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奥剱・池の平再訪 紅葉と初雪と・・・

池の平山(池ノ平山・池平山)( 北アルプス・御嶽山)

パーティ: 1人 (犬山好人 さん )

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行程・コース

天候

1日目 晴れ 2日目 晴れ 夜間に雨 3日目 晴れのちくもり 4日目 雲のち雨のち吹雪 5日目 くもり 6日目 晴れ

登山口へのアクセス

バス
その他: アルペンルートWEBきっぷを利用
時間指定の事前決済で窓口に並ぶことなく、往復割引もある
ただし有効期限が5日間なので、今回は悪天候停滞のため復路が無駄になってしまった

この登山記録の行程

【1日目】
黒部ダム(07:54)・・・内蔵助谷出合(09:18)・・・内蔵助平(11:46)・・・ハシゴ谷乗越(13:34)・・・ハシゴ谷橋(15:07)・・・真砂沢ロッジ(15:42)

【2日目】
真砂沢ロッジ(06:34)・・・二股(08:00)・・・北股折り返し地点(09:42)・・・仙人新道分岐(10:29)・・・仙人峠(12:33)・・・池の平小屋(13:05)

【3日目】
池の平小屋(06:18)・・・池の平山(08:26)・・・池の平小屋(09:50)・・・平の池(10:17)・・・池の平小屋(10:30)

【4日目】
池の平小屋(06:57)・・・剱岳展望台(07:43)・・・池の平小屋(08:28)

【5日目】
池の平小屋(08:53)・・・仙人峠(09:45)・・・二股(11:47)・・・真砂沢ロッジ(13:17)

【6日目】
真砂沢ロッジ(06:25)・・・ハシゴ谷乗越(09:14)・・・内蔵助平(11:27)・・・内蔵助谷出合(13:08)・・・黒部ダム(14:24)

コース

総距離
約28.4km
累積標高差
上り約3,772m
下り約3,772m
コースタイム
標準23時間20
自己30時間14
倍率1.30

高低図

標準タイム比較グラフ

GPX ダウンロード KML ダウンロード

登山記録

行動記録・感想・メモ

 去年訪れてすっかり魅せられた奥剱・池の平(池ノ平)、今度は紅葉を見たいと思い小屋閉め間際の平日を狙って行った。体力的にも池の平でテント泊する最後の機会かと。
 扇沢から始発のバスで黒部ダムへ。今年は早くも下ノ廊下が開通していて、そちらへ行く人が大半。後述するが内蔵助谷出合の分岐で道を間違える人が多いらしい。内蔵助谷の渓流を右手に見ながらの登山道はなかなかハードかつ、とくに疲れた下山時は谷側の傾斜に注意して気が抜けない。やがて道は平坦になり短い鉄橋を渡ると内蔵助平(くらのすけだいら)の分岐標識が現れる。この辺り「内蔵助」「真砂」が付く地名が多くしっかり頭に入れておかないと混乱する。分岐近くにテント一張分ほどの平地があり、地図にはない緊急ビバーク用と思われる。というのも大雨増水時にはどちらへも下山することができなくなるらしい。ふだんは涸れ沢の登山道から急登でハシゴ谷乗越(はしごたんのっこし)へ。登りきった所で剱岳が姿をあらわす。左手に展望台との表示があり、少し上がると歩いてきた内蔵助平を一望することができる。(山と高原地図では展望台まで10分とあるが、そこまでは行っていない)ルートをすこし進むと剱岳をまっ正面に拝むことができるポイントがある。梯子が連続し、ゴーロを横切り、沢筋を延々と下って行けば剱沢の水音が近づいてくる。河原を少し下流側へ進み丸太の仮橋を渡る。この橋は増水時には橋げたから外れるようになっており、真砂沢ロッジが情報発信している。

 一日目は真砂沢ロッジでテント泊。去年来た時、ここでテントを張りたいと思った。いまや北アルプスのテント場は軒並み2000円、なかには1人でも4000円という破格な所もあるが、真砂沢も池の平もトイレ料込みでまだ1000円でがんばってくれている。星空のもと剱沢の流れを聞きながらシュラフに潜り込むも、夜半寒くてよく眠れなかった。

 翌日は予報通りの快晴、青空目指してスタートだ。三ノ沢、四ノ沢を渡渉し、クサリがあるへつりを通過、二股吊橋で小休止。旧道の北股ルートへ行ってみる算段なのだ。地図には廃道とあるが、有志が再整備を進めている。とはいえ雪渓や流れの状態によりルートファインディングを要するところでもあり、けして一般登山道というわけではない。基本的に左岸を進み、三ノ窓雪渓出合を右折すると渡渉を繰り返して行くことになる。ところが三度渡渉したところで行き詰ってしまい、元に戻ることにした。結局は仙人新道で、一年ぶりの池の平小屋に到着。さっそくテント泊の申込み、明日はヘリ荷上げのため5時撤収とのこと。テントで二度寝の目論見が崩壊(笑)、だがこのあと続くハプニングの序章にすぎなかった。

 平日なのに意外とテントは多く、後立山を眺める草地に落ち着く。陽が傾き始めた頃、急遽本日中に一便荷上げすることになりました、急いでテントを片付けてくださいとの非情なお達しが。ここはテント場がヘリポートを兼ねているのだ。まもなく日没なのに誘導灯もないなか着陸できるのだろうか。小屋前で待機しているとガスまで湧きはじめ、これでヘリが来なければどうなるのかいやな空気が漂いだしたそのとき、テールランプを点滅させて飛来したヘリコプター。わずか一二分で荷物を積み換え即座に離陸、さっそうと飛び去る。おもわず拍手が起こり「カッケー」との声が漏れる。みな文句も言わずテントを再設営、あとでスタッフが一軒ずつお詫びに回ってくれた。

 夜には風雨が強まり、テントは風に揺さぶられて周囲に水たまりができていた。ここは鞍部(コル)にあたり風が強いのだ。翌日も残りの荷上げが終わるまでテント場は使用できない。手早く撤収し、池の平山へと出かけた。時間が経つほどガスが出てくるので、八ツ峰を見るには朝早い方がよい。高曇りだったが、去年果たせなかった池の平山から八ツ峰をおがむことが出来た。平の池を巡って小屋に戻り、ランチのピラフを頂いてもヘリはまだ来ない。時折り晴れ間がのぞく天気なのに、大町市街は厚い雲に覆われていて飛び立てないらしい。昼過ぎにようやく三回往復して荷上げは無事終了、私もお手伝いさせてもらった。ヘリの風圧を感じながらの荷物運びなど普通の山小屋では経験できないだろう。お礼に缶ビールでもと言ってくれたが、あいにく私はノンアルコール体質、ジュースをいただいた。

 北アルプスの数ある山小屋のなかで池の平小屋は異色の存在。鉱山従事者の宿舎としてこの地に建てられ、山小屋となってからも剱岳北方稜線など限られた上級者が訪れる場所であった。施設が小規模なうえ、どのルートを通っても長時間かつ場合によっては危険を伴い、なかなか気軽に訪れるというわけにはいかない。そこでボランティアが小屋回りや登山道の整備を担い、最小限のスタッフで運営している。現在はコロナ対策として定員12名なので、経営的には尚更きびしい。それでも池の平を愛する人々が参集してくるのは、ここに来ればその気持ちがよく判る。私も若ければボラしに来たいくらいだ。

 今夜は小屋泊を予約しており、おいしい夕食と風呂に入れるのが楽しみ。明日からの大荒れ予報でキャンセルが相次ぎ、今夜は小屋泊2人テント泊1人だけ。消灯までの間、名前も素性も知らない3人が薪ストーブを囲んで山の話で楽しく過ごした。明日の夜もここに居るとはまだ考えていなかった。翌日は遅そ出で真砂沢まで下山する計画のため、旧鉱山道の剱岳展望台へ行ってみた。間近に見る急峻な山肌は、人を寄せ付けない神の領域という感じで、しばらくの間立ちすくんでいた。だが8時頃から雨が降り始め、これから天候が悪化していくとの予報。真砂沢で停滞せざるを得ないとしたら、もう一日ここに居ようと計画を変更することにした。

 午後にはみぞれ交じりの雨から雪に変わっていった。私が風呂に入っていた18時頃、突然老齢の男性がびしょ濡れで到着された。聞けば登山道は河と化して足元は水浸し、すっかり暗くなった吹雪の中をようやっとの思いでここまでたどり着いたらしい。剱沢の仮橋を渡れずに引き返した人もいたとのこと。ひとまずは熱い風呂に入ってもらい、人心地ついて話を聞けば、黒部ダムから阿曽原温泉へ向かう予定が、道を間違えたまま内蔵助平、ハシゴ谷乗越と来てしまい、橋を渡ったところで左へ行けば真砂沢ロッジまで30分のところ、気が動転していたのか右へ進んでしまい、仙人池ヒュッテも暗くてわからず、いちばん遠い池の平小屋へとたどり着いたのだそうだ。ひとつ間違えば低体温症で行き倒れていたかもしれない。北海道在住だったこともいい方に作用したのだろうか。とにもかくにも無事でなによりだった。

 さて、明日は天気も回復にむかいそうで、黒部ダムまで一気に下山するか真砂沢ロッジでもう一泊するか、管理人さんのアドバイスを聞いて相談する。ともかく単独よりは安心と、もう一人の愛知県のKさんと同行で真砂沢までとすることに決めた。朝になってみれば、ここ10年来この季節にここまでの積雪は初めてというほど。雪渓がないのでチェーンスパイクすら持って来ておらず、中途半端に雪が凍結しているよりは20~30センチの積雪の方がツボ足でもなんとかなる。それより雪の重みで垂れ下がった木の枝に苦労した。さいわいにも仙人新道を今朝上がって来た人のトレースが着いていて助かった。三ノ沢、四ノ沢も心配したほど増水しておらず、無事に真砂沢ロッジにチェックイン。閑散期のうえキャンセルが出たのか、当日朝の予約にもかかわらず受け入れてもらえた。

 予想だにしなかった雪山となったハシゴ谷乗越から、青空に雪化粧した剱岳の姿をおがめたのはせめてものご褒美か。好天の土曜日なので登って来る人もけっこう多い。往路ではなかった水たまりで靴を濡らしたり、マーキングが雪に隠れているのかもと勘違いして右往左往したり。二日間同行していただいたKさんには黒部川に出た所で別れを告げ、薬師の湯に入ってから帰宅すべくバスへと急いだのだった。

 長い山行が計画どおりに行かないことはままあるが、今回ほど思い通りにいかなかったことは、これまでになかった。それでは残念な山行だったのかといえば、全くそうではない。自然相手とはいえ予想外の天候と展開、予定外の行動と出会い。愛知のKさん、横浜のNさん、北海道のIさん、そして池の平小屋の管理人さんご夫妻とスタッフさん等。これまでの私の登山人生において、もっとも思い出に残る山行となった。
なお10月の第一週目迄でこの山域の山小屋は営業終了し、橋も撤去される。

(余談) 黒部ダムから下の廊下へ行くつもりが、内蔵助平へと道を間違える事例
分岐には写真の「通行できません」という看板が出ており、そのまままっすぐ進めば下の廊下なのに左上へ行ってしまう。地図を確認しないのか、内蔵助谷を黒部渓谷と勘違いしてか、下流へ進むはずが上流へ進んでいることになる。標識も行き交う登山者も少なく、気付いた時にはまあいいか、しょうがないかとなる。最近このような事例を立て続けに見聞きした。吹雪の中を池の平小屋に到着した人もそうだし、1日目に会ったテント泊の人は、阿曽原から池の平への周回予定を逆向きに変更するらしかった。

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