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大水上山から平ヶ岳

平ヶ岳( 関東)

パーティ: 1人 (1357 さん )

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行程・コース

天候

曇り/快晴/晴れ

登山口へのアクセス

マイカー

この登山記録の行程

鳩待峠(9:55)悪沢岳(11:55)小笠(12:40)笠ヶ岳(13:10)悪沢岳()小至仏山(15:00)至仏山(15:30)猫又川(16:00)山ノ鼻幕営(16:30/5:00)ススガ峰(8:30)白沢山(10:35)平ヶ岳(11:55)白沢山(13:20)大白沢山(14:50)猫又川左俣(16:00)山ノ鼻(16:50/6:55)鳩待峠(8:40)

コース

総距離
約41.9km
累積標高差
上り約3,867m
下り約2,708m

高低図

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登山記録

行動記録・感想・メモ

 始発の新幹線を越後湯沢で降りて鈍行に乗換え、六日町からタクシーで十字峡を目指すと、谷間の両側に迫る山肌は芽吹色に包まれて、雪は全く見当たらない。数年前のGWに、「山スキーで縦走しよう」と川崎さんと2人で出掛けて来たことがあるが、六日町の駅頭で「稜線に雪はほとんど無い」と聞かされてそのまま引き返した事を苦く思い出す。
 今年は例年より雪が少ないと言われているので少々気懸かりだが、徳永君等が昨夜泊った筈の温泉を過ぎると谷の奥に雪山が姿を現し、思ったより白い山肌に先ずは一安心する。十字峡の落合橋を渡った所で通行止になって車が数台停まっているが、半数は渓流釣りの人らしい。三国(さぐり)川は雪融け水で奔流となっている。
 林道は手入れされず、落石や倒木が散乱して所々にデブリも残っている。右岸へ渡り、50m先にあるポストに計画書を入れ、「幕営装備一式を背負って登るのは昨年10月の南ア坊主山以来だから、無理出来ない。50分歩いて10分休むピッチを守って登ろう」と腰を上げる。若山さんと2人の予定だったが単独行になったので、ザックは22kgと重い。
 一合毎に石柱が立っているのを励みに、じっくり登る。落葉の積もった雪融け後のぬかるんだ道は少々嫌らしいが、体調はまずまずで最初のピッチで350m稼いで少し自信を持つ。P941の瘤に達すると、稜線直下の雪面をトラバースする人影が見える。「ひょっとして徳永パーティーかも知れないなあ。あそこまで2~3時間は掛かるだろう」と、残りの標高差を思う。
 標高850mで登山道に雪が現れ、1,150m付近から全面雪に覆われる。真新しいトレースを踏んで行くと、スキーを背負った2人組が「如何にも疲れた」という顔で休んでいる。中ノ岳や本谷山が次第に低くなるにつれて山肌の白さが増してくる。樹林帯を抜けたP1,470の斜面で長めの休憩を取る。笹が露出した丹後山が間近に迫り、大水上山へ歩を進めるパーティーの後を単独の人が追って行くのが見上げられる。
 大雪原をトラバースして直上し、笹の間を登って国境稜線直下の尾根の上に出る。小岩の上では単独者が疲れた表情で休んでいる。そっと観察すると、自分より高齢かも知れない。待望の国境稜線に登り着くと尾根の上に幾つもピークが見える。一番奥の見覚えのある姿が巻機山だろうか。丹後山への稜線は笹の間に確りした登山道が付いている。
 雪の窪地に建つ丹後山避難小屋を覗くと4名の先客が居り、「藤原山まで行く積り」という徳永君のメモを見付ける。「俺がこの時間だから、当然、彼等は先へ行くよな」と健闘を喜ぶ。
 小屋の前では山慣れない感じの60代の男性がスコップで炊事用の雪を掻き取っている。「小屋でゆっくり眠りたいが、五月蝿そうだ。3日目が下り坂の予報だし、稼げる時に稼いでおきたい」と、小屋泊りを敬遠してもう少し歩くことにする。
 丹後山の三角点を確認して先へ進むと、小高い丘の雪の上に『水源の碑』が立っている。河川協会の仲間の写真を見たことがあるが、実物は思ったよりずっと大きい。
 「明朝、兎岳をピストンしよう」と考えて、大水上山頂にテントを張る。ビニール袋に雪を集めて水を造り、天気図を描きながら炊事をしていると、突然閃光に包まれる。凄じい明るさに肝を冷やす間も無く雷鳴が続き、直ぐ上の雲の中を稲妻が走り回る。避けようにも山頂では如何ともし難く、「テントのポールはカーボンだし、ピッケルも持っている。ジタバタしても如何しようも無い」と腹を括る。
 食事を終える頃には雷雲が通り過ぎて明るくなる。「明朝登るよりも、今日登れば時間の節約になる」と気付いて兎岳へ向かう。急斜面を下り、鞍部から緩斜面を登り返す。雪の腐った部分が点在するものの、思ったより締っていて助かる。所々に古いトレースも残っている。
 兎岳の山頂に立つと、中ノ岳が大きく高く存在感がある。右奥の魚沼駒ヶ岳もどっしりと大きい三角形で見応えがあり、「やっぱり、百名山だ」と見直す。灰ノ又山から荒沢岳への尾根は長く、雪を着けた姿がなかなか魅力的だ。
 テントに戻ってまどろむ。重量節減のためにアルコールを持参しなかったので、すんなり入眠出来ないでいると再び雷が襲って霰が降り、数時間続く。

 昨日の雷が嘘のように晴れている。体はもっと眠りたいと要求するが、「今日は正念場で、歩ける限り歩くのだ」と起き上がり、パンとコーヒーの朝食を摂り、テルモスにコーヒーを詰める。
 快晴下で12時間以上行動するので「出来る限り多く水を持とう」と考え、水1ℓとスポーツ飲料500ccと合わせると2.4ℓになる。雪の状態を確かめるとクラストは緩く、靴が5~10㎝ほど潜って斜面をノーアイゼンで下っても不安を感じない。
 東の空を赤く染めて昇る朝日を眺めて出発する。山頂から下った尾根の上の小さい瘤には雪が着いておらず、露出したブッシュにすがって下方の雪面へ下り、右手の尾根の上へ登り返す。「聞いたような声だなあ」と思いながらテント撤収中のパーティーに近付くと徳永君等で、60代の5人(平均年齢63歳)と挨拶を交わす。
 出発するまでにしばらく掛かりそうなので、「先に行くよ」と言って先行する。今回の国境稜線縦走計画を徳永君から聞いて「俺も連れて行ってよ」と頼んだものの、「見ず知らずの他の山岳会の人とのいきなりの山行は、お互いに抵抗がある」と感じて諦めた経緯がある。
 稜線通しに雪の上を歩く。朝の冷気で身が引き締まる気がするのはほんのしばらくの間で、体が温まるとバンダナが汗でぐっしょりになる。50分歩いて一本立て、落葉樹林を抜けて西尾根へ上がり、アルペン気分を楽しみながら気持ちの好い雪稜を歩いて今日最初のピークである笹に覆われた藤原山頂を踏む。
 平ヶ岳への稜線を眺めると先行する単独者の黒い影が見える。銀山湖側の急斜面に引っ掛かった雪塊の上を危なげに歩き、笹の小広場に三角点標が立つ下藤原山に達する。割れた古い登頂記念の板に残っている若い人の短文を読むと、山登りを始めた頃の自分を思い出してちょっと恥ずかしくなる。
 この先、滝ガ倉山までの尾根にはほとんど雪が無い。東面は崖で、西面に部分的に雪が残る程度だ。「薮漕ぎに梃子摺るんだろうなあ」と覚悟して下って行くと1人登って来て、「昨日、滝ガ倉山の鞍部で泊ったけど、今日会うのは単独者ばかりで、3人目ですね」と語り掛けてくる。
 滝ガ倉山は3つのピークを持つ。ブッシュには微かな踏跡があるものの薮漕ぎで消耗し、2つ目の最高峰まで1時間を要する。高度感のある風化した岩稜を下って3つ目のピークを越えると尾根が広くなり、雪も残って歩き易くほっとする。地形図にはその先の4つ目の緩いP1,716に滝ガ倉山の記載がある。
 強い陽射しの中を剱ガ倉山手前のP1,790まで登って大休止する。骨太の尾根を持つ剣ガ倉山の左肩には平ヶ岳が大きく近付き、尾瀬から縦走して来た2人組が直ぐ先の針葉樹の木陰で休んでいる。幅広の雪稜をじっくりと登って剣ガ倉山頂に立つが、疲れと暑さで我慢出来ず、再び大休止とする。
 アイスバイルを手にしてスノーリッジを下る。左は平ヶ岳沢支沢へ、右は遥か下の利根川源流オキノ日向沢まで切れ落ちている。「落ちたら無事には済まないだろうし、無事でも稜線まで登り返すのが大変だ」と考えながら、長くもない距離を慎重に下る。
 少し登り返して瘤を越え、再度スノーリッジを下り、断裂した雪面の笹を掴んで腕力で数十m登るとP2,072に達する。振り返ると下ったばかりのスノーリッジに規則的なステップの陰影がくっきりと見えていて、少し誇らしげに思う。
 今回縦走の最高峰平ヶ岳が目の前にマッシブなどっしりした姿を見せている。疲労が加わり太陽に焼かれ大雪原に惑わされて足が遅くなり、山頂まで持たずにP2,080で一息入れ、ヘロヘロになってポールの立つ2度目の平ヶ岳山頂を踏む。
 テントを張るか如何するか決め兼ね、迷った末に「取敢えず、池ノ岳を往復しよう」と、キャラメル数個をポケットに入れて空身で歩き出す。シラビソが点在する三角点付近の小丘へ踏み込むと雪を踏み抜いて空洞へ落ち、抜け出るのに多大の労力を要して腹立たしくなる。尾根の東寄りの雪原へ逃げて下り、姫ノ池付近の最高点を目指して一直線に登って山頂を踏む。往きに25分、登りが60m多い帰りには実に40分を要してしまう疲れ様だ。
 今朝出発する時の予定は大白沢山付近だったのだが、「せめて、白沢山まで行こう」とザックを背負い、平ヶ岳山頂のポールに「先へ進む。14:35 小川」と、徳永君へのメモ書きを挟んで歩き出す。
 スキーのシュプールが現れ、「13年前に、自分も、山ノ鼻から山スキーで日帰りピストンしたんだ」と当時を振り返る。重い足取りで4人が登って来て、「至仏から縦走して来たが、至仏山の下りは予想以上に這松が手強かった」と疲れた表情で語り掛けてくる。「単独の先行者も、ぼちぼちテン張っているだろう」と思いながら小丘1,960mを越えてP1,936を惰性で下り、「今日、最後の頑張りだ」と鞍部から白沢山への登りに掛かる。
 シラビソの木が疎らに生える平坦な白沢山頂の、西風を避ける木陰の雪を均してテントを張る。「たっぷり歩いて疲れたから、熟睡出来るだろう」と期待するが、夜通し風が強くて熟睡した気がしない。夜半に目覚めるとテントに木の影が写っている。

 3日目から下り坂の予報だったので気を揉んでいたのだが、今日も雲一つ無い快晴の天気に恵まれて頑張ろうと言う気になり、目覚め切らない体で歩き始める。
 雪はよく締ってアイゼンは不要だ。気温は低いが、直ぐに体が温まって毛糸の帽子をバンダナに替える。体調は良い。先行する単独者の幕営の跡と、右足が開き気味の癖のあるアイゼンの跡が現れ、「今日も先を越されたか」と残念に思いつつ、幾ばくかの親しみを覚えながらトレースを追う。
 朝日に輝く平ヶ岳は大きく立派で、「流石だなあ」と眺め入る。北から眺める景鶴山は見慣れない角度で珍しく、少し野暮ったい姿だ。大白沢山分岐のP1,911手前付近から俄然足跡が多くなり、新鮮なスノーシューの跡も現れる。至仏山への尾根に移るとスズヶ峰の山頂直下を登る2つの影が見え、反対側から登って来たスキーヤーと合流する様を目撃する。
 利根源流の山々をつぶさに観察しながらスズヶ峰山頂で大休止する。赤倉岳はスノーリッジを見せているが、昨日南下しながら観察した時の印象通り歩くのに問題は無さそうだ。平坦な山頂部から凹地を横断して10m下った段を右へ逸れ、標高1,925m付近でザックを降ろして木陰にデポする。
 ナップザックに水500cc、食料とカメラを入れて赤倉岳へ向かう。針葉樹林に入ると視界を奪われて、正しい方向へ進んでいるのか判り難い。しばらく行くとGW前半に歩いたものと思われる古い足跡に出合う。若干方向修正をしながら下降していくと視界が得られるようになり、上手い具合に全くロス無しで鞍部に達する。
 正面に広がる大斜面目指して一直線に進む。腐った所はそれなりに潜るが、大部分は下層の雪が固くてラッセルに苦労することは無い。真後から陽が射し、熱中症を避けるために首筋をバンダナで覆い帽子を被って歩く。上部の傾斜は見た目よりはずっと緩く、肩に登り着いて違った角度からの利根源流国境稜線の眺めを楽しむ。
 奥の三角点へ細い雪稜が通じており、雪庇が落ちた後の雪塊が割れて一部笹が出ている。スノーリッジの刃の部分を慎重に歩いて10m下り、登り返すと安定した雪稜へ出て直ぐに山頂に達する。赤倉岳は登りも下りもスキーに打って付けの斜面を持っており、山スキーで登るために在るような山だと判る。次の機会があったら、ぜひ山スキーを持参しよう。雪の上にドンと腰を下ろすと雪面が割れて落込み、吃驚する。快晴下の利根川源流の眺めを楽しんでから山頂を後にする。
 ザックを背負って南下を続ける。至仏山が近付いて高くなり、残雪と這松の状態が次第にはっきりしてくる。「至仏山を越えるか、山ノ鼻へ下ろうか」と考えながら、軟化した雪に「しょうがないなあ」と諦めつつ岳ヶ倉山(日崎山)まで頑張って歩く。
 腰を下ろして観察するとトレースが落葉樹林の間をP1,663へ登っているのが見え、「取敢えず、あのピークを越えよう」と考える。P1,663を越えると次のP1,668へはトレースが分散して薄くなる。20m程登った所で、「山ノ鼻から平ヶ岳へピストンした時、鳩待峠から至仏山に登ってムジナ沢を滑降したから、分水嶺の国境稜線を至仏山まで歩いたも同然だ」と強いて納得して至仏山をギブアップし、猫又川目指して下る。
 柳平へは一息に下降するが、山ノ鼻までの雪原歩きを長く感じる。山ノ鼻からは、賑やかになった雪道を鳩待峠へ登り返してバスで戸倉へ出る。
 沼田へバスで行くのは2人だけで、もう1人の背の高い若者が「至仏の登りは堪えた」と言うので、右足を開く癖のある歩き方の当人であると知る。

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登った山

平ヶ岳

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2,141m

大水上山

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1,831m

兎岳

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