行程・コース
天候
快晴/晴れ
登山口へのアクセス
タクシー
この登山記録の行程
高山(0:21/7:00)青年の家(8:10)日影平山(8:35)丸黒山(12:05)表俵山(15:50)千町ヶ原幕営(2,265m、16:10/6:15)台地(2,670m、9:10)屏風岳(11:10)大日岳(11:30)剣ヶ峰(12:10~13:10)位ヶ原(2,600m、13:20)鈴蘭高原(14:15)
高低図
登山記録
行動記録・感想・メモ
柏駅を予定通り13時に出るが、興津駅の事故の為に美濃太田で1時間を空費し、普通列車7本を乗り継いで高山へは日付が変わった0時21分の到着となる。
駅前のタクシーを掴まえて明朝の予約をし、「コンビニエンスストアはビジネスホテルの下にあるよ」教えてもらう。「今夜の宿は如何するの?」と聞くので、「バスの待合所で寝る」と言うと、「直ぐ近くの病院の待合所が好いよ。一晩中暖房付きだし」と薦めてくれる。
しかし、病院は気が進まず、待合所に新聞紙を広げて寝る準備をしていると先程の運転者が遣って来て、「奥に商店街の待合所がある。ドアが付いているから寒くないよ」と親切に教えてくれる。コンビニでおにぎりとキツネうどんを買い、ジャーのお湯を注いで持ち帰ると食べ頃になっている。
タクシーに乗って国立乗鞍青年の家まで上がり、駐車場で身支度をする。当番の中学生が何組も遣って来て、昨夜食べたであろうお菓子やインスタント食品類のごみを捨てて行く。建物は飛騨高山スキー場のゲレンデの上に建っており、リフトが動き出す前から滑り始める事が出来る有難い所だ(一般の人も泊れるのだろうか?)。
地図に従い、裏の広場を横断して進む。積雪は1mくらいだろう。鞍部に降りると林道が現われ、スキーのトレースを発見する。暫く林道を行き、北西尾根に取付いて日影平山に登る。
進むべき夏道は東の方の尾根へ向かっている筈だが、途中には小さな山が幾つも見えて複雑な地形をしている。南斜面を林道へ滑り降り、トレールを追う様にして前進する。
尾根の間の沢状地形を辿り、標高1,500m付近から南面の明るい落葉樹林をトラバース気味に行く。天気に恵まれ、額に汗が滲んで毛糸の帽子が五月蝿く感じられる。やがて、丸黒山の斜面が黒く望まれ、少し下ってP1,694の南東尾根の鞍部を越える。この付近は平坦で複雑な地形の上に針葉樹林で見通しが悪く、油断出来ない所だ。
北西尾根の末端に取付き、ジグザグを交えて高度を上げる。雪はたっぷりあるが、傾斜が急だったり潅木が邪魔したりして、シール登行は思う様には進まない。頂稜の木陰で3本目を立てて体を冷ます。
青年の家から丸黒山頂まではハイキングコースで道標が散見されるが、夏道の切開きは判然としない。一汗かいて山頂に着き、西面からの乗鞍岳を興味深く眺めながら一休みする。スキーのトレールは山頂までで、「さて、如何下ろうか」と思案する。地図よりはずっと傾斜が急で、スキーを脱いで鞍部を目指して尾根状の所を歩いて下ると、軟雪に深く潜って大苦戦する。
1,815mの鞍部で呼吸を整え、板を履く。緩く開豁な尾根を楽しく歩いてP1,951を越えると、乗鞍岳から西へ延びている長大な主尾根へはもう間も無くである。待望の主尾根に登り着くと、殆ど勾配の無いシラビソ林が広がる。方向を定め、「今日中に、樹林が切れる所まで登ろう」と鼓舞して進む。長い樹林帯を歩き、雪原を横断し、疎林の針葉樹の間を掻い潜って登ると、やっと表俵山へ着く。目の下には快適そうな雪原が見える。雪の下は池だろう。
「よし、あすこにテントを張ろう。4時までには着けるだろう」と、足元の急斜面を避けて右へ廻り込んで下る。若山さんがテントの周りにブロックを積む傍らで天気図を書き、食事の支度に掛かる頃、川崎さんの姿が表俵山頂に現われる。
風が出て、乗鞍岳上空の雲が騒がしい。テント場から一段上がると広大な千町ヶ原で、右奥の針葉樹の生え際に頑丈そうな避難小屋が見え、「もう一頑張りで小屋だったんだ」と知る。朝の逆光の中、雪に刻まれた風紋が印象的な陰影を見せる。
標高2,500m付近まで登ると雪は固くなり、氷化した部分も現われて板の当りが悪い。乗鞍岳が荒々しい山肌を見せ、登行意欲をそそる。円弧を描く尾根を辿って2,720mのコルまで登ると大日岳と剣ヶ峰が近付くが、風が強そうなので尾根の左斜面に入って沢筋から鞍部を目指す。
沢の中で一本立てながら観察すると、真っ白な屏風岳の斜面は雪ではなく岩に覆われており、スキーで登るルートは限られそうだ。岩の少ない所を狙って左の斜面へ上がり、山裾の南斜面をジグザグに高度を上げて尾根の上に出る。
板を脱いでアイゼンに替え、横風の中を前進する。大して歩いた気もしないが、足が重くなってなかなかピッチが上がらない。屏風岳手前の岩峰は通過不能で右から巻き、南側の雪面を登って山頂に立つ。
緩い尾根通しに登ってシュカブラに覆われた大日岳に達する。鞍部の向こうに鋭い三角錐の剣ヶ峰が控えており、頂上直下の岩場は手強そうだが、夏道のある南東斜面へのトラバースも大変そうに見える。権現池の左右に見えている小山が、最近その名の存在を知った雪山岳と薬師岳だろう。開けた展望に眺め入りながら、一休みして荒い息を整える。
若山さんが雪の急斜面にステップを切って登り、小川、川崎と続いて乗鞍岳最高峰の剣ヶ峰に立つ。空気が重くすっきりとは晴れていないが、笠ヶ岳や穂高の吊尾根が遠望され、360度の眺めに見入っていると「遥々高山から登って来た」と実感する。山頂から見下ろす丸黒山は目立たない小さな黒点にしか過ぎず、歩いた人でなければ山頂を見定める事は難しいだろう。
山頂直下の岩場を嫌い、朝日岳の鞍部へ下ってからスキーを着ける事にする。稜線上は北風が強いので権現池側の斜面で風を避けながら食事を摂り、身支度をする。乗鞍スキー場の鈴蘭まで標高差1,500m、距離7kmの大滑降に期待を膨らませながらスキーのシールを剥がす至福の時だ。
その時、「あっ、板を落とした」と川崎さんが悲鳴を上げる。「えっ!」と見ると、確かに板は片方しか無く、呆気にとられる。目を凝らして下の方を探すと権現池の雪原の上に黒い線が見える。後悔先に立たず、若山さんに拾いに下ってもらう。
思ったより早く板を回収して若山さんが登って来る。が、喜ぶのも束の間、よく見るとビンディングのプラスチック部分が無くなっている。落ちる途中で岩にぶつかって壊れたのだろうが、さて困った。
川崎さんは歩いて下らざるを得ず、鈴蘭で待ち合わせる事にして2人はスキーで下る。稜線からカール状の斜面へ慎重に滑り込み、徐々に傾斜が緩くなる斜面を豪快に滑り降りる。川崎さんには悪いが、堪えられない快感である。
位ヶ原の一端に下って見上げると、スキーを担ぎアイゼンを着けて斜面を下って来る川崎さんの姿が目に入る。「待てよ、紐でスキー靴を固定すれば滑れるのではないだろうか」と、かつて茂倉岳山頂で華麗に(?)ターンした積りが転倒して頭から突っ込みヒッコリーのトップを見事に折って大変しんどい思いをして蓬峠から土樽へ片足で滑り下った事や、大雪山でビンディングの金属棒の片方が折れて肝を冷やした時の事を思い出し、雪原に横になって川崎さんが降りて来るのを待つ。
ディアミールの金具の部分は健在で、太い角パイプに6mmのロープで靴を固定すると何とか滑れそうだ。位ヶ原の縁まで一緒に滑り、無理をしなければボーゲンで回れる事も判る。ツアーコースへ続く斜面の上で川崎さんと別れ、2人で先行してスキー場へ滑降する。
沢山のスキーヤーで雪は乱されて滑り難く、無理に曲がると板が引っ掛かって転倒する。何時に無く、若山さんが苦戦している。ゲレンデへ通じている急坂を無事に通過してリフト終点で息を整え、一気に滑り降りるのを惜しむかの如くゲレンデの要所要所で息を継ぎながら滑降する。雪は重いが、今シーズンの掉尾を飾ろうとするスキーヤーは多い。
鈴蘭に降り、バスの時刻を確認してホテルでお湯を貰う。昨年も若山さんと同じ湯に入ったが、窓の外には昨年より多くの雪が残っている。熱いお湯が体中の筋肉を刺激して、「効くー!」
湯上りのビールを飲みながらのんびりと川崎さんを待つが、最終バスの時刻が近付いても降りて来ず、「タクシーで帰る事になるなあ」と諦め顔になっていると林道を滑り降りて来る姿が一瞬間見え、「来た!」と言う言葉に、間髪を措かず若山さんが迎えに走る。川崎さんは、「途中で数回紐を締め直し、休まずに下って来た」と疲れ顔で言う。
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