38)・・・薬師神社(05:46)・・・地獄湯ノ沢(06:36)・・・仙人岱(07:01)・・・仙人岱ヒュッテ(07:06)・・・八甲田清水(07:14)・・・分岐・・・小岳(07:47)・・・分岐・・・鏡沼(08:44)・・・八甲田大岳(08:57)・・・大岳避難小屋(09:34)・・・上毛無岱休憩所(10:34)・・・毛無岱の階段(10:44)・・・下毛無岱(10:55)・・・登山口(11:53)・・・酸ヶ湯公共駐車場(12:01)
高低図
登山記録
行動記録・感想・メモ
ずーっと行きたかった八甲田山。
かつて二十歳代の頃、バイクで青森まで北上し、晩秋の奥入瀬渓谷手前で凍えそうになりながら野宿をした思い出がある。その時に立ち寄った八甲田山の「峠の茶屋」で食べたキノコ汁が生涯一美味しかったといまだに忘れられない記憶となっている。その時はバイクだったが、いつかまた八甲田山を登りに来ようと心に決めていた。
しかし、青森は遠く、ここに来る(至る)までに30年以上を費やしてしまった。笑。
前日に登った雨の岩木山で、ボロボロになった身体を良質の温泉で癒し、道の駅「虹の湖」で一晩をあかした。ずぶ濡れになった登山の服や靴はコインランドリーで洗って乾燥させた。靴も簡単に乾かせるなんて、世の中、便利になったものだ。
早朝、登山口のある酸ヶ湯温泉へ移動。
まだ5時の酸ヶ湯温泉は、車もまばらで静まり返っていた。
ここも訪れたかった場所の一つだった。大昔に、先輩が学会に来た時にここに泊まり、とっても素敵だったと自慢していた。「そんな遊び感覚の学会でいいのですか?」と嫌味を言ったが、実はとても興味津々で羨ましかったのを覚えている。
八甲田の登山口はこの酸ヶ湯温泉から始まり、山頂から湿原を通って円を描くように周遊することができる。ガシガシ登って絶景を楽しんだ後、そのまま温泉に飛び込むことができる、まさにアウトドア天国のコースだ。
酸ヶ湯公共駐車場に車を停めて歩き出す。
微かに晴れ間があったが、山頂は昨日の岩木山と同じく雲で覆われていた。
予報では終日「曇りマーク」となっていた。折角の遠征なのに残念だったが、雨さえ降らなければ良しとしよう。
整った登山道を登っていく。
熊よけだろうか。オルゴールのような優しい音色の音楽が森の中に流れていた。
全体的に緩やかな登山道が続く。昨日は先週痛めた足を酷使してしまったため、2日連続の登山は無理かと心配していたが、痛みはあるもののなんとか歩くことはできた。今日は観光気分でゆっくり登ることにしよう。
途中、沢を横切った。「地獄湯ノ沢」と呼ばれる場所で周囲には硫化水素の匂いが立ち込めていた。硫黄がしみだしているのか土肌が黄色くなっていた。
透き通った沢の水を試しに飲んでみた。美味しいが、はっきりと硫黄の味がした。
沢沿いに登っていくと湿原に出た。木道の横を小さな沢が流れている。
ちょっとした秘密の庭園のようだった。
「八甲田清水」と呼ばれる水場があった。出会ったおじさん曰く「一杯飲めば3年長生きし、二杯飲めば6年長生きし、三杯飲めば死ぬまで生きる」とこのこと。なんかどこか別の観光地でも聞いた話だが、確かに寿命が延びてもおかしくないくらい冷たくて美味しい水だった。
木道の先に頂が見えた。
最初、それが八甲田の山頂(大岳)だと思っていたが、どうやらそれは小岳。大岳は右手に聳えていたが雲の中だったので一瞬気付かなかった。大岳の山肌にはまだ雪がゼブラのように残っていた。
最初に小岳を目指す。大岳の前哨戦。距離も短く緩やかな登りなので一気に駆け上がった。下から見上げた時には頂が見えていたが、いつの間にか雲が上がってきたのか、山頂に着くと真っ白になっていたので、軽くエネルギー補給だけして折り返した。
さっきからどことなく山全体の雰囲気がどこかの山に似ていると思っていたが、「火山」、「硫黄」、「湿地」、「緩やかな山並み」のキーワードから一切経山にとても似ていると感じた。
分岐点まで戻り、続いて大岳を目指す。
背の低いアオモリトドマツの間を縫うように登っていく。そのうち森林限界を迎え、富士山のような赤茶けた土と岩の階段を登っていく。
なんとか晴れてくれないかと思ったが、願い空しく山頂は小岳同様に真っ白だった。
昨日に引き続き眺望なしの山。
「天は我を見放した!」、、、とここで一言いってみた。八甲田山で単にこの台詞が言いたかっただけ。映画「八甲田山」の名台詞だ。
でも、振り返れば山頂の周囲にはチングルマのお花畑が広がっていた。ところどころにイワカガミがピンク色でアクセントをつけている。
その中に、深い青色をした花を見つけた。大好きなミヤマオオダマキ。昨日のヤマオオダマキに続き、北陸では見ることができない珍しい花に久しぶりに出会えてとても嬉しかった。
一瞬、光が刺して来たので、「このまま晴れるか?」と期待してしばらく待ってみたが、いつまでたっても晴れる気配はなかったので、諦めて移動を開始した。
帰りはロープウェイ方面に降りて、上毛無岱の湿地帯を抜けながら降っていく。
霧の中の幻想的な湿地帯。緑の中に木道がどこまでも延びていた。かなり大きな湿地帯であることが分かる。
木道のすぐ脇にはワタスゲが群生していた。雨で萎んでいたが、晴れさえいれば風に揺れてさぞ爽快なことだろう。
木道をひたすら歩いていく。
尾瀬、田代山、鬼怒沼山と湿原のある山にはそこそこ登っているが、こんなに広がりのある湿原を持つ山はないと思った。
驚くのは単に広さだけでなく、上毛無岱の端っこにある「毛無岱の階段」では、眼下に次の湿原エリア「下毛無岱」が見下ろせた。まるで巨大な棚田のような地形で3D的に広がりを見せる湿原の絶景は、今まで見たことが無かった。
「ぜひ、晴れた日に、もう一度この風景を見たい」。また改めて八甲田に来る理由ができたと思った。
歩いていると、額にぽつりぽつりと水滴が当たり始めた。
雨の予報は無かったはず。「霧雨か?」と気にも留めなかったが、数分もしないうちに勢いが増して本降りとなった。木道脇にあった看板によると酸ヶ湯温泉まで数キロ程度だったので、レインウエアーは使わずそのまま下山した。
下山後、待ちに待った酸ヶ湯温泉へ行く。
通常1,000円のところ、特別期間らしく700円にディスカウントされていた。これもコロナ禍解禁の影響か。とにかく嬉しい計らいだ。
酸ヶ湯温泉は古びた温泉宿で、混浴の仙人風呂で知られている。
最初に体を洗いたかったので、男性専用のお風呂に入った。
小さな風呂場で2人ほど先客がいた。白濁した温泉につかりほっこりする。
続いて、混浴の千人風呂へ入る。
更衣室は男女別々になっているが、中に入ると合流する仕組み。
広々としたお風呂が2つと打たせ湯があった。千人はあくまで比喩に過ぎないが、確かに木造にしては大きな空間だ。
「男性はこの先ご遠慮ください」と風呂場の中央に仕切りのロープが張られていたが、あまり関係はないようだった。
インターネットでは、「常に湯煙が立ち込めているので、混浴とはいえ何も見えないので安心」と書かれていたが、湯気は全く無く遮るものはなにもなかった。
そこへ、大きな声ではしゃぐおばちゃんたちがガヤガヤと入ってきた。
こうなると、むしろシャイなのは男性の方。気を遣っておばちゃんたちにその一角を譲る。
双方、恥ずかしがる年齢ではなかったが、なんとなく小っ恥ずかしくて落ち着かなかった。
仕方なく深く湯船につかり、お風呂の淵に頭を置いて天井を見上げた。
歴史を感じる木造のお風呂。これは確かに良い温泉だ。先輩が自慢したのも頷けた。
登山後にこんな極楽な温泉があるとは、つくづく八甲田山は素晴らしい。
天気には恵まれなかったものの大満足の週末だった。









































